【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】2話

「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」

小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。

「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)

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小説「星のはなびら2」
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(゜o゜)♡

読み始める前に

異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)

【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】2話 本文

マシロとクロサキが夢…宇宙を舞台にした星の化身を巻き込むデスゲーム開催…を追いかけはじめる少し前。

タコタコタコ星のアパートの一室。青年はひとり自室にこもり、考え込んでいた。使い慣れた机の上には、レポート用紙が散乱している。

魔法陣を書きかけて…「これじゃだめだ、すぐに効果が切れてしまう」と塗りつぶし、また書きかけて…「これじゃだめだめ、発動条件が厳しすぎる」とくしゃくしゃにした。時々「タコの形のステッキ」を小さく振ってイメージして…。

彼は連日、一日中、回復魔法の研究に没頭していた。

マグカップに手を伸ばす。…が、冷めたカカオ風味の紅茶は一口しか残っていなかった。

伸びをする。窓の外には見慣れた夜の景色が広がっている。遠くに見える観覧車のライトが、海面を照らしている。今は何時だろう、壁掛け時計に視線を移動させた時…

「タコパチ、もう11時やで!何時間やってんねん!!」勢いよくドアが開いた。

パジャマ姿の恋人、ミニキスが部屋に入ってきたのだ。ふたりは出会った日から一緒に暮らしている。魔法の研究に集中していたタコパチは驚いて「も~!ミニキス、ノックもせずに入ってこないでよ」とほっぺたを膨らませた。ミニキスは持ってきたココアを手渡し、タコパチの肩をもみながら話し始めた。

ミニキス「そんなん言ったって…ノックしても話かけても、全然返事せえへんかったやん。集中してるんやろうなって思ってそっとしてたけど、タイムアップや。もう寝るで」

ミニキスの頭の上には、30センチくらいのゆるいタコ、フィカキスが座っている。

フィカキスはマグカップを持ちながら、目をパチパチさせて眠気と戦っている様子だ。しかしうとうととして傾けてしまい、中に入っていたココアを全部こぼしてしまった。ミニキスは頭からココアを浴びた。

ミニキス「うわ、最悪や!!なにすんねん」

フィカキス「ごめん、寝てもうた…」うとうと

ミニキス「まぁええよ。頑張って起きてたってことや」

フィカキス「ミニキスは優しいなぁ」

ミニキスはかけていた黒縁メガネを外し、パジャマの袖で顔を拭いた。

…フィカキスはタコの姿をしているが、もともとは背の高い青年だった。そしてタコタコ星から遠いところにある星の、星の化身だった。フィカキスの話し方は彼の星の方言だ。

星の化身だった頃。寂しがり屋で人間不信のフィカキスにとって、信じられるのは自分だけだった。だから自分を何億人も複製し、自分しかいない星、星の民全員と意識を共有する星にした。ミニキスはそのうちの一人だった。

ある日レッドデビル☆カンパニーの社員として、侵略業務をしていたタコパチがやってきて、炎魔法「タコパチ☆ファイヤー」で星ごと燃やし尽くしてしまった。

唯一生き残ったミニキス。勇気と自我が芽生えて行動し、タコパチを改心させた。悲しみを受け止め合い、分かり合った二人は恋に落ちた。

感心したフィカキスは、星に存在する全ての魔力、星の力、丈夫な自分の体をミニキスに託した。(ミニキスは魔法の使い方を知らないが)。その過程でタコパチは魔力を失い魔法が使えなくなった。

しかしミニキスと心をひとつにして「ブレイブ☆タコキス」に変身し、合体することで強力な魔法を使えるようになった。

ふたりは消滅する星から脱出する際、空っぽのフィカキスを見捨てなかった。フィカキスの意識を魔法で作ったタコの体に入れて、三人でタコタコタコ星に帰った。

ちなみに、フィカキスがプレゼントした丈夫な体についてミニキスは、身長が伸びたこと以外は気に入っていない様子で、腰まであった綺麗な長髪も2日後には短く切ってしまった。

髪を伸ばして毎日手入れしていたフィカキスは、芋っぽい短髪になってしまった自分の体を見てショックを受けた。「オレはもうたこ焼きになる!放っておいてくれ」と拗ねていたが、最近は「たこ足にアクセサリーをつける」という新たなオシャレに目覚めたようで、楽しそうに過ごしている。

三人はタコパチのアパートで仲良く暮らしている。

タコパチ「ミニキス大丈夫!?火傷してない!?」

ミニキス「冷たいココアやし大丈夫や。もう1回お風呂入らなあかんくなったけどな。行くで、今日はもう終わりにしてお風呂入って寝よ」

タコパチ「うん、そうするよ。ミニキスもフィカキスも、先に寝ててよかったのに」

タコパチはココアを飲み干して立ち上がった。三人で浴室に向かう。あくびをしながら服を脱ぐ。

ミニキス「毎日一緒に寝ようって決めたのタコパチやろ。頑張ってるのに、恋人が先に寝てたら、寂しいやん。オレも一緒に頑張りたいねん」

タコパチ「ありがとう♪」

三人仲良く、狭い浴室に入る。ミニキスは温かいシャワーでココアを洗い流した。

タコパチ「あ!シャンプーハット忘れちゃった!髪洗えないよぉ」

ミニキス「ボディソープも無くなってるわぁ…体も洗われへん」

フィカキス「はいはい、持ってきたる♪」

小さなタコ足を動かしてリビングに向かったフィカキスを見て、ミニキスが「あいつ、優しいよな。このアパートペット禁止やけど、これからも上手いこと匿(かくま)ったろ~♪」と笑った。

しかしタコパチは長時間作業した疲れを隠すように、寂しそうに後ろを向いていた。ミニキスはタコパチを後ろからぎゅっと抱きしめて、頭を撫でた。

ミニキス「タコパチ、頑張りすぎや」

タコパチは頬を赤らめて、ミニキスの手を握った。

タコパチ「でも早く、強くて優しい魔法使いになってイカパチを迎えに行きたいんだ。そのために、「滅びた星を治して復活させる回復魔法」を完成させたい。きっとイカパチは今この瞬間もひとりで悩んでると思うかから。でも上手くいかなくて悔しくて…僕…」

ミニキス「この前ビデオ通話したイカパチさん、元気そうやったやん。急がんでも夢は逃げて行けへんし、大丈夫やって。

誰にもできひんすごい魔法が使えたら、強くて優しい魔法使いに認定されるってわけじゃないで。オレはイカパチさんのために一生懸命頑張ってるタコパチのこと、強くて優しい魔法使いやと思ってるし。

滅びた星を治す回復魔法も色々あると思うで。まるっと星全体を復元すれば皆幸せになれるようなシンプルなことじゃないねん。失ってしまった大事なもの、大事なひと、悲しい気持ちも十人十色や…その星のひとりひとりに寄り添うことが大事なんやと思う。オレも一緒に考えるから、ムリせんといて」

タコパチ「うん、そうだよね…ありがとう。ミニキスが一緒にいてくれてよかった…すっごく元気出て、安心した。強くて優しいご主人様がいてくれるから、僕は前を向いていられるんだ♡」

ミニキス「ご主人様ちゃうわ!」

フィカキス「…な、なぁ、もしかして今お楽しみ中?オレ、入らん方がいい?」

ミニキス「うわっ!フィカキスのこと忘れてた」

タコパチ「ごめんごめん、入っていいよ」

タコパチはイカパチ(マシロ)の兄だ。

昔は兄弟で「何でも癒せる回復魔法」の開発と普及を目指し、同じ夢を見据えていた。夢を叶えるためにイカパチはレッドデビル☆カンパニーの社長となり、タコパチは医師を志して学校に首席で入学した。

魔法が使えなくなったイカパチの心を支えるため、タコパチは学校をやめてレッドデビル☆カンパニーの社員になった。しかしイカパチは夢を諦め、家出してしまった。

イカパチを引き留められなかったことを悲しみ、タコパチも夢を諦めた。ミニキスと出会うまではずっと辛いことから逃げて、習慣的に仕事「星の侵略」をしていた。

弟は今どこで何をしているのか。

最後にビデオ通話したときは、パーティ会場で働いていると、恋人ができたと言っていたっけ。

しかしタコパチは気がついていた。

弟はなにか隠し事をしている。

涙を隠しているのか。

後ろめたいことをしているのか。

わからない。歩み寄り方もわからない。だけど、イカパチがひとりぼっちで悩んでいることだけはわかる。わかるから。

力になりたい。

もう一度ふたりで夢を追いかけたい。

何でも癒せる回復魔法を追いかけたい。

ミニキスと出会って、気がついた。一瞬で病気や怪我を治すことだけが回復魔法じゃない。魔法が使えなくても、癒して回復させる方法は沢山あるということに…。

タコパチ(ミニキスが僕にかけてくれた回復魔法を、イカパチにも教えてあげたい。

イカパチは頭がいいし強くて優しいから、皆に勇気をわけたり癒したりする力が、胸の中にいっぱいあるんだ

しんじてるよ)

浴室から出て、タオルで体を拭く。フィカキスがボディソープとシャンプーハットを持ってくるついでに、パジャマも用意してくれたようだ。

テキパキ着替えて、寝室に向かう。(フィカキスは空気を読んでリビングで寝ている)。タコパチとミニキスは横になり顔を近づけて話した。

ミニキス「明日もバイトや。期間限定の枝豆とたまご豆腐のスムージー明日から販売やねん、ドキドキするわぁ」

タコパチ「枝豆とたまご豆腐?絶対おいしいよ!醤油味の生クリームが合うだろうな♪タコさんウインナーもトッピングしたい、絶対人気商品になるよ」

ミニキス「タコタコタコ星の攻めた食べ物は嫌いじゃないけど、まだまだついて行かれへんわ〜」

…そういえば、タコパチ。レッドデビル☆カンパニーは辞めるん?退職届書いてたけど、もう提出したん?」

タコパチ「イカパチが悲しむ気がして、辞めるか辞めないか迷ってたんだけど、今日ポストにいれてきた。もう侵略業務なんてしたくないし。社長(イカパチ)は行方不明扱いだけど、僕が退職届を出したことはイカパチの耳にも入ると思う。…悲しませちゃうかな」

ミニキス「うーん。じゃあ思い切って、一緒にイカパチさんに会いに行こうや。ビデオ通話でもいいけど、直接会って話したら、タコパチの最近の悩み事の8割は解決するやろ?その方がええと思う。勇気出して自信もって、顔見せたらええねん。ついでにオレのこと恋人って紹介してや♪」

タコパチ「……!、うん!!そうする!!ありがとう!!!

イカパチの居場所はわからないけど、ブレイブ☆タコキスの魔法で、みつけちゃえばいいんだ」

ミニキス「そんなんできるん?明日の夜がんばろか。じゃ、おやすみ〜♪」

タコパチ「おやすみ♪」

― ― ― ― ―

すやすや…大好きなミニキスを抱き枕にして眠る夜。僕(タコパチ)は幸せな夢をみていた。

ミニキスが働いているカフェに、イカパチと一緒に遊びにいく夢だ。カウンターの向こうにいるミニキスは、少しだけ照れくさそうにしながら「ご注文お伺いします」と微笑んだ。ミニキスの肩にはフィカキスが、退屈そうに座っている。

今日飲むものは決まっている。枝豆とたまご豆腐のスムージーをふたつ♪イカパチが楽しそうに注文する。醤油味の生クリームと、タコさんウインナーをトッピングしてもらう。

お財布を出そうとすると、イカパチが「僕が出すって!社長舐めないでよね」と僕の手をひっこめた。頼もしい弟だなぁ、ありがとう。

イカパチ「お兄ちゃん。ドーナツ屋さんに寄り道して帰ろうよ。お父さんとお母さんに青のり味のドーナツを買って帰りたいんだ」

楽しい気持ちで満たされた海を、お気に入りの水着を着て泳ぐような幸せ。なんでもない夢。

だけど、スムージーを机に置き、椅子に座ろうとした時。突然空気の色が変わった。灰色のノイズ、セピア色の空気に包まれる不思議な感覚。

イカパチは難しい顔をして、立ち止まってしまった。様子がおかしい。

タコパチ「イカパチ、座らないの?」

イカパチは口を固く閉じて、瞬き(まばたき)を忘れたみたいに、じっと僕を見つめている。少し不安になって、「大丈夫?」と聞いてみた。いつの間にか店内にいるのは、僕とイカパチだけになっていた。

イカパチは右手を大きく動かしはじめた。空中に円を描くように。僕に何か伝えようとしている。

手の動きを見て気がついた。イカパチは空中に魔法陣を描いている、魔法を伝えようとしているんだ。

その魔法陣は、僕が何日も悩んでいた「滅びた星を治して復活させる回復魔法」の完成系だった。

僕は目覚めた。布団を蹴り飛ばして、自室へ走った。ボールペンを握り、夢でみた魔法陣をレポート用紙に書いた。

ミニキス「…!?タコパチ、どうしたんや!?」

フィカキス「むにゃむにゃ」

タコパチ「どうしよう、完成しちゃったんだ!!消滅し星を復活させる大魔法!!

まだ設計図の段階だから、ブレイブ☆タコキスになって試したり、練習しなきゃつかえないと思うけど、でもできちゃった!」

ミニキス「ほ、ほんまに!?タコパチ、頑張ったなぁ、すごいことやで!友だちとお父さんとお母さん…再会できる日も遠くないんかなぁ…」

タコパチ「早くこの魔法陣をイカパチにみせたいよ!きっとこの魔法は、僕たちの夢の架け橋になる!ねぇ、今日の夜、ミニキスのお仕事がおわってから会いに行きたい…だめ?しんどい?」

ミニキスは「ええで、行こうや。イカパチさんびっくりさせたろ!……フィカキス、なに寝ようとしてんねん!君も一緒にいくんやで。家族やろ」

フィカキス「家族!?は?オレ、家族なん!?同居人とかで全然ええよ!?ていうかオレどこのポジションなん…親でも兄弟でも息子でもないやん。まさかペット?」

タコパチ「ペットじゃないよ、フィカキスのポジションはタコだよ」

フィカキス「意味わからん」

三人で笑った後、布団に入って、さっきの夢の続きを見た。

イカパチはスムージーを飲みながら、楽しそうにこれからのことを話していた。

【3話に続く】

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荒花ぬぬ

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