あおいろの戦士「からすを犠牲にして星を守る」

俺は「星の化身」なんだ。

この星を背負って、人生を魂を背負って、背負い続けて、この星を守り続けていくって決めたんだ。

俺が星の化身でいる資格なんて、とっくにないことはわかってる。それでも、俺は逃げない。逃げたりしない。責任をとるためにも。そう、決めたんだ。

この星と向き合い続けることは、多分…俺の義務なんだ

ありすにも言われただろ。「この星とさくらの優しさに救われた人もたくさんいるんだよ。その人たちと未来のために、…負けないで。この星を守り続けてね」ってさ。

ささめきもさくまも、この星の民も、皆…赤色の歪な空の下で、俺に願ってるんだ。俺を信じてるんだ。

裏切れない、裏切りたくない。

わかってる、わかってるけど。

…そのためにからすの「オキ君をできるだけこの星から遠ざけて、オキ君を巻き込んで、わたしごと爆弾を爆発させる」なんて残酷な提案を受け入れて、からすを犠牲にするなんてしたくないよ。

だって!俺、からすに言ったんだ!

「からすが何だろうが何しようが、些細なこと、そんな爆弾だって俺が何とかしてやるし!適当に、俺に任せておけって!だから、からすは堂々と、この星の一員として俺に甘えていたらいいんだ!

俺のそばにいるだけでいいんだ

ここにいていいんだよ、俺が守ってやるから」

心の底から、本気で言ってんだよ…。

初めて会った時。俺たちの恋は、許されない恋だった。

星の化身の俺。侵略者のからす。

星とからすを天秤にかけて、俺はからすだけを守りたいと思った。

好きになった奴を殺したいと思うかよ、好きなら思えるわけねぇよ!って…思ってたのに、俺、変わっちまったんだ。からすと出会えたおかげで、からすに愛されたおかげで、大切なものが増えてしまったんだ。

からすは優しい顔で、俺を見つめている。あの時みたいに、泣いてしがみついてきてくれよ。俺のために、俺を困らせてくれよ。

愛してるのに。守りたいのに。

俺が、この星のために、からすを殺すんだ。

「ごめん、からす…」

死にかけの体で絞り出した声。

俺の声をきき、俺の表情をみたからすは、俺の決断を察したようで、一瞬だけ…サファイアブルーの瞳に影を落とした。ショックうけるよな、そりゃそうだよな、からすのことは諦めるって言ってるのと同じことだもんな。でも、すぐに微笑んで、いつもの楽しそうなからすに戻った。

「大丈夫だ、さくら君。今、わたしは嬉しいんだ。

さくら君に、自分とこの星の未来を諦めてほしくはなかったから。

別れというものは、突然やってくる。

それでも、ずっとわたしたちは、この不死の星で、誰にもまねできない絆で結ばれている恋人なんだ。お互い未来を怖がる必要なんてない。会えなくなってもわたしたちは、胸を張って生きていける、それだけは揺るがないぞ」

からすの言葉が遠くに聞こえた。

痛い、苦しい…言いたいこと、伝えたいこと、沢山あるのに。言葉がまとまらねぇ、声も出せねぇ。

もう体が限界なんだ。視界が滲んで、霞んでいく、意識が遠くなっていく。

いやだ、いやだよ…。

いかないで。

からすは俺の頬に手を添えて、強引に唇を重ねてきた。恋に溺れて深く深く重ねた熱は、変わらない安心感と優しさを運んできた。

好きだった、今も好きだと思った。何も変わらない。

窓の外の張りぼての月が俺達を笑っていたとしてもいい。

今だけ、許してくれよ。

ここは、俺とからすが幸せになるためだけにある、俺の宇宙だって、思わせてくれよ。

からすの顔を見たくて、俺は…最後の瞬きをした。

そのとき、からすの「漆黒の瞳」と目が合った。魔法の瞳、光を吸収する、闇の色。初めて見る色だった。寂しさや葛藤が薄れて、心がすっと軽くなった気がした。

「さようなら、さくら君」

俺の手は優しく握られていた。

やめてくれよ、その漆黒の瞳で何をした?

寂しい

…俺の意識は、途絶えた。

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意識が戻ってきた。重い瞼を持ち上げた…眩しいな。ベッドの上に寝かされているらしい。体の痛みや苦しさはない、さくまが治療してくれたのか?いや、そんなこと、考えてる場合じゃねぇ!!俺は慌てて起き上がって、立ち上がろうとした。けど、隣にいたささめきとさくまに止められて、また寝かされた。

「守り人さん、どこへ行くつもりよ!」「落ち着け、守り人様!」

「うるせぇ!離せ離せ!!星を守りに行かねぇと!!」

「よく聞いて、守り人さん。もう、終わったのよ」

ささめきが窓のカーテンを開ける…平穏な天国の景色が見えた。爽やかな青空が見えた。談笑してる、買い物してる、楽しそうな人達も見えた。何が起こったのかわからなくて、俺はささめきの顔を見た。ささめきは頼もしい表情をしたまま、泣いていた。

「守り人さんをこのベッドに寝かせてから、もう1年以上過ぎてるのよ。あの日。からすさんが意識のないあんたを抱えて天国に現れて…私にあんたを預けた。そして何も言わずに、オキを待たせていた家の中へ行った。オキを誘い出して二人で空に飛んでった…、私たち何もできなかった。遠い空で、爆発したのが見えて…。それから、オキもからすさんも戻ってこないのよ」

「…話がわからねぇ。星が守られたのならよかったけど、そのからすさんって誰だよ

ささめきとさくまは、驚いた顔をした。俺、なんか変なこと言ったか?でも安心した、オキからこの星を守りきれたんだな。本当に、よかった。これからも星の化身として、ささめきとさくまと一緒に、この星を守っていけるんだ。それにしても俺、無力だったな…もっと、強くなりたい。

そんな風に話す俺を見て、ささめきは俺から目をそらして呟いた。

「誰かしらね。

…守り人さんが目を覚まして私も安心した。いい天気だし、意外と元気そうだし、今日はごちそうを食べに行きましょうよ。どこ行く?からあげ食べ放題のお店はどう?最近見つけたの」

「現世のあの店か。我とささめきは、週一回は食べに行っているな。ドリンクバーもあるぞ。その後は、カフェにデザートも食べに行こう」

俺は「行こうぜ!腹いっぱい食って、心と体リフレッシュして、再スタートだ!」と、立ち上がった。

そうだ、この星を守っていくために、3人で作戦会議しようぜ♪

俺たち力を合わせれば、もっともっと優しく、そして強くなれる!

この星と魂を共にする覚悟はできてるぜ。これからも、この星を背負って、人生を魂を背負って、背負い続けて、この星を守り続けていくんだ

俺を甘く見るなよ、俺は…この星の守り人、星の化身なんだ!!

さようなら、さくら君。

どうしようもないわたしを、幸せ者にしてくれたのは、さくら君だった。

漆黒の瞳を揺らめかせて、最後にかけたのは、わたしのことを忘れる魔法だった。全部夢だったんだ。これでいいんだ。わたしは、これで。

わたしは降り立った星全てを散らしてきた侵略者。さくら君といるときも、いつも、残酷な未来と絶望が真後ろにある気がしていたんだ。…それがわたしの運命なんだ。わかっていた。それなのに、それでもさくら君といたいと思った。この宇宙で、この星で、さくら君と生きたいと思った。

わがままなわたしをどうか許してくれ。

もうそんなわがまま、思わないし言わないから。

死ぬのは怖いか?

わたしは、怖くない。仕方がないと思っている。

痛いのはきらい、寂しいのはもっときらい。

それでも、この星が散る光景を見るくらいなら、この選択が一番幸せなんだと思える。

さいごに、懐かしい声を、言葉を思い出した…

「星の民のため、星のため、宇宙のため。

その前にたった一人を幸せにしてみなさい」

夢のような話だったな。わたしはさくら君のナイトにはなれなかった。宇宙にとってのナイトにもなれなかった。

愛してる。

愛してた。

…わたしは宇宙に嫌われていたのだな。

死にたくない

Badend1/4 「ばくはつの夢」

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