「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」
小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。
「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)
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(゜o゜)♡
読み始める前に
異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)
【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】5話 本文
ミニキスの身体中の傷は回復魔法で治せたが、2人の心の傷を癒す方法は思いつかなかった。
ただいま。
タコパチは掠れた声でつぶやいた。
玄関の扉を閉めて。靴を脱いだ。
1歩目を踏み出した時、悲しみに押しつぶされて、体重を支えきれなくなった。膝から崩れ落ちたタコパチを、後ろから抱きしめたミニキスも泣いていた。フィカキスは少し離れたところから、悲しそうに2人を見つめていた。
タコパチ「寂しいよ。もう兄弟の関係には戻れないのかな…。
きっと何もかもが遅すぎたんだ。もっと早くにイカパチの声を聞いてあげるべきだったんだ。
眠らされているとき、悲しい夢をみていたんだ。でも目が覚めてわかった。その夢は、夢じゃなかった、現実で戦っているミニキス、フィカキス、イカパチ…みんなの声が聞こえていただけだった。
もう一度、イカパチと夢を追いかけたい。
何でも癒せる回復魔法を追いかけたい。
そう思っていたけど、僕の声はもう、イカパチには届かないのかな。僕じゃ弱すぎるのかな。
…わかってる。
…そんなことないよね。
ミニキスと出会えて、僕は愛情と優しい回復魔法を知った。一瞬で病気や怪我を治すことだけが回復魔法じゃない。魔法が使えなくても、誰かを癒して回復させる方法は沢山あるということを知ったんだ。
ミニキスが僕にかけてくれた回復魔法を、イカパチにも教えてあげたい。
滅びた星を治して復活させる回復魔法なんて、いらないんだ。なくてもいいんだ。
僕が教えてあげたいのは、誰にでも使える簡単な魔法なのに。
どうすれば、教えて…あげられるの、かな」
フィカキス「…タコパチ! タコパチ!」
タコパチ「あ、ごめんフィカキス、なにか言った?ごめんね、やっと心、落ち着いてきたから…」
フィカキス「ミニキスの様子がおかしい!」
フィカキスの言葉を聞いて、タコパチは自分が重たいものを背負っていることに気が付いた。抱きしめてくれていたミニキスの体の力が抜けて、タコパチに寄りかかっていたのだ。タコパチが驚いて体を動かすと、ミニキスは何も言わずにそのまま倒れてしまった。
フィカキス「ミニキス、しっかりするんや…!」
タコパチ「..、離れて、フィカキス。今すぐ救急車を呼んで!僕ひとりじゃ回復魔法も使えないし…どうしよう」
タコパチからスマホを受け取ったフィカキスは、直ぐに電話をかけた。タコパチは真剣にミニキスを観察し、息がしやすい体勢に変えた。
タコパチ「普段通り息してるし、疲れと緊張が限界になっちゃったんだと思うけど…」
フィカキス「救急隊員と回復魔法使える人がすぐ来てくれるって。心配やな…毛布とかあった方がええかな?」
タコパチ「うん、ありがとう。お願いするよ。体を温めた方がいいと思う。
…はぁ。僕、ミニキスにありがとうとごめんね、大丈夫?を言う余裕もなかったんだ。ボロボロになって、戦ってくれたのに。
ミニキス、ありがとう、もう大丈夫だからね」
すやすや眠るミニキスの、汗に濡れてしっとりとした髪を撫でた。
フィカキス「タコパチが近くにおってくれて良かった、安心や。医学生やったんやろ?」
フィカキスがタコパチを見た。
タコパチ「やめてよ、僕はお医者さんじゃないよ。
はぁ、ミニキス大丈夫かな。
フィカキスは、どう思う?フィカキスの星に住んでいた、星の民(解説・星に住む人々。フィカキスの星の民は全員がフィカキスの分身だった)の中にはお医者さんのフィカキスもいたんでしょ?何かわかる?」
フィカキス「おったはずやけど、今のオレの力じゃ、複雑な記憶の処理はできひん。もう、ただのタコやし。
でも、ミニキスは大丈夫やと思う
ちっちゃかったけど、強い子やし」
サイレンの音が近づいてくる。
タコパチ「…病気や怪我は回復魔法で癒せるけど、ある程度の原因や治療法をわかっていないと、的外れな魔法をかけてしまって、効果がでないことも多い。1番大事なのは、自分ひとりで何とかしようとしないこと。
大丈夫、…僕たちは大丈夫。
ミニキスが異星人だってこととか、複雑な事情もバレないと思う。
人や星、過去を分析するような、高度な魔法を使える人なんて、宇宙に数人しかいないと思うし。
大丈夫、大丈夫だよね」
すやすや眠るミニキス。時間がゆっくり、ゆっくりと流れていた。
……
それから直ぐにミニキスは目を覚まし、日常が戻ってきた。
しかし、ミニキスはずっと、イカパチのある言葉がひっかかっていた。
……僕は恋とゲームだけに夢中なんだ
夢を叶えるのは、僕とクロサキ君が先だよ……
ミニキス(イカパチさんの夢って、何なんやろ)
確かめる方法は思いつかなかった。
今すぐ確かめる必要はないと思った。
タコパチやフィカキス、そして自分が楽しく暮らせている今を崩したくないという思いの方が強かった。
イカパチのことが、少しだけ怖かったのかもしれない。
違和感は、楽しい毎日に溶けて消えていく。
3人はイカパチのことも、星を復活させる大魔法のことも気にしないようにして、忘れて、楽しい毎日を過ごしはじめた。
ミニキス「新しいメガネ、何色にしようか、迷ってんねん」
タコパチ「赤色にしようよ!」
フィカキス「赤、ええやん!」
ミニキス「赤!?派手やな…もうちょっと考えさせて」
― ― ― ― ―
…洋館…
走り去ったタコパチとミニキス、フィカキス。荒れた部屋。
何も言わずに立ち尽くすマシロをみて、クロサキはどうすればいいのか、何と声をかければいいのかわからずに迷っていた。
クロサキ「…えっと、マシロ、大丈夫か?」
イカパチ(マシロ)「うん、大丈夫。ごめんね」
クロサキ「謝ることないぜ」
イカパチ(マシロ)「……。」
クロサキ「人にはひとつやふたつ、誰にも言えない秘密があるものだろ?
話したいなら話してもいいし、話したくないなら話さなくてもいいぜ。
俺はマシロのことが好きだし、安心しろって」
イカパチ(マシロ)「…ありがとう。
見られちゃったし、聞かれちゃったし。
お兄ちゃんのことはクロサキ君に話しておくよ。
あの子はタコパチ。僕のお兄ちゃんなんだ。隣にいた黒髪の子はミニキス。お兄ちゃんの恋人。タコはフィカキス、よくわかんないゆるキャラ。
イカパチって言うのは、僕がお父さんとお母さんからもらった名前なんだ」
クロサキ「イカパチが本名ってことかよ!?本名可愛すぎるだろ…」
クロサキは買ってきたイカの天ぷらとマシロを交互に見ている。
イカパチ(マシロ)「僕の名前は、マシロ!!その名前、言わないでよ!
えっと…僕は元々レッドデビル☆カンパニーを設立した魔法使いだった。だけど、事故のせいで魔法が使えなくなった。
何もかもを失った気持ちになった。それで、全てを捨てて家出したんだ。この話は、ベッドでゆっくり詳しく話すよ。
…本当の僕を見つけたい。魔法に頼らない強くて新しい僕になりたい。そう思って、自分にふゆのっていう新しい名前をつけた。
真っ白の画用紙、先の見えない人生に色をつけたくて、誰にも頼らずさまよっていた。
その後、クロサキ君と出会えた。やりたいことを見つけられて、僕はマシロになれたんだ。
でも、お兄ちゃんを手にかけることだけは出来なくて、ずっと後回しにしちゃってた。
…だから、お兄ちゃん達を眠らせて地下室に閉じ込めてしまおうと思ったんだ。閉じ込めたあとは、鍵を溶かして、忘れてしまおうと思っていた。
でも、失敗しちゃった
きっと僕が弱かったから」
クロサキ「…なるほどな。レッドデビル☆カンパニーは元々マシロのものだったのか。マシロが育てた組織なら、強くて使える奴らばっかりだったのも、納得だぜ。
後回しにしてた理由は…
兄ちゃんが強いからか?優しいからか?
いや、言わなくてもいい。
…悪人の俺に家族の絆はわからねぇ。でも、マシロのことは愛してる。その気持ちだけは本物で、いつだってこの胸の中にある。
だから、俺に頼っちまえよ」
頼る?何を、どうやって?マシロは不思議そうな顔をした。
幸せだった過去、拭えないコンプレックス。
この足枷を外す方法なんてあるのだろうか。…考えすぎると溢れてしまう。表情を見られたくなくて、慌てて両手で顔を覆った。
イカパチ(マシロ)(……クロサキ君に、僕の気持ちなんてわかんないよ)
(ずっとずっと魔法が使えるお兄ちゃんの存在に苦しめられてきた。劣等感。最近は特に辛いんだ。)
(お兄ちゃんが魔法を使えなくなってからの方が、辛いんだ。)
(お兄ちゃんは魔法を使えなくなっても、自分を見失うことなく前を向いて、恋人と幸せそうにしている。)
(そんな姿を覗き見る度に、僕がどんな気持ちになってるかなんて、わからないよね?)
(ミニキス君はお兄ちゃんに
いったいどんな言葉と魔法をかけたの?)
(ずっと頑張ってきたものを突然失ってしまった悲しみと悔しさを、受け止めて、乗り越える方法なんて、あったの?)
(僕は、誰にも受け止めてもらえないんだよ。)
(心が宙に浮いていて、どんどん深く沈んで歪んで、元の形さえわからなくなっていく。)
(どこにもいけない。戻ることも、変わることも、怖いだけで、何も信じられない。)
(滅茶苦茶にして目を逸らして、今、何を見ればいいのかもわからない)
(誰もわかってくれない、
僕にもわかんないんだよ
わかんな…)
クロサキ「わかるぜ、マシロの気持ち」
クロサキは得意げにそう言った。そして顔を隠していたマシロの腕を握って、顔をあげさせ、強引に目を合わせた。
クロサキ「迷いそうな時は、俺を見ればいいんだ」
マシロの隠していた涙が床に落ちた。
顔を上げて見たクロサキは、いつもと変わらない表情をしていた。
クロサキ「その悲しみ、俺に預けてくれよ」
その瞬間だけは、マシロはクロサキの思考を推測することも、騙すことも出来なかった。純粋に恋をして、心を奪われていた。
救われた。そう思えた。
マシロ「受け止めてくれるの?僕の強さだけじゃなく、弱さも…隠し事だらけの過去も、許してくれるの?」
クロサキ「当たり前だろ!俺はマシロと一緒に、しぬまでデスゲームと恋を楽しみたいんだ。
愛し合いたいんだ。
マシロは悪に染まった俺の人生を抱きしめてくれた。生きる場所をプレゼントしてくれた。感謝してる。
イカパチでも、ふゆのでもねぇ、俺は今はマシロを愛してるから。
どんなことがあってもそばにいる。全てを捧げる覚悟はできてる。
まかせろ!
マシロの兄ちゃんは、マシロが感動するくらいの、最高のデスゲームで負かして
追い詰めて
俺がころしてやるよ!
マシロが不安になったときは、何度でも言ってやる。
マシロの居場所は俺の隣だけだって、心と体でわからせてやる!
俺からは逃げられねぇぜ♪」
イカパチ(マシロ)「クロサキ君…そんなの、優しすぎるよ。
やっぱり、僕にはクロサキ君しかいないんだ。
クロサキ君は僕の王子様なんだ♡♡
クロサキ君となら、どこまでもいける。どんな夢も叶えられる!
あは、はは… … 大好き。愛してる。
だから、お願い
どこにもいかないで」
― ― ― ― ―
ここはタコタコタコ星から遠く離れたところにある、「青色の不死の星」。
夜だからか、人はほとんど歩いていない。曇り空…天気予報によると、もうすぐ雨が降るらしい。
桜色の髪をした背の低い青年が、コンビニから出てきた。温かいカフェラテと白色のビニール袋を持っている。
お店の前で立ち止まり、袋を開けて、からあげを取り出す。もぐもぐ…。瞬く間に食べ終わり、飲み終わり、歩き出そうとしたその時。足元から聞きなれない音がした。
ピピピ…。見てみると、くまの形をしたロボットがいた。煙がでていて、今にも壊れてしまいそうなロボットは、ピピピ…!と青年に何かを伝えようとしている。
青年はくまのロボットに声をかけた。
「お前、どこから来たんだ?ボロボロじゃねぇか。迷子か?」
くまのロボットはピピピ…!と言った。
そして、目を光らせ地面に小さな写真を投影した。
写真には怖がっている様子のことおが写っている。画質は悪い。ボロボロの体が煙をあげているせいで、本来の性能を発揮できないようだ。
青年はそれを見て、数秒考えた後…ひらめいた!
「こ、この男は……!!
…知らねぇ奴だな〜
飼い主、探してやるから、それまでは俺ん家に来いよ」
青年はロボットを抱えた。
「どうしよっかな。
犬、飼ったことねぇからなぁ。
よし、皆に聞いてみるか〜♪」
【6話に続く】
… … … …
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荒花ぬぬ