【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】12話

…体感10年前・寝室(霊界)…

目が覚めた。大きくてふかふかのベッドの感触。隣をみると、ふうがが眠っている。オレ(ゆずは)は空の色を「朝」に変えて、壁にかけている時計の針を9時に合わせた。

さぁ、今日がはじまる!天気は晴れにしよう。オレはこの霊界の化身。霊界の環境は、霊魔法で思い通り♪

いつもと変わらない朝。隣で眠っていたふうがも目を覚まし、体を起こした。

ふうが「ふぁ〜。おはよう、ゆずは」

ゆずは「おはよ」

ふうが「ゆずは、今日は何して遊ぶ?新しい花畑で遊ぶか?キノコを集めて料理して遊ぶか?絵を描くか?それとも庭に作ったジェットコースターと観覧車を改造して、もっと速くして遊ぶか?今日も、飽きて眠くなるまで、いっぱいいっぱい遊ぼうな!!

…いや、その前にご飯だな。腹減ったし。朝ごはん何にする?パンケーキ作るか?」

ゆずは「いいね♪メロンと生クリームをトッピングしよう。畑のメロン、収穫できるかな?」

ふうが「育ってると思うぞ。楽しみだな。バターとハチミツは冷蔵庫にあるぞ。おれは、パンケーキ十段、いや、二十段重ねて食べる!」

ゆずは「オレもそうする♪甘いものは毎日食べても飽きないし、おいしいね」

ふうがが「んっ」と唇をつきだした。オレはかわいいなぁと思いながら、キスをした。

ふうが「おれのこと好き?」

ゆずは「当たり前じゃん、大好き、愛してる」

ふうが「あはは、知ってる♪ゆずはは最高の友だちだぞ!愛してる!」

ふうがはふわりと体を空中に浮かせて、パジャマを脱いで、着替えた。お気に入りの黒いマントと、ひし形の帽子。元気に体を浮かせて、リビングへと飛んで行った。

オレはベッドの上でだらだらと服を脱ぎ、のんびり着替えた。

その時…。リビングから、ふうがのか細い声が聞こえた。その声は震えていて、掠れていた。

ふうが「ひぃ…た、たすけてくれ、ゆずは…」

オレは慌ててリビングへと向かった。状況を見るまで、何が起きたのか、予測することも、想像することも出来なかった。この霊界は、オレが管理している。いつもと違うことがあれば、気配を察知して、すぐに気が付くはずなのに。嫌な予感と、不安が広がる。

ゆずは「…!?」

リビングには知らない男性?がいた。背が高い、2mくらいある。風に吹かれているみたいに、長い髪がゆらゆらと、妖しく揺れている。下を向いているせいで、顔はよく見えない。

嗅いだことのない上品な香りが漂う。異世界の空気をまとっているそいつは、魔法の杖のようなものをふうがに突きつけて、ふうがを人質にしていた。

ゆずは「誰だ!?ふうがを離せ!!」

??「おやおや…それがモノを頼むときの態度ですか」

ふうが「こわい…」

くそ、どうして!?オレの霊界の中の出来事なのに、こいつの存在も、感情も、能力も、何も感じ取れない。何者なんだ、なんの目的で、どこから、どうやって入ってきたんだ…いや、だめだ、冷静にならないと。冷静に。

霊界の外…つまり、宇宙の外からやって来た存在であることは確かだろう。宇宙と宇宙を、自分の意思で移動できるなんて。時空のトンネルの中でも行き先を見定めて、安定して飛行できるくらいの、いや、もっとハイレベルの魔法使いに違いない。…油断するな、オレ。

ゆずは「…オレはゆずは。お願いだ、ふうがを開放してほしい。怖い思いをしたくないし、争いたくないんだ。話し合うから、目的を教えてほしい。頼むよ」

??「話し合い?…ふふ、いいでしょう。アナタには、ワタクシと話す権利を与えます。」

そいつはふうがを解放した。ふうががオレのところに戻ってくる、ぎゅっと抱き締めて、安心する。

ゆずは「この霊界に来た目的は?何者なんだ?どこから来たんだ?」

そいつは顔を上げた。夕焼けのような、赤い瞳がギロリと光った。見下ろされた瞬間、オレは動けなくなった。

これは魔法や星の力ではない。威圧、眼力、振る舞い…。オレはこいつが発している、プレッシャーに圧倒されている。恐怖を感じている。体が震えて動けなくなっているんだ。

こいつ、ただ者じゃない。

??「ワタクシの名前はイフ。覚えておきなさい。アナタが敬うべき、特別な存在の名前ですよ」

恐ろしい未知の存在が、目の前にいる。それでもオレはふうがと霊界を守りたいんだ。勇気を出して、イフの瞳の動きを見た。オレの嘘を見抜く特技…イフと名乗った未知の存在は、今のところ、嘘はついていないように見える。

イフ「ワタクシがここに来た目的を話しましょう。一度しか話しませんので。集中して聞くように。

…アナタが管理しているこの宇宙ですが、とある理由によって、存在するべきではないと判断いたしました。そのため、この宇宙はまもなく消去されます。

しかし、ゆずは。アナタは優秀な人材です。アナタは星の力を自力で手に入れ、研究を重ね、たったひとりで宇宙を発展させて意のままにしてきました。その力、精神。自信を持っても良いでしょう。評価いたします。

アナタの命の灯火を消してしまうのは、惜しいものです。

…生きたいでしょう?向上心があるならば、ワタクシに着いてきなさい。

全宇宙を管理しているワタクシの宇宙、ワタクシの組織へ。

「金魚八(きんぎょばち)」へ、案内いたしましょう。

ワタクシはアナタを歓迎します。ゆずは、アナタは選ばれたのです。

ポジションは既に用意しております。そのポジションは、ワタクシの「秘書」。

その能力を思いのままに発揮し、共にセカイを治めましょう」

イフはポケットから何かを取り出し、オレに差し出した。それは、星と金魚の模様が描かれた、不思議な手鏡だった。

受け取ってよく見てみると…「ゆずは」と、オレの名前が彫られている。危険性はなさそうだし、ただの鏡にしか見えない。でも、こんな状況で突然プレゼントされたんだ。ただの鏡ではないとは思う。けれど、詳しいことはわからない。

ゆずは(視線、息づかい、体の動き…嘘はついていないように見えるけど、信用してはいけないな。特殊な宇宙から来たのは確かだろうから、オレの嘘を見抜く特技なんて、当てにならない。きっと何か、裏があるんだ。オレには理解できない、難しい嘘が、隠れている気がする。確認しながら、もっと話を聞いてみよう。)

ゆずは「宇宙を管理しているリーダーが直々にやってきて、オレを連れて帰ろうとしてる。部下にして、働かせようとしてるってことで合ってる?」

イフ「その通り。理解が早くて助かります。その鏡は金魚八に所属する、特別な存在である証。大切に扱ってくださいね」

ゆずは「この鏡はすごくきれいだけど…。金魚八って何?聞いたことないな」

イフ「ワタクシがリーダーを務めている、組織のことです。金魚八は、個々の宇宙を管理し、全宇宙(セカイ)の平和を維持するための組織です。様々な宇宙から優秀な人材が集まり、構成されています。

狭い世界で生きている人間が、金魚八のスケールを想像するのは難しいとは思いますが、実際に目にすれば、賢いアナタなら直ぐに理解できるでしょう。

ふうがを連れてきても構いませんよ。アナタが最高のパフォーマンスを発揮するためには、その生き物が必要でしょうから。許可いたしますよ。

アナタが希望するなら金魚八に、この霊界と全く同じ空間を用意することも可能。快適に過ごせるよう、望み通り手配いたしましょう。」

イフがふうがを見た。ふうがはビクッとして、オレにしがみついた。

ふうが「…お前、なんだか怖いぞ。さっきおれのこといじめたし。ケガはしてねぇけど。」

ふうがは、おれはゆずはのオマケじゃないぞと、頬を膨らませた。

イフ「おやおや、怯えているのですか。ゆずはとふうが、二人の勇気を確かるための行為で、悪意はありません。未来から来た異次元の存在を前にしても、落ち着いて行動することができたおふたりと、その勇気を評価いたします。」

ふうが「評価されてもあんまり嬉しくないな…ゆずは、まさか、こいつの言うことをきくのか?」

ゆずは「…もう少し話を聞いてから考える。心配しないで」

ふうが「それ、見せてくれよ」

オレはふうがに手鏡を渡した。ふうがは「これ、手作りだと思う。木を削ってヤスリをかけて、色をつけて、…すごく丁寧に作られている、かっこいいな!」と、感心している。

イフ「そうでしょう?特別な力が宿っている大木の枝を拾って、ひとつひとつ制作しています。ゆずはと共に金魚八に来るのなら、アナタの名前を掘った手鏡も用意いたしますよ」

ふうが「お前が作ってるのか?すごいな!」

ゆずは「…気になっていることがあるんだけど。イフ、この霊界を消さないといけない理由って何?」

イフ「それは、宇宙の管理に関する、極めて重要な情報となりますので、この宇宙で話すことは出来ません。アナタが金魚八の一員となった後、お伝えいたしましょう。」

ゆずは「…極めて重要な情報?この霊界には何もないし、セカイを揺るがす情報や秘密があるとは思えないけど。だってこの霊界には、オレとふうがしかいないし。

もしかして、オレ、何かやっちゃった…?」

イフ「どうでしょう。心当たりはありますか?…しかし後悔する必要はありません。金魚八に所属する未来を手に入れたのですから、素直に喜ぶべきです。

ゆずは、アナタは選ばれた。それだけのことですよ」

ゆずは「え…何?霊界を消さなきゃいけない理由は、オレ自身にあるってことか?でもオレはどこにでもいる人間…の成れの果てだし。選ばれる理由は思いつかない。

注目するべきなのは、オレじゃなく、オレが扱う力の方か。

住むところと仕事を与えて待遇するって…、要するに、オレに余計なマネをされたくないから、手中に収めておきたいってことだよね?

…セカイを揺るがす可能性を秘めているオレの力ってなんだろう。霊魔法…霊界(宇宙)を作り替える力?記憶や心、能力を読む力?」

話しながら、探りを入れる。イフを注意深く観察する。

ここはふうがとオレのための、永遠の楽園。守り続けると決心しているんだ。はじめから、イフについていくつもりなんてない。どんな事情があろうと、諦めさせて追い返す、それだけだ。

立場を逆転させるために、隙を伺う。イフの言葉を深く考えて、その思惑を考察する。

オレの力はふうがとの永遠の愛を守るためにある。その力が、今、試されている。誰も知らない宇宙の支配者に、試されている。

…何だよ、この状況。

スリルがある。少しだけ、楽しくなってきた。

気持ちよくなってきた。だって、ああ…負ける気がしないや。

オレのふうがへの愛を超える力なんてない。魔法も権力も、オレには届かない。

オレが見るもの、感じるもの、全てが、オレの永遠の愛を叶えるための道具。

オレとふうがの決定権は、未来は、いつだってオレの手の中にある。

…何も、わかっていないんだな。

宇宙の外から来た害虫が、オレの宇宙に触るなよ。

イフ「ゆずは、余計な詮索は控えるべきですよ。あれこれ想像しても、この宇宙にいる限り、確かめる術はないのですから。ついてきなさい、この宇宙の真実を知りたいのでしょう。」

霊魔法…やっと試せる時が来た。

ゆずは「確かめる術はあるよ。その力を使って、オレが余計なことをすれば、アンタの顔色が変わるはずだからね。ふうが、オレに捕まっていて。試してみたいことがあるんだ」

オレは手を振りあげて、魔法を解き放った。

霊界の「時間」を操る魔法だ。

いつもは…朝と夜、空の色、時計の針を操って変えていただけ。実際の霊界の時は、時間の宝石の力で止めていた。いや、オレの力で止めていた。霊界に宿る時間の宝石の力なんて、今のオレにとっては体の一部、能力の一部みたいなもので、思い通りに操れるものだった。

時間が動かない、…それこそが永遠。そう信じて、ずっと守って来たけれど、オレとふうがの絶対的な愛の楽園を、外から来た権力者に、改変される訳にはいかないからね。今から解き放ってみせるよ。

100倍、いや200倍、300倍、400倍…もっともっともっと、加速させて、時を進める。朝と夜が高速で入れ替わり、点滅を繰り返して輝く空。はじめて見る景色だ、興奮する。

イフ「余計なマネをしやがって…。貴様、どうして今、時を操る力を使った!?心が読めるのか…不快、極まりないおこないですね。」

ゆずは「特別なことはしてないよ。イフ、自分のことを「未来から来た、異次元の存在」って話したよね。つまりセカイの中心は…金魚八は、「未来」にある。そう、予想しただけだ。

金魚八は遠い遠い未来にあるから、過去の出来事や難しい魔法、様々な宇宙の仕組みを知っている。それを武器にして、過去を支配している。だから、他の宇宙に、時を追い越されたら困る。

もしオレがこの霊界の時を遥か彼方の未来へと進めた後に、霊界の外、つまり宇宙の外に出たら、どうなるかな?

オレには金魚八の時代を超える力がある。…そういうこと?」

イフ「はぁ…、…」

ゆずは「何も言わないってことは、合ってる…のか?ただの想像だし、確かめようがないことだけど。

でもその表情をみたら、察するよ。アンタもオレと変わらない生き物だ。過去が変われば未来は変わる、変わり続ける。高度な技術や知識を持っているだけじゃ、一番になんてなれない。結局は使い方、使うやつの心次第…なのかもね。

だから、もっと慎重に行動した方がいいと思うよ。対等に話そうよ。オレを舐めてると未来が変わっちゃうかもしれないよ、アンタがいない未来にね」

イフは一歩後ずさり、オレを睨んだ。時を進める魔法を加速させる。もう、立場は入れ替わっている。

イフ「…目障りな人間。

アナタは優秀ですが、ワタクシを怒らせました。ワタクシの秘書になる前に、躾が必要のようですね。逆らった罰は、しっかりと受けていただきますよ。どのような罰なのかは、すぐに分かるでしょう。

自ら弱点を晒していることにも気が付かないまま、無鉄砲に行動するなんて、…本当に馬鹿な子。

日を改めて迎えにきますので。その頃には…アナタの心が入れ替わっておりますように」

イフは姿を消した。オレは安心した…宇宙を消去するとか、日を改めて迎えに来るとか言ってたし、心配事は増えたけど。霊界を元に戻して、ふうがの様子を見る。

ふうがの様子がおかしいことには、直ぐに気が付いた。ふうがはオレを見て、「お前、誰!?ここはどこだ!!??」って、混乱しはじめたんだ。

ふうが「怖い…何が起きたんだ、最悪だ」

ゆずは「ふ、ふうが?、落ち着いて。イフは帰ったし、もう大丈夫。イフのことについては、これから一緒に考えよう。あいつ、絶対悪いやつだよ…言うことを聞いてついていくつもりは無いし、オレがふうがを守るから。大丈夫」

ふうが「おれ、誘拐されたのか?まさか、ゆらめきの奴、ミスしたのか、足がついたのか?くそ、くそ…。ささめきは無事か…?おれを見るな!おれは何をされても、家族の情報は吐かない。早くころせ!」

ゆずは「ふ、ふうが、さっきから何言ってるの!?」

ふうが「しらばっくれるなよな。裏社会の危険な情報を、隠密に収集しなければ、おれの正体にはたどり着けないはずなんだ。何もかもを知っているくせに、適当なことを言うなよ。おれの名前は「きらめき」。…おれ達の夢と幸せを奪ったお前を許さない」

オレは衝撃を受けた。ふうがは、生前の人格を取り戻していた。別人になってしまったんだ…!

これがイフがオレに与えた罰?

ふうがの生前については、霊界の化身になってから知った。ふうがの正体は、裏社会で暗躍していた、悪の情報屋「きらめき」だ。双子の兄の「ゆらめき」と、妹「ささめき」と協力し、人の命を奪うことを生業としていた。きらめきは、実行犯であるゆらめきの指示役で、社会の闇に隠れた危険な存在だった。

きらめき、ゆらめき、ささめきは復讐されて、命を落とした。特に恨まれていたきらめきは、悪霊に変えられ、記憶を奪われ、霊界に閉じ込められた…それがふうがのはじまりなんだ。(ふうがは知らないことだけど)。

オレはきらめきに状況を説明したけれど、何もかもを信じてもらえなかった。家族に会わせろと怒鳴られて、数日経った。何も変わらない状況。

でもオレの言葉を聞き続けて、疲れ果てたきらめきは、やっと話をしてくれた。

きらめき「お前、自分の話をしてばかりで、おれの話は何も聞かないんだな」

ゆずは「…ご、ごめん。聞くよ」

きらめき「おれはずっと家族に会わせろと言っているんだ、それに答えろよ」

ゆずは「…ぅう。あんまり言いたくないけど、ふ…きらめきの兄弟はもう、命を落としてるよ。で、でもささめきは…」

きらめき「黙れ、もういい、黙れ!お前と友だちになるつもりはない!」

そして、きらめきはどこかに行ってしまった。オレは心が壊れてしまいそうなほど、辛くて寂しかったけど、イフの仕業だとわかっていたから、この現実と向き合うことにした。

今はひとりにした方がいいのかなって思って、冷静になるためにも、あえて探さないようにした…でも、やっぱり放ってはおけなくて、数日後、迎えに行ったんだ。

きらめきはオレが来るを待っていた…そんな様子だった。

きらめき「ふうがに戻りたいんだ。どうせ家族には会えない。だから、その方が、おれもお前も、幸せになれるだろ。不思議な力を使えるお前なら、おれの人格を元に戻せるんじゃないか?なんとかならないのかよ」

ゆずは「…いいの?ふうがの人格や記憶はオレがバックアップをとっているから、元に戻すのは簡単だけど。(上書き保存するイメージ)」

きらめき「心をバックアップしてるのか…?どうやって…いや、なんでバックアップなんかとってるんだよ…!?」

ゆずは「も、もし、心がこわれちゃった時に…戻せるように…ね(ふうがには内緒)」

きらめき「聞かなきゃ良かった。お前気持ち悪いぞ。…はぁ。でも、おれがここで目覚めたことはきっと、無意味なことじゃないと思う。今まで以上におれを幸せにしろよな。おれは強いから、お前なんかがいなくても幸せ者になれるだろうけど」

ゆずは「うん、それはまかせて。…。…あ、でも、どうしよう!?最近は特に変わったこともなかったし、平和に楽しく過ごしていたから、バックアップとってなかった。

最後のバックアップはいつのふうがだ!?…ヤバイヤバイ、オレが霊界の化身になったばかりの頃だ。1400年前…ぅうっぅう…泣」

きらめき「お前、バカだな。バックアップをとって情報を管理するのは、基本中の基本だろ!お母さんに教えて貰わなかったのか!?」

ゆずは「ぅうっぅう…ごめんなざぃ泣」

そして。きらめきはふうがの人格を取り戻した。でも1400年のものだったし、霊界の景色も全然違ったから…、オレは、またまたふうがに拒絶されたんだ。

ふうが「ここ、本当におれの霊界なのか!?景色が全然違う。ひまわり畑も無いし、知らない建物とか遊具が沢山ある。こんなこと、おかしい!!お前、本当にゆずはなのか!?偽物か!?何があったんだ!?」

ゆずは「本物だよ、信じてくれよ…。何があったのかというと、えっと、霊界にさくら君っていう星の化身がやって来て、オレが力を得て霊界の化身になって〜、それから1000年以上ふうがと過ごしていたんだけど、イフっていう怖いやつが来て〜、そしたらふうがが〜」

ふうが「もういい、うるさい!!!お前なんか、ゆずはじゃない!!!人格を上書き保存とか、なんかキモいし、もう、友だちやめる!お別れだ!おれは遠くに引っ越して、ひとりで遊んで過ごす。偽物のゆずはと過ごすくらいなら、その方がマシだ!!」

ゆずは「ぅうっぅう…いかないで…ぅう泣」

…ふうがはオレを振り払って、行ってしまった。オレは霊界の景色、環境を1400年前くらいのものに戻した。そして…10年近くふうがの帰りを待ちつづけた。

ふうがは霊界に散らばる霊力をかき集めて手に入れて、その力をオレから隠れるために使っていた。それが悲しくて…オレは、何も出来なかった。待つことしか、出来なかった。

ふうが…。寂しいよ…。」

ゆずは先輩は話しながら、ソファに座って眠り続けるふうがを撫で続けている。真っ白の顔色で、絶望していた。

さくら「想像以上に重い内容だったし、めちゃくちゃなことになってるじゃねぇか!!」

オキはうーん…と、考え事をしている。

オキ「…ねぇさくら。人格を上書きするってどう思う?ここにいるふうがは、元のふうがと同じ人物だって思う?」

さくら「ば、バカ!余計なこと言うなって、もっとオブラートに包んで発言しろッ、ゆずは先輩がふうがさんだと思っているなら、ふうがさんなんだよ…難しく考えるな。な?その話は後で聞いてやるから。

ゆ、ゆずは先輩。それで、どうしてふうがさんは眠っているんだ?」

ゆずは「わからない…。でも、想像できる。ふうがは、自分の意思で眠りについたんだと思う。オレに会いたくない気持ちと寂しい気持ちが、ふうがをそうさせたんだと思う。」

さくら「俺たちが元の宇宙に帰る方法だけじゃなく、ふうがさんやイフのことについても、しっかり話し合おうぜ。力を合わせれば、何かいいアイデアが思いつくかもしれねぇし。ゆずは先輩、俺たちに頼ってくれよ」

オキ「一緒に考えよう。面白そうだから、協力するよ」

ゆずは「ありがとう、さくら君、オキ君。頼らせてもらうよ」

さくら「とりあえず、外の空気でも吸って落ち着こうぜ。ほら、ハンカチ貸すから」

ゆずは先輩とオキと一緒に、家の外に出た。何とかなるかなぁ…なってくれ、頼む。悲しくてたまらねぇよ。

ーーー

皆が外に出て行ったのを確認した後、そっと起き上がり、ソファで眠っているふうがさんの元へと近付いた。

タコダイオウ「ふうがさん、寝たフリがお上手なんですね」

ふうが「…お、お前誰だ?バレてたのかよ、おれの寝たフリ」

僕(タコダイオウ)が「僕にはわかりましたよ、みなさまは騙されていましたが」と笑うと、ふうがさんも「あはは、お前も寝たフリしてたのか?」と笑った。

タコダイオウ「ええ。僕も寝たフリをしながら、みなさまの話を聞いていましたが…起き上がるタイミングを逃して、どうすればいいのかわからなくなってしまって、困っていたところだったんです」

ふうが「おれと似てるなぁ」

タコダイオウ「ふうがさん、本当は記憶を取り戻しているのでしょう?」

ふうが「…うん。イフが来たことも、おれが生前の人格になっちまったことも、ゆずはが昔のおれの心を上書き保存したことも、おれが家出して、怒っていたことも全部思い出したんだ。でもそれはつい最近のこと、数日前のことだった。」

ふうがさんはため息をつき、ポケットから手鏡を取り出した。木製の装飾をいじりながら、寂しそうに話している。

ふうが「隠れて心のバックアップをとっていたなんて、なんだか嫌だよな、キモいよな。心を上書き保存して作ったおれは、本物のおれなのかよ、おれ自身なのかよ、ゆずははそれでいいって思ってるのかよ…とかぐるぐる考えはじめたら、眠れなくなって…。数日なんてあっという間に過ぎた。

10年くらい寂しい思いさせちまったんだ、どうやって謝ればいいのかもわからねぇし、ゆずはと会って話す勇気が出なかった。

その代わりに、イフがムカつくってことばかり考えていた。

もしイフが霊界に来たら、おれ専用のログハウスにおびき寄せて、こらしめようと思って、ゆずはがいない隙にゆずはの家に忍び込んで、紙飛行機のワナを仕掛けたんだ。

でも実際に誰かの足音が近付いてきたらすごく怖くなって…こらしめることなんかできなくて、寝たフリをしちまったんだ。

昔に会ったことがあるさくらだとは思わなかったから、すごくびっくりした。…おれはそういう感じ。お前は?」

僕は、僕が星の化身であることや、社長のデスゲームのこと、時空のトンネルでの出来事を詳しく話し、困ったことになりましたね…と、ため息をついた。

タコダイオウ「僕の本体はタコタコタコ星の奥深くに埋まっていて、この体は魔法で遠隔操作されているだけの機械なんです。ここは宇宙の外で、遠隔操作の魔法も届いていないのに…、なぜか僕は目覚めてしまった。

恐らく、あのゆずはという方が、変な方法で修理をしてしまったので、誤作動し、新しい人格が宿ってしまったのだと思います。

突然起き上がったら、驚かせてしまうと思い、寝たフリをしていました。僕は何者なのか、ぐるぐる考えていたら、起き上がるタイミングを逃してしまった…そういう状況です」

ふうがさんは僕の手を取り、「それって、お前は今生まれたってことだよな。誕生日おめでとう」と笑った。

ふうが「お前はお前なんだ。自分はどこにもいないって思うより、ここにいるって思った方が幸せなんだぞ。新しい名前つけて、遊ぼう!」

タコダイオウ「そう言われましても…僕はタコダイオウですし…いや、でも、今はタコダイオウではないのかもしれませんね。本物のタコダイオウはタコタコタコ星にいますし」

ふうが「名前あった方がいいって。皆に自己紹介しづらいだろ。そうだ、おれが考えてやるよ!じゃあ、新しいタコダイオウって意味を込めて、ニュータコダイオウ、…にゅーたこだいおう…、ニュータコ、ニユータコ、ニユータコス、ユニータコス、……ユニタスっていうのはどうだ?」

タコダイオウ「ゆにたす?「ス」はどこから来たのですか?」

ふうが「そこは、お前のオリジナリティ!」

ユニタス「な、なるほど…ユニタス、ユニタス…悪くないですね。そうしましょう」

ふうが「ユニタスと話したら、勇気が湧いてきたぞ!

一緒に、ゆずはたちの所へ、話をしに行こう!

これ以上、ゆずはに寂しい思いをさせたくないし、イフに負けたくない。おれとゆずはは、愛し合っているし、強いんだ。

お前の顔みたら、皆も喜ぶと思うぞ。

星の化身だった経験があるユニタスとさくらが力を合わせれば、元の宇宙に戻る方法とか、イフが来ないようにする方法とか…いいアイデアが、色々思い浮かぶかもしれないな。オキも、頭が良さそうだし!」

ユニタス「そうですね、行きましょうか」

ーーー

ふうがとユニタスは家の外にでて、さくら、ゆずは、オキに声をかけた。

目を覚ました二人を見て、さくら達は驚いていたが、それぞれが本当のことを打ち明けると、安心した様子で、喜び合った。

ーーー

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