【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】13話【次回で完結予定☆←勘違いでした。完結は次々回】

先を行くからすを追いかけているさくら。すたすたと、スーパーマーケットの駐車場まで歩いてきた。端にあるフェンスにたどり着いた時、やっと立ち止まり、振り返った。

さくら「どうしたんだよ、からす…」

からす「イフがクロサキ君に、「アルコンスィエルの時のように、上手くやれないものかと期待しておりましたが〜」と言っていただろう」

さくら「うん。アルコンスィエルって何者なんだ?」

からす「アルコンスィエルは藍色の家族の星の化身の名前なんだ」

さくら「つまりからすの母親の名前!?」

からす「ああ。…もう何年も前のことだが、あの日のことを覚えているか?さくら君とケンカして、仲直りした夜のことだ。二人で布団の中で、心の内を打ち明け合っただろう?」

さくら「もちろん覚えてる」

ーさくらはあの日、ふたりで話したことを思い出したー

ーー

ケンカをして、からすをひとり部屋に残して、家出したさくらだったが…。「今すぐ会いたい。俺がからすを守るんだ」。そんな気持ちがあふれて、翼を広げて飛び帰った。

さくらはからすが変わらずそこにいたことに安心して、からすが変わらない笑顔を向けてくれたことに安心して。溢れてきた涙を隠すように、からすの胸の中に顔を押し付けた。

さくらは「からすってさ…時々、俺の知らないからすになるよな。話し方とか、表情とか。出会って10年経つのにな。知らないことが、まだまだ、たくさんあるんだ。いや、からすのことだけじゃねぇ…俺なんか、生まれて3000年以上も経つのに、この星のことなんてなんにもわかってねぇし、宇宙のことなんて、もっともっとわかんねぇ。

でも、悪い気分じゃねぇ、…嬉しいんだ。これからいろんなこと、知って、触れていけるのかなって、想像できるからな。

もし宇宙の先まで見えちまったら…知っちまったら…、自分がどこにいるのかわかんなくなって、迷子になっちまいそうだしな」と、心の奥にしまっていた不安を正直に打ち明けた。

からす「大丈夫だ、さくら君。さくら君にはわたしがいる、わたしにはさくら君がいる…だから、迷子になんてならないと思うぞ♪

さくら君には心配ばかりかけているな…隠し事をしたいわけではないのだがなぁ、わたしはさくら君に、自分のことを話せていないのかもしれないな。

例えば…わたしの、過去の話、とか?」

からすは黒色の戦闘の星で育った「戦えない、孤独な戦士」だった…そして青色の不死の星にやってきて、さくらと出会ったが…生まれた星は別にあるという秘密を打ち明けた。

からす「わたしは生まれつき、特別な力を持っていた。言葉で表現するには難しい、深海のような力だ。力ばかりが注目されて、わたしを見てもらえない、恐れられて、ひとりぼっちで…寂しかった。

だから、戦いに利用されてでも、誰かに必要とされたいと思って、わたしは黒色の戦闘の星で、戦士になったんだ。

だが、わたしは戦えないんだ。暴力も暴言も、大嫌いなんだ。わたしは、力を持て余している臆病者だと言われていた。

それでも、戦えなくても、わたしは侵略者だった。わたしが赴いた星は全て、もう、この宇宙に存在しないから。振り返ってみれば…わたしは降り立った星、全てを、散らしてきているんだ。

それは、星を去った後、別の戦士が星を滅ぼしてしまったから…という理由には違いないが…そのできごとも、きっと、わたしの力と無関係ではないんだ。

わたしは、星の運命に影響を及ぼしてしまう…宇宙の漣(さざなみ)のような存在なんだ。

見慣れた星が散る景色…失う気持ちを何度も経験した。心の奥まで染みた寂しさは、簡単に溶かせるものではない。

寂しさや現実を誤魔化すように、考えず、学ばず、逃げて、惰性で生きていた。結局、わたしなんていないほうが良いと考えて、何もかもがどうでもよくなって、さくら君を巻き込んで、星ごと爆発してしまおうだなんて悪いことを考えてしまったんだ。…真実は知らないふりをして。

わたしに寂しがり屋の心を思い出させてくれたのはさくら君だ。

あなたはわたしにとってかけがえのない存在なんだ。

わたしは本当は…怖いんだ。幸せが怖いんだ。

わたしは、ここにいてはいけないんだ。わたしの存在は、きっとさくら君とこの星を散らしてしまう。今この瞬間も、真後ろにあるんだ、残酷な未来と絶望が。

見たくない…この星が散る光景だけは、見たくないんだ。申し訳なくて、怖くて、たまらないんだ。

それなのに…それでも…さくら君といたいんだ

この宇宙で、この星で、さくら君と生きたいんだ

すまない、きっとわたしは我が儘なんだ

わたしなんて

わたしなんか

きっとこの宇宙にいないほうが… …

さくら「からす!!」

さくらはからすの頬を両手で覆い、しっかり向き合った。サファイアブルーの瞳から溢れる涙を、親指で拭った。

さくら「何寂しいことを言ってんだ…からすには俺がついてるだろ!

生まれつきの力?降りた星全部を散らしてきた侵略者?気にすんなよ、からすのせいじゃねぇよ。

この星で俺と生きたい気持ちがあるなら、それだけで十分だろ!

俺を甘く見るなよ、俺は…この星の守り人、

星の化身なんだからな

この星を背負って、人生を魂を背負って、背負い続けて、この星を守り続けていくんだ!!!

からすが何だろうが何しようが、俺が何とかしてやるし!適当に、俺に任せておけって!だから、からすは堂々と、この星の一員として俺に甘えていたらいいんだ!

俺のそばにいるだけでいいんだ

ここにいていいんだよ、俺が守ってやるから」

からす「さくら君 ありがとう」

見えない不安に溺れそうになっていたからすはさくらの手を握って安心したように、ふにゃりと笑った。

涙をにじませた瞳は部屋の明かりを反射して、いつもよりもさらに輝きを増していた。

からす「さくら君、わたしのお母さんは「藍色(あいいろ)の家族の星」の化身だったんだぞ」

さくら「からす、星の化身の子どもなのか!?そんな話、きいたことねぇ!」

からす「ふふ。魂は宇宙が作り、それぞれの星に配っているものだが、わたしの魂はきっと、この宇宙が創ったものではないのだろうな。藍色の星は、黒色の戦闘の星に滅ぼされて、忘れられてしまったんだ」

さくら「よりによって黒色の星かよ…」

からす「お母さんはわたしに、残った星の化身の力を全部食べさせて、宇宙に投げて逃がしたんだ。幼かったわたしは何が起こったのかわからなかった。

だが、遠く遠くに離れていく…透明の輝きが舞い広がる景色を見て、胸がいっぱいになって溢れそうになった。その光景を心からきれいだと思った。

まるで、星のはなびらのようだと思ったんだ。

それから宇宙でふよふよ迷子になって、宇宙で隕石とか食べながらサバイバルしていた。そしてたまたま、黒色の星にたどり着いて拾われたんだ。

「星の民のため、星のため、宇宙のため。その前にたった一人を幸せにしてみなさい」…いつもお母さんに、言われていた。

さくら君と出会って、その言葉の意味が、少しだけわかった気がする。

これからも勇気を貸してくれ、さくら君

お互い未来を怖がる必要なんてない。わたしたちはもっともっと優しく、そして強くなれる。誰にもまねできない絆で結ばれる。胸を張れる、その力でわたしたちとこの星を守っていくこともできる!」

ーーー

ーー

あの日のことを思い出し、さくらの心はじんわりと熱く、切なくなった。

さくら「からすの故郷、藍色の家族の星は、黒色の戦闘の星にほろぼされてしまったけど…金魚八やクロサキの仕業だったかもしれないのか?」

からす「黒色の戦闘の星に、力を貸していたのかもしれないな。

お母さんの名前はアルコンスィエル。お父さんの名前はコウゲイ。

…お母さんは星の化身としての力と、深海のような特別な力を持っていた。お母さんはその力を、他の人の心や体を傷付けたり、行動を変えさせるためには使わなかった。

お母さんとお父さんは、いつも優しいおとぎ話を聞かせてくれた。星の民のため、星のため、宇宙のため。その前にたった一人を幸せにしてみなさいと、言い聞かせてくれた。

…お母さんも、宇宙の外から、金魚八というところから来たのだろうか。」

クロサキ君たちを嫌ったりはしない。だけど、悲しくてたまらない気分なんだと、からすは呟いた。

さくら「…わかんねぇ。でも、イフが恐ろしい存在だってことは間違いねぇよ。ふうがさんの心を書き換えるようなことをしたし。

宇宙を支配しようとしてるって話だけど、マジなんだと思う。…俺は、イフを見た時、執念みたいなものを感じた。

俺たちが乗っている宇宙船の上に乗って、何回も薙刀を突き刺してきた。強引で大雑把で、余裕が無い感じ。危険を顧みないやり方がすごく怖かったんだ。

イフはゆずは先輩とかクロサキとか、ことおの妹とか…強くて目立ってるやつを狙ってる。金魚八の奴らは俺たちの宇宙をどこからか見てるんだろうな。からすも何かのタイミングで目をつけられて、狙われているんだと思う。

でも俺は、からすだけじゃなく、他の仲間も狙われる可能性があると思うんだ。ブレイブ☆タコキスは強いし、ことおも頭がいいし。

ふうがさんが言ってた。「さくら達はイフや金魚八の存在を知っちゃっただろ。だから、イフが口封じのために、さくらたちの宇宙にやってきてもおかしくないんだ。それだけじゃない。さくら達の宇宙ごと消そうとするかもしれない。」って。

全員狙われてもおかしくない状況なんだ。

クロサキも「この深海の宇宙はイフに目をつけられてるから、遅かれ早かれ宇宙ごと消されると思って、マシロだけは助けたいと思った。」とか言ってたし。多分イフは、宇宙ごと消すこともあるんだ。」

からす「…宇宙を独り占めしたり、消したりするなんて、金魚八はどうしてそんな恐ろしいことをするんだ。

わたしの秘密が金魚八にバレてしまうのは、時間の問題だと思う。さくまちゃんのように、記憶を見る魔法を使える人がいる可能性だってある。

クロサキ君がわたしたちの仲間になって、とおこさんが返ってくることにはなったが…仲介するにも限界がある。わたしたちを庇って、イフを誤魔化し続けることは難しいだろう。」

さくら「でも正直、俺たちが力を合わせても勝てる気がしねぇよな。」

からす「…ゆずは君とふうが君も力を貸してくれるはずだ。絶対に生きているし、帰ってくる。

わたしはクロサキ君が話していた、カチョーロチロムという優しい魔法使いも、生きていて、どこかに身を隠していると信じている。イフ君よりも先に出会って、相談すれば、力を貸してくれるかもしれない。」

さくら「そうだな…でも、からす。

大丈夫だぜ。

そんなに気負うなよ♪

からすは星の化身だけど、俺も自分のことを星の化身だって思ってる。皆、そう思ってる。いつだってひとりじゃないんだ。

…からすはただのからすなんだ。俺はそんなからすを守る、最強の彼氏。

どんなことがあっても、俺がなんとかするって!

仲間も増えたし、俺たちは、これからもっともっと強くなれる。

…とりあえずさ、俺たちの日常を取り戻そうぜ。デスゲーム会場の瓦礫を片付けて、星を元に戻して、肉とかケーキとか食べて、

寝ようぜ!」

からす「ふふ。さくら君、本当にありがとう。さくら君がいてくれて良かった。

はぁ、なんだか急に眠くなってきた。お腹もすいたたな。喉もかわいた。

さくら君をギュギュッとしたい。

モチュモチュしたいなぁ…♡」

さくら「モチュモチュ??何をモチュモチュするんだよ?」

からすはキリッとした表情で、「もちろん、さくら君を。ぺろぺろ。」と言った。

ふざけ合いながら、皆のところへと駆け戻る。

空には虹がかかっていた。

【14話 最終回に続く】

… … … …

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