星のはなびら五章「天国と霊界の化身」

小説「星のはなびら」全九章+番外編。「恋心が暴走する!生死を超え、世界を手に入れ宇宙を跨ぐ…ヤンデレ男子のボーイズラブな物語!」

はじめに

残酷な表現等を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください

星のはなびらはこちらから読めます、一章からよんでね

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星のはなびら五章「天国と霊界の化身」

あらすじ

突然「ふうが」と「ゆずは」が暮らしている霊界へやってきた「さくら」。さくらは「ゆうぎがかけた呪いの力」を宿しているふうがと霊界を消そうと企んでいた。愛を貫くため、邪魔者を消すため…ゆずはとさくらのヤンデレ対決がはじまる!

全十話・約50000文字

本編

一話

ザザ…ザザ…波の音。 

桜色の髪が夜の海風に靡く。月明かりだけが頼りの視界。振り返ると岩壁がぼんやりと見えた。誰もいない冷たい海に膝あたりまで浸かっている。

海に入ると星の脈動をより深く実感できるから好きなんだ…なんてカッコつけてみる…うは、似合わねぇか、きめぇ!笑

俺はさくら(咲薇)。この星と一緒に生まれ、星と命を共有する星の化身。星を管理し、観測し、星を守る使命を持つ、通称「星の守り人」。この星にある世界…現世や死後の世界(天国と地獄)は俺が作った。どうして作ったかって?それは…また今度話す。

俺は強い…力だけは、無限に湧いてくる。俺にびびって、星や俺の力を狙いに宇宙からやってくる戦士「侵略者」なんて、最近はほとんど来やしねぇけど…これでも真面目に星を守ってんだ。俺なりに。

昼間は花屋で働いている。こんな重要人物が仕事してるなんてウケる!…でも金ねぇと、現世で何も出来ないし、つまんねぇんだ。 長く生きてるけど案外退屈じゃねぇ。…ただ俺はひとつの面倒な問題に直面し、頭を悩ませていた。

この悩みもあの悩みも、あれもこれも全部俺が悪い。昔の俺が悪魔と手を組んで、現世の人間で遊んだり、適当に星を管理していたせいだ。マジだりぃ〜!!!

何を悩んでいるのかって…?「1年前」の事件のことに決まってるだろ!

右手で握っていた、黒色のチョーカーを見つめる…。俺が一年前に海の底から拾いあげた物だ。これだけ消えずに残っていたらしい。

このチョーカーの持ち主だった奴…名前は確か「ゆうぎ」。一年前、共犯者の黒髪の男…「しんげつ」と共にこの海に沈んだ。彼らの魂は、現世にも死後の世界にも、もうどこにも残っていない。

天国にいたときのゆうぎは、素直であどけない印象だったのにな…俺の目を盗んで、星の規律に逆らって現世におりちまって、あんなことに…。俺がもうちょっと、あいつのこと、気にかけていれば良かったか…?…いや、そんな器用なこと、俺には無理だって!

それにしても、堕天したやつが地獄と現世を行き来するなんて思いもしなかったな…。もう、天国も地獄も現世も、時間の流れはほとんど変わらねえように揃えてあるけど(多少の誤差はあるけど)。行き来することでバイトの休憩長めにとられたり、色々便利だったのになぁ。

でも1番ヤバくてなんとかしないといけないのは、ゆうぎが作ったひまわり畑の霊界!現世より100倍くらい時間が早く進む特殊な空間。…覗いても、行きたくなくて先延ばしにしていたら、ゆずは先輩が連れ去られてから1年も過ぎちまった…つまり霊界の中では100年過ぎちまってるってこと!

霊界に閉じ込められている「きらめき」だった存在…「ふうが」。調べたら、あいつ…現世や死後の世界から100人も連れ去っているみたいだった。神隠しなんて噂されていた、行方不明事件の真祖はこれだった。最後に攫われたのがゆずは先輩。悪霊に攫われたやつは、みんな食われちまったのか?考えたくねぇ、俺の星を乱すなよ!

…霊界を1年放置してた言い訳をさせてくれ。

ゆずは先輩に会いたくなかったからだよ。気まずいし…。あんなに優しかったのに、どうしてなんだ?何があったんだ?聞きたいけど、聞くのは怖い。変わっちまった知らないゆずは先輩を、見たくない。

100年…ゆずは先輩、流石に干からびてるだろ!!とにかく会いたくないんだ!!今なら行っても大丈夫だろ!!って決心。

悩んでも仕方がない。俺がやらなきゃいけないことは…あんな霊界ぶっ壊して、悪霊を退治すること。霊界に連れ去られた魂(多分もう皆、心を失って空っぽだとは思うけど…)を天国に持ち帰って現世に転生させること。

ちなみにこういう色んな情報は、俺の星を見渡す力と、俺のオモチャ…じゃなかった部下な!部下!…俺を慕う特別な力を持つ天使(羽をもつ霊のこと)たちや、悪魔の力を借りて手に入れたんだ。

あとは「星の化身の相棒」と出会えたおかげ♪

…俺は拳を握った…チョーカーの形がくしゃっと崩れる。さぁ、行くか。霊界へ。余計なことは考えんな。「守り人」として…ただ、俺を悩ませる面倒な問題を潰すために行くんだ。

そうだろ?、俺。

そうだよな、なんてな。

上手くいきゃあいいけど。

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ーひまわりの霊界ー

朝の光に目が覚める。窓から見える、ひまわり畑と変わらない晴天。オレ(ゆずは)はベッドから起き上がり、朝ごはんの匂いがする、リビングへと向かう。ふうが、先に起きてるのか…ちょっと、寝坊しちゃったかな。

「ふぁあ〜。ふうが、おはよう。えっ、朝ごはん先に食べてる…オレ、そんなに起きるの遅かった?」

こっそり朝ごはんをつまみ食いしている霊界の主、ふうが。テーブルの上…今日の朝ごはんはサンドイッチか…美味しそう。オレのいちごミルクと、ふうがの牛乳も置いてある。

「違うんだ!いや違わねぇか…おれもさっき起きたばっかりだし…い、一緒に食べようとは思ってたんだぞ!でも美味そうだったから、ちょっとだけ、つい…」

オレは宙に浮いているふうがを引き寄せて、後ろから抱きしめた。

「ゆずは…?」

「怒ってないよ、怒るわけないだろ。つまみ食いしてるふうがが可愛いなって思っただけ」

「あはは、ゆずはも可愛いぞ!」

ニコニコ笑顔のふうがの頭を撫でて、キスをする。今日もふうがは、ふうがらしくて可愛い。

「ありがとう。ふうが、今日も好きだよ。これからもずっと好きだよ。ふふ、昨日の夜のふうがも、可愛いくてたまらなかったなぁ。何回しても慣れてなくて…一昨日の夜もさぁ」

「よ、夜の話はするなっていつも言ってるだろ!!!おれだって、頑張ってるのに…」

「拗ねるなって♪ご飯作ってくれてありがとう。すごい手のこったサンドイッチじゃん。中何入ってるの?」

机いっぱいの、サンドイッチ…これはつまみ食いしたくもなるよなぁ。ふうがが照れくさそうに、サンドイッチを紹介し始める。

「こっち側にあるのがポテトサラダ味、こっち側がソーセージとマスタード味、こっち側が卵味、で、こっち側が練乳いちご味…」

「美味しそう!ふうが凄いね」

…ふたりぼっちの特別な友だち。ふうがとは、もう随分長く一緒にいる。

2人の感情が爆発して、殴り合い蹴り合いの大喧嘩をしたこともあったけど…結局お互いのことが好きなのは変わらない。

存在を肯定し合って受け入れて、終わりのない時を共に存在する。一緒にいるから、自分でいられる。

思い出を描いているスケッチブックは、ふうがが新しく作りだした物置部屋を埋めつくし、山のように積み重なっていく。時々それを漁って、読み返したりするのも面白い。

2人でいると時間なんて簡単に忘れてしまえるんだ。

もぐもぐ…

「うま!ふうが、これ甘くて美味しいよ、練乳いちご味!」

「ありがと、自信作なんだ!ゆずはのために作ったんだぞ!ゆずは、甘いも大好きだからな〜」

「ふうが、昼はオレが作るから。何がいい?」

そうそう!オレ、ふうがから料理を教えて貰ったんだ。簡単な料理は作られるようになったけど…オレ、やっぱり料理は向いてない。最初はもっとヤバかったんだ…人参を切ろうとしただけだったのに、手首に包丁ぶっ刺しちゃって。心(バラの花弁)が大放出して、あれは大事件だったなぁ…。ただの人参に心を壊される所だった。

「じゃあ〜、外で何か食いたい気分だし…バーベキューにしようぜ!!」

「焼くだけじゃん!じゃあ準備はオレするね。せっかくだし、キャンプみたいにしよう」

サンドイッチ片手に2人で盛り上がっていた、その時だった。

ガチャン!!!!!

突然窓から大きな物音がした。オレは持っていたサンドイッチを口に詰め込んで、窓の元へと様子を見に行く。

「ふうが!?見てよ、窓が割れてる!!こんな事はじめてだよな?風かな…」

「分からない、なんだか嫌だな…ここはおれの霊界なのに。とりあえず危ないから、おれの力で直そうか」

ふうがもやってきて、割れたガラスに手をかざした。紫色の輝きを放てば、窓は一瞬で元通りになる。ふうがの特別な力、霊力。

「ありがとう、深くは気にしないようにしよっか…」

「そうだな」

テーブルに戻る。不安を隠すように、ふうがは牛乳をごくごく飲んだ。

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(なーんだありゃ)

俺(さくら)は窓の外から「ゆずは先輩」と「悪霊」がおかしいくらいに仲がいい様子を呆れたように眺めていた。

この霊界に攫われてから、100年たってるんだよな?(もちろん、俺に適用される時間は星の力で調整して、現世や天国と同じ時間進むように調整してるけど。この調整をし忘れると、浦島太郎みたいな、大変なことになる…)。ゆずは先輩、元気すぎねぇ?全然干からびてねぇじゃん…。

悪霊は退治して、ゆずは先輩は…天国に連れて帰ってやることにするか。天国で「星の化身の相棒」として働いてるあいつ、ゆずは先輩持って帰ったら怒るかな…だって、あいつにとっても気まずい関係だよな。はぁ、結局何もかもが気まずいじゃん、俺も話したりしたくねぇ。

それにしてもこの霊界の空気は、どの世界よりもクソ不味い…悪い感情や力が渦巻いている。あいつら良く平気でいられるな。もう慣れちまってるのか?

適当に身を隠しながら探索でもして、夜になったらゆずは先輩と話そうか。気は重いけど、あれもこれも星の化身の俺のせいでもあるんだし。

結果…探索したけどひまわり畑とブランコくらいしか無かった。

暇!!

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ー夜ー

窓から見える紺色、チラチラした綺麗な星…けれどオレ(ゆずは)の心は曇っていた。曇りどころか土砂降りだ。良くないことが起きている真っ最中。オレはベッドですやすやと眠るふうがのおでこに、水で冷やしたハンカチを乗せ直した。

(はぁ…ふうが、大丈夫かな)

バーベキューして、ふうがにでかいビニールプールと水着を作ってもらい、暗くなるまで外ではしゃいでいた。

ただ、家に戻った時に、突然ふうがが「頭が痛い」と言い出したんだ。初めてではない…今までもふうがが「頭が痛い」と言うことは何度もあった。その時は直ぐに忘れたように良くなっていたけど…。

でもこんな風に、自分から横になって眠ってしまうのは初めてだった。

…すやすやと聞こえる寝息。

(このまま目がさめなかったらどうしよう…)

まさか、霊力を使いすぎているのか?他に考えられるとすれば、「見た目も人格も作りもの」であることが原因、とか?

勿論オレはふうがのことを、1人のお化け…「ふうが」として見ているけどさ。

まあ、本当のふうがは、目玉がいっぱいの怖い見た目をしているお化け…らしいし。それで魂に負荷がかかっているとか、そういう感じの理由もありえるかな?そんなこと、考えたくはないけどさ…。

朝、窓ガラスが割れたことも考えると、心がもやもやする気持ちはとめられない。

ふうがが作ったこの家は幻みたいな物だ。風化することもないし、自然に割れることもありえないはずで。

永遠に変わらないはずで。

永遠?本当に?本当に、そうなのだろうか…。

ダメだ、悪いことばかり考え込んでしまう。ふうがはすやすや眠っている…。そうだ、一度夜風に当たって頭を冷やそう。オレは心が曇りかけたとき、何か黒いものに流されそうな思いになったとき、いつもそうしているんだ。

ふうがを起こさないように、そっと外にでる。生暖かい風が青色の髪をサラサラと揺らした。月明かりが、ひまわり畑を青白く照らしている。

自分だけの時間、自分のための時間。

「…あ、ひまわり、ちょっと枯れてる」

1輪のひまわりの花びらの先がまるで水分を失ったかのように、茶色くなっているのを見つけた。

オレはそのひまわりにそっと右手を添える。

淡い青色の光が蛍のように輝く。

枯れた向日葵は元気を取り戻し、他のひまわりと変わらないいきいきとした姿に戻った。

自分の右手を見つめる。

みつめる。

枯れるはずのないひまわり。

みつめる。

あの日からオレにも使えるようになった、霊力。

みつめる。

ふうがには…まだ内緒。

みつめる。

そのとき背後から、ふうがのものではない、絶対に聞こえるはずがない声が聞こえた。

「ゆずは先輩、お久しぶりっー♪」

覚えている…オレはこの声を知っている!?幻聴?振り返ると…

「…ぇ、さ、ささ、さ、さくら君……?」

確かに彼が立っていた。オレは目を強く擦る。それから10回くらい瞬きをしてみる。それでもさくら君はまだ見える…。自分の右頬を思いっきりビンタしてみる。それでもさくら君はまだ見える。

オレ、壊れちゃった?

ビンタを繰り返すオレを、さくら君?が止めた。

「俺、本物っすよ!ていうか、俺の名前よく覚えてましたね…100年ぶりなのに」

「ひゃ、ひゃくねん?何の話…?」

「悪霊にバレたらまずい、もう少しあの家から離れましょう」

オレの腕をぐいぐいとひく「元バイトの後輩さくら君」は、あの頃と変わらないやんちゃな笑顔をしている。ぐちゃぐちゃに混乱する頭。それでもオレは、その言葉に反応していた。

「ふうがは、悪霊じゃないよ」

「わ、わかりましたよ。でも今はそんなこと言ってる場合じゃないんですって!!

ふうがさんの眠りが深いのは、俺が原因なんです。今朝、俺、窓ガラス割って、家に侵入してたんですよ。で、2人が席を離れた隙に、牛乳にお化けによくきく【睡眠薬】をいれたんです!ゆずは先輩と話したりするために!!」

「…ぇえ!?」

オレは頭も追いつかないままに手を引かれ、ひまわり畑の奥の奥へと進んでいく。

「さ、さ、ささくら君…どうやってきたの?この霊界、来たらもう出られないよ?え、…嘘、もしかして死んじゃったの?」

しばらく歩いた所でさくら君は立ち止まる。一緒にバイトをしていた時は、ちょっとヤンチャな若い子ってイメージだったけれど、こんなに大人びた瞳をしていたっけ?

オレと距離を置いてから立ち止まり、振り返ったさくら君は、自慢げに右足で地面を軽く蹴った。蹴られた地面が、ひび割れて、バキバキと音を立てて陥没する。力が強い…なんて言葉では収まらない、衝撃の光景。

さくら君は、銀色の瞳を暗闇の中でギラギラと発光させ、身長よりも大きな、大きな翼を広げて見せた。

「俺は…この青い星の、星の化身

現世も死後の世界も、全部、俺が管理してるんですよ!」

この霊界の不変と永遠は、根拠のない空想だった。オレたちの変わらない霊界を簡単に変えてしまえるさくら君。

彼が、こんなに恐ろしい存在だったなんて。

オレの「相手の目を見ることでその言葉の嘘を見抜く」特技。さくら君は壮大な話をしているけれど、嘘をついていなかった。

さくら君の正体は、オレの心を簡単に八つ裂きにした。

「星の守り人…じゃあさくら君は星から出られないし、もし死んじゃったらこの星も…そしてこの霊界も、なくなるってこと!?

一緒に仕事してたのに、気が付かなかったな…どこに住んでるのか全然教えてくれなかったけど、まさか天国にすんでいたなんて…。さくら君、頑張ってるんだね」

心を八つ裂きにされたまま、オレはあの頃と同じ顔で笑う。

「そうっすよ。この宇宙にある全ての星には、ひとりづつ星の化身がいるんです。

頑張ってるだなんて…そんな風に言われたのは初めてです。へへ、先輩やっぱり優しいっすね」

「いや、でも、オレ、もう…さくら君に先輩って呼んで貰える資格、ないよ」

ここにいるのは紛れもなく、あの日と変わらないさくら君だ。暗闇と、ゆらゆら揺れるひまわり。オレの心はどこか虚しく締め付けられていく。

忘れたくてたまらなかった現実を、思い出していく。

「…さくら君。ごめんね」

ぽつりと呟く。

そんなオレの肩をさくら君はバシッと叩いた。肩が外れるんじゃないかと思うほどの強い力で。

「うっ、いってぇっ…!」

痛みに視界が少し滲んだ。反射的に顔を上げる、見上げたさくら君は変わらず、調子のいい表情をしていた。

「…ショックでしたけど、花屋にいた頃より、声もでかくなって、いきいきしてる先輩の顔みたら、ショックな気持ちも、全部どっかいっちゃいました

そうだ!ゆずは先輩の元カノ「ささめき」!あの子、今は天国にいて、「星の化身の相棒」として一緒に働いてるんです♪みんな結構楽しく暮らしてますよ、だから〜」

……?

「え?ささめきって、誰だっけ」

「…ゆずは先輩、ささめきのことは忘れちゃったんですか!?ぇえ…。せっかく伝言預かってきたのに…「悪いとは思ってるわ。だけど私より、ゆずはの方がおまぬけよ。じゃあお元気で♡」って…まぁいいや。

…あれ、ゆずは先輩?」

両手で顔をおおい、項垂れたオレ。オレは現実を捨てたんだ。なにも、考えたくないんだ。オレは変われた、変われたから…もうなにも、変わりたくない。怖い、怖いんだ。こわい…。

「ゆずは先輩!!な、泣いてる…」

さくら君は、揺さぶっても固まって動かなくなったオレに、力ずくでちぎったひまわりを差し出す。そして強気な口調で言った。

「ほら、ゆずは先輩花好きでしょ、元気だして!

まだ話は終わってないですよ、先輩が今悩まないといけないのは…ッ」

オレはその言葉を遮るように、差し出されたひまわりを強引に受け取る。そして勢いよく顔を上げた。笑ってみせる。

「…ありがとう、大丈夫、わかってる。さくら君…オレと遊ぶために、この霊界に来たわけじゃないよね。

もっと大きな目的があるってことくらい、察してるよ。オレも嫌な予感はしてたんだ。 いったい、この霊界で何が起こってるの?」

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