【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】11話

「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」

小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。

「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)

ここからは他のゲームや小説の内容も少しずつ登場し、物語が接続されていきます☆

関連作品をまとめた記事もまた作りたいです。時系列表もね…(゜o゜)。

オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」公開☆

読み始める前に

異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)

【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】11話 本文

ー星の化身を巻き込むデスゲームが開催される少し前ー

…僕(マシロ)は悩んでいた。僕は残酷なデスゲーム主催者なのに。お兄ちゃん達の命を奪う勇気がでないことを、悩んでいた。後回しにしてしまっていた。どうするべきか、迷っていた。

迷う必要なんてないのにな。だってお兄ちゃんは、僕から魔法と夢を奪ったんだ。大嫌い。しんじゃったって、構わない。

構わないはずなのに。

はぁ、僕のバカ。

……本当はわかってる。

それだけは、できないとわかっている。

僕は何があってもお兄ちゃんのことを大切に思っている。そのことに気が付いちゃったから。

どうして、もっと早く、気が付かなかったのだろう。今更気がついても、もう、なにもかもが遅いんだ。

…お兄ちゃんは頼りない人だ。子どもの頃から弱虫だった。いじわるな子から、嫌なことを言われた時も、泣いてばかり。言い返しているところなんて、見たことがなかった。

言いたいことがあっても、話しかける勇気がでなくて、言わないことが多かった。お願いされたら断れない。お兄ちゃんは僕と違って、不器用で、いつも誰かに謝っていた。

でも、お兄ちゃんは勉強熱心で、真面目だった。そして優しかった。

布団の中で僕の手をぎゅっと握って、「だいすきだよ」と言ってくれた。その様子をみて、お父さんとお母さんは、ニコニコ笑っていた。

愛されていることは、僕にとっての日常だった。だから、意識したことなんてなかった。それよりも僕は魔法を極めたいと思っていた。評価されたい、偉くなりたい、歴史に名を残したい。そういう、特別な何かが欲しかった。

だから、魔法を失ったとき、全てを失ってしまったような気がした。僕はもう二度と特別な存在にはなれないんだ。そんな風に、絶望した。

仕事を頑張って、レッド☆デビルカンパニーを大きくして、タコタコタコ星の皆を守りたい。ほろびた星を治せる回復魔法を使えるような、強くて優しい魔法使いになりたい。お兄ちゃんと夢を追いかけて、叶えたい。…夢は沢山あったけど、何もかもが無意味だった。そう思った。

無意味なことなんて、もうやりたくない。だから、正反対の自分になって、全て壊してしまおうと思った。

弱虫な負け組だと、思われたくなかった。お兄ちゃんよりも使えない奴だと、思われたくなかったんだ。

…夢の中で、「王子様」がささやいた。

王子様「弱虫な負け組だと思われたくないのなら、勝ち続ける悪人になってしまおうぜ。

新しい夢を見つけて、新しい自分に生まれ変わってしまえばいいんだ。

元の自分に戻れなくなるような、残酷なことをしてしまえばいい。お前には才能があるから、どんなこともできるはず。

ひとりが寂しいなら、俺を見つけてみろよ。本当の愛を教えてやるから。」

きっとささやいたのは、自分自身だった。でも僕は、王子様探しに夢中になった。デスゲームを開催し、「正体はふゆの」だと嘘をついて、クロサキ君という他人を捕まえた。

嘘をついたまま、愛されるのは寂しかった。

正直に生きるって、幸せなことだったんだな。愛されるって、当たり前のことじゃなかったんだな。特別なことだったんだなって思いながら、クロサキ君に「愛してる」の言葉をオネダリした。

お兄ちゃんを嫌ってみて、はじめて気がついた。お兄ちゃんは、僕のかわりに皆に謝ってくれていたんだ。

でも、お兄ちゃんにも恋人ができちゃった。もうお兄ちゃんは、僕だけのものじゃないんだなって、寂しくなった。

お兄ちゃんと彼は、正直者で好き好き同士。ふたりの絆が羨ましいと思ってしまった。

「だいすきだよ」って言い合って、信じ合っているのかな。「ごめんなさい」とも言えるのかな。惨めだとか恥ずかしいだとか、そんな風には思わずに、自然に「ありがとう」って言えるのかな。

お兄ちゃんは魔法が使えなくなっても、夢の続きを追いかけた。侵略する仕事をやめて、強くて優しい魔法使いになるために一歩踏み出した。お兄ちゃんは、すっごく幸せそうだった。

失うものもない、他の人の大切なものを奪うことでしか自分の心を癒せない。ひとりぼっちの僕とは大違いだ。

僕はお兄ちゃんをころせない。お父さんもお母さんも、ころせない。宇宙を舞台にしたデスゲームを開催できたとしても、タコタコタコ星をほろぼすのは怖い。この怖さだけは乗り越えられない。乗り越えてはいけないんだ。乗り越えたいとは、思っているけれど。無理なんだ。

なんて、自分勝手なんだろ。

社長の僕はタコダイオウの秘密を知ってる。でも結局僕は知らないフリをして、本物ではなく、ロボットのタコダイオウを参加させることにした。逃げて誤魔化すことにした。

空っぽの僕にあるのは、嘘だけだ。そんな現実は苦しいから、もっともっと闇に沈んでしまいたい。自分に酔って、酔いすぎて、何もわからなくなってしまいたい。でも、それももう、限界かも。

…大切なものは、すぐそばにあったのに。

だから、こんな風に思っちゃった。

宇宙を舞台にしたデスゲームを開催する夢を叶えたら、僕はその夢の途中でしんでしまいたい…なんて、思っちゃったんだ。僕はいつのまにか、自分のしに場所を作ろうとしていたんだ。

クロサキ君を裏切りたくはない。でもクロサキ君は、嘘つきな僕を心から愛することはないでしょ?そんな君に「お前は嘘つき」だと否定されて、いのちまで奪われてしまったら、楽になれるだろうな。

他の人の大切なものも、自分の大切なものも、ボロボロにしちゃった。奪って笑う、悪い人になっちゃった。もう戻れないところまで来た。今更やり直したいとも思わないから、罰を受けておしまいにしたいんだ。

鬱々とした気持ちを、笑顔とデスゲームでぐちゃぐちゃに塗りつぶしていた。

ーー

でも、あの日の夜。僕の心は救われた。

僕(マシロ)とクロサキ君が住んでいる、森の中にある大きな洋館に、お兄ちゃんとミニキス君とゆるキャラのタコがやってきたあの日。

…僕はクロサキ君の言葉に救われた。

まだ間違えたままだ、変わらないままだ。

それでも、生きたいと思えた。

雨上がりみたいな気持ちになれたんだ。

ーー

あの日…僕は、お兄ちゃん達を地下室に閉じ込めようとして、大失敗して、落ち込んでいた。ミニキス君は想像以上に勇気があって、強かった。

クロサキ君にも、お兄ちゃん達の姿を見られちゃって。僕はクロサキ君に嘘をついて誤魔化した。

(マシロ(イカパチ)「…本当の僕を見つけたい。魔法に頼らない強くて新しい僕になりたい。そう思って、自分にふゆのっていう新しい名前をつけた。

真っ白の画用紙、先の見えない人生に色をつけたくて、誰にも頼らずさまよっていた。

その後、クロサキ君と出会えた。やりたいことを見つけられて、僕はマシロになれたんだ。」)

クロサキ君には、僕の気持ちなんてわからない。僕は、そう思い込んでいた。

でもクロサキ君は「迷いそうな時は、俺を見ればいいんだ」なんて言って、僕の心の鍵を開けた。

(マシロ「受け止めてくれるの?僕の強さだけじゃなく、弱さも…隠し事だらけの過去も、許してくれるの?」

クロサキ「当たり前だろ!俺はマシロと一緒に、しぬまでデスゲームと恋を楽しみたいんだ。愛し合いたいんだ。

マシロは悪に染まった俺の人生を抱きしめてくれた。生きる場所をプレゼントしてくれた。感謝してる。

イカパチでも、ふゆのでもねぇ、俺は今はマシロを愛してるから。

どんなことがあってもそばにいる。全てを捧げる覚悟はできてる。

まかせろ!マシロの兄ちゃんは、マシロが感動するくらいの、最高のデスゲームで負かして追い詰めて俺がころしてやるよ!

マシロが不安になったときは、何度でも言ってやる。マシロの居場所は俺の隣だけだって、心と体でわからせてやる!

俺からは逃げられねぇぜ♪」)

僕はひとりじゃないんだ。その瞬間、僕は恋に落ちちゃった。

寂しさを埋めてくれる都合のいい王子様ではなくて、クロサキ君というひとりの人間のことが好きになっちゃった。きっとクロサキ君は僕と出会う前から、王子様だったんだ。本物の王子様だったんだ。

寂しくて切なくて、新鮮な気持ち。これが恋か…、恋ってこんな味なんだ。こんな気持ちを知っちゃったら、僕、おかしくなっちゃうよ。

さっきまで心を支配していた自分をおわりにしてしまいたいという闇の感情も、恋に上書きされてしまった。しに場所なんていらない。それよりも僕は、クロサキ君に愛されたい。

クロサキ君に愛される自分になりたい。

僕はクロサキ君にこう言った。

(マシロ(イカパチ)「クロサキ君…そんなの、優しすぎるよ。やっぱり、僕にはクロサキ君しかいないんだ。クロサキ君は僕の王子様なんだ♡♡

クロサキ君となら、どこまでもいける。どんな夢も叶えられる!

あは、はは… … 大好き。愛してる。

だから、お願いどこにもいかないで」)

僕、その時、どんな顔してたんだろ…思い出すと、少し恥ずかしいや。

その日の夜。同じ布団にくるまっていたクロサキ君が、僕を抱き寄せて言った。

クロサキ「今日のマシロ、なんか…いつも以上にかわいいな」

僕をぎゅっとだきしめて…胸に手をあてて…

クロサキ「どうして、こんなにドキドキしてるんだ?俺のこと、惚れなおしたのか?」

マシロ「えっと…」

クロサキ君は体を起こして、布団に手をついて、僕を見下ろした。押し倒されているみたい…。

クロサキ「大丈夫、襲ったりしないから」

クロサキ君と出会ってから随分経つし、キスをし合ったり、肌を触れ合わせることはあったけれど…僕はお股を見せるのがはずかしくて、夜もお風呂の時も、いつも隠していた。

だ、だって!僕のお股のそれはすっごく小さいんだ。お兄ちゃんは大っきいのがついているのに…コンプレックスだった。肌や胸はきれいで自信があるから、クロサキ君に見せてもいいんだ。気持ちいいし、触られるのも好き。

クロサキ「俺はマシロと一緒にデスゲームできるだけで幸せだから、気にするなよ。…でも、少しだけ触ってもいい?」

マシロ「…うん、触ってほしい。ねぇクロサキ君、僕のこと、好き?」

クロサキ「大好きだぜ。あはは、今日のマシロ、やっぱりいつも以上にかわいいな…素直な感じがする。いつも、そうやって、俺に甘えていいんだぜ?俺はどんなマシロも好きだから、自然体でいてくれよ」

マシロ「あ、ありがと…」

心からありがとうって言っちゃうなんて、僕らしくなかったかな?また、恥ずかしい気持ちが増した。

マシロ「クロサキ君、今日は最後までしてみたい」

クロサキ「…マジ?わかった、ありがと。俺もはじめてだから、上手くいかないかもしれないけど…絶対、優しくするから。」

クロサキ君が僕を撫でながら、僕の服を脱がしていく。クロサキ君は、心も体も嬉しそうだった。とうとうパンツまで脱がされて、裸んぼにされた僕は、「嫌じゃない…?」と聞いた。

マシロ「ぼ、ぼくのここ、小さいから…。かっこよくないから、見られるのが恥ずかしかったんだ。…えっと、クロサキ君のは、おっきいね

…クロサキ君?」

クロサキ「マジか……」

クロサキ君?名前を呼んでもクロサキ君は動かない。クロサキ君は僕のお股を見つめたまま、岩みたいに動かなくなってしまった。

僕のここが小さいの、そんなに嫌だったの?恥ずかしくて寂しくて、涙がたまっていく。

クロサキ君はカタカタと震えている。そして、自分の顔を両手で覆って、仰け反って叫んだ。

クロサキ「マジか…マジかマジかマジかマジか、こんなのおかしいって嘘だろ!嘘だ!!

ンア゙ア゙ア゙ァァァーー!

マシロ「な、なに!?どうしたの!?」

クロサキ君は僕のお股を二度見してから、「嘘じゃない、ア゙ア゙ア゙ー 」と叫びながら、布団をくしゃくしゃにして寝室から走り去って行った。

慌てて追いかけた。

クロサキ君はリビングの床で大の字になって、天井を眺めながら絶望していた。

マシロ「ねぇ、流石にその反応は失礼だよ?僕、悲しいよ」

クロサキ君は「悲しいのは俺だ」と、起き上がって言った。立ち上がり、向き合って、僕の肩をガシッと掴んだ。

クロサキ「お前…ふゆのじゃねぇな!?マジで誰だよ!!!」

えっ……?

クロサキ「ふゆのは…本当の名前も性別も、何も教えてくれなかったけど…。突然絵を描いて欲しいって言いだして、服を全部脱いで、きれいな体を見せてくれたことがあったんだ。

ふゆのに、ち○ちんは、ねぇんだよ!!

くっそぉ、マシロと過ごしながら、ふゆのはそんなこと言わないだとか、そんな仕草しないだとか、矛盾してるなぁとか、色々思うことはあったけど。ふゆのは俺のために、生まれ変わってくれたんだよな…って、自分なりに納得して、受け入れてきたのに。

やっぱり、別人かよ!しかもちん○んついてる。ちん○んついてる。」

マシロ「え〜…あいつ、男の子に見えたけど…違ったの?え?わかんないや、し、しらなかった。

ぼ、僕、男の子だって言わなかった?そういう話もしたことあったでしょ?僕、どうみても、男の子じゃん。」

クロサキ「うるせぇ、マジでちん○んついてるとは思わなかったんだ!!!見えそうになっても、脳が勝手に見なかったことにしちまうくらい、現実から目を背け続けていたんだよ。知りたくなかったんだよ、俺は!!!

は〜、察した。全て理解した。ふゆのは、もうこの世にいないんだな…。」

マシロ「……。(クロサキ君と一緒にいられるのは、ここまでか。自業自得だ、何もかもがおしまいだ。)」

クロサキ「そんな顔するなよ。ちん○ん以外は、薄々気が付いていたから。

はぁ。…ふゆのをころしたのはマシロだけど、きっかけは俺だよな。俺がふゆのを巻き込んでしまったんだ。俺は、悪人だ。変われない、どうしようもない悪人なんだ。純粋な奴と恋なんてできない。もう二度と、そのことで迷ったりしねぇ…。

…大丈夫、そんな顔するなよ。俺はずっとマシロが好きだし、安心しろって。

俺はこれからも、悪人として、マシロと生きていくつもりだからさ。

マシロは俺と同じ悪人だから安心するんだ。俺とお似合いで、価値観も合う。可愛い、最高の恋人だ。

ひとりぼっちにはさせねぇよ。」

マシロ「クロサキ君、ありがとう」

クロサキ「人にはひとつやふたつ、秘密があるものだ。でも、トラウマになるからこの話をネタにするなよ?舞台で面白おかしく話したりしたら、俺はデスゲームを放棄して……泣くからな。」

マシロ「わ、わかってるよ。気をつける」

クロサキ「マシロの本当の名前はイカパチだっけ?真実を教えてくれよ」

マシロ「……わかった。ソファで、全部話すよ。まずは服着て、風邪ひかないようにしよう。」

クロサキ「はぁ…アア……」

ーーー

…過去のデスゲーム【控え室 】…

デスゲーム主催者と、小柄な参加者が、向かい合って話していた。参加者の名前はふゆの。本名は不明。儚げな瞳、白と水色の柔らかくて長い髪。

デスゲーム主催者のマシロは、残酷な展開に胸を躍らせていた。

ーーー

マシロ「あはは!ふゆの君はゲームに負けちゃった☆あと一回勝てば、生きてここから出られたのに、惜しいねぇ。

15分後に、君のいのちを奪うための特別なショーを開催するよ!ふゆの君には最後のチャンスをあげよう♪

クロサキという男の情報を教えろ☆

教えてくれたら、助けてあげる…かもね」

ふゆのは「ふーん」と顔色変えずに呟いて、楽しげな僕の様子を眺めていた。

ふゆのは僕(マシロ)に攫われて、ゲームが始まったときから、ずっとつまらなさそうな様子だった。慌てることも、怖がることもなく、最初から諦めているみたいな顔をしていた。

でもふゆのは強かった。

僕が何日もかけて考えて作った、カードゲームのルールを直ぐに理解し、他の参加者を騙し、平然と勝ち進んだ。

あとは僕との勝負に勝てばおしまいだった。…それなのにふゆのは「もう僕の負けでいいよ。こんなことしたくないし」と、最終決戦から逃げて、自ら敗北を選んだ。

弱い子。何を考えているのかわからない。不思議な子だと思った。

ふゆのは寂しそうに「こんな所、早く出たいよ…。でも、もう手遅れかな」と呟き、素直にクロサキ君の情報を教えてくれた。好きな人の情報を手に入れられた興奮を隠しきれずにニヤニヤしちゃう僕。ふゆのは「クロサキ君のこと、大好きなんだね」と、微笑んだ。その後、鼻で笑った。

ふゆの「…でもマシロ君は、クロサキ君に相応しくないと思う。多分、気が合わないよ。」

マシロ(イカパチ)「え〜?何が言いたいの」

ふゆの「クロサキ君は悪い人。正しくて優しい人になりたいとは思っているけど、自分を変えられない、ゆがんだ心の持ち主なんだよ。

でも、それは恐らく、クロサキ君が育った環境に原因があるんだ。悪いことをすることが正しいという環境で育ってきたんだと思う。きっと、クロサキ君はそういうタイプ。

そして、物心ついてから外に出て、優しい環境を知った。新しい世界を、価値観を知った。

クロサキ君はその優しい環境こそが、正しいと思って、憧れた。でも、過去と教育が体に染み付いているから、簡単には変えられないの」

ふゆのは僕のまわりをゆっくりとまわるように歩きながら、輪郭のはっきりしない話をしている。

話しながらゆっくりと細い指を動かして、上着のボタンを外している。君の、艶かしい仕草なんて、興味ないよ。

ふゆの「ねぇ、マシロ君は?小さい頃、どんな環境で育ったの?

言わなくても僕にはわかるよ。優しい環境で、愛されて育ってきたんでしょ?自分の価値観が正しいか正しくないかなんて、考える機会もなかったんじゃない?それは、幸せだった証だよ。

…でもマシロ君は悪い人に変わりたいんだね。

クロサキ君は悪い人だけど、心の底では優しい人になりたいと思っているし、罪悪感がある。だから、悪い人になりたいと思っている君のことなんて、好きになれないと思うよ。

本質をとらえられてない…マシロ君って甘いんだ。だから僕は、クロサキ君とマシロ君はお似合いじゃないと思うの。」

マシロ(イカパチ)「はぁ、もう話さなくていいよ。つまらないこと言うなら、ショーがはじまる前に、〇しちゃうよ?

僕は甘くないし、クロサキ君は悪人だ。クロサキ君にプレゼントするために、最高のデスゲームを、入念に準備してるんだ。そんな一途な僕がクロサキ君に相応しくないわけないでしょ。

クロサキ君にフラれちゃった可哀想な君には、わからないよ。僕のことも、クロサキ君のことも、君自身のこともね」

ふゆの「そう言うなら…どうして僕はクロサキ君にふられたのだと思う?」

マシロ(イカパチ)「君が悪人じゃなかったからでしょ。クロサキ君は純粋な心を持つ君に対して、引け目を感じたんだ」

ふゆの「少し違うと思うけど」

マシロ(イカパチ)「違うの?」

ふゆの「…うん。僕のこと、本当に調べた?

僕もマシロ君と同じで、優しい環境で愛されて育ってきたよ。でも僕は、毎日思い耽って(ふけって)はいるけれど、優しい人には向いてない気がしてる。

…特に、あの日の僕は典型的だった。いじわるをされている親友の力になりたいと思って、親友と一緒に、いじわるをしている子のところへ、直接話をしに行ったんだ。

反省して、頭を下げて欲しかっただけなのに、話しても伝わらない子だった。謝らないのなら、せめて罰を与えたいと思った。親友の心を傷つけたという罪を…痛みをわからせたいと思った。

悪い子は痛みを知らないんだ。

僕はポケットからハサミを取り出した…悪い子に痛い思いをさせて、わからせるために。

でも、思いついた。…断罪するのは僕じゃない、被害者は親友なんだ。親友が行うべきだと。

泣いて嫌がる親友に無理やりハサミを握らせて、逃げられないように両手で押さえつけた。ハサミを動かすのを手伝ってあげた。

親友の汗まみれの手の感触と、悪い子の指を切る感触。骨がかたくて、切り落とすことは出来なかったけど、興奮した。

結局親友は、僕を押しのけて、泣いて逃げて行っちゃった。その時、親友が、小さな声で「ひとごろし」って言ったんだ。

困惑した。ころすつもりなんて、なかったのに。ころすなら、まずは首や目を切るでしょ?本当に、なかったのに。なかったのに…。

それから、その悪い子は僕の言うことを何でも聞くようになった。僕がやったことも秘密にしてくれたし、いじわるなんてしない、温厚な人になった。世界は丸くおさまった。

でも、親友は学校に来なくなった。心配だから探したよ…親友は、目に見えない誰かと話すような、変わった子になっちゃってた。

その様子を見て、僕は悲しい気持ちになって、悩んで、自分の行動を振り返って…少しづつ自覚した。

ハサミをポケットに入れていたのは、偶然じゃなかったのかも。僕は無意識に、誰かの肌を切る感触を知ってみたいと思って行動していたのかも。親友を助ける、なんて口実だったのかな。僕はただ、やりたいことをやるために行動していただけだったのかなって。

…でも、考えても無意味だった。だってみんな、そうでしょ?やりたいことをやるために生きている。

正しいこと、正しくないこと。その境界線なんて曖昧。正しくないことをしてしまったとしても、正しかったということにするのは簡単。僕は若いから、誤魔化しやすいし。

相手が一番言われたくない言葉や、繊細な本心を見つけて、くすぐる遊び。それも、あれもこれも、やめておいた方がいいことだと気が付いたけど、そのことを、誰にも言わなければ良いだけの話。

だから結局、悩む必要なんてなかった。優しい人に囲まれていて、皆から頭が良くて優しい人だと思われている。親友を傷つけたあとも変わらず、僕は居心地が良いままだった。

でも、なんだか疲れちゃった。だって…親友があんなに傷ついてしまうなんて思わなかったから。優しい親友なら僕の心をわかってくれると思っていたから。親友のことを…モジ君のことを何もわかっていなかった、甘えていたんだ。

じゃあ、僕はどうすればよかったのかな。どんな未来を望んでいたのかな。

答えが見つからなくて、自分を見つめ直したくて、モジ君の真似をしてカウンセリングをうけることにした。でもバスに乗って通うのが少しずつ面倒になって、家出した。その途中にクロサキ君と出会った。

クロサキ君と恋人のままでいられたら、僕はクロサキ君の色に染まって、混じり気のない悪人になってしまっていたかもね。でもクロサキ君は、僕に、そんな風になってほしくなかったみたい。でもクロサキ君と一緒にいても、優しい人にはなれなかったと思う。それで、クロサキ君は僕と別れたいと思ったんだと思うよ。クロサキ君は僕を守ってくれたんだ。

クロサキ君とお似合いなのは、クロサキ君の真っ黒の画用紙を、真っ白に塗り変えてしまえるような人だよ。強くて素直で前向きで、誠実でかわいい人。マシロ君とは正反対のね。」

何?こいつ。もうすぐしぬのに、何がしたいのだろう?話している内容も、頭に入ってこない。ただ、イライラするだけだ。

ふゆのはボタンを三つ外し終わったところで手を止めた。

ふっと笑ったあと、空いた服の隙間に手を入れて…素早い動作で、何かを取り出した。

それが何なのか確認したときには、もう、遅かった。僕の帽子は銃弾に撃ち抜かれて、吹っ飛んでいた。ふゆのは銃を持っていた。

ふゆのは長々と話しながら、隙を伺っていたのだ。

ふゆの「コレ、参加者のひとりが隠し持っていたから、もらったんだ。使い方も教えてもらった。帽子を狙ったから、マシロ君はしなずに済んだけど、もし体を狙って引き金をひいていたら、未来は変わっていたかもね。

…そろそろ15分経つんじゃない?早くショーを開催して、全て終わらせてしまってよ。

もう、疲れちゃった。」

マシロ(イカパチ)「…あ、ッ、最悪だ!バカにするなよ、ショーは中止だ!!君は、今、この場でころす!どちらが強いかわからせてやらなきゃ!!!」

僕はふゆのを突き飛ばし、銃を奪って頭につきつけた。心臓の音がうるさい。早く、はやく、やらないと。黙らせないと。ムカつく…!!

ふゆの「……今、自分の気持ちがやっとわかった。僕は後悔しているんだなって、怒られたかったんだなって…そう、思っていたんだなって。

モジ君の言葉をもっと聞けばよかったな。モジ君の歩幅に合わせて行動できたらよかったな。そしたら本当の親友になれたのかな。モジ君が悲しみを乗り越えて、元気を取り戻せますように…願うことしかできないね。

今更反省して夢をみても、遅いよね。

だって僕の夢と未来は、マシロ君に壊されてしまうから。

…マシロ君は可哀想な悪魔。

ふふふ…はぁ、わかる?僕を撃ち抜くことは、マシロ君の未来を撃ち抜くということでもあるんだよ。

一線をこえたら、もう戻れなくなるよ。嘘つきは幸せになれないんだ。

僕の存在が君の嘘と罪を深めて、取り返しのつかない残酷な未来につれていくんだよ。

優しい人になるって難しいよね。後悔した頃には、全ておわってるものだから。でも、手放すのは簡単。簡単だったでしょ?

嘘をついて騙すのも、結構簡単だから安心しなよ。正直に生きる方が難しーー … …

バン

マシロ(イカパチ)「…可哀そうなのは君だよ、ばーか☆」

ーーーー

ーーー

ーー

クロサキ君とソファに並んで座って、僕の過去や本当の気持ち、悩みを全て話した。クロサキ君は疲れた顔をしながらも、最後まで聞いてくれた。

クロサキ「ふゆのは賢くてミステリアスな学生だった。時々、平気で恐ろしいことをするから、人によっては、怖くて強そうな人間にみえるだろうな。

でもそれは表面だけで、内面はガラスみたいに透明で繊細なんだ。ふゆのの正体は、傷つきやすい子どもなんだよ。

ふゆのが名前や性別を言わないのは、自分について調べられないようにするためで、別に…重大な秘密があるわけじゃない。

自分について…っていうのは、例えば、親とか住所とか学校とか個人情報とか、そういうことだよ。悪人に調べられたら、無関係なヤツらを巻き込んでしまうかもしれないだろ?ふゆのはなんでもない日常が崩れてしまうのを怖がっていただけなんだ。

あいつは自分自身を隠すことで、日常を守ろうとしていた。器用に隠して、振る舞って、…そしたら、失敗するのが怖くなっちまったんだと思う。それで、寂しくなって、ひねくれたんだ。

俺は俺がふゆのをダメにしちまう前に、親のところに帰そうと思って別れたんだ。」

「でも、ゲームに負けたのなら仕方ねぇか〜、結局は強いやつが残るんだ」とつぶやきながら、クロサキ君は立ち上がり、キッチンの方へと歩いていった。冷蔵庫をあけて、棒アイスを取り出す。パクッとくわえて、「マシロも食べるか?」と聞いた。僕は「いらないよ」と答えた。

ソファに座り、アイスをもぐもぐ食べているクロサキ君の横顔をみつめながら、僕は考え事をする。クロサキ君に聞きたいことがあるけれど、聞いていいのか迷っていた。

…でも、今なら、何でも話せる気がする。

聞いてしまおうか。

マシロ(イカパチ)「クロサキ君の本当の名前はなんていうの?」

聞いちゃった。

クロサキ「はぇ?どういう意味だ?俺はクロサキっていう名前だぜ?」

クロサキ君は僕の突拍子もない質問に、立ち上がって困惑している。でも、これでいいんだ。

僕は、ずっと気にしていた。

…数日前。クロサキ君が用意してくれた、金色の腕輪のことを。

ーー

僕とクロサキ君は、「死より恐ろしい罰ゲームとは何か」ということについて、話し合いを重ねていた。宇宙を舞台にしたデスゲームを盛り上げるために、お互い必死だった。そしてクロサキ君が思いついて作って、持ってきた試作品…それが、この腕輪だった。

クロサキ君は、特別な光を発する腕輪だと説明してくれた。

「特別な光は恐ろしいぜ?その光に照らされたゲームの敗北者は死んだ後、永遠の悪夢を見続けるんだ。死んだ後も悪夢にうなされ続けるなんて、最高の罰ゲームだろ?」と言っていた。

特別な光に関する技術はレッドデビル☆カンパニーの研究者から盗んだものらしい。

その時の僕はそんな技術があるんだな〜と感心して、怪しんだり難しく考えたりせずに、納得していた。

でも、その夜…。「悪夢をみせる特別な光」がどんな技術なのか詳しく知りたくなって、こっそり起きた。知らない魔法や技術は、しっかり勉強して理解しておきたい。好奇心旺盛で用意周到…それが僕だ。

クロサキ君を起こさないようにリビングに移動し、特別な顕微鏡でのぞいたり、魔法陣に書き起こしたりして、腕輪について分析して遊んだ。

…腕輪の正体は、時間の宝石だった。

信じられなかった。怖かった…。

多分、クロサキ君は、僕が時間の宝石のことを知らないと思っていたのだろう。

でも僕は、宇宙一侵略が得意な組織、レッドデビル☆カンパニーの社長だ。他の星の力や歴史について、誰よりも興味があって、詳しいんだ。

侵略した星のサンプルを集めて、星の力や魔法や、文明の研究をしてる。なぜ研究をしているのか。強くなるため?それだけじゃない。

それは…時間の宝石が欲しかったからだ。

作り出すことができれば、とんでもないビジネスになる。武器になる。誰もタコタコタコ星に逆らえなくなる。デスゲームももっと恐ろしく、面白くできる。

時間の宝石は、今はもういない黄色の星の化身が作り出すことができた魔法道具だ。黄色の星の化身は、「自由で幸せな宇宙に転生することができる時間の宝石」を大量に作って、自分の星の民に分け与えて、全員を幸せにしようとしていた。でも黄色の星は侵略され、黄色の星の化身は、自分に時間の宝石を使って逃げた。そして星は滅んだ。

その時落とした三つの時間の宝石。それがこの宇宙に残った最後の時間の宝石だったけど、今はもうない。作り方も不明。だから、実物を手に入れることは、簡単なことじゃない。

時間の宝石に関わる研究結果や知識をかき集めているけれど、複雑な魔法の方程式が邪魔をして、作り出すことはできず、僕の研究も低迷していたんだ。

でも、なぜかクロサキ君という一般人が、時間の宝石を持っていた。時間の宝石は繊細で、ヒビひとつ入れば、誤作動したり、壊れてしまうともいわれている。クロサキ君はどうやって、腕輪に加工したのだろう。それほどの技術があるというの?

そして、実物を目の前にしてわかった。顕微鏡を覗いて、魔法陣を書き起こしていく度に、変な汗が流れてきた。

…これは、この宇宙の技術じゃない。

…どういうこと?どういうつもり?

考えてみれば、金色の宝石を見て、「これは時間の宝石に間違いない!本物だ!」と見極められる人なんて、宇宙に数人しかいないはずだ。恐らく、これから対決する青色の星の化身なら、簡単に見極められるだろう。クロサキ君も、それくらいのことはわかるはずだ。

僕だけが時間の宝石のことを知らずに、慌てちゃう状況…面白いだろうね。追い詰められちゃうかもね。時間の宝石が発動して、取り返しのつかないことになれば、デスゲームのスパイスになるだろうね。つまりクロサキ君は、ゲームをかき乱して盛り上げるために、僕を騙そうとしてるんだ。そうでしょ?

…布団に戻って考えた。

時間の宝石はこの宇宙では実現不可能な魔法がいくつもかけ合わさって、作られていた。

黄色の星の化身はそれほどの能力があったのだろうか…。でも、黄色の星の化身は、星の民を守りきることもできずに、あっさりと負けて侵略されたんだっけ。時間の宝石を作り出せること以外は、一般的な星の化身だったんだ。

クロサキ君の気持ち、正体。考えてもわからないや。

ぐぅ〜とお腹が鳴った。

そのとき、家族との思い出を思い出した。

僕がまだ小さかった頃の休日。料理が得意なお母さんが、料理が下手で何も作れないお父さんにグラタンの作り方を教える!と言い出したんだ。グラタンは僕とお兄ちゃんの大好物だった。お兄ちゃんとウキウキしながら、その様子を見ていた。

お母さんに教えてもらって、手順を覚えて、お父さんはグラタンだけは作れるようになった。手順を覚えただけで、概要は理解できてないから、少しでもアレンジすると失敗するし、お父さんはその後も料理は全くできないままだった。でもお母さんが教えたグラタンだけは美味しく作れるから、休日になると作ってくれた。

…黄色の星の化身も、お父さんと同じだったのかも。誰かから教わったのかな?レシピを手に入れたのかな?時間の宝石だけは作れたのかな。

この宇宙に、宇宙を超えた魔法を持ち込んだ誰かがいるんだ。

……もしかして、クロサキ君なの?

ふゆのが言ってたな…「恐らく、クロサキ君が育った環境に原因があるんだ。悪いことをすることが正しいという環境で育ってきたんだと思う。きっと、クロサキ君はそういうタイプ。そして、物心ついてから外に出て、優しい環境を知った。新しい世界を知った。クロサキ君はその優しい環境こそが、正しいと思って、憧れた。でも、過去と教育が体に染み付いているから、簡単には変えられないの」って。

…今ならふゆのが言いたかったことが分かる気がするよ。

クロサキ君の過去が知りたい。君は、どこから来たの?

その夜は眠れなかったな。

ーー

マシロ(イカパチ)「クロサキ君の本当の名前はなんていうの?」

クロサキ「はぇ?どういう意味だ?俺はクロサキっていう名前だぜ?」

しらばっくれているクロサキ君。僕は金色の腕輪を持ってきて、つきつけた。

マシロ(イカパチ)「僕は時間の宝石のことを知ってるんだ。これは、宇宙を超えた魔法だよ。適当な嘘、つかないでよね」

クロサキ君は「なーんだ、知ってたのかよ。見直したぜ」と、唇をとがらせた。時間の宝石を手に持って、くるくるとまわしはじめた。

クロサキ「別に俺、すごいやつじゃねぇよ。俺は俺、クロサキだ。赤色の欲望に抗えない、魔法嫌いの、どうしようもないクズ悪人。」

マシロ(イカパチ)「も〜!僕、秘密いっぱい話したんだから、クロサキ君も教えてよ〜!ねぇ、クロサキ君はどこから来たの?」

クロサキ「…」

クロサキ君はどこからか、手鏡を取り出して、みせてくれた。…星と金魚の模様が描かれた、不思議な手鏡。それがクロサキ君の秘密?クロサキ君は、イタズラな笑顔を見せた後、すぐにそれをしまった。

クロサキ「宇宙を巻き込むデスゲームが終わったら、全部話すつもりだった。ゲームが終わったらな。

そんなことより、恋とデスゲームを楽しもうぜ。それが最優先事項だろ?

俺のいちばん大切にしているものを当てて、俺に勝ってみろよ♪マシロなら余裕だろ?

お互いの嘘と本音を解き明かして、真実の愛を手に入れるんだ。

俺はこれからはじめるデスゲームに、マシロとの未来を賭けている。

恋とゲームを盛り上げるためなら、…時間の宝石なんて、いくらでも「作って」やるからよ♪」

マシロ(イカパチ)「…ふーん。クロサキ君の気持ちはわかったよ。今、お互いを探りあっても、つまらないって言いたいんだね。

ふふ、最優先事項は、恋とデスゲーム。そうだよね、僕もそう思う。

あはは、最高…僕の知らないクロサキ君が、僕と戦おうとしてる♡なんて刺激的な恋なんだろう。

勝ち負けが全てだ。過去も未来も秘密も関係ない、どうせ敗北者は全てを差し出すことになるのだから。

僕は負けない。クロサキ君のいちばん大切にしているものを当ててみせる。時間の宝石も、その手鏡も、…何にも、誰にも、僕の邪魔はさせないから。

恋もゲームも、クロサキ君も、僕のもの。

それを、わからせてあげる。」

キスをして、楽しみだねって笑いあった。

ーーーー

マシロ達が宇宙を舞台にしたデスゲームを開催する直前。

ーーーー

タコタコタコ星にある、とある製菓の専門学校。教科書がつまった重いバッグを背負った学生達が、学校の最寄り駅に向かって歩いていた。歩き慣れた帰り道の隅には、たんぽぽが咲いていた。

…ひとりの男子学生が、コンビニに立ち寄った。腕時計を確認し、そわそわとしている。誰かと待ち合わせをしている様子だ。革製のトートバッグ。品のあるブレザーを着ており、しっかりと磨かれた靴がツヤツヤと輝いている。

しばらく待っていると、小柄な学生が駆け寄ってきた。かわいい運動靴と、リュックサックが揺れている。

小柄な学生「ほめと先輩、おまたせ〜!えへへ、遅くなってごめんね!」

ほめと「あ、たんぽぽ来た♪オレも今着いたところだよ。」

ほめととたんぽぽは、先輩と後輩の関係で、友だちだった。

たんぽぽ「他の皆はまだ来てないの?」

ほめと「うん、ちわたとまちるちゃん、遅いね。連絡もないんだ。まさか、ドタキャン?人数分の食事を予約してもらってるから、来てもらわないと困るよね。食べきれないよ、ご飯残したくないし。」

ほめとはスマホを確認した。メッセージも、着信履歴もない。

たんぽぽ「皆が来なかったら寂しいけど、残ったご飯は僕が全部食べるから大丈夫だよ」

たんぽぽは食いしん坊だった。これから皆で、予約した喫茶店にご飯を食べに行くと言うのに、リュックから菓子パンを取り出して、ニコニコ笑顔で食べはじめた。

ちわたはほめとの友だちで、まちるはちわたの彼女だ。たんぽぽとほめとは最近友だちになって、ちわた達とは数回集まって遊んだことがある。…つまり、皆友だちだ。

ほめと「待ち合わせの時間は過ぎちゃったけど、予約してるのは一時間後だから、大丈夫かな。

ちわたの退職祝いとして、ちわたが提案したパーティなのに、本人不在はやめてほしいね。笑」

たんぽぽ「退職祝いって?僕、ご飯食べるからおいでよってことしか、聞いてないよ」

ほめと「その認識で間違いないよ。ちわた、レッドデビル☆カンパニーってところで働いていたんだけど、超ブラック企業だったんだよ。それで、退職を決意して、ついに退職届を上司に提出したんだって。転職活動も頑張るから、そのことを祝ってほしいらしい。」

たんぽぽ「そうだったんだ。お祝いするのは好きだけど、おめでとうって感じじゃないね。伝えるなら、お疲れ様かな?ブラック企業って、どんな感じだったのかな、体は大丈夫なの?」

ほめと「うん、ちわたは元気だよ。

ちわたは高校卒業してすぐに就職して、タコ魔法戦士(侵略する人)が違う星から持ち帰った、星の力とか魔法を研究する仕事をしてたんだよ。ちわた自身はのびのび働いていたらしいんだけど、上司が怖かったらしい。

怖いことを言うとか重労働をさせるとか、そういうことじゃなくて、上司が働きすぎているのが怖かったらしい。特に常務取締役の人が職場に住んでるらしくて、夜も寝ないで一日中仕事していたんだって。ロボットみたいだったらしい。

しかも、社長が行方不明なんだよ。他にも行方不明者がじわじわ増えてきていたらしい…。

ちわたは能力も向上心もあるし、出世して頑張りたいと思ってた。でも職場に住む未来が待ってるなんて絶対嫌じゃん!?大事なちわたが行方不明になるなんてもっと嫌だし、オレが転職をすすめたんだよ。まちるちゃんと結婚することを考えてるなら、尚更ね…。」

たんぽぽ「レッドデビル☆カンパニーって怖いところなんだなぁ。」

その時、ほめとのスマホから通知音が聞こえた。

ほめと「ちわたから連絡きたよ。トイレしてるから先に喫茶店に行ってて〜、だってさ。お腹こわしたのかな?大丈夫だと思うけど、とりあえず行こうか。」

たんぽぽ「行こう行こう!幸せだなぁ、おいしいもの、いっぱい食べられるんだろうなぁ〜♪」

ふたりは喫茶店に向かうため、駅に向かって歩きはじめた。

今回貸切予約した喫茶店は、都会にあるメイド喫茶だ。ちわたと付き合う前に、まちるがアルバイトしていた喫茶店らしい。

まちるは可愛いものが好きで、特にメイド服やアニメのキャラクターグッズが大好きだ。今は仕事をやめてちわたと住んでおり、一日中好きなアニメを観る生活を楽しんでいる。

たんぽぽ「そういえば、ほめと先輩の恋人さん…カチョロさんは来るの?かっこよくてきれいな恋人さんだよね」

ほめと「うん、来るよ♪後から合流すると思う。人数が多いし、カチョロが大きいから、貸切予約にしたんだよ。

そういえばたんぽぽ、最近できた新しい友だちがいるって言ってたけど…その人はくるの?一応予約してるけど」

たんぽぽ「来てくれると思うけど、見当たらないね」

ほめと「道に迷ってるのかな…。もしかして、メイド喫茶に行ったことないから、来る勇気が出ないのかな?はじめて行った時はオレも、ちょっとだけドキドキしたなぁ。行ったら楽しかったけど!」

たんぽぽ「実はメイド喫茶ってことも話せてないんだ。一緒に遊ぼう!としか伝えられてないんだ。でも約束したし、きっと来てくれると思う」

ー喫茶店前ー

ほめと「も〜、ちわた達、来ない〜!何やってるんだろ。あと15分で予約時間になるのに〜!」

たんぽぽ「おトイレしてるんだっけ?混んでるのかなぁ」

…その時、優しい風が吹いた。風は花の香りと、不思議な気配を運んできた。風と共に現れたのは、明らかに人間ではない、大きな生き物だった。

人間に似たシルエットをしているが、頭部はなく、顔のついた仮面が、ゆらゆらと浮かんでいる。仮面には大きな角が、三本ついており、存在感を放っている。手は四本もある。

ずっしりとした赤と緑のマントを身につけたこの生き物の名前は、カチョチカチョーロチョコカチョーロチロム。通称 カチョロ。

カチョロはある日、突然ほめとの家にやってきた、不思議な生き物だ。

カチョロは自分のことを、別の宇宙から来た魔法使いで、時空の使者だと話しているが、…誰もその意味を理解できていなかった。カチョロは穏やかで、どんな生き物に対しても優しい。風変わりな容姿も見慣れて、いつのまにか皆の友だちになっていた。どんな秘密や過去があっても、友だちは友だちだ。

カチョロは人間のことが好きで、ほめとのことは特別に愛している。カチョロはほめとに会うためにこの宇宙にやってきた。

ほめととカチョロは恋人の関係だ。

カチョロ「こんにちは。ほめと君、たんぽぽさん。ちわた君と、まちるさんをつれてきたよ。乗る電車を間違えて、知らない駅に着いて、迷ってしまっていたみたい。ふふふ。もう大丈夫だからね」

カチョロのマントの中から、ちわたとまちるが出てきた。

ほめと「もう、何やってるんだよ〜。何強がってるんだよ、トイレだとか適当な嘘つくなよな!…でも、間に合って良かった。」

ちわた「ごめんって!都会の駅がこんなに複雑だったなんてな〜。この辺は来る機会少ないから、わけわかんなくなっちゃった☆カチョロがいなかったら、オレ迷宮入りしてたかも!」

まちるはちわたに甘えて、ぎゅっと抱きついている。カチョロは皆の重たい荷物を預かって、「重たいものを頑張って持っていたんだね」と微笑んでいる。…いつも通りの光景だ。

カチョロ「人間が仲良く遊んでいる姿は、本当に癒されるね。愛らしい、愛らしい。すくすく育ってほしいなぁ。ふふふ、ふふふ。」

たんぽぽ「…」

カチョロ「ん?たんぽぽさん、下を向いてどうしたの?」

カチョロは首をかしげるように…仮面をくるりとまわした。四本の手で、たんぽぽの頭を包み込むようになでた。ぷにぷにのほっぺたが、膨れている。

カチョロ「大丈夫、大丈夫。僕に、話してごらん?」

たんぽぽ「…僕の友だちが来ないの。約束したのに」

カチョロ「そのお友だちなら、あの植木の後ろに隠れているよ。一時間前からいるみたいだよ。」

たんぽぽ「ほんと!?見てくる!」

たんぽぽは植木の方へと走っていった。そして、コック帽を被った、黒いコートを着た男性を引っ張り出してきた。たんぽぽの行きつけのレストランの料理人のコック早乙女(さおとめ)だ。彼はたんぽぽと出会うまでは、ずっとひとりぼっちだった。お客サマと話すのは得意?だが、友だちと話すのは緊張する。人見知りが発動して、恥ずかしがって隠れていたのだ。

コック早乙女(さおとめ)「少し待ってください、まだ、たんぽぽサマのお友だちと話す心の準備ができておりませんので…!わたくしのせいで泣いてしまったり、嫌われてしまったらどうしよう」

たんぽぽは、顔を真っ赤にして焦っているコック早乙女の背中を押した。

たんぽぽ「大丈夫、皆優しいよ。僕、コック早乙女さんと一緒に遊ぶのすっごく楽しみにしてたから、安心したよ。コック早乙女さんって、いつもお店にいるでしょ?お店以外のところで会うって、新鮮だよね。来てくれてありがとう!」

コック早乙女「そ、そうですか?えへへ…ふひひ。こちらこそありがとうございます…友だちになれてよかったです」

たんぽぽ「カチョロさーん!コック早乙女さん、見つけたよ!教えてくれてありがとう」

カチョロがたんぽぽとコック早乙女のところへ歩いてきた。カチョロをはじめて見たコック早乙女は、少し驚いている様子だ。ほめと達もやってきた。

ほめと「コック早乙女さん、こんにちは。たんぽぽから話は聞いていたよ。カチョロは僕の恋人なんだ。怖くないから、安心してね」

コック早乙女は星から星へと旅をする、自称エイリアンの料理人だ。しかし、カチョロのような不思議な存在ははじめて見た。

ちわた「大丈夫だって。オレも最初は超びっくりしたけど、カチョロは悪いやつじゃないから♪」

まちるも頷いている。

コック早乙女「ありがとうございます。皆サマ、はじめまして。わたくしはコック早乙女です。出身は。薄紅(うすべに)色の星です。」

カチョロ「薄紅色の星か。あそこは、花畑がたくさんあって、可愛らしくて素敵だよね。」

コック早乙女「故郷の花畑、わたくしも大好きです。あの…その、えっと、…わたくし、カチョロさんのファンなんです…。お会いできて嬉しいです」

コック早乙女はカチョロの容姿に驚いていたのではなく、憧れていたから驚いていたらしい。

たんぽぽ「ふぁん?」

カチョロ「ファンか、嬉しいな。ありがとう。ふふふ、僕のことを、知っているのかな?僕の存在はSNSで話題になっていたそうだよね、最近は落ち着いたけれどね」

コック早乙女「いえ…。昔、緑色の星へ旅をした時に、女の子の星の化身に料理を振舞ったことがありました。その子は未来を予知する特技があって「宇宙の外から魔法使いがやってくるよ」って、こっそり教えてくれたのです。

その魔法使いの特徴が、カチョロさんとそっくりだったので…本当にいるんだって、嬉しくて…。ごめんなさい、変なこと言ってしまって…忘れてください。」

カチョロ「ふふふ、偶然だと思うけど、ロマンチックで素敵だね。僕もかっこいい料理人さんと出会えて嬉しいと思っているよ」

コック早乙女「ありがとうございます。あの…カチョロさんに、もうひとつ、聞いてみたいことがあるのですが、いいですか?その女の子が話していたことで…」

カチョロ「うん、話してごらん。僕には、何でも話していいからね」

ほめととちわた、まちる、たんぽぽは少し離れたところではしゃいでいる。

コック早乙女「宇宙の外に、新しい宇宙を作るのが得意なエンターテイナーがいるって本当ですか?その人がわたくしたちの宇宙に、」モガっ

コック早乙女が言い終わる前に、カチョロは手で口をふさいだ。そしてカチョロはポケットから、「おやつ」を取り出した。カチョロが元々いた宇宙から持ってきた、栄養価が高くておいしい、人間用のおやつだ。

びっくりしているコック早乙女を撫でて、体を持ち上げて、口を開かせて食べさせた。

カチョロ「おいしいねぇ おいしいねぇ 」

コック早乙女「もぐもぐ…」

コック早乙女ははじめて口にする甘くて美味しい食材に驚きながらも、カチョロに抱かれながら、大人しくもぐもぐ食べている。

カチョロ「大きいサイズの人間も、とっても可愛らしいね。愛らしい 愛らしい。」

ほめと「あ〜カチョロ!今からご飯食べるのに、おやつ食べさせたらダメだろ〜!」

たんぽぽ「何それ〜、あとで僕も食べてみた〜い♪」

ちわた「そろそろ時間だから、行こうぜ!」

ー喫茶店ー

お店に入ると、リボンとフリフリが沢山ついた可愛らしいメイドさんが出迎えてくれた。

メイドさんの女の子「おかえりなさいませ!…あ、まちるちゃんぁ!久しぶり〜♪会いたかったよ!ちわた君も、ほめと君も久しぶり。元気そうでよかった」

ちわた「久しぶり〜♪」

ほめと「こんにちは。やっぱり可愛いお店だよなぁ〜、わくわくする」

まちるは、久しぶりにアルバイト仲間と会えて、嬉しそうだ。ぴょんぴょん飛び跳ねて、喜んでいる。

メイドさんの女の子は「私はピピヨンだよ。よろしくね」と、カチョロとたんぽぽ、コック早乙女に自己紹介した。

たんぽぽ「よろしくね!僕の名前はたんぽぽ。それから。コック早乙女さんと、カチョロさんだよ。ケチャップの良いにおいがする、早く食べたいなぁ。お腹すいちゃった♪」

コック早乙女「どんなお料理を、用意してくださっているのですか?」わくわく

ピピヨン「オムライスと、ナポリタンと、パフェと…とにかく、い〜っぱい用意してるよ♪おなかいっぱいになれると思う!みんな、好きな席に座って待っててね。メニューどうぞ♪飲み物を選んでね。

まちるちゃん、今日はモジ君と店長もいるよ。モジ君が考えた新メニューの大盛りオムライスを注文したら、喜ぶと思う♪♪」

みんなでメニューをみて、飲み物を決める。

ほめと「メロンソーダにしようっと。オシャレでかわいいから、写真映えするんじゃない?」

ちわた「マジ?ほんとだ、美味しそ〜!オレもそれにする」

たんぽぽ「飲み物はビーフシチューにしようかな」

コック早乙女「…え?ビーフシチューは飲み物ではないと思いますよ。この枠の中のメニューから、選びましょうよ」

たんぽぽ「そうなの?じゃあ、僕は、オレンジジュースにする。コック早乙女さんは?」

コック早乙女「ココアにします♪」

その様子をカチョロは幸せそうに眺めている。ほめとは(そういえば、カチョロが食べ物食べてるところ、見たことないなぁ〜)と、ぼんやりと思った。

しばらくすると、ピンク色のメイド服を着た男性が、ドリンクと大盛りオムライスを持ってやってきた。このお店唯一の男子メイド、モジだ。

モジ「おまたせしました!お飲みものをどうぞ♪

僕の新メニュー、「大盛りオムライス♡ツンデレ堕天使メイド」が食べたい人〜?ほーら見て見て、すっごくおっきいでしょ?大盛りだよ!

あ、でも…別に、君のためにおっきく作った訳じゃないんだからねッ?お腹いっぱいになってほしいなんて、ぜーんぜん思ってないし。

どうせ食べきれないでしょ。無理して食べなくていいから。プンプン。

君なんて…みんなの前でお腹の音を鳴らして、恥ずかしい思いしちゃえばいいんだ…。」

ほめと「ツンデレなモジさんだ〜♪可愛いー!」

ちわた「ヤバいって、コック早乙女さん泣いちゃった!泣くなって〜!」

コック早乙女「わたくしなんて、オムライスを食べる資格もない、気持ち悪いブサイクですので…泣」

モジ「えっ、違うよ!ごめん!ツンデレの「ツン」が強すぎたかな!?」

たんぽぽ「カチョロさん、ツンデレってなに〜?」

カチョロ「うーん、なんだろうねぇ…」

ほめと「モジさん、早くデレないと!みんな誤解しちゃうよ」

ちわたとピピヨンは笑い転げている。

モジ「…ごめんね、素直になれなくて。本当は君の喜んだ顔が見たくて大盛りにしたんだよ。君のこと、好きだってことがバレたら恥ずかしいから、意地っ張りになってた。本当は大好き。みんなで一緒にご飯、食べよ?」

たんぽぽ「うんうん、皆でご飯たべようよ!ピピヨンさんも、モジさんも一緒にね♪楽しいのがいちばんだよね」

コック早乙女「ぅう…良かった、嫌われたのかと思いました」

ピピヨンはお店の奥から、店長を連れてきた。店長は背の高い女性、ちえるだ。

ちえる店長「今日はいつも以上に賑やかだねぇ♪皆で乾杯して、いただきますしよっか!」

ー楽しい時間はあっという間にすぎていくー

おなかいっぱい食べてご馳走様をして、カードゲームをしたり写真を撮ったり、コスプレしたりして遊んだ。カチョロは相変わらず、少し離れたところから皆の様子を眺めて、楽しんでいた。

お会計をして、そろそろ帰ろうか〜と荷物を片付けはじめたとき、突然店内が真っ暗になった。

モジ「ヒィ…、やだ、な、何!?停電!?」

ちえる店長「皆、落ち着いて。モジ君、大丈夫?ピピヨンも、こっちにおいで」

モジ「大丈夫です」

モジはメイド服のポケットから、お守りとして持ち歩いている小さなぬいぐるみを取り出して両手で握った。部屋を片付けた時に見つけた、きれいな男の子のぬいぐるみ。夢に出てきた不思議な友人によく似ており、握るとなんだか安心する。

ピピヨン「うん」

その時、お店に備え付けてあるモニターが突然光り始めた。

青色の星と緑色の星、クロサキとマシロが映し出された。ついにデスゲームがはじまり、マシロがその様子を配信しはじめたのだ。まちるは不安そうに、ちわたにぎゅっと抱きついた。

ちわた「なんだこれ、デスゲーム…!?レッドデビル☆カンパニーが準備してたのって、これのことだったのかよ。うわ〜どうしよう!?ヤベェんじゃないの?違う星に逃げた方がいいのか!?でも、おっきい宇宙船準備して逃げる時間なんか、もうないって…!」

コック早乙女「どうしましょう。星がほろぶのは嫌です。星のはなびらは二度と見たくありません、ぅう、怖い」

たんぽぽ「みんな、元気だして。きっと大丈夫だよ!」

ほめと「どうしよう、カチョロ。…カチョロ?」

カチョロ「全員、僕の手が届くところにいて。

絶対に離れないで。

ほめと君、大丈夫。僕が君たちを守るからね」

ほめと「うん…大丈夫、だよね。」

カチョロはモニターを、残酷なエンターテイナーを睨み付けた。そして誰にも聞こえない声でつぶやいた。

カチョロ「…クロサキ。

君の好きにはさせないよ」

【12話に続く】

… … … …

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