宇宙を支配するリーダーと連絡をとるなんて…皆、怯えながら、どうなることかと心配しながら、クロサキを見守っていた。
さくら(大丈夫なのか?)
ことお(…とおこ。)
マシロとタコパチは手を繋ぎながら不安そうにくっついている。
ピピピ…
クロサキ「イフ、聞こえるか?クロサキだ。」
ピピピ…
イフ「…忙しい時に…なんですか、クロサキ。
断念しますか?ふふ。反省して辛くなったらいつでも戻って来ていいですからね。仕事が溜まっているので、バカの手も借りたいところなのです。」
クロサキ「ちょっと声が聞きたかっただけだ♪」
イフ「何?このワタクシに暇つぶしで連絡をしたというのですか。しになさい。……まあいい。丁度話したいことがありましたので。今回は見逃しましょう。
ゆずはとふうがを始末しました。しかしワタクシとしたことが、肉体を損傷させてしまい…グッ…ました。
はぁ。今、本部で体を休めているのですが、仕事がまわらないので、今すぐ帰還してください。」
さくら(…始末って。嘘だよな?)
クロサキ「いいけど。その様子だと、俺の中継は観てないか。俺も仕事、失敗したんだ。失敗っていうか、やりたくない仕事だったんだ。」
イフ「…そうですか。アルコンスィエルの時のように、上手くやれないものかと期待しておりましたが、今回は不適任でしたか。能力が不足していたのですね。
深海の力は未知のもの。簡単には対抗できないということは、わかっておりました。この仕事の責任や負担は大きすぎる。アナタのような低能力魔法使いには処理しきれないのでしょう。
残念ですが、この仕事はワタクシが引き継ぎます。
…それよりも、もうひとつの仕事は?」
クロサキ「金魚八の幹部候補探しも、白紙に戻った。
あ、かえるは捕まえたから、何匹か持って帰るぜ!可愛いし、懐いたら言うことを聞くし、結構強いから、用心棒にはなると思うぜ」
イフ「…用心棒?用心棒…丁度いい。連れて帰って来なさい。幹部に相応しい人材は、引き続き探すように。」
クロサキ「かえるでいいのかよ。マジで人手不足なんだな。カチョーロチロムはまだ帰ってこないのか?」
イフ「ええ。カチョーロチロムの魂は残念ながら、消えてしまった可能性が高いでしょう。魔法の手鏡からの通信が途絶えてしまったのです。恐らく、時空のトンネルの中で、何かトラブルがあったのでしょう。」
クロサキ「マジかよ…しんじまったのかよ。襲われたのか?じゃあ、俺は今やってる仕事はやめて、その件について調査することにするよ。生きてる可能性だってあるだろ。こっちの仕事の方がやりがいあるぜ。新しい情報を手に入れたら連絡するから。
しばらくつまんねぇ仕事しかしねぇし、中継は切っといてくれ。
そういえば、とおこの様子はどうだ?とおこに頼みたいことがあるんだ。
とおこのの力があれば、カチョーロチロム並の人材を見つけ出して、連れて帰って来られそうなんだよ(多分)。とおこを深海の宇宙に送り届けてくれないか?
絶対逃げられないようにするけど、もしものことがあってもイフは最強だから、また直ぐに捕まえられるだろうし、問題ないだろ?注意して使うから、貸してくれよ。人材確保のために…!」
イフ「とおこを宇宙船に乗せて送り届けましょう。丁重に扱ってください。
思い上がらずに、行動を改めて、ワタクシの期待に応えてください。誠心誠意、仕事に取り組むように。」
ピピピ…。
クロサキは魔法の手鏡をポケットにしまい、「終わったぜ。こっちこいよ。もう中継されてないし、誰も見てないし聞いてないぜ」と声をかけた。
さくま「貴様やるな。上手く情報を聞き出し、穏便に解決したな。…聞き捨てならないこともあったが。」
マシロ(イカパチ)「クロサキ君、頑張ってお仕事してるんだね。
僕、クロサキ君のことを勝手に敵だと決めつけて、誤解してたよ。
金魚八に行ってみたいと思ってる好奇心旺盛なかえるを集めておくね」
さくら「なぁ!ゆずは先輩とふうがさん、イフにやられちまったのか!?俺、ふうがさんと約束したんだ。会いに行く、待ってるって…!」
クロサキ「イフが、ゆずはひとりと金魚八の戦力は同等だと話してたぜ。生きてる可能性は十分あるだろ。」
さくら「ゆずは先輩ってそんなに強いのかよ!?…きっと大丈夫だよな。ふたりなら上手くやれてるはずだ。」
ささめき「カチョーロチロムという人は優秀な魔法使いだったの?」
クロサキ「ああ。カチョーロチロムはイフの秘書で、右腕みたいな存在だった。金魚八が出来たばかりの頃から働き続けていたらしい。
過去に何かあったのか、カチョーロチロムが優しくてちょっと気が弱いからかは知らねぇけど、イフはあいつには特に冷たく接していたな…。ツラい目にあってたんじゃねぇかな…もしかしたら、手鏡を捨てて、逃げたのかもしれねぇ。
カチョーロチロムは、別次元で進化した人間と自己紹介しているのを聞いたことがある。生まれつきの超上級魔法使い、魔法の技術とセンスは別格だ。簡単にしぬような奴じゃない。イフから身を隠す能力があるのかもしれねぇな。」
ことおとオキは、「とおこが戻ってくる!」と喜び合っている。
からす「……」
からすは俯き、何かを考えている。
からす「さくら君、少しいいか?二人だけで話したいことがある」
さくら「いいけど…。ささめき〜!、からすがお腹壊したらしいから、ちょっと席外すぜ!」
ささめき「はーい、無理しないようにね」
からすとさくらはそそくさと、その場を後にした。
ーーー
マシロはタコパチに近付いて、「今、大丈夫?」と話しかけた。
タコパチ「うん、どうしたの?」
マシロ(イカパチ)「…お兄ちゃん、ありがとう。僕、やっぱり、お兄ちゃんみたいになりたい。」
タコパチ「うん、一緒に頑張ろうね♪
僕、もう一度、イカパチと夢を追いかけたい。
何でも癒せる回復魔法を追いかけたい。
ミニキスと出会って、僕は愛情と優しい回復魔法を知ったんだ。一瞬で病気や怪我を治すことだけが回復魔法じゃない。魔法が使えなくても、誰かを癒して回復させる方法は沢山あるということを知ったんだ。
…そういう話を、イカパチとクロサキと、ミニキスとフィカキスと、皆でやりたい!
お父さんとお母さんのところに帰ろう。
あ、そうだ!僕、消滅した星を復活させる大魔法を思いついたんだった。
まだ、設計図の段階なんだけど、一緒に見てくれる?地面に魔法陣を書いてみるよ…忘れちゃってるところもあるけど」
イカパチ「うん、僕にも見せて♪」
ーーー
ーー
皆から少し離れたところで、ユニタスは歩き回っていた。頭を抱えて「うーん、うーん」と悩んでいる。
悲しくて、歩くことも辛くなって立ち止まり、自分の胸に手を当てて下を向いた。この鼓動と違和感は、ひとりでは簡単に解決できそうにない。
ー恐ろしい予感がするー
ー未だ横たわったまま動かない、タコダイオウの機体ー
ー今起きている真実を、確めるのが怖いー
ーこんなこと、打ち明ける勇気がでないー
ユニタス「怖い…この宇宙に、僕の居場所なんて、無かったのかもしれない。」
ーそれって、お前は今生まれたってことだよな。誕生日おめでとうー
ーお前はお前なんだ。自分はどこにもいないって思うより、ここにいるって思った方が幸せなんだぞー
ーユニタスの名前はおれがつけたんだ。ユニタスにはおれがついてる、頼ってくれ!ー
ーおれが名前つけたのに、ひとりぼっちになっちまったら悲しいよー
ユニタス「ふうがさんがいてくれたらな。
…。勇気をだして…僕。皆のところへ戻らなければ。」
ーーー
ーー