「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」
小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。
「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)
過去話はこちらからどうぞ♪
(゜o゜)♡
読み始める前に
異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)
【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】7話 本文
マシロとクロサキはウキウキ気分で小型の宇宙船に乗り換える。ことおとオキも仕方なくついて行く。
双眼鏡を覗き込んで、さくらとからすに釘付けになっている…そんなふたりの様子を眺めながら、ことおとオキは疲れきった表情で、壁にもたれて座り込んでいた。
マシロ(イカパチ)「見てみて!あは♡あの子たち、僕たちのために星の衝突をとめてくれたよ。きっとゲームの開催が待ち遠しいんだ。
…さぁ、いくよ。ついてきて、クロサキ君!
青色の不死の星に着陸だ!」
クロサキ「ああ!この日のためにふたりで準備してきたよな。…ついに俺たちの夢、宇宙を舞台にしたデスゲームを開催できるんだ!最高の気分だぜ!!」
はしゃぐ2人を前に、ことおは恐る恐る声をかける。
ことお「俺たち、ここで寝ててもいいかい?疲れたよ、もう戦えないし動けない」
マシロ(イカパチ)「え?うん、いいよ。ゲームがはじまるまではね」
ことおとオキは目を合わせた。2人で行動できるチャンスだ。小さくガッツポーズをする。
ことお(全てを破壊することが俺の信条♪デスゲームは面白そうだけど、誰かの手のひらの上で転がるのはもうごめんだ。酷使されて疲れちゃったよ。スキを見て俺たちも着陸して、邪魔してやる!)
マシロとクロサキはパラシュートを背負い、宇宙船から飛び降りた。
しかし…。バリアがあるせいで、安全に着地できなさそうだ…。このまま降りれば、バリアに体が弾かれてしまうだろう。
クロサキ「だりぃなッ、くそ」
マシロ(イカパチ)「バリア邪魔だなぁ、とりあえず殴ってみようか」
マシロはポケットから特別製の手袋を取り出した。手のひらの部分には強力な吸盤が沢山ついている。いつも壁に張り付いて移動するときに使っているものだ。その手袋を楽しそうにはめた後、パラシュートを捨てて、迷いなくバリアに飛びついて、張り付いた。
クロサキは(バリアって手で触れるものなのか…?吸盤がくっつくのか?)と一瞬だけ不安になったが、慌ててマシロに付いていった。
マシロ(イカパチ)「も〜!イライラする〜☆いくらぶん殴っても壊せないや。バリアって、魔法って、本当にうざいよね☆」
クロサキ「このままじゃ拳が砕けちまう。どうすりゃいいんだ。魔法を前にして、何も出来ないなんて悔しいぜ」
マシロ(イカパチ)「ねぇクロサキ君、…この状況、うっとりしちゃうね♡僕、計画通りに行かない時が1番興奮しちゃうんだ♪
でも大丈夫。僕がバリアを消してみせるよ」
マシロは片手で体を支えながら、別のポケットから、小さなリモコンを取り出した。
マシロ(イカパチ)「うふふ…強い魔法(バリア)に守られているけど、内側はマシュマロみたいに柔らかい。強い魔法を使えても、それを操る人間が弱いなら、隙だらけってこと。
あの子たちは勘違いしてる。強い魔法を使ってるんじゃない、弱いから魔法に使われてるんだ。そして、もっと強い僕たちに…道具として使われる運命なんだ。
頭の悪い子たちに、教えてあげないとね♪」
マシロはクロサキにウインクをしてから、片手でリモコンを操作し始めた。
マシロ「クロサキ君はこの手鏡を持っていて。何のための手鏡なのかは…後でわかるよ。ふふ。」
クロサキは悪い笑みを抑えきれていないマシロの横顔をみて、「こんな顔見たら、もっと好きになっちまう…」と呟いた。
ーーーー
…青色の不死の星…
からすとさくらが公園に戻ってきた。ささめきと、くまが駆け寄る。
ささめき「すごいじゃない。さすが、この星の守り人ね」
さくら「ヘヘッ。魔法ってすげぇなぁ!このバリアがあれば、侵略者も入って来られないだろうし。…俺たちって最強じゃん!」
からす「えっへん♡さくら君は頼もしいなぁ〜♪」
ささめき「ねぇくま君。あの星は緑色の発明の星で間違いないの?」
くまはうなずいた。ささめきは「ふうん。建物も生き物の気配も何も無い、…まるで荒野。酷い有様ね…」と、視界いっぱいに広がる、緑色の発明の星を見据えた。
くまは(マシロたちが来る前から、この星は荒野だよ)と言いたかった。オキとことおが破壊し尽くす前は、緑色の発明の星も自然も人も建物も多い、豊かな星だった…。
ささめき「緑色の星をボロボロにした侵略者…いったいどんな奴なのかしら。ふたりとも、油断しないで。星をぶつけようとしてくる奴らなのよ、…バリアを突破してくるかもしれないわ」
その時、さくらが「あっ」と大きな声をあげた。バリアを指さし、慌てている。
さくら「あそこ!見ろよ!バリアの一部分がキラキラ光ってる。何かが反射してるのか?もしかして、誰かがいるのかもしれねぇ。
俺、確認してくる!」
ささめき「本当ね…よく見れば光ってる。さくら、目がいいのね」
さくらは光の正体を確認するために、飛び立った。
からす「さくら君!確認したらすぐ戻ってくるんだぞ。…?ん?くま君、どうしたんだ?抱っこか?」
からすの足元で、くまがヨチヨチと歩いている。
ささめき「何か伝えたいことがあるのかもしれないわね。さくらが見に行った侵略者について、何か知ってるのかも。」
からすは「どうしたのだい?」と、くまを抱いた。
くまの顔を覗き込んだ…その時
電気を帯びたくまの爪が
からすの両目を切り裂いた。
からす「ぃッ……!!!」
ささめき「どうしたの!?」
からすの腕から落ちたくまは、ピクリとも動かない…。
からすは顔を両手でおさえて座り込んだ。青色の血が指の間から溢れ出て、服と地面を濡らしていく。痛みに呼吸が乱れていく。
力を失い、星を覆っていたバリアは溶けるように消えた。
からす「ささめきちゃん…」
ささめき「しゃ、喋らないで!…大丈夫。さくまちゃんの回復魔法があれば、すぐに治せるわ。
さくまちゃん!さくまちゃん!…どこにいるの、からすさんと一緒にいたんじゃないの!?」
からす「時間がない、バリアも消えてしまったんだ。ささめきちゃん、わたしを置いてひとりで逃げるんだ。侵略者はわたしを狙ってきた…つまり、この星の秘密に気がついているんだ。一筋縄ではいかないだろう。
さくまちゃんは強い戦士だから、きっと大丈夫。回復魔法もあるんだ。信じよう。
だから早く。自分の身を守るんだ」
ささめき「バカ、あんたは誰が守るのよ。こんな所に置いていけば、しぬだけよ」
からす「わたしにはさくら君がついている。大丈夫、しんだりしない、約束する」
ささめき「…もう、わかったわよ!約束破ったら、許さないから!」
ささめきは、からすから離れて、名残惜しそうに走り去った。
その後ろ姿を見送って…ひとりぼっちになったからすはため息をついた。瞳を切り裂かれ、からすは魔法も星の力も使えなくなってしまっていた。
からす「さくら君、早く来てくれ。目が見えないんだ……
こわい、こわいよ」
ーーーー
…上空(マシロ・クロサキ)…
魔法の壁が溶けるように消えていく。足場を失い、マシロとクロサキは落ちていく。空中で手を取り合う。無計画なスカイダイビングをしながら、マシロは得意げな顔をしていた。
クロサキ「どうやってバリアを消したんだ!?」
マシロ(イカパチ)「このリモコンでロボットのくまを遠隔操作して、バリアの力の源だった星の化身…からす君を攻撃したんだ。
あのくまのロボットには、いつでも遠隔操作できるように、チップを埋め込んでいたんだよ。ことお君の考えなんて最初からわかってた。使い道が見つかってよかったね♪」
クロサキ「すげぇな!確実に仕留めるために、手鏡で月と緑の星の光を反射させて、1人をおびき寄せて、隙を作ったのか。尊敬するぜ!!」
マシロ(イカパチ)「ありがとう。僕はデスゲーム主催者だから、参加者の秘密を知ってるんだ♡
星の化身のからす君…あの子は邪魔なんだよ。魔法でも星の力でもない、変な力をもっているみたいだし。
あは☆血まみれになっちゃって、かわいそう。もう、力は使えないね。」
作戦は成功したが、マシロとクロサキは急降下している。硬い地面が迫ってくる。
クロサキ「地面に叩きつけられたら、大ケガをするかもしれねぇ…!予備のパラシュートを使おうぜ、…マシロ!どうしたんだ、早くパラシュートを!!」
マシロは珍しく慌てた表情をしている。
マシロ「ぁ、パラシュートが開かない!壊れちゃったかも!」
クロサキ「う、うそだろー!?!?」
ーーーー
…上空…
手鏡の光につられて、バリアのそばにやってきたさくら。バリアには「ドッキリ大成功」と描かれた張り紙が用意されていた。
さくら「やっべぇ、よくわかんねぇけど騙されたのか!?…早く戻らねぇと…からすが危ねぇかも!」
冷たい汗が流れる。嫌な予感に体が震える。
ーーーー
…緑色の発明の星(コックピット)…
ことおがコンピューターを楽しそうに操作していた。カタカタ…。
ことお「ハッキングして、マシロのパラシュートを開かなくしてあげたよ♪星の化身を舐めないでほしいね♪」
マシロとクロサキのパラシュートを作ったのは、ことおだった。小型化するために工夫し、電子部品をとりつけて、様々な機能を搭載していた。真面目に発明したものだったが、気が変わった。今は破壊&悪用したくてたまらない。
オキ「ことお君、マシロ☆モーターも壊して。早く脱出しよう!くまを助けて、自由にしてあげなくちゃ…」
ことお「任せろ〜♪……これでおっけー!マシロ☆モーターなんて、二度と動かせないもんね。
ん?小さなパソコンがある、これは使えそう。使えそうな物は色々持っていこう♪
さぁ、俺たちも行こう!青色の不死の星へ!」
コックピットの壁を蹴り、大胆に破壊する。穴が開いて、綺麗な青空が見えた。
オキはことおを背中にのせて、飛び立った。
ふと手元を見て…オキは気がついた。
身につけた覚えのない、金色の腕輪が輝いていた。
オキ「この腕輪、ことお君がつけたの?」
ことお「違うちがう、なにこれ。俺の腕にもついてる…マシロとクロサキの仕業か!?デスゲーム特有の逆らったら爆発するアイテムかもしれない…ああもう、今は考えないようにしようぜ!!」
オキ「そうだね、考えたくないもんね」
ーーーー
…空中(マシロとクロサキ)…
急降下しながら、クロサキは叫んだ。
クロサキ「マシロがパラシュートを使わねぇのなら、俺も使わねぇ!くっそ…きっと、ことおとオキが余計なことをしたんだ。舐めすぎたか!?」
マシロ(イカパチ)「使ってもいいのに…クロサキ君って本当に優しいね。そういうところが好き。愛されてるって実感できるよ」
クロサキ「この状況…ど、どうする?大ケガしたら、デスゲームを開催できないぜ。踏ん張って気合いで乗り越えるか!?ここは、俺たちの筋肉で…!!」
マシロ(イカパチ)「あは☆大丈夫♪僕にまかせて。
こういう時は魔法が便利なんだよ。
空を飛べるし、もし地面に叩きつけられてケガをしたとしても、回復魔法を使えばいい。本当に便利。
だから、僕たちは
「魔法を使う人間」を利用する」
マシロは悪人らしい顔をしていた。クロサキも同じことを考えていた。心を躍らせながら話し合い、作戦を共有する。
マシロは、ほんの少しだけ残っていた良心も忘れて、悪に染まった心で興奮していた。その姿をみて、クロサキは安心した。もう、兄に同情して、気持ちが揺らぐことはないんだ…そう、思うことができたから。
クロサキ「やっちまおうぜ!タコパチもミニキスも、青色の不死の星の化身も、その仲間たちも、ことおやオキも…皆、俺たちのに騙されて転がされる敗者、デスゲームの参加者なんだ!」
そしてマシロは大きく息を吸い込んで、叫んだ。とびきりかわいい、弟ボイスで。
マシロ(イカパチ)「助けてー!お兄ちゃん!」
……その瞬間。空が花火のように輝き、ワープ魔法を使うための魔法陣が浮かび上がった。魔法陣の中から、7色の光をかき分けて、ブレイブ☆タコキスが現れる。光の粒がはじけた。
ブレイブ☆タコキスはマシロとクロサキを抱きとめた。肩にはたこのフィカキスがしがみついている。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「大丈夫!?イカパチ!助けを求める声が聞こえた気がしたから、飛んできたよ。」
マシロ(イカパチ)「助けてくれてありがとう…怖かったぁ」
クロサキ「ふう~助かったぜ…」
青色の不死の星に降り立つ。
ブレイブ☆タコキスは変身を解いた。
タコパチは、震えるマシロ(イカパチ)を抱きしめた。弟のことを心配している様子だ。
タコパチ「高いところから落ちているのを見つけたときはびっくりした、怖い思いをしたね。でもイカパチが無事で良かった。もう大丈夫、僕たちがついてる」
マシロ(イカパチ)「…この間は酷いことしたり、酷いこと言っちゃって本当にごめんね。反省してて…でもどうやって謝ればいいのかわかんなくて…勇気がでなくて…。」
タコパチ「大丈夫だよ。謝ってくれてありがとう。ミニキスとフィカキスもきっと許してくれるよ。」
星空の下。ぎゅっと抱きしめあう兄弟。仲直りの、あたたかい涙がぽたぽたと落ちた。
しかしミニキスは疑っているようで…フィカキスを連れて、クロサキの袖を引っ張った。
ミニキス「ちょっとこっち来てや。話したいことがある」
タコパチとイカパチから少し離れた所に連れて行き、問い詰める。
ミニキス「君の名前なんやっけ…」
クロサキ「クロサキだ。助けてくれてありがとう。よろしくな、ミニキス、フィカキス♪」
ミニキス「よろしくな、じゃないねんクロサキ!オレは「ごめんね」では、許さへんからな!殴ったり、毒飲ませたり、銃撃ってきたりしたやん。説明してもらわな、納得できひん。助けてあげてんから、ちゃんと話してや。」
フィカキス「それな!今回も意味わからん!遠い星に来た理由も、高いところから落ちてた理由も説明してや!」
ミニキス「悪いことしようとしてたんやろ!」
クロサキは一瞬、焦っているような表情を作って、その後諦めたようにふぅ…と息を吐く。作戦通り、騙してやる…と思いながら、クロサキは悲しそうに話しはじめた。
クロサキ「…わかった、正直に話す。
全部俺のせいなんだ。
俺、実はタコタコタコ星の指名手配犯で、人をあやめたこともある悪人なんだ。家出していたマシロとたまたま出会って、恋をした…。でも俺に影響されて、マシロまで暴力をふるったり、大切な家族を傷付けようとしたりするようになってしまった。
俺が、マシロに悪い夢を見させてしまったんだ。
俺は改心して、自首することにした。今日は最後の思い出作りをするつもりだったんだ。この青色の不死の星に、旅行しに来ていたんだよ。
でも、飛行機からつき落とされてしまった。悪人の俺が飛行機に乗っているという情報が漏れて、星の侵略者だと勘違いされて、あんさつされかけたんだ」
人をあやめたことがある…クロサキの恐ろしい告白を前にして、ミニキスはビクッと震えた。フィカキスは眉間に皺を寄せながら、クロサキの作り話を聞いている。
背後から、「そういうことだったんだ…」というタコパチの声が聞こえた。タコパチとマシロも途中から聞いていたらしい。
タコパチは「もう〜!クロサキ!全部君が悪かったんだ!」と頬を膨らませた。
タコパチ「君がイカパチに近づかなければ、イカパチもミニキスもフィカキスも、僕も…危険な目にあわなかった。悲しい気持ちにもならなかった。本当に反省してるの!?イカパチは強くて優しい弟なんだ。素直でいい子なんだよ。悪の道に連れていかないでよ」
クロサキ「わ、わかってる。その通りだ、全部俺が悪い。心から反省してる、この通りだ!!」
クロサキはタコパチとミニキスに、深く頭をさげた。その後ゆっくりと体を動かして、地面に座りはじめた。土下座しようとしているクロサキを、タコパチは「しなくていいよッ」と慌ててとめた。
ミニキス「土下座って…見かけによらず、硬派な奴なんやな。はぁ…旅行なんかしてる場合ちゃうで。今すぐタコタコタコ星に帰って自首した方がええわ。イカパチさんのためにも、な?」
クロサキに注目しているミニキスとタコパチを、マシロは数歩離れたところから眺めていた。こらえきれずに笑ってしまい、こっそり舌をだした。
マシロ(イカパチ)(あは☆土下座しようとするなんて、クロサキ君…やるじゃん♪演技うまーい!お兄ちゃんもミニキス君も、クロサキ君の作り話を信じてくれたみたい。
後は僕が作戦通り「お願い」をするだけ♪
クロサキ君、どんな手段を使ってでも、この作戦を成功させて、夢を叶えたいんだよね。僕たちの行動力は、本気の証だよ。
しんじてる。僕たちは信じあってる。
嘘をついていても、騙していても…僕たちの心はひとつなんだ)
…あは☆
マシロはタコパチとミニキスにそっと近付き…それぞれの腕に、カチャっと金色の腕輪をはめた。
耳元でささやく様に、お願いをする。
マシロ(イカパチ)「僕たちを飛行機からつきおとそうとしたあんさつ者は、青色の不死の星の化身だったんだ。仲間もいたよ。
狙われているのは、クロサキ君だけじゃない。星の化身は僕のことも悪人だと思い込んでいて、ころそうとしてるんだ。タコタコタコ星まで追いかけて来そうな雰囲気だったよ。僕たちは魔法が使えないから、きっと逃げ切れない。
だから、お願い。助けてほしいんだ!」
タコパチ「…わかった。僕たちが青色の星の化身と会って、事情を説明してくるよ。星の化身を見つけるのは得意なんだ。」
マシロ(イカパチ)「ありがとう。星の化身は、我を忘れて怒ってた。もしかしたら戦うことになるかも…それでも僕を守ってくれる?」
タコパチ「もちろんだよ。戦うことになっても、僕とミニキスは負けない。星の化身にしっかり話して伝えるよ。ミニキス…いいよね?」
ミニキス「出来れば戦いたくないし、話し合いたいけど…。タコパチはずっとイカパチさんを心配して、仲がいい兄弟に戻るために努力してたんや。その気持ちは痛いほど伝わってるから…オレも協力するわ。全部解決して、皆でタコタコタコ星に帰ろうや」
フィカキスは不安そうにしている。
フィカキス「オレは元星の化身やから知ってるんやけど…青色の不死の星は、3000年以上続く最強の星やねん。タコパチも侵略してたんやし、噂くらい聞いた事あるやろ?宇宙で1番大きな星の力を持っているって言われてる。やから、正面から戦うのはやめておいた方がいいかもしれへん。
しかも、この星、なんかおかしい。
星と星がぶつかりそうなくらい近くにあるやろ。…意味わからんし、物騒やわ。」
ミニキス「…オレもそう思う。タコパチ、早く終わらせてタコタコタコ星に帰るで。」
タコパチ「うん。じゃあ、星の化身の居場所を調べて、話し合いに行こう!イカパチとクロサキは旅行に来ていただけ。侵略するつもりはないし、反省してるから、見逃してほしい!って伝えよう。
イカパチたちは安全なところで待っててね。」
変身して飛び立とうとした時、ミニキスは自分の腕に、知らない金色の腕輪がついていることに気がついた。タコパチの腕にもある。いつの間に…?
マシロは「それ、いいでしょ。僕からのプレゼントだよ」と微笑んだ。
そして、「そうそう。これ、星の化身が落としていったんだ。この星の重要なアイテムかもしれない。返してあげて。」と小さなリモコンと手鏡を握らせた。
…さくらを騙した時に使った道具だ。
タコパチとミニキスは、道具をポケットに入れて、ブレイブ☆タコキスに変身し、飛び立って行った。
その後ろ姿を見送った後、マシロとクロサキはお互いの顔を見てニヤリと笑った。作戦は簡単に成功した。
ブレイブ☆タコキスは、さくらとからすのところへ向かうはずだ。大ケガをしているからすを見つけて大混乱しているさくらと出会うことになる。
くまを操作した小さなリモコンや手鏡を見せてしまえば…。何も知らないさくらは、ブレイブ☆タコキスが、星をぶつけようとしたり、からすに大ケガを負わせたりした侵略者だと誤解するだろう。ケンカになって、戦うことになるはずだ。
デスゲームの準備をする時間を稼げる上に、参加者の体力を消耗させることもできる。
そして、隙だらけのタコパチとミニキスに、金色の腕輪を取り付けることもできた。あの腕輪は今回のデスゲームのためにクロサキが発明した、恐ろしいアイテムだ。
マシロ(イカパチ)「僕は緑色の発明の星と青色の不死の星の中間地点にデスゲームの舞台を設営するよ。クロサキ君より僕の方が体力あるし、まかせて♪
最後に残った仕事は…クロサキ君に任せてもいい?やりたがってたし、タイミングもいい頃だと思うから。
さくら君とからす君にも金色の腕輪を付ければ、準備完了だ♪いつでもゲームをはじめられるね。」
クロサキ「まかせてくれ!さあ行こう」
マシロとクロサキは軽く手を振り合い、別々の方向へと走り去った。
ーーーー
…青色の不死の星…
さくらが公園に戻ってくる。そこにはくまに顔を切られて、血塗れになったからすが倒れていた。慌ててからすを抱き起こすが、からすはぐったりとしていた。くまはいつの間にかいなくなっていた。
さくら「からす!!返事しろよ、からす…!!あぁ、全部俺のせいだ、俺がバリアを見に行ったから!からす、からす…ごめん、俺、全然頼りにならねぇ…なんにも、守れねぇ…ぅう」
さくらの涙がからすの頬に落ちる。大好きな人の泣き声を聞いて、からすは目を覚ました。視界は黒色のままだったが、「わたしは大丈夫だ」と呟いて、さくらの頬を両手で包み込んだ。
からす「さくら君は悪くない。勇気を出して、バリアを見に行ってくれたのだから。それで、あの光は何だったんだ?」
さくら「…わからない。でもドッキリ大成功って書かれてた。光は俺をおびき寄せるためのワナだったんだ。多分、鏡とか…そういう物を反射させてたんだと思う。からすこそ、何があったんだよ!」
からす「くま君が近くに倒れているだろう?…あれ?いない。どこかに行ってしまったのかな?突然目の色が変わって、襲ってきたんだ。まるで誰かに、リモコンで操作されているような動きだった。
きっと…侵略者はわたしを攻撃するために、さくら君を誘い出したんだ。星の化身がわたしであることも知っているはず…難しい魔法や星の力を使えるんだと思う。未知の強敵だ。
いつ侵略者がやって来てもおかしくない。油断しないようにしよう。
ささめきちゃんには逃げてもらったが…。この後のことは何も考えていない。さくまちゃんも、どこにいるのかわからないんだ。
わたしは体が丈夫だから、この程度の傷でしんじゃったりしない。でも痛みには弱いから、クラクラしてるんだ」
さくら「わかった。お、俺が何とかする。でも、俺一人で何ができるんだよ。俺、戦うことも頭使うことも、話すことも、全部苦手なのに…。」
情けなくてたまらない。込み上げてくるのは、自分への怒り、大切な人を傷付けた侵略者への怒り。そして悲しみ。
さくら「からす…、からす?」
からすは力をなくし、ぐったりとしていた。強い痛みのせいで、気を失ってしまったようだ。早く回復魔法を使えるさくまと合流しなければ…。
さくら「怖くなんかねぇ、諦めたりしねぇ。からすとこの星は俺が守る。約束する…!」
さくらは眠るからすの頭を撫でた。
さくら「俺も回復魔法を使えたらなぁ…あんなに複雑で難しいこと、出来る気がしねぇけど…。でも応急処置の仕方もわからなくて、なにもできない自分には、ガッカリしてる」
その時…上空から、見慣れない魔法使いの青年が降りてきた。肩にはゆるキャラのようなタコがしがみついている。彼がまとう空気から、青色の不死の星にはない魔力と、緊張を感じた。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「見つけた!君がこの星の化身?僕はタコタコタコ星から来たタコパチ。そしてミニキスとフィカキス。僕とミニキスは魔法を使うために、一時的に体を共有しているんだ。
大丈夫、戦うつもりはない。侵略しに来た訳でもない。僕たちは話し合いに来たんだよ。」
さくら「…なんだお前!あっち行けよ、今は他の星から来た奴と話す余裕なんかねぇんだ!!」
フィカキス「…ぇ!ミニキス、タコパチ、人が倒れてるで!」
すやすや眠っているからすを見つけて、ブレイブ☆タコキス、フィカキスは、困惑した。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「…!、大ケガしてるやん!何があったん?今すぐ回復魔法を使った方がええわ…!」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「僕たちにまかせて。僕たちは回復魔法が得意なんだ」
さくら「からすに触るな!!」
さくらは思わず、ブレイブ☆タコキスを、力いっぱい押した。バランスを崩し、ブレイブ☆タコキスは地面に転んだ。
さくらは自分の心臓の音が早まるのを感じていた。惑わされるな、流されるな。今、この瞬間も、油断していたら危なかったんだ。回復魔法を使うふりをして、からすの命を奪おうとしていたかもしれなかったんだ。怖くて、怖くてたまらない。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「いてて…。もう!話を聞いてよ。今日飛行機に乗っていた人を突き落として、あんさつしようとしたでしょ?実はあの二人は侵略をしに来たわけじゃないんだ。悪いことをした人だけど、今回は旅行しに来ていただけで、僕たちの大切な仲間なんだよ。だから、見逃してあげてほしいんだ」
さくら「何の話してんだ??意味わかんねぇ、混乱させる作戦かよ!卑怯な手ばっかり使いやがって…」
クロサキの作り話を信じているブレイブ☆タコキスと、ブレイブ☆タコキスこそが侵略者だと疑っているさくら。お互いの話が噛み合うことはない。マシロとクロサキに踊らされているだなんて、思いもしない。
起き上がろうとしたブレイブ☆タコキスのポケットから、小さなリモコンと手鏡が転がり落ちた。マシロが、星の化身の忘れ物だと話していた道具だ。
さくら「その道具はッ…!!!お前…!!!」
それをみてさくらは確信した。きっと、その手鏡を反射させた光で自分をおびき寄せて、そのリモコンでくまを操作してからすを攻撃したんだ。
星をぶつけて、からすの命を奪って、侵略しようとしてきた強敵。卑怯で残酷な魔法使いが目の前にいる。
…さくらは恐れを捨てて、心の炎を燃やして決意した。
守るために戦うことを。
先手必勝だ!さくらは夜風を切り裂くようなスピードで純白の翼を広げた。魔力を足に集めて、ブレイブ☆タコキスを蹴り飛ばす。
ブレイブ☆タコキスは公園の端まで吹っ飛んで、太い木の幹に叩きつけられた。衝撃で変身は解けてしまい、タコパチとミニキスの体はそれぞれ冷たい地面に投げ出された。
ぽよーんと弾んだフィカキスは、草むらの中に転がった。
さくらは2人の様子を伺いながら、ゆっくりと近付いていく。次の攻撃に備えて、両手に力を込めた。
ミニキス「痛ッ…なんやあいつ!すごいパワーや…タコパチ、どうする?逃げた方がええんちゃう?」
タコパチ「あんなに早いんだよ、走っても追いつかれるよ。変身して高速移動しないと逃げきれないと思う!」
タコパチとミニキスはブレイブ☆タコキスに変身しなければ、魔法を使えない。ミニキスだけが魔力を持っており、タコパチだけが魔法の使い方を知っている。だから、力を合わせる必要があるのだ。
しかし今は、変身をしている余裕なんてない。
2人は手を繋いで、簡易的に力を合わせた。本来の力は発揮できないが、それでも簡単な魔法を使うことはできそうだ。
ミニキス「そうやんな…仕方ない、一発だけ攻撃して、隙を作って変身するか?」
タコパチ「そうしよう。ちょっとだけ燃やしちゃおうか♪」
タコパチとミニキスは手を繋いだまま立ち上がった。
タコパチ「食らえ〜!
タコパチ☆ファイヤー!!」
タコパチの右手から、炎が吹き出した。それは火炎の渦となり、さくらだけをめがけて一直線に放たれた。
さくら「ぉわッ!!…でも、負けねぇ!!」
さくらは大きなバリアを作り、その攻撃を受け止めた。
バリアは激しく燃えて、広がり、炎攻撃の威力を何倍も膨らませていく。
そしてさくらは、タコパチ☆ファイヤーを
タコパチにうち返した。
さくら「ヘヘッ、これでどうだ!」
タコパチ「えっ、…キャー!」
タコパチは炎攻撃を体全体で受け止めて、倒れてしまった。耐火性の衣装を着ていたため、火傷は負わなかったが、衝撃は凄まじかった。
ミニキス「た、タコパチ!大丈夫か!」
タコパチはお腹をおさえて、苦しそうに咳をした。咳をする度に赤色の液体が飛び散り、顔と服、地面を汚した。
タコパチ「体の中がグルグルして苦しい…でも、こんなの慣れっこだから、大丈夫…」
しかしタコパチの顔色は悪くなっていく。
タコパチ「ぅ、……なんだか、疲れ、ちゃった、な…」
口の端から、赤色が流れ出す。目や鼻からも、ドロドロと止まらなくなった。タコパチは体に力が入らなくなって、ミニキスの胸の中に倒れた。
ミニキス「タコパチ…!」
フィカキスが短い手足を一生懸命動かして、背の高い草花をかき分けて現れる。
フィカキス「ヤバい!あの星の化身、ただタコパチ☆ファイヤーを強力にして、跳ね返して来たわけじゃないみたいや!タコパチがやられた攻撃には、あいつが作ったバリアの破片が混ざってた。透明の刃物みたいなバリアが、炎と混ざってタコパチの体を貫いたんや!
それを狙って、わざと貧弱なバリアを作ったんやと思う。あいつは本気でオレらをころそうとしてきたんや…!!
でも、タコパチは大丈夫、ちゃんと息をしてるし。
ミニキス、なんとかこの状況を切り抜けて三人で逃げるで!」
さくら「は??そこのタコ!頑張ってバリア作ったのに…貧弱とか言うんじゃねぇよ!!ころそうとなんかしてねぇし!身を守ろうとしたら、たまたま跳ね返ったんだ。
そもそも、さきにころそうとしてきたのはお前らの方だろ!緑色の発明の星をぶつけようとしたり、星の化身のからすに大ケガさせて命を奪おうとしたんだ。
星を侵略したら、たくさんの星の民が消えてしまうんだ。大切な人を守りたいのなら、他の星に住む人の命も大切にした方がいいと思うぜ!ばーか!」
フィカキス「うそやろ、そういうことやったんか。
なぁ、ミニキス!
多分、オレら、イカパチとクロサキに騙されたんや!飛行機の話とか全部…作り話なんや!あいつら、この星を侵略しようとしてるんかも!?
… …ミニキス?どうしたん?ミニキス」
ミニキスは赤色の液体まみれのタコパチを抱きしめて震えていた。悲しくて泣いているのだろうか?顔を上げる。違う、ミニキスは闘志満々だった。
ミニキスはタコパチを傷付けられた怒りに震えていたのだ。
ミニキスは立ち上がり、さくらを見下ろし、メンチを切った(睨みつけた)。
ミニキス「上等やオラァァあ!!」
炎のような眼力と迫力に、さくらは後ずさりをした。
フィカキス「み、ミニキス、落ち着け!キャラが戻ってる…学生時代の喧嘩上等・暴力キャラに戻ってる!
怒りが湧くのはしゃあないけど、間違ったらあかんって!
その星の化身も勘違いしてるだけや!
全部イカパチとクロサキが悪いねん!目を覚ませ〜っ!」
しかしミニキスはフィカキスの言葉を無視して、地面を蹴り、さくらに殴りかかった。
フィカキス「あ、ミニキス!… …あちゃー!…最近イカパチのせいで辛いことが多かったし、これ以上は我慢できひん!って感じか?も~!!後悔しても知らんからな!」
フィカキスの声は聞こえていないらしい…ミニキスはさくらの顔の中心に固い拳をめり込ませた。続けて膝関節を壊すような蹴りをくらわせる。バランスを崩したさくらの髪を掴んで、頭突きをし、乱暴に地面に叩きつけた。
ボコボコにされて、さくらの怒りも頂点に達した。
立ち上がり、翼を広げて急接近し、ミニキスの腹に、回転蹴りを入れる。倒れたミニキスを踏みつける。衝撃で地面がひび割れた。
しかしミニキスは臆することなく立ち上がり、今度はさくらの首元を殴った。
掴み合い、殴り合いのケンカをはじめてしまったふたりを前にして、フィカキスは震えていた。小さな体では、ふたりを止めることも、タコパチとからすを救うこともできない。知らない星で助けを求めることもできない。
それでもフィカキスは、諦めずに叫んだ。
フィカキス「ミニキス!
強いだけで優しくないやつなんか、おもんないし、なんも自慢できひんで!!」
ミニキスはハッと気が付いて、殴ろうとしていた右手を引っ込めた。
背後から、別の人の叫び声が響いた。
からす「さくら君!わたし達は優しい星の守り人だろう!」
振り返ると、からすとささめきとむむがいた。むむは回復魔法を使えないが、からすの顔に包帯を巻いて治療をしたようで、からすは二人に支えられながら立っていた。
ささめき「私、どうしてもからすさんのことが心配で…むむちゃんに助けを求めて、戻ってきたのよ」
むむ「新しい世界に避難している星の皆は大丈夫だよ。今も魔法で見張ってるし、あたしたちのことは心配しないで♪」
タコパチも目を覚ました。ふぁ〜とあくびをしている。
タコパチ「あ〜もう!最近戦ってなかったし、久しぶりに痛い思いしたからびっくりした。びっくりしすぎて、ゲロ吐いちゃったよ。今日食べたトマト、全部出ちゃった。僕、吐いたら疲れて眠っちゃう癖があるんだよね。大した攻撃じゃなかったのに〜。」
その様子を見て安心し…ミニキスとさくらは目を合わせて、ごめん!と謝り合った。
ミニキス「オレのあほ!ほんまに悪いことした。思いやりも優しさを忘れて、人を傷つけてしまったんや。みんなのことを裏切ってしまった。なんも変われてなかった…オレなんか、人を守る資格ないわ…!社会人失格や!」
さくらは、泣きそうになっているミニキスの手を取った。
さくら「な、何言ってるんだよ。えっと、あんなのただの力比べだろ!笑
俺は強いやつと体動かせて楽しかったって思ってるぜ!ヘヘッ。そういうことにしておこうぜ。
俺はさくら。あっちにいるのが、星の化身で恋人のからす。仲間のささめきとむむ。
本気で戦ったおかげで熱い心が通じ合ったみたいだな。お前たちが悪いやつじゃないってこと、伝わったぜ。
俺たち今、星を侵略されそうになってて、大ピンチなんだ。誰も傷付けずに守りたいんだ。手を貸してくれよ♪」
さくらとミニキスは、汗まみれの手で握手をした。本気で殴り合ったことで、爽やかな友情がうまれたのだ。結果オーライ。
ミニキス「あ、ありがとう…さくら。さくらが強いから、熱くなってしまったんや。身体中痛いし、後悔してるわ。
俺はミニキス。そして恋人のタコパチ。タコは家族のフィカキス。皆を守るために、タコタコタコ星から来たんや。協力するで。改めてよろしくな」
タコパチは首を傾げてフィカキスに尋ねた。
タコパチ「ミニキスとさくら、さっきまで何してたの?まさか、ケンカ!?」
ケンカなんてだめだよと悲しそうにするタコパチを見て、フィカキスは必死に誤魔化した。
フィカキス「違う違う!優しくて真面目なミニキスがケンカなんかするわけないやん!…ふたりはブレイクダンスしてたんや。タコパチにも見せてあげたかったわ。はは。
それより、早くブレイブ☆タコキスに変身して、あの人…からすさんを治してあげてや」
タコパチとミニキスは手を取り合い、ブレイブ☆タコキスに変身した。回復魔法でからすの傷を治療する。
からす「ミニキス君、タコパチ君、そしてフィカキス君、ありがとう。痛みも傷もなくなって、目も見えるようになった!魔法を使うにはあと数日かかりそうな気もするが…。本当に助かった!」
さくら「からす、本当に良かった..。安心した。
お前、タコパチだっけ?ごめんな、勘違いして痛い思いさせちまって」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「大丈夫だよ、さくら!血じゃなくて、トマトだし。気にしないで♪」
さくらは、からすとささめきとむむに、こっそり事情を説明した。ささめきは落ちている手鏡とリモコンに視線をうつして呟いた。
ささめき「なるほど。お互い勘違いして戦ってしまったのね…子どもみたい。」
腕を組んで呆れているささめきを元気付けたいのか、むむは普段よりも明るく振舞っている。
むむ「噂で聞いたことはあったけど、タコタコタコ星の魔法技術ってすごいんだなぁ♪変身するなんてかっこいいし、憧れちゃうよね。このタコさんも可愛い。撫でてもいいかな?……ふにふにでかわいい〜♪」
フィカキス「/////」
むむはフィカキスを抱いて、ささめきに見せた。むむの笑顔につられて、ささめきもふふっと微笑んだ。そっとフィカキスに手を伸ばし、撫でてみる。
ふたりにぬいぐるみのように撫でられて、フィカキスは照れている。
ささめき「可愛いわね。タコを飼ってる人なんて初めて見たわ。それとも食用なの?」
フィカキス「ペットでも食用でもないんやけど、どこから突っ込んだらええんやろ…」
その様子を見てブレイブ☆タコキスもやってきた。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「フィカキス、人気者だね。むむさん、かっこいいって言ってくれてありがとう。タコタコタコ星は魔法が自慢の星なんだよ。」
むむ「タコタコタコ星、いつか行ってみたいな。一撃で星を燃やし尽くす魔法、タコパチ☆ファイヤーってタコパチ君の魔法?噂で聞いたことあるよ。あたし、戦闘魔法が好きだから、好奇心刺激されちゃうな〜」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「むむさんが強い魔法戦士だって噂も聞いたことあるよ♪タコタコタコ星に遊びに来てくれた時は案内するし、魔法対決してみようよ♪」
むむ「うん、ありがと!楽しみ!」
ミニキスは皆の名前を覚えようと頑張っている。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「さくら、からすさん、ささめきさん、むむさん…よし、覚えた。
あ、ささめきさん。そのタコ、触りすぎたら噛んでくるで」
ささめき「噛むの?」
フィカキス「噛めへんわ!」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「冗談やって。フィカキスはタコやけど、元々は星の化身のイケメンやったんやで。今度詳しいこと、教えたる」
ささめき「あら、それは面白そうな話ね♪」
フィカキス(イケメン…?なんか嬉しいな、ありがとう。ミニキスに体をプレゼントしてよかったわ)
……そして、ブレイブ☆タコキスは、イカパチたちについて、知っていることを話し始めた。
ー皆が立ち向かうべき、黒幕ー
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「マシロって名乗ってるタコパチの弟、イカパチさん。そして、恋人のクロサキっていう奴。その二人が黒幕や。
オレとタコパチはふたりの作り話を信じてしまった。泣いてたし、謝ってたから、油断したわ…。戦うきっかけになった手鏡とリモコンも、その二人からもらった物なんや。
青色の不死の星を侵略しようとしてるのは確かやと思う。でも、オレは本当の目的は別にあるんじゃないかって疑ってる。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「僕はイカパチのことが大好きなんだ…。
イカパチを助けたいんだ!
僕たちの目的は、やっつけることじゃなくて、仲直りすること。
今はすれ違ったり、戦ってしまったり…失敗してばかりだけど…ね。」
からす「手鏡とリモコン…。バリアを消すために使った道具だろうな。バリアがあると入ってこられないから、強引な手段を使ったのだろう。そして、さくら君やミニキス君たちを戦わせるように仕向けたんだ。わるい奴だなぁ…。」
ささめき「ねぇ、タコパチさん。そのふたりは緑色の発明の星をあんな姿にして、星をぶつけられるような人間なの?私には、可愛い弟のイタズラと言うよりは、プロの悪人の仕業に見える。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「できないと思う…できないって思いたい。昔ならできたかもしれないけど…今のイカパチは魔法が使えないんだ。ごめんね、僕お兄ちゃんなのに…大好きな弟のこと、ぜんぜんわかってない。」
ささめき「あやまらなくていいのよ。私、タコパチさんの気持ちをもっと知りたいの。力になりたくてたまらないのよ。
…私、自分の兄と分かり合えなかった過去があるの。悪の道を突き進む兄さんたちをどうすることもできなかった。でもタコパチさんには勇気があるわ、だからきっとうまくいくわよ。あなたの優しい勇気には、弟さんを変える力があるはずよ。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「ささめきさん、ありがとう!」
ささめき「でも、あなたの弟は、悪人である自分に酔っているみたいね。星をほろぼすチャンスはいくらでもあるのに、戦いに来ないし、やり方も陰湿…きっと悪そのものを楽しんでいるタイプよ。だから油断しないようにして、強い気持ちで立ち向かいましょう。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「うん。悪いことを楽しんでるなんて…イカパチらしくないなぁ。
イカパチ、元々魔法を使えたんだけど、使えなくなっちゃって…ショックをうけて家出しちゃって…今はパーティ会場で働いてるって言ってたけど、きっと噓なんだろうな。
一緒にいた頃は、ふたりで強くて優しいお医者さんになることを夢みて、「何でも癒せる回復魔法」を開発してた。イカパチはレッドデビル☆カンパニーのかっこいい社長だったんだよ。
努力する才能がピカピカしてる、頼もしくて素直で、優しい弟。今は…僕のことも大嫌いって言ってたし、全部嫌になっちゃったみたいだけどね。
僕は恋人のクロサキが全部悪いって思ってる。意地悪な恋人なんだと思う。」
むむ「ねぇねぇ、クロサキっていう人は、魔法を使えるの?その人がタコパチ君の弟に協力して、緑色の発明の星をあんな姿にして、星をぶつけようとしたのかな?」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「多分、クロサキの奴も魔法は使えないと思うんだよね。魔力も感じないし、使ってるところを見たこともないし…。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「それでも、あのふたりは悪い奴なんや。オレはふたりと一回だけ戦ったことがあるんやけど、暴力的で強かったし怖かった。本物かわからへんけど人の骨を隠してたし、平気で銃撃ってきたし。家出してから、心変わりして、鍛えたんやと思う。
あの二人は魔法の代わりに暴力を使って、とんでもない事をしてるんや!」
ミニキスとタコパチは、イカパチたちについて知っていることを話した。
さくら(ミニキスのパンチ、すげぇ強かったな。そのミニキスが強かったって言ってるってことは、イカパチって奴はめちゃくちゃ強いんだろうな…)
からす「早くイカパチ君たちを見つけないといけないな」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「僕らの魔法があれば、イカパチをすぐに見つけ出せるよ。見つけたらテレパシーで伝えるよ。いこう、ミニキス、フィカキス」
ブレイブ☆タコキスはフィカキスを肩に乗せて、飛び立った。手を振って見送った後、からすは心配そうにささめきとさくらを交互に見つめた。
からす「…さくまちゃんが見当たらないことも心配なんだ。
さくまちゃんはわたしを公園から離れた所に隠して、守ってくれていた。だが、さくら君が星を守るためにバリアを作ろうとしていたから、手伝いに行きたいと相談したんだ。さくまちゃんは「行ってこい。さくらにはお前の力が必要なのだ。必ず星を守れよ。先に公園に戻っている。後で会おう」とか、なんとか言っていた。」
ささめき「さくまちゃん、どこに行っちゃったのかしら…」
さくら「さくまの奴、何回かテレパシーで呼びかけてるんだけど、無視してるんだ。
さくまはワープ魔法も回復魔法も使える。危険な目にあったとしても、すぐに逃げられるはずなんだ。公園にも一瞬で来られるはずなのにな…。記憶と思考を読む魔法も使えるから騙されることも滅多にないし。」
からす「よし、わたしとさくら君とささめきちゃんは、さくまちゃんを探そう」
むむ「あたしは星の皆を安心させるために、一旦新しい世界に戻るね。
それから…緑色の発明の星の、オキとことおもどこかにいるはずだよ。星が消滅してないってことは、生きてるってことだから。気をつけて。」
むむは飛び立ち、星の住民を守っている新しい世界にワープした。
ささめき「私たちも行きましょう。」
からす「今度は三人離れないように行動しような」
さくら「肝に銘じておくぜ…」
…………
……
…
さくま「はあはあ……!!」
さくまは全力で走って逃げていた。走りながら振り返る。まだ、追ってきている。公園に戻れば、皆を巻き込んでしまう。走り続けて、逃げるしかない。
……
からすを見送ったあと、見慣れない白と緑の「かえる」が、ヨチヨチ歩いて近付いてきた。抱き心地が良さそうなサイズ。モチモチしていそうな質感。かわいいかえるだ。
しかし、さくまは惑わされない。
怪しんで、素手でボコボコにして追い払った。
…さくまは「黒色の戦闘の星」出身の元侵略者。からすたちと出会うまでは、さくらと一緒に、人の命を弄ぶ残酷な悪魔として生きていた。500年以上も前のことだ。
黒色の戦闘の星は戦いにやぶれて、星のはなびらとなり、散ってしまった。帰るところを無くしたさくまは、自分を変えてくれたからすやささめきたちが暮らす青色の星を守ると誓った。生き方を改めたのだ。
しかし、さくらのことは気に入らない。どうしようもないクズでバカだからだ。後からやってきたむむのことも気に入らない。黒色の戦闘の星は、むむに滅ぼされたのだ。馴れ馴れしく話しかけないで欲しい。
それでも、いちばん大好きなささめきが、「皆を守る」と言っているから、仕方なく仲良くしてあげているんだ。さくまはちょっぴりひねくれた女の子だった。
さくま「変なかえるがいたことを、ささめきたちに報告しなければ。」
ふと顔をあげると、またかえるがヨチヨチ歩いて近付いてきた。一匹ではない、20匹以上はいる気がする。
さくまは魔法で散らしてしまおうと考えた。力を込める…が、いつものように魔法が使えない。不思議な力が働いて、さくまの魔力が不安定になっているのだ。
さくま「ちっ。…なんだ。貴様らの仕業か!?」
さくまはかえるを睨みつけた。不安定なまま、魔力をかき集めて整えて…なんとか、「相手の記憶や思考を読む魔法、力量を測る魔法」を操る。
かえるを通して見えたのは、
ー残酷な夢を追いかける、マシロとクロサキの姿だったー
このカエルはタコタコタコ星だけに住んでおり、「近くにいる者の魔力を不安定にする特性」がある。…マシロとクロサキが走り回って、ジャングルで捕まえたらしい。
恐ろしいものを見てしまった。早く、からすたちに伝えなければ。早く、ここを立ち去らなければ。
さくまを走り出した。普段通り魔法が使えないため、瞬間移動することもワープすることもできない。走り慣れないさくまは、小石につまづいて転んだ。
すぐに立ち上がり、追いかけてくる大量のかえるから逃げる…逃げる……にげる。
さくま「はあはあ……!!
ダメだ、我の足では逃げ切れない。数は多いが、戦うしかないか…。」
さくまの戦意を察したのか、かえるたちが飛びかかってきた。
しかし戦っても、戦っても、かえるは減らない。どこからか、ヨチヨチと歩いてきて、増えていく。50匹…100匹…。
時間が過ぎて、疲れがたまっていく。
さくまは息を切らして座りこんだ。かえるたちは物怖じすることもなく、さくまの周りをウロウロしている。
そのとき。誰かの声がした。
…ヒヤッとして、顔をあげる。男が立っていた。
さくま「貴様は…クロサキ!」
先程見た記憶の映像を思い出す。この顔、間違いない!素早く戦闘態勢をとる…が。
さくまは、一歩も動けなくなった。
クロサキ「正解♪さくまはすげぇな。今はもう無くなっちまった星の、珍しい力を持ってる、特別な存在だ。でも、俺たちの邪魔はさせないぜ?」
動けないのは、かえるの特性のせいではない。
クロサキ「俺と戦うか?構わないぜ?女の子だからって、手加減しねぇし♪」
流れ込んできたクロサキの思考、記憶、過去……さくまはクロサキに対して、生まれてはじめての、底知れない恐怖を感じていた。
さくま「…、……貴様、な、何をしに来た!」
クロサキはマントの中から数センチの、ミニミニかえるをとりだした。
クロサキ「何をしに来たって、なんの話だ?
面倒なことはいいから、このかえるを食べろ!こいつを食べるとしばらく魔法が使えなくなるんだ。俺があ〜んして、食べさせてやるよ。さくまの力は、ゲームの邪魔になるからな。
俺とマシロに関する記憶は、俺の必殺技「エターナルエターナル金属バット」でボコボコにして、消してやるよ。
あ…かえるは俺のペットだから、丸呑みしろよな!後でお前のお腹を切り裂いて、取り出すからよ」
さくま「…ぁ、あ、からす、お前ならどうする!?こいつらは、我らに敵う相手なのか!?
くっ…
こいつは本物の悪人だぞ…強敵だ…
しかも頭が悪いタイプだ…!」
それを聞いたクロサキは、不機嫌そうに唇をとがらせた。
クロサキ「あ、頭は悪くねぇよ!俺は宇宙船を作ったり、操縦することもできるんだ。性格が単純で、わかりやすい?ってだけで、地頭はいいんだよ。こう見えて、色々考えて、頑張って行動してるんだ。
悪人ってことは否定しねぇし、ポジティブに受け取ってやる♪
…ていうか、悪人で強敵で頭が悪いタイプって…なんだかおもしれぇな。だって、超弱そうじゃん。
そもそも頭がいいとか悪いとか、強いとか弱いとか、…バレてる時点で、強敵でもなんでもないんだ。
本当に強い奴は、できるだけ正体や実力を隠して、溶け込んでるんだと思うぜ?その方が色々使いやすいだろ。
…あ、そうか!その言葉って…ぷッ、ふふ
…ふふ、
ははは
ははは!
ははははは!!!」
クロサキは話しながら吹き出して、マントで顔を隠した。何がそんなにおかしい?さくまは緊張した。
そして、困惑するさくまも、大量のかえるも気にせずに、笑いながら空を見上げる…。
冷たく乾いた風が、緑色のマントを揺らす。
クロサキ「マシロにぴったりの言葉だな」
…ゲームがはじまる。
もう、誰にも止められない。
信じる気持ちと嘘は絡まり合って、
過去と未来を塗りつぶしていく。
この星と君は
奈落に誘われている。
【8話に続く】
… … … …
・イラストや小説の二次創作用タグは「#荒花ぬぬ作品」。写真やイラストの無断転載や、誹謗中傷、その他迷惑行為は禁止です。この創作サイトはSNS等で気軽に紹介、共有いただいて大丈夫です!。なにかございましたらお気軽にご連絡ください。これからも荒花ぬぬの応援をよろしくお願いいたします 。読んでくれてありがとう♪
荒花ぬぬ