そうだ。オレはささめきが好き。その想いに素直になったっていいんだ。
現実から逃げて妄想して、夢をみたっていいんだ。嘘のない世界、愛し合える世界。いくら後悔しても、現実はもう変えられない。きっとオレも変われない。悪いのはオレじゃないと…思わせてくれよ。思ってみたいよ。思えばいいんだ。
そう決意したら心が軽くなった…素直になればいいんだ、素直に…。
「オレ、妄想癖があるんだ。睡眠薬を飲むと、夢と現実が曖昧になって気持ちがいいんだ。オレは今夢を見てる。警察がオレを見つけるまでの間、オレを起こすまでの間…変なおばけと友達ごっこする夢を見てる…愛した人と会えない、そういう夢を見てるんだ」
「友達「ごっこ」…?」
「うん、本気になんてなれないよ。オレの世界はささめきだけ」
…不安になってふうががキッチンまで来る。泣きそうな顔をしている。
「寂しいこと言うなよ…おれ、ごっこ遊びなんてしてない!」
「怖いから、ふうがのいうこと聞いてるだけ。自分の名前忘れたりする友達嫌だよ。邪魔なんだよ」
「…おれ、怖い?いや?じゃま?」
「この霊界の主はオレなんだよ、ね?ささめき」
シンクに置いていた包丁を手に取る。「ゆずは、何考えてるんだ?」と、ふうがは冷や汗をかいて固まっている。
ここは夢の中…だからためらいもなく振り下ろせた。
邪魔なやつは、消せばいい。
左胸を狙ったけど、ふうがの腕に遮られた。右腕に深々と刺さる…血は出なかった。包丁を抜いて、今度こそ胸を狙おうと振り上げる。腰が抜けたふうがは座り込み、「ごめん」「やめろ」を繰り返して叫び泣いている。
「いたい…ゆ、ゆずは、ゆずはぁ、いたい、こわい」
「ねぇ、ささめき、オレ、ささめきのことまだ好きだよ、早く愛してるって言ってよ」
ふうがは紫の光を放ち、オレを弾き飛ばした。壁に背中を強く打ち付け、動けなくなる。
「ゆずは…」
ふうがは霊力で傷口をふさいだ。オレの持っていた包丁も素早く消し去る。
(そう簡単には…無理か…、オレの心を破るのは)
「ゆずは、こわいやつ!こわい!こわい!ともだちなのに、こわい、こわい…はぁ…謝れよ、おれ怒ってる。友達に戻るために、早くごめんなさいって言えよ!!」
鬼のような表情で顔を真っ赤にしたふうがが近づいてくる。そしてふうがはオレの腕を掴んで無理やり立たせようとした。オレは…
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