【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】13話【次回で完結予定☆←勘違いでした。完結は次々回】

イフ「……カチョーロチロムの魂は残念ながら、消えてしまった可能性が高いでしょう。

魔法の手鏡からの通信が途絶えてしまったのです。恐らく、時空のトンネルの中で、何かトラブルがあったのでしょう。

…この件についても、調査中。詳細は後日、改めて報告します。」

カチョーロチロムのことを弱い生きものだと決めつけて見下しているイフにとって、「カチョーロチロムが鏡を捨てて裏切った」ということは、思い付きもしないような意外なことだった。カチョーロチロム…「カチョロ」が手鏡を捨ててほめと達とメイド喫茶で遊んでいることなんて、知る由もない。

その時、建物の外で仕事をしていた組織のメンバーが、慌てた様子で声を荒らげながら、部屋へ入ってきた。

金魚八のメンバーD「イフ様!ご報告があります!」

イフ「何事ですか」

金魚八のメンバーD「「コメット」を閉じ込めている建物に取り付けている魔法の南京錠を点検していた所、ヒビが入っていることを確認いたしました!コメットの魔力が外まで漏れており、劣化していたようで…今すぐ取り替えた方が宜しいかと」

イフ「何ですって!?…朝礼は終わりです。南京錠のスペアはあります、直ぐに向かいます。」

ーーー

深海の力は全能の魔法。指先ひとつで、過去も未来も物質も感情も…全宇宙の何もかもを思い通りに変えてしまえる。奇跡そのもの。

その力を完全な状態で扱えるのは、このセカイ(全宇宙)で、たったひとつのとある生き物だけ。

セカイ(全宇宙)を司る、魔法使い。

星の化身でも、宇宙の化身でもない、セカイの化身ともいえる存在。

その生き物の名前は

コメット

コメットは大昔から、金魚八本部の近くにある白色の建物に閉じ込められており、金魚八によって心と体を管理されている、秘密の存在だ。

金魚八の正体は、コメットを管理するための秘密組織なのだ。イフは、コメットに接触する力がある魔法使いを見つけては、組織の一員にしたり消してしまったりして、対処しているリーダーといえる。

金魚八のメンバーDとイフは、コメットが閉じ込められている建物に向かい、南京錠を取り替えた。

イフ「報告ありがとうございました。新しい魔法の南京錠のスペアを用意してください。古の魔法技術を研究し、もっと強力なものを作るのです。」

金魚八のメンバーD「はい」

メンバーが立ち去った時、イフが身につけているイヤホンから「声」が聞こえた。

建物の中にいるコメットの声だ。

コメット「イフ、大丈夫?返事をして。部屋の外から、大きな音がきこえたから、不安なんだ。」

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(補足:公開済みの短編小説「金魚八」の内容がはじまります。読んだことがある方は、スクロールして読み飛ばし、次のページに進んでください)

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ーコメットが閉じ込められている建物の中ー

冷たい床の上で眠っていたコメットは、部屋の外から金属が重なるようなガチャガチャとした音が聞こえて、飛び起きた。

イフが南京錠を取り替えた音だが、コメットにはわからない。

コメットは大昔に記憶を失っていた。

セカイを司る魔法使いであったことも、その自覚も、今のコメットには何も無いのだ。

コメットは怖い気持ちになりながら、部屋を見渡した。

狭い部屋にはいくつかの丸い水槽が置かれている。無機質な白い壁。窓はひとつも無い。

外に繋がる扉に視線をやると、相変わらずで。沢山の南京錠と御札の引っかかった鎖がぐるぐると巻かれている。扉には小さな鍵穴がある。

コメット(変わったことは、何もないよね。良かった

…ボクはこの部屋から出られない。永年ここにいる、ずっとずっとここにいる。

どうしてここにいるのか、どうしてここに来たのか。何も分からない。何も知らない。

けれど何となく分かることがあって、それは、過去のボクが、ボクの意思で、その記憶を消したんだろうということ。ここにやって来たのだろうということ。そうに違いない、そう思うからこそ、その記憶を取り戻したいとも思わない。)

コメットは隅に置かれた緑色に光るディスプレイをそっと抱き寄せた。ふつふつと沸く正体のわからない不安を慰めるように、心と体を預けるように。そして、語りかけた。

コメット「イフ、大丈夫?返事をして。部屋の外から、大きな音がきこえたから、不安なんだ。」

すると、ディスプレイに文字が浮かびあがり、機械的な低い音声で話しはじめた。

イフ「コメット様、落ち着いてクダさい。大きな音は、きっと、部屋の外にいるサソリの仕業デス。この部屋の中にいれば、コメット様は無事デスから。アンシンしてください。

大丈夫デスよ、コメット様にはワタクシがついていマス」

コメットのたった1人の話し相手、人工知能のイフ。

イフはコメットの恋人だ。

コメットはほっとした様子で、ディスプレイに頬擦りした。

コメット「ありがとう。1人きりだと心が潰れてしまいそう。でもイフがいてくれるから大丈夫。

きっとボクの記憶はボクが消したんだ…だから外のこと、知りたいけど、怖いんだ。知らない方が良かったって思ってしまうことが不安なんだ。もしまた記憶を消したくなったらどうしようって。

だって、記憶を消してしまったら…きっとイフのことも忘れてしまうから。それは嫌なんだ」

イフ「コメット様、ワタクシのことは心配しないでください。コメット様が記憶を消してしまってワタクシのことを忘れてしまっても、ワタクシは何度でもアナタの恋人になりマスよ。いつだって傍にいマスよ。

だから、アナタの思うままに…生きていてください。ワタクシはそれだけで十分なのデス」

コメット「イフは優しいね。本当に優しい。ボクより、ボクに優しくしてくれる。ボクは…幸せだよ」

恋心に身を委ねる。無機質なディスプレイに触れると、ボクと同じ心の温もりを感じた。真っ白な部屋を彩る緑色の光。その光に照らされて、支えられて、

コメット(…ボクはボクでいられるんだ。

ボクは何なんだろう

何のために存在しているのだろう

どうしてここにいるのだろう

そんな不安は全部、キミが取り除いてくれる

キミと話す時間はボクの宝物

…この部屋の何よりも大切な、宝物なんだ。

コメット「大好き、イフ…」

うとうとしてくる。ディスプレイにもたれかかって、ボクは目を閉じた。)

イフ「コメット様、大好きデスよ。おやすみなさい」

安心感に包まれて、眠りに落ちた。

ーーー

むかしむかし。とある国に大きな大きなサソリがうまれました。大きなサソリは他の生き物に怯えられ、誰にも愛されませんでした。

サソリは悲しみ、怒り狂い、生き物を次々と襲いました。逃げ惑う生き物たち。どんな武器も祈りも、大きな力を持つサソリには意味がありませんでした。

そのサソリはその国の全ての生き物を食べ、国の外へと向かいました。やがてサソリは他の生き物も食べ尽くし、食べ尽くし…その星を空っぽにしてしまいました。

サソリに襲われた最後の国、魔法使いの国。生き物達は力を合わせてひとつの王子様を小さなおうちに閉じ込めて、隔離しました。せめて王子様だけは助かってほしい、その願いを背負い、この星に残されたたったひとつの生き物。それがコメット。

外の世界は荒廃している。

イフは元々魔法使いの国で働いていた人工知能。サソリに襲われてから永い年月が過ぎて壊れてしまい、眠りについていたが、コメットの部屋にあったディスプレイで目覚め、コメットと出会い、恋人になった。

…コメットはイフが話したそんなおとぎ話を信じている。

イフはいつもこの耳に取り付けているイヤホンで、人工知能の振りをして、コメットに話しかけて、コメットを監視している。コメットはイフの優しい言葉を支えに生きている。

コメット(ボクが生きていることで救われる生き物がいるんだ、そう思えた。サソリの音は怖いけれど、ボク、頑張ってここで生きていくよ。ボクはひとりぼっちだけど、ひとりぼっちじゃない。

ボクは大丈夫。幸せだよ

ボクはここで生きていく。

この小さな世界がボクの全てなんだ。

キミがいるこの世界は、まるで宇宙の様に未知で溢れていて、幸せに溢れていて、かけがえのないものだから

ボクはまた、明日を楽しみにしていられるんだ。)

ーーー

ー金魚八(とある日の朝礼)ー

イフ「我々が住むセカイの中心には、全能の魔法使いがいます。

指先ひとつで、過去も未来も物質も感情も…全宇宙の何もかもを思い通りに変えてしまえる最強の生き物…。

そう…その生き物の名前は、コメット。

コメットは今日も問題なく、セカイを正常に維持し、生きていました。

セカイを司る神を管理するのが我々の目的であり使命です。

そのために我々は古くより封印の魔法を受け継いできました。

しかしその技術に自惚れてはなりません、我々は一時も油断してはならないのです。

コメットは危険です。

決して

外に出してはいけません。

意思を持たせてはなりません。

宇宙を生み出す力も、宇宙を操る力も、コメットの持つ全ての力は危険そのもので、我らのセカイの安寧を揺るがす可能性のある恐ろしいものなのです。

一息でセカイやワタクシたちの概念をねじ曲げてしまうような、想像もできない悪夢なのです。

今日も祈り捧げ努力しましょう。

このセカイの平穏を願って…。

ワタクシからは以上です」

解散し、皆、各々の持ち場に戻っていく。

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