【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】12話

「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」

小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲームがひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)

オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」公開☆

聴いてね(^_-)-☆ちゅ

読み始める前に

異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)

【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】12話 本文

デスゲーム会場は緑の炎に包まれて、花火のように大爆発した。

首ちょっきん台も、舞台も、炎に包まれて吹き飛んだ。皮膚がビリビリする熱さ。視界を焼き尽くす眩しさと強風。

その後金色の光が広がって、辺りを包み込んだ。それは、「時間の宝石」が効果を発揮した時の輝き。

緑色の炎はその光に巻き込まれた。光は、夜空の上まで広がった。まるで朝日のように、空の色を変えた後、花火のように消えた。

ーーーー

僕(オキ)はさくらを救うために、自分の手で自爆スイッチを押した。

協力者のロボット「タコダイオウ」と、さくらを巻き込んで大爆発し、時間の宝石が作動した。

ことお君に教えてもらったこと。…宇宙から宇宙へと移動するとき、瞬間移動をするのではなく、トンネルのような不思議な空間が出現して、それをくぐることによってワープするということを振り返る。

そのトンネルの名前は、時空のトンネル。

時間の宝石の力が発動すると、時空のトンネルの中に投げ出される。一般的な人間は意識を失っている状態だから、そのままトンネルをくぐり抜けて、別の宇宙に流れ着いてしまう。目覚めた頃には、二度と戻れなくなってしまう。

でも僕とタコダイオウはロボットだから、きっと大丈夫。トンネルの中で意識を保って、行動してみせる!時空のトンネル内でUターンして、三人で元の宇宙に帰るんだ。

それに、僕とタコダイオウはことお君が発明した、K-時空逆転マシーンを背負っている。K-時空逆転マシーンには、トンネル内で流れに逆らって行動しやすくするために、搭載した力を勢いよく逆噴射するジェット機能がある。

でもことお君は過保護だから、これまで侵略して手に入れた力、僕に搭載していた戦闘用エネルギー、星の化身として元々持っていた力…全部を搭載しちゃったみたい。

つまり、使い切ってしまったら、僕とことお君は弱体化してしまう。魔法も使えなくなるし、最弱の戦士になってしまうんだ。

ぐるぐると考えていたら、タコダイオウの大きな声が聞こえた。

タコダイオウ「オキさん!!起きてください!!」

僕はハッと目が覚めた。タコダイオウは僕と、気を失っているさくらを抱えて、必死の様子で飛んでいた。まるで竜巻の中にいるみたいだ。

見渡すと、カラフルで眩しい、キラめく景色が広がっている。ここが時空のトンネルか…!僕は直ぐに理解した。

トンネルの出口が見える。強い重力が、僕たちを出口へと連れていこうと、吹き荒れている。

激しく打ち付けられている様な感覚。体の表面がピリピリと剥がれていく。感じたことの無いスピードで体力が削られていく。

タコダイオウ「よかった、目が覚めた!何とかこの場にとどまっていますが、僕たちの力だけではUターンするのは厳しいです!ことおさんの発明品を使いましょう」

オキ「そうだね」

オキとタコダイオウはK-時空逆転マシーンのスイッチを入れた。

マシーンから緑の炎が吹き出した。緑色の発明の星の力が詰まった、ジェットエンジン。搭載した力が勢いよく逆噴射されて、オキとタコダイオウは、安定して飛行することができるようになった。

Uターンし、流れに逆らって、前へ前へと進もうとする。

オキ「タコダイオウ、行くよ!バランスを崩したら、あっという間に流されてしまいそう、…気をつけて」

タコダイオウ「…」

タコダイオウは申し訳なさそうにしながら、僕にさくらを押し付けた。僕はさくらを抱えて、「何?大丈夫?」と聞いた。

タコダイオウ「僕の機体は限界のようです。本体との通信が途切れ途切れになってきました。あと少しで僕は意識を失い、機能停止すると思います」

オキ「え!?」

タコダイオウ「大丈夫ですよ。ご心配なく。ことおさんが話していたでしょう?

この体は魔法で作られていて、僕の意思で遠隔操作して動かしているんです。本体はタコタコタコ星の中心に埋まっていますから、無事ですよ。

この体を宇宙の外に連れだせば、遠隔操作できなくなって、動かなくなってしまうことはわかっていました。好奇心はくすぐられましたが、あまり力になれずにすみません…。

既にタコタコタコ星に、新しい僕の体を用意しています。僕は一足先に帰って、星で待っていますね。」

タコダイオウは背負っていたK-時空逆転マシーンを外そうとした。自分の体は捨てて、マシーンだけを僕に渡すために。

僕はそれを止めた。

オキ「マシーンをふたつ背負うのは難しいよ、背中はひとつしかないんだ。君の体ごと背負うよ。」

タコダイオウ「背負わなくても、足や腕に取り付ければいいでしょう。少しでも軽くなる方がいいに決まっていますから。僕は痛くも痒くもありませんし…!」

僕はタコダイオウの体を引き寄せ、強引に肩に担いだ。さくらとタコダイオウを抱えて、頑張って飛ぶ。

オキ「気にしないで。三人で帰らなきゃ意味がないんだ。この発明品は三人用だし、ことお君の実力を証明するためにも、君の体を捨てて帰る訳にはいかない。

からすとも約束したんだ。他の人の宝ものを大切にするって。何となく…重さを減らすためとはいえ、君を捨てて帰るのは気が引ける」

タコダイオウ「も〜、わかりましたよ。必ず成功させてくださいね」と言った…その後、ガクンと揺れて、目を閉じて、動かなくなってしまった。

バランスをとりながら飛び続ける。トンネルの入口はまだ遠い、10メートル以上は離れているようにみえる。

ことお君とくまが待つ宇宙に帰りたい。

さくらを連れて帰りたい。誰にも出来なかったことを、成し遂げてみたい。

僕のメモリーを持ち帰りたい。ことお君にも時空のトンネルを見せてあげたい、教えてあげたい。

体と心を燃やす気持ちで、最大出力で飛びはじめた。バランスを崩すと機体へのダメージは大きくなるけれど、気にしていられない。大丈夫、ことお君に修理してもらえばいいんだ。

数メートル近付いた…しかし、嵐に揉まれて、元の位置に戻されてしまう。それでも諦めずに飛び続ける。

体の表面が剥がれて、塗装が剥がれて、ボロボロになっていく。それでも飛び続ける。

僕はK-時空逆転マシーンの小さなレバーに手をかけた。グッと力を入れて動かし、最大パワーで動かした。僕の体よりも大きな緑の炎が勢いよく吹き出して、僕の体を焦がしていく。よし、体が軽くなった、これで進める。

…もういい、全て使い切ってもいい。

トンネルの入口。光へと手を伸ばす。

飛べ!

進め!

進め!!

ことお君にもう一度、会いたいんだ。

ことお君のこと、もっと知りたいんだ。

はじめて出会った時、ことお君が話していた。「俺、オキを武器だなんて思ってないぜ?むしろ、逆?俺はオキに心酔してるし、崇めてる…オキは俺にとっての最愛の破壊の化身なんだ。」と。

…じゃあさ。もしも僕が何も破壊できないロボットになったらどうする?僕を愛し続けてくれる?

ことお君が僕のせいで、魔法も破壊もできない体になってしまっても、僕を愛し続けてくれる?

ことお君の妹を助ける夢はどうなるのかな。もう叶わないのかな。それでも、夢を追い続けるよって、これからも諦めないよって言ってくれる?

ー緑の炎が弱まっていくー

ことお君が宇宙を破壊しようとしているのは、妹「とおこ」を取り返すためらしい。

それを聞いてから、僕は気になって仕方がなくなったんだ。とおこと過ごしていた頃のことお君は、どんな人だったのかなって…。

僕にはわかるよ。優しい人だったんでしょ?

今の俺にも、守りたいものはあるんだな〜って言ってたよね。僕は、その時のことお君らしくない笑い方が好きだと思ったよ。とおこがいた時は、そんな笑い方をいつもしていたのかな。

ことお君の可愛い笑顔。その笑顔をもっと見たいと思った。

だから、とおこを取り返したいんだ。ことお君に日常を返してあげたいんだ。優しい心を返してあげたいんだ。それが、僕の新しい夢。時空のトンネルを研究すれば、絶対に…そのヒントを得られる。

だから、この作戦に挑戦したいと思ったんだ。チャンスだと思ったんだ。

ー手を伸ばすー

失敗するわけにはいかないんだ。失敗するなんて、考えてもいないんだよ。

ー緑の炎が消えていくー

ことお君のところへ帰らなきゃ…。だって。

ー消えていくー

だって!僕はことお君の、いちばん大切にしているものなのに!!

ーレバーを動かしても、緑の炎はもう出ないー

(失うわけには、いかないよ…。)

僕の体はボロボロになって、ついに飛ぶための機能が停止した。

音が聞こえなくなって、視界も真っ黒になって…。

僕は停止した。

ーーーー

ーー

なんだ!?もうしんじまったと思ってたのに、なぜか目が覚めた俺(さくら)。俺の体にはボロボロのオキとタコダイオウが引っかかっていた。

さくら「ぅおおおおーー!?何が起きてるんだ!?!?ここどこだよ!?!?」

謎のカラフルなトンネルの中で、離れないようにふたりの手を強く握る。でも、飛べる状況ではない。吹き荒れて、叩きつけられて、制御不能だ。

トンネルの出口はすぐそこだ。出たら何かわかるか?助かるか?

…いや、出たらダメな気がする。だってオキとタコダイオウは気を失うまで、逆らって飛んでたってことだろ?出ない方がいいんだよな?

でも、すまねぇ!俺の力じゃどうしようもねぇぜ!!

俺はもう、しんじまったつもりでいたから、よくわかんねぇし…いや、マジで、とにかくよくわかんねぇよ!

ふたりの手を離さないようにするだけで、精一杯だ。

出口までは、あと2メートルくらいしかない。ギリギリ持ちこたえているのは奇跡だ。いや、奇跡というか、目に見えない大きい手に服を摘まれていて、出口に吸い込まれないようにしてもらっているような気がする…(この感触、からすの手か?いや、そ、そんなわけねぇよな…?)。

でも、このままじゃ、翼がもげちまう!

さくら「誰か!!たすけてくれ!!」

俺に出来ることは、声を出すことくらいだ。

さくら「怖ぇ、…だ、誰かー!!!」

??「こっちだ、さくら君 。この手に捕まって!」

は?誰?人いるの?

振り返ると、トンネルの壁に小さな穴があいていた。誰かがその穴から手を伸ばしている様だ。よく見えねぇし、手が届くわけねえだろ。

??「やっぱり無理か、普通に考えて届かないよね。助けに行くしかないのか、ああもう、最悪、いけるかなぁ…」

その誰かは、魔法?で穴を、人間が通れるくらいのサイズに広げた。それから、電動キックボードみたいな乗り物に乗って、飛んできた。穴の向こうからは、たくさんのひまわりの花びらが入ってきて、舞い上がった。

その人物は必死の様子で操縦し、なんとか俺の腕を掴んだ。顔を見て驚いた。よく知っている男性だった。

さくら「ゆ、ゆずは先輩!?!?」

強風にもまれて、青い髪がボサボサになっている。それでも、見た瞬間わかった。…俺の昔のバイト先(お花屋さん)の元先輩、ゆずは先輩(柚子刃先輩)だ。

ゆずは先輩は元々青色の不死の星の中にあった、天国でも地獄でもない世界、「霊界」というところで暮らしていた。でも5年以上前に、俺があげた時間の宝石を使って、霊界ごと別の宇宙へ旅立っていったんだ。ゆずは先輩は自分だけの新しい宇宙に住んでいる。だから、二度と会うことはないだろうと思っていたのに、突然現れるなんて、どういうことだよ!?

ゆずは「話は後だ!ここは危険すぎる」

さくら「トンネルの入口の方向に進めるか?多分、そっちに行かなきゃいけねぇんだ!」

ゆずは「無理だよ、これ以上は進めない!一旦オレの霊界に戻るよ、霊界で作戦をたてよう!」

ゆずは先輩は空飛ぶ電動キックボードを操縦し、俺たちを穴の中…霊界へと連れていった。

ーーー

…霊界・ゆずはの宇宙…

穴の中をくぐり抜けて、俺(さくら)とゆずは先輩、寝たままのタコダイオウとオキは地面に投げ出された。壊れた電動キックボードみたいな乗り物が俺の頭に直撃する。痛ってぇ。

ひまわり畑が一面に広がっている。きれいだけど、何も無くて、広すぎて…少し不気味なのは、相変わらずだな。あれ?前に来た時はでっかい建物とか、遊園地とか、色々あった気がするけど…。

俺は煙をあげているふたりに「大丈夫か…?」と恐る恐る声をかける。返事はない。ていうか、タコダイオウもロボットだったのかよ。みんな知ってるのかな。

ゆずは「その二人は無事だよ。修理すれば動けるようになると思う。オレがやってみるよ。

本当にびっくりした…いつも通り霊界で過ごしていたら、さくら君の声が聞こえたんだ。はじめはどこにいるのかわからなかったけど、さくら君がオレがあげたネックレスをまだ着けてくれていたから、その気配を辿って見つけられたんだよ。

急遽霊界に穴をあけて、時空のトンネルに顔を出したんだ。はぁ、ヒヤヒヤした。宇宙の外に出たのは、はじめてだったからさ」

さくら「助かったぜ…ありがとう。ネックレスのことは忘れてた、つけっぱなししにしてたんだ…笑」

ゆずは「あはは、それでいいよ。それより、どうする?さくら君たちが元の宇宙に帰る方法を考えないとね。

そんなに不安そうな顔しないで。さくら君の仲間たちは大丈夫だよ。デスゲームはさくら君たちの爆発のせいで、めちゃくちゃになったみたいだし、からすさんやことおさん達の心配はいらないよ。マシロさんとクロサキさんはふたりでデスゲームをし続けているみたいだけどね。」

…ゆずは先輩には、何もかもがお見通しだ。

さくら「心の中を勝手に見るなよ!居心地わりぃ…あれ?でも、俺が知らないこともわかるのか?」

ゆずは「意識するだけで、頭の中に情報が流れ込んでくるんだよ。霊界の中だけじゃなく、外のことも、色んな宇宙や魔法のことも、この霊界が触れている様々な情報を知ってしまえるんだ。面白いけど、疲れる時もあるよ。でも、気になるから無視できなくて、見ちゃうというか。あはは、ごめんね。

…オレの話は後でいいや。まずはそのふたりを修理しよう。家に案内するよ。着いてきて」

ーーー

ゆずは先輩は、花好きの優しい先輩だった。仕事を教わって、休憩時間は一緒に過ごして、仕事が終わったあとも時々ふたりで遊んでいた。多分、友だちだった。

…今思えば、あの頃のゆずは先輩は、孤独感や寂しい気持ちを隠していたのだと思う。悩みを打ち明けたり、相談したりするタイプの人でもないから、我慢して、無理してたんだ。

ネガティブだったゆずは先輩は、いつも人を疑って生活していた。それで、「瞳の動きを見るだけで、嘘をを見抜く特技」を身に着けたけど、それも後ろ向きに作用して、ゆずは先輩の孤独感を増やしてしまっただけだった。

ゆずは先輩は、自分の体も、心も、自分の手で傷つけてしまっていた。俺は何も知らなかった。そしてゆずは先輩は当時恋人だった「ささめき」の「私のいのちをうばってほしい」という願いをきき、ささめきに刃物を向けたんだ。

寂しさと優しさと、歪んだ愛、どうしようもない闇が渦巻いて、ゆずは先輩は疲れきっていた。

ささめきは助かったけど、ゆずは先輩の心には深い傷ができた。本当のひとりぼっちになっちまったんだ。

その頃の俺はからすと出会う前で、思いやりなんて言葉も知らなくて、手を差し伸べることなんて出来なかった。

今の俺なら、力になれたのかなって思う。

その後ゆずは先輩は、とある悪霊に命を奪われ、霊界にさらわれて閉じ込められてしまった(それは元を辿ると俺のせいでもあるんだけどッ!まぁ、この話はいいや!)。その霊界とは、ここのことだ。永遠に存在することが出来る、ひまわり畑が広がる霊界。

ゆずは先輩はその悪霊「ふうが(風禍)」さんを愛した。自分の命を奪った悪霊を愛することで、孤独から救われたんだ。辛かった人生を、ふたりぼっちで、やり直すことにしたんだ。

ふうがさんは明るくて元気な性格だけど、霊界の外については詳しくない。ふうがさんは生前や過去の記憶を失っているんだ。そういう事情もあって、善いことや悪いことを判断するのが苦手。道徳心を大切にするタイプではないって感じ…?

ふうがさんは実は、ゆずは先輩だけではなく、これまでにたくさんの人の命を奪い、霊界に攫ってきた悪い霊だった。寂しさを埋めてくれる、友だちがほしかった…そういう理由で。失敗するごとに罪を犯した自分の記憶を消して、やり直して、また繰り返す。ふうがさんはゆずは先輩と出会って、その呪いから解放された。

生前のふうがさんの正体はささめきの兄「きらめき」。双子の兄「ゆらめき」と協力し、人の命を奪うことを生業としていた人物だった。(今のゆずは先輩はこのことを知っているのかな…わかんねぇけど、多分、ふうがさんには話してないと思う。)

そんなふうがさんも、ゆずは先輩のことをひたむきに愛している。

ゆずは先輩とふうがさんは、ふたりきりの孤独な霊界で、永遠を約束している仲だ。重い重いその性愛を、ふたりは「友情」と呼んでいる。

この霊界の時間の流れは特殊だから、ふたりはもう1500年以上一緒にいることになる…のか?。この霊界は100年くらい時が早く進む仕組みなんだ。俺にとっての15年は、ゆずは先輩にとっては、1500年って感覚なのかな。俺も長年存在してるからわかるんだけど、精神を保ってられるのってすげぇことだせ。(今のゆずは先輩は、色んな力を使えるから、時間も、好きに操れると思うけど、…実際どうしてるんだろうな?)

15年くらい前か…星の化身だった俺がゆずは先輩に会いに行った日、事件が起きた。ゆずは先輩が俺から力を横取りしちまったんだ!(脅されたり、嫌なことされたから、渡しちまったんだぜ☆)。星の化身の力を、半分も。

だから、ゆずは先輩は結構強い。努力して力を使いこなして、この霊界を掌握している、「霊界の化身」といえる存在なんだ。この霊界にあるものは全てゆずは先輩の手のひらの上にあって、自由自在って感じ。

ゆずは先輩は真剣に話していたなぁ…「この霊界をオレの意識の中に飲み込んでしまいたいんだ。この霊界の過去も未来も、全てがオレの手の中にあれば…ふうがをどんな運命からも守ることができる。ふうがの罪を、悲しみを一緒に背負って、助け合えるのは、この宇宙にオレしかいないんだ。どんな恨みを背負ってもいい、許してあげたいんだ、オレだけは」。

…そして、5年くらい前、俺はゆずは先輩に「時間の宝石」を渡しに行った。最後に会ったのはその時だ。時間の宝石をこの宇宙から消すためには消費する必要があった。時間の宝石を使って喜ぶやつなんて滅多にいない。でもゆずは先輩は、不死と永遠を欲しがっていたから、ピッタリだと思ったんだ。

ゆずは先輩は、青色の不死の星がほろびてしまったときに、霊界も一緒に消えてしまうことを恐れていた。時間の宝石の力を使い、ゆずは先輩とふうがさんは本当の意味で、不死と永遠の時間を得た。ゆずは先輩の霊界は、俺たちが住む宇宙から独立し、霊界そのものが新しい宇宙となった。

…多分ゆずは先輩は、誰よりも変化を恐れているんだ。いつも1人で戦っている。ゆずは先輩の壊れそうな心を壊れないように繋ぎとめている、たった一本の細い糸…それがふうがさんという存在。

ゆずは先輩は、「自分にはもう、ふうがしかない」って、強く強く思っている。

本当は優しいし、賢くて強いけど、色々抱え込みやすくて不器用。それが、ゆずは先輩。

俺は、もっと人に頼ればいいのに…って思う。その方が楽に生きられるし、ひとりで全部抱えて生きるのってしんどいじゃん。価値観の違いってやつ?

俺は昔は…ゆずは先輩の重くて湿った価値観が、苦手だった、間違ってると思ってた。でも、今の俺は違うかな。からすの人との接し方、話し方を見て、色々学んだんだ。大切にしているものは人それぞれだし、自分と合わなくても、わざわざ否定するのは良くないって思うようになった。

俺はゆずは先輩のことは、嫌いじゃない。(できるだけ関わりたくねぇけど。笑)

ーーー

タコダイオウとオキを抱えて、ゆずは先輩に着いていくと…一階建てのログハウスにたどり着いた。「お邪魔しまーす」と呟いて、中に入る。

ゆずは「…とりあえずベッドに寝かせてあげようか。寝室はこっちだよ。

今、透視して、ふたりの構造を理解した。星の化身が作ったロボットなだけあって、高度な魔法と技術が使われてる。勉強になるし、ちょっとテンションあがる…。でも、俺も負けてられない。長い年月、星の力や魔法を勉強して、扱ってきたんだ。修理してみせるよ。ふふ」

さくら「良かった、安心したぜ。」

寝室には一人用の小さなベッドがひとつだけ置かれていた。タコダイオウとオキを寝かせる。

そういや、ふうがさんは…?

独占欲MAX彼氏のゆずは先輩は、ふうがさんの思考や記憶をいつも見ている様子だったし、ふたり一緒にいないなんておかしいだろ。でも、寝室にはちいせぇベッドひとつしかねぇ…まさか、一緒に住んでないのか!?

どうしてゆずは先輩はふうがさんの話をしないのだろう。こ、怖くて聞けねぇ〜。

今は、オキとタコダイオウさんを任せて、気にしないようにしよう。絶対後で聞くけど。

ゆずは先輩は空中に色んな工具を作り出して、オキを修理しはじめた。

さくら「手伝えることとかある?」

ゆずは「いや、大丈夫。好きに過ごしてていいよ。冷蔵庫にお茶とかジュースもあるし…。俺の力で作り出した飲み物だけど、変なものは入ってないし、美味しいと思うよ。迷子になるから、家の外に出るのはおすすめしないけどね」

さくら「面白そうなもの探そうっと〜♪何百年熟成させて極めたチーズとか酒とか、レアで美味いやつあるかな!」

…なかった。

普通の家、部屋、物って感じで、面白いものは何もなかった。俺はリビングのソファでお茶を飲みながら、辺りを見渡した。やっぱり気になるものはない。

おかしいなぁ。最後に会った時のゆずは先輩とふうがさんは、長い時間をかけて究極のやきそばを作ったり、焼きそば味のカレーを作ったり、面白いことを色々していたのに。ふうがさんは絵を描くのが好きだった気がする…そういうのも、全部捨てちまったのか?

俺は探索ゲームをするノリで、棚についている引き出しを勝手に開けた。霊界を監視しているゆずは先輩には気が付かれるかもしれねえけど、本当に見られたらヤバいものはしっかり隠してるだろ!笑

引き出しの中にはスケッチブックが何冊か入っていた。

さくら「…このスケッチブックはなんだろう。」

開くと…

『お前だーれだ!

このスケッチブックに書かれている文字には霊力をかけているから、ゆずはには見えないぞ。もし見たなら、おれに会いに来いよ。このページを切り取って、紙飛行機を折って飛ばしてみろ!ついて行けば、おれに会えるぞ。

注意!紙飛行機を追いかけている間は絶対に振り返らないこと。ゆずはが追って来れないように、霊力をかけているから、立ち止まるとお前も迷子になっちまうぞ』

…これ、多分ふうがさんからのメッセージだ。ゆずは先輩から隠れているのか?

気になった俺はページを破りとって、適当に紙飛行機を折った。外に出て飛ばしてみると、空高くピューン!と飛んでいった。俺は慌てて追いかけた。あっちこっち飛び回って、翻弄される。紙飛行機の動きじゃねぇな!

しばらく紙飛行機についていくと、遠くにログハウスが見えた。なーんだ、同じ場所に戻ってきたのか。

扉を開けて「ただいま〜」と呟きながら部屋の中に入った。ゆずは先輩たちの様子を見るために寝室に向かう。ベッドを見て驚いた。

…そこにはふうがさんが眠っていた。

ここは同じ形をした、別のログハウスだったんだ。

さくら「ふうがさん!?な、なんでひとりでこんな所で寝てるんだ?大丈夫かよ、起きろって…」

名前を呼んでも、揺さぶっても、ふうがさんは目覚めない。

さくら「何があったんだ?とりあえず、ゆずは先輩の所へ連れて帰ってみるか」

ふうがさんを抱えて、ログハウスの外に出た。

帰り道は迷わなかった。ゆずは先輩がいるログハウスには、簡単に帰ることができた。

リビングのソファにふうがさんを座らせて、ゆずは先輩の様子を見に行くと…修理を終えたゆずは先輩が、疲れた顔をして、座り込んで眠っていた。タコダイオウはまだ眠っているみたいだったけど、オキは座っていた。

さくら「お、オキ…だ、大丈夫か?」

オキ「うん。さくらも無事だったんだね。ここはどこ?何があったのか教えてほしい」

俺はゆずは先輩と、この霊界(宇宙)について話した。オキは俺に、時空のトンネルやことおの作戦、タコダイオウの正体について教えてくれた。

さくら「なるほど、タコダイオウは目覚めないってことか。また会えるとわかってても、ちょっと寂しいな」

オキ「そうだね」

さくら「…。」

…(沈黙)

俺とオキは敵同士の関係。オキは俺の命を狙って毒を盛ったり、ボコボコにしてきた凶悪なヤツ。今更ぶん殴ったりはしねぇけど(からすがことおとオキ、この作戦を信じて待ってくれているなら、俺が文句言う訳にもいかねぇし…?大人の対応ってやつ?)、二人きりで話すのはキツイぜ。

でも、俺たちのために頑張って、疲れて寝ているゆずは先輩を起こすのも申し訳ねぇ気持ちになる…少し眠らせてやりたい。仕方ねぇ、オキと話して時間を潰すか。話題…話題ねぇかな…?

さくら「趣味とかあるのか?」

オキ「破壊することかな」

さくら「…」

空気読めねぇ奴だな(怒)!破壊の話はするなよ、怖いから!あーあ、嫌な気持ちになった…。

さくら「破壊とか侵略以外でなんかねぇの?俺は…最近は皿を集めることにハマってる。100円ショップに売ってる、手のひらより小さい皿が可愛いなって思って、気に入ったものがあったら買ってるんだ。…こんな話、興味ないか。オキは、自分の星にいる時はなにやってるんだよ」

オキ「破壊をしていない時は、くまとことお君を見てるよ」

さくら「ことおは普段何してるんだよ」

オキ「破壊してるよ」

さくら「それ以外で!」

オキ「裸になって武器を舐めたり、発明品を食べたり…」

さくら「…ぁ、あいつ、マジでヤバい奴なんだな…関わりたくねぇ」

オキ「ことお君は優しいよ」

さくら「そ、そうかよ…(引)」

その時、ゆずは先輩が起きた。良かった…。

ゆずは「ごめん、寝ちゃってた」

オキ「ゆずは、修理してくれてありがとう。剥がれた塗装もきれいにしてもらえて嬉しいよ」

さくら(こいつ、礼を言えるタイプだったんだな!?)

ゆずは「どういたしまして。」

オキ「早くことお君のところに帰らないと」

ゆずは「うん、オレも協力するよ。オキ君とさくら君、それからタコダイオウ君が元の宇宙に帰る方法を考えよう。作戦を考えて色々書き出してみよう…紙とペン持ってくるね」

ゆずは先輩が寝室を出ていく。待っていると、リビングから、悲鳴に似た大きな声「ふ、ふうが!!??」が聞こえた。

俺とオキもリビングに行くと、ソファで眠っているふうがを見つけて、腰を抜かしているゆずは先輩がいた。

俺は慌てて、ふうがさんを連れてきた経緯を話した。

オキ「この人がゆずはの恋人?なかなか起きないね」

さくら「なぁ、ゆずは先輩、ふうがさんとの間に何があったんだ?」

オキ「さくら、見てわからないの?フラれたんだと思うよ」

さくら「ばっ、バカッ、も、もっとオブラートに包めって…!!(汗)」

ゆずは「…」

ゆずははしくしくと泣き始めた。

さくら「オキ、お前が泣かしたんだから謝れよな…」

オキ「ごめんね、ゆずは」

さくら「もっと心を込めて言えって!」

ゆずは「大丈夫、気にしないで。ふうがを見つけてくれてありがとう。オレたちの問題に巻き込むのは申し訳ないから、隠していようと思ってたんだけど…話さないと心配かけちゃうよね」

さくら「マジで何があったんだよ。ゆずは先輩は、電動キックボードみたいな機械に乗って、霊界からでて、俺たちを助けてくれたんだ…時空のトンネルは危険なところだったのに、命がけで手を伸ばしてくれたんだ。力になりてぇし、俺たちを巻き込んでもいいから、話してくれよ。」

ゆずは「わかったよ、ありがとう。

…はぁ、ふうが。10年(体感)くらい前までは、一緒に暮らしていたし、愛し合っていたし、変わらず過ごしていたんだよ。

相変わらず、ケンカすることもあったけど。オレの愛が重すぎてキモかったり、束縛しすぎて迷惑かけたりして、ふうがが怒っちゃった感じ。あの時はふうがに、グーパンチでボコボコにされて、めちゃくちゃ怖かった…色々反省したよ。

正直に話し合って、ふたりで愛を確かめあった。ふうがも嬉しそうだった。ずっとこの幸せが続くように、霊界(宇宙)を、過去と未来を、ふうがを、オレを、守り続けようと、改めて決心したんだ。

そのためにももっと強くなりたいと思って、星の力や魔法をもっともっと勉強した。星の力と魔力、霊力、環境を絡ませて使うオレ独自の特別な魔法、霊魔法を研究して、鍛えていたんだ。(楽しいから、趣味としてハマっていたともいえる。)

ーでもある日の朝、日常は姿を変えたー

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