小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲームがひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)
オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」
読み始める前に
異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)
【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】最終話・前編 本文
…デスゲーム会場跡地…
さくらとからすが、皆のところへ戻ってきた。
むむ「あ!からす君帰ってきたよ♪」
からす「待たせたなぁ。ただいま♪」
むむ「おかえり〜!大丈夫?風邪ひいてない?雨で濡れたし、ふたりも早く着替えた方がいいよ。着替えはさくまちゃんが、魔法で作って用意してくれたよ。はいどうぞ。」
からす「ありがとう」
さくら「ありがとう。ん?この服…ちょっと派手じゃねぇか?真っ黒だし、悪魔っぽい不気味な感じがする。ちっちゃいフリルとかリボンがついてて、可愛い感じもする。丈が短いし、動きやすそうだから、別にいいけど。…。」
むむ「ゴシックファッションってやつ?自称悪魔のさくまちゃんらしいよね。皆に可愛いくてかっこいい服を着てみて欲しかったんだって。タコタコタコ星の皆も似たデザインの服に着替えてるよ。」
さくら「ど、どう?…俺、似合ってる?笑」
むむ「さくら君は……「逆に」可愛いって感じ?ギャップあって可愛い!」
さくら「逆にってなんだよ!むむの服はリボンとフリルが多くて、幼い感じがして可愛いと思う。毎日着てそうだって思うくらい自然で、似合ってる。
…からすも着たか?」
からす「さくまちゃんらしい、強そうなデザインだな〜。大人っぽい服はあまり着ないから新鮮だ。」
黒を基調とした、ダークミステリアスな雰囲気漂う、高級感のあるロングコート…からすは、さくらが息を飲んでしまうほど、良く似合っていた。ウエストがキュッと引き締まったデザインは、からすのスタイルの良さや背の高さを際立たせており、魅力的だった。
黒い前髪の隙間から見えたサファイアブルーの瞳…みとれていたら目が合って、さくらは顔を真っ赤にした。
その様子を見たからすはふふふと笑い、満足そうにしていた。
…そこにさくまがやってきた。動きやすそうな膝丈のスカート。フリルが少なめで、クラシカルな雰囲気のゴスロリファッションだ。
さくま「…からす、少し話したいことがある。」
からす「どうしたんだ?」
からすとさくまは皆から少し離れた所に行き、内緒話をはじめた。
さくらとむむのところへ、ささめきがやってきた。ささめきも、オシャレな黒色のロリータドレスを着ている。深いスリットが入っており、太ももが見え隠れしている。ささめきはさくらに耳打ちした。
ささめき「…さくら、何かあったの?」
さくら「大丈夫。ちょっと疲れたよな〜って、ふたりで話してただけだ。」
ささめきは安心した様子でフフっと笑った。
ささめき「私もよ、こんなに疲れたのは久しぶりだったわ。お腹も空いたし、眠たいし…タコタコタコ星の皆が星に帰って、私たちの星を元の状態に戻したら、焼肉とかケーキとかいっぱい食べてパーティした後、寝ましょ。」
さくら「そうしようぜ。…ささめきもその服、結構似合ってるな。」
ささめき「当たり前よ。私はどんな服も着こなすレディなんだから。…さくらの服は、スカートなのね。他の男子たちはパンツスタイルなのに。」
さくら「え!?マジ?ほんとだ、俺、スカートはいてる!さくまの奴…。俺もかっこいいやつ着たいって!」
ささめき「別にいいじゃない、悪くないわよ。からすさんはそういうの好きだと思うわよ、「ゴスロリさくら君萌え〜」って言ってそう。」
さくら「からすが好きならいいけど。…ゆずは先輩とふうがさんは?まだ来てないのか?」
ささめき「ええ、まだ来てないわね。とおこさんもまだ着いてないの。」
さくら「今は待つことしか出来ねぇな…皆、何してるんだ?」
ささめき「タコタコタコ星の皆は、瓦礫(がれき)を片付けて、掃除をしている所よ。私たちとオキとことおは、ユニタスを探しているの。」
むむ「ユニタス君、どこに行っちゃったのかな。まだ見つからないんだよね。さくら君はユニタス君見かけてない?」
さくら「え?ユニタスいねぇのか?見てねぇけど…。俺も探すよ。」
むむとささめきは引き続きユニタスを探すために、名前を呼びながら歩きはじめた。さくらはオキとことおのところへと行き、声をかけた。ことおは魔法のコンピューターを覗き込んで、カタカタと操作している。
ことおとオキも、ゴシック風の装いだ。タイトなシルエットのパンツスタイル、金属製の飾りがついておりギラギラとしていて、やや攻撃的なデザインだ。良く似合っている。
さくら「オキ、そっちはどうだ?ユニタスがいなくなっちまったんだって?何かわかったことはあるか?」
オキ「ないよ。いつからいないのかどうかもわからないんだよね。ユニタスはロボットだから、電気エネルギーを追跡すれば、居場所がわかるかもしれないから、ことお君が調べているところだよ。」
オキに抱かれているくまも、困ったように首をかしげていた。(ちなみにくまは黒色のリボンを着けている。)
さくら「ことお、何かわかったか?」
ことお「…うーん。だめだ、さっぱりわからないね。電気エネルギーを感知できないんだ。意図的に通信を遮断しているか、眠っている可能性があるね。」
さくら「疲れて昼寝してるのか?ひとりでタコタコタコ星に帰っちまったとは思えねぇよなぁ…。」
オキ「どうしちゃったんだろうね。ユニタス。」
ことおは困り果てた様子で、「おーい、むむ〜」とむむを呼んだ。
むむ「ことお君、どうしたの?」
ことお「調べたいことがあるんだけど、魔力がぜーんぜん足りないんだ。力を貸してほしい。」
むむ「星の力を追跡するつもりなんでしょ?あたしに任せて。」
むむはコンピューターに手をかざし、魔法を使った。
むむは「これもあげるよ。使って。」と、新しいコンピューターを作り出し、ことおに渡した。手のひらサイズのミニコンピューターだ。ベルトがついており、腕に装着できるため、持ち歩くことが出来る。スイッチを入れると空中にディスプレイが出現した。直接タッチ操作できる仕組みだ。
ことお「うっひょー、ありがとう!こういうの、欲しかったんだ。魔力も使い切れないくらい搭載されてるし♪どんな奴を相手にしても、負ける気がしないね。」
むむ「写真撮影機能もついてるよ。」
ことお「いいね〜♪」
ことおとむむとオキとくまは自撮りをして、その機能を試して遊びはじめた。(※遊んでいる場合ではない。)はしゃぎながら、ことおはむむに遠慮がちに話しかけた。
ことお「…むむって、おてんばでマイペースだから、とおこと気が合うと思うんだよな♪とおこは星の化身だけど、星の力も魔法も上手く扱えないから、いつも俺のそばから離れないようにしながら暮らしていたんだ。箱入り娘って感じ?…でもとおこは緑の星、他の星を、もっと見てみたい、知ってみたい、行ってみたいって話していたんだよね。だから、とおこが帰ってきたら仲良くしてあげてほしい。むむは強いから、とおこが侵略者に狙われても、守ってあげられるだろ?あいつ、可愛い女の子の友達がほしいって言ってたんだ。」
むむ「うん、もちろん。どんな子なのか、楽しみにしてるよ♪」
ーーー
瓦礫を片付け終わったイカパチとクロサキは、ミニキスとタコパチ、フィカキスに「手伝ってくれてありがとう」とお礼の気持ちを伝えた。デスゲーム会場はきれいさっぱりなくなった。
イカパチたちもさくまが作った服を着ていた。黒を基調とした、少年らしいデザインのゴシックファッションは、ダークだが可愛らしい。イカパチとタコパチのパンツは膝丈で、特に幼く見えた。クロサキとミニキスは、まるでプリンスだ。フィカキスはタコ足に、宝石がついた黒いリボンを巻いている。
イカパチ「後は、ことお君に任せよう☆」
イカパチ達は、瓦礫を片付けたつもりだが…実際は、瓦礫を緑色の発明の星に移動させただけだった。
フィカキス「適当やなぁ〜…こんな瓦礫どうやって処分するんや?ことお、困るやろうな(汗」
ミニキス「思ってたより時間かかったなぁ。ユニタスは見つかったんかな?そろそろさくら達の所に戻ろか。」
タコパチは一足先にことおとむむ、オキのところへと走って行き、胸を張って「掃除終わったよ♪」と声をかけた。
タコパチ「きれいになったでしょ、頑張って片付けたんだ。」
ことお「……ゴミを俺の星に移動させただけのように見えるけど、見間違いかな??」
クロサキ、ミニキス、フィカキスもことおの所へやってきた。
クロサキ「ことお、何言ってるんだ。あれはゴミの山じゃねぇ、アートなんだ。よくみろよ、瓦礫の山のてっぺんに、顔がついてあるだろ?あの瓦礫の山には魂が宿っているんだよ。ロボットのオキやくまと似たようなものだ。」
よく見ると、瓦礫のてっぺんにある鉄バケツには、油性ペンで、素朴な顔が書いてある。つぶらな瞳は、まるでこちらをじっと見つめているようだ。
クロサキ「名前は、レッキーくんだ。(がれきのれっきー)」
ことお「も〜!そんな風に言われたら処分しにくいだろ!
…そうだ、あの瓦礫も小さいロボットに作りかえようかな?いい材料になりそうだ。くまも友だちほしいだろ?レッキ―君だってさ。」
くまは飛びはねて喜んでいる。
オキ「よかったね、くま。ねぇ、ことお君。レッキーくんはうさぎの形にしようよ。落ち着いたら皆で作りはじめようよ。」
その様子を見たミニキスは、イカパチにこっそりと話しかけた。
ミニキス「なぁイカパチさん。クロサキはことおさんが怒らずに、瓦礫をリサイクルすることを見越して、顔書いたん?君の彼氏は策士やなぁ。おかげで、しっかり片付いたで。」
イカパチ「作戦か偶然かはわからないけど…感心しちゃうよね。クロサキ君、ゲームのルールを考えるのも上手だし、意外と頭良いんだよね。」
イカパチはなんだか、嬉しそうだ。
ーーー
少し離れたところで、からすとさくまは真面目な様子で話し合っていた。
さくま「クロサキは金魚八の幹部として、からすの命を狙っていたが、今はそのようなことは考えていないようだ。…だが、ひとつ気になることがあったから、からすに伝えておきたい。話し合っておきたいんだ。」
からす「どんなことだい?」
さくま「タコタコタコ星は数え切れない程の星を侵略し、大量の星の力や魔力を保持している強星。そのほとんどは、マシロ…いや、イカパチが率いているレッドデビル☆カンパニーが手に入れたものだ。クロサキはそれを丸ごと奪って、お前と戦うという作戦を練っていたようだ。無謀な計画だが。」
からす「なるほど…クロサキ君はそんなことを考えていたのか。しかし、そんなに強くて大きい力、いったいどこにあるのだろう。誰が持っているのだろうか。イカパチ君もクロサキ君も、その力を使うことはできないのだろう?」
さくま「ああ、クロサキ達には扱えない。一部の力は、レッドデビル☆カンパニーの魔法研究施設にあるようだが、ほとんどはタコタコタコ星の化身が管理しているようだ。
タコタコタコ星の化身の本体は、地下深くの星の中心にあるが、その本体は力の保管庫としての役割も果たしているらしい。魔法を取り出したり、使ったりできるのは、星の化身だけだから、イカパチは力が必要な時、部下のタコダイオウに取り次いでもらっていたようだ。
ちなみにクロサキは地面をスコップで掘って、星の化身を引っ張りだして、力を奪おうと考えていたらしい。」
からす「地面を掘るなんて、何日かかるんだ?無茶苦茶だなぁ…。
タコタコタコ星の化身は頭がいいんだな。本体が星の中心にあれば、簡単には侵略されないし誰も触れない。ロボットの体で意思疎通出来るなら、不便じゃないし寂しくないもんな。」
さくま「そうだが…。」
さくまは深刻そうに、顔をしかめた。
さくま「タコダイオウが時空のトンネルから帰ってきた時、ユニタスという新しい人格が宿っていただろう?時空のトンネル、ゆずはの修理、仲間との交流…様々な要因が考えられる不思議な出来事だが、我は疑念を持っている。」
からす「疑念?」
さくま「タコダイオウのスペアの機体(ユニタスが時空のトンネルや霊界に行っている間に作られた新しいロボットの体)が動かないのは、おかしいことだと思わないか?何回か声をかけてみたが、横たわったままで、やはり動かない。星の化身は今、何をしているんだ…?しかも、ユニタスが行方不明だという。嫌な予感がする。」
からす「…確かに。心配になってきた。」
からすは困った表情で、横たわったままのタコダイオウの機体をちらりと見た。
からす「ユニタス君が宿る機体、星の化身のタコダイオウ君が動かす新しい機体…二台それぞれが動くはずだもんな…。どうして動かないのだろう。イカパチ君に、タコダイオウ君のことを聞いてみようか。」
からすとさくまは、イカパチ達の所へと移動した。さくらとささめきも合流して、全員が集まった。ユニタスが見つからないこと、ゆずはとふうが、とおこがまだ来ないこと…皆、心配そうに、話し合っていた。
さくら「あ!からすとさくまが来たぜ。ユニタス見つかったか?」
からす「いや、見つかっていない。ユニタス君だけでなく、タコダイオウ君も今どこで何をしているのかわからない…ということに気が付いたんだ。イカパチ君、何かわかるか?」
イカパチ「タコダイオウなら、そこで寝てるけど?タコダイオウは疲れたり怒ったりしたときは、僕を無視して、寝たフリをすることがあるんだよ。僕が焦りだしたら、起き上がってこう言うんだ。「社長のせいで、故障するところでしたよ。ストレスが限界突破して。」って。…多分僕が声をかけたら起きあがるよ。」
からす「…なるほど。やはり、デスゲームが辛かったのだろうか。」
タコパチ「そうかもね。イカパチ、早く謝らないと、退職届提出しちゃうかもよ。」
イカパチはタコダイオウの機体の隣に座り、「嫌なことして、本当にごめんね。僕、心入れ替えて頑張るから。タコタコタコ星に帰ろう。」と声をかけた。しかし、タコダイオウの機体はピクリとも動かない。イカパチも不安な気持ちになって、「大丈夫だよね…?」と皆の方を見た。
イカパチ「クロサキ君、どうしよう。僕、嫌われちゃったのかな?それとも、タコダイオウに何かあったのかな?」
クロサキ「うーん…さくま、タコダイオウの記憶は見えないのか?」
さくま「ああ、何も見えないな。大抵の強者は記憶や思考を読まれないように、精神にバリアを張っているが…タコダイオウの意識に関してはそもそも、この機体には宿っていないのかもしれない。」
クロサキ「考えられる原因は「青色と緑の星にいたくないからタコタコタコ星で待っている」か、「俺たちと話したくないから無視して放置している」か、「今、別の誰かと話していて手が離せない」か、「そもそも話せない状況」か…。」
心配事は増えていくばかりだ。
ことおが「皆!話したいことがあるんだ、聞いてくれるかい?」と呼びかけた。ことおは、腕に装着しているコンピューターのスイッチを押して、空中にディスプレイを映し出し、操作しはじめた。ぴぴぴ…。
ことお「ユニタスはロボットだから電気エネルギーを追跡すれば、居場所がわかるかと思ったけど、検知できなかったんだ。でも…この数値を見てほしい。タコタコタコ星の「星の力」を検知しているんだ。検知した場所は、俺たちが今いる場所から結構近い。10%…20%…数値が上がっている…俺らのところへ、近付いてきている。」
クロサキ「…?、意味がわからねぇ。タコタコタコ星の星の力は、タコタコタコ星の中心に埋まってるはずだろ?俺たちの近くにあるわけねぇだろ。」
何者かの、足音が近づいてくる。足音がする方向を見ると…ユニタスがいた。
ユニタス「はぁはぁ…。た、たすけて…。」
真っ青な顔色、怯えきった表情で、取り乱している。
さくら「ユニタス!何があったんだ!?」
ユニタス「目には見えない何かに、追われている気がするんです!視線を感じるといいますか…!はぁはぁ」
オキも心配そうに駆け寄ってきた。
オキ「落ち着いて、ユニタス。誰も追いかけてきてないよ。」
ユニタス「…本当だ。…すみません。気のせいか。」
ユニタスは心も体も疲れきっている様子だ。
オキ「何があったの?」
ユニタスは言いたくなさそうにしている。少し考えてから、オキの手をとって、自分の左胸にぎゅっと押し付けた。オキの目をじっと見つめる。
ーロボットなのに…ドクン、ドクンと、心臓の音が伝わってくる。体温が伝わってくる。ー
オキ「…!?!?」
ユニタス「こんな状況なんです。ど、どうすればいいと思いますか…おかしいんです、こんなこと!!ぼ、僕はロボットのはずなのに…!硬い体が柔らかくなって、血が流れているんです…僕の体が人間のように変化しはじめているんです。真実を確かめるのが怖くて、目に見えない何かに追われているような気分になって、逃げ出してしまいました。突然いなくなってすみません…。」
オキ「謝らなくていいよ。」
イカパチがやってきて、ユニタスの背中をポンポンたたいて励ました。
イカパチ「ユニタス、痛いところはないの?」
ユニタス「しゃ、社長…。はい、痛いところはありません。」
イカパチ「それならいいけど。う〜ん、不思議だね。」
オキ「…ユニタスから、生命の温かみと、星の化身の力を感じるなんてね。いったい、何が起きてるの?ことお君、わかる?」
ことおはコンピューターを操作し、楽しそうに調べはじめたが…数秒後、軽快に動かしていた指がぴたりと止まった。眉間に皺を寄せており、なにやら真剣な様子だ。
ことお「…。」
クロサキ「ことお、何がわかったんだ?」
ことお「複雑で、大変なことになってるよ。説明するね。
まず、タコタコタコ星の中心に埋まっている本体「タコダイオウ」が保持していた「星の力や魔力」が全部、「ユニタス」に移動しちゃっている。
恐らくゆずはとかいう奴が、修理の仕方を間違えたんだよ。
ユニタスはあくまで「遠隔操作するための機体」だったのに、霊魔法というこの宇宙にはない特別な技術で、本体の星の化身の能力を上回る程の、高性能なロボットに作り直した結果、宇宙が「タコダイオウではなく、ユニタスが星の化身」なんだと判断したんだよ。
俺もそうだけど…星の化身は、星と魂を共有しているから、星の脈動や温かさを感じることがあるんだ。その感覚と霊魔法が作用して、ユニタスの体質が変化したんだと思う。ロボットから、人間らしい体質に。ただ、星の化身は星の外には出られない…という宇宙の制約は、地下深くのタコダイオウに適用されたままのようだ…。俺の星と同じで、どちらかがやられちゃったら星はほろんでしまう仕組みみたいだ。
つまり、ユニタスは自由に星の外に出られる、タコタコタコ星の新しい星の化身に生まれ変わったんだよ。」
場は騒然となった。
ユニタス「や、やっぱり…この鼓動は「星の脈動」なのですね。星と魂を共有している証…ぅう…ッ。ことおさん、その魔法コンピューターで、今すぐ僕を元に戻してください…!
タコダイオウは地下深くに閉じ込められているってことですよね?突然魔法も星の力も使えなくなって、身動きもとれない、声も届かない状況で。ひとりぼっちで。そんな恐ろしい状況は、誰も望んでいません!僕は力なんて必要ありませんし、新しい星の化身になんてなりたくもありませんから!!」
ユニタスは、地下深くに閉じ込められているタコダイオウを心配し、悔しそうに泣き始めた。
ことお「うーん、俺の力では難しいかな。宇宙の外の新しい技術、霊魔法なんて使えないし、マジでわかんないからね…。なぁ、クロサキ。君なら何とかできるんじゃないかい?金魚八とやらの技術でね♪」
クロサキも困った様子で首を横にふった。
クロサキ「俺にも無理だな。ゆずはの霊魔法は金魚八の奴らも簡単には対抗できないような、固有の最強技だからな。」
オキ「ゆずは本人にしか、どうしようも出来ないってこと?」
クロサキ「はっきりとは言いきれねぇけど…ゆずはにもどうしようもできない気がするぜ。ゆずはも、こんなことになるなんて、想像してなかっただろうし、ユニタスはもうロボットの体じゃないから、修理するっていうのは難しいだろうし…。」
さくら「ゆずは先輩に頼るのは最終手段ってことにしようぜ。まずは地下深くに閉じ込められてるタコダイオウを助け出さねぇと…なんか良い方法ねぇかな?」
タコパチ「せめて連絡がとれたらいいのにね。地下深くに、身動きもとれずに閉じ込められてるなんて、想像するだけで震えちゃうよ。早く大丈夫だよって伝えて、安心させてあげないと。
そうだ!テレパシーで伝えられないかな?星の中心にピントを合わせて、テレパシーするのは結構難しそうだけど。ミニキス、フィカキス、タコタコタコ星に戻って、テレパシーを試してみようよ!」
ミニキス「せやな。やってみよか。ちょっと行ってくるわ。試した後、すぐ青色の星に戻ってくるから、待ってて。」
ミニキスはフィカキスを肩に乗せた。ミニキスとタコパチは手を取り合い、ブレイブ☆タコキスに変身した。
飛び立とうとした時、イカパチが声をかけた。
イカパチ「お兄ちゃん!僕とクロサキ君も連れて行ってほしい。星の中心に埋まっているなら、掘り出せば助けられるかもしれないから、やってみたいんだ。
レッドデビル☆カンパニーの研究所に、魔法の掘削機があるかもしれないんだ。地底で生活する人たちが住んでる「煉瓦あられ星(れんがあられぼし」っていう星があるんだけど、その星に潜入調査するために開発していたんだよ。
たしか…研究員の「ちわた」っていう子が、研究して、開発していたと思う。その子が掘削機を完成させていたら、使えるかもしれないから、一度研究所に戻って確かめたい!
完成させてなかったら、今すぐちわた君を呼び寄せて作ってもらおう。ちわた君、「ヤバい人と一緒に働くのが疲れたから転職する」って言って、退職届を提出していたみたいだけど、レッドデビル☆カンパニーはそう簡単には辞められないんだよね〜。もちろんお兄ちゃんもね。
青色の星と違って、労働基○法は僕自身だし、全部僕が決めたい。とにかく、一度入社したら、しぬまでレッドデビル☆カンパニー社員だって決まってるんだよ。
ちなみに勝手に辞めたつもりになって出勤しなくなっても、お給料はしぬまで振り込まれ続けるから安心(毎月150タコ万円)。半年に一回健康診断もうけられるよ。本人だけでなく、友だちや家族も一緒にうけられるから、嬉しいね。
住むところも用意できるし、食べ放題の食堂もあるし、敵に捕まってごーもんを受けそうになった時は、本社に現在地が自動送信されるアプリもあるから安心。なんと…しにかけたら、自動で大爆発する機能もついてる!
僕の会社は、生活と健康をしぬまで支えるんだ♪」
さくら(やべぇ会社だな…。)
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「そうだったのか〜!退職できないなら、仕方ないね☆しぬまでレッドデビル☆カンパニーでもいいよ。
よし、イカパチ、クロサキ、一緒に行こう。ブレイブ☆タコキスの体に捕まって。」
イカパチはクロサキを肩車した状態で、ブレイブ☆タコキスの背中に捕まった。イカパチをおんぶしているブレイブ☆タコキスは、重そうにしている。クロサキの頭の上には、フィカキスが座っている。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「じゃあ、行ってくるわ。待っててな!」
そして、空にワープ用の魔法陣を出現させ、虹色に輝き、風のように消えた。
からす「魔法の掘削機か。タコタコタコ星にはすごい物があるのだな〜。よかった…何とかなりそうだな。ユニタス君、大丈夫だ。タコダイオウ君は助かる!一緒に待っていよう。」
ユニタス「ありがとうございます…。力と体を元に戻すのは難しそうですが、タコダイオウを助けられると思うと…ああ良かった、ひとまずは安心しました。」
ことおが両手を上げてうーんッと体を伸ばした。
ことお「しばらく頭と体をフル回転させていたから、流石の俺も、ちょっと疲れちゃった…。…でももうひと頑張りだ!あと少しで、謎が解明できそうなんだよね♪」
オキ「ことお君、何を調べてるの?」
ことお「オキたちが持って帰って来てくれた情報を整理して、時空のトンネルを分析してるんだ。宇宙の外のことを調べてるんだ♪俺たちの緑色の星の力や魔力は、時空のトンネルで噴射して使い切っただろ?その時に分散した星の力を追跡すれば、何かわかる気がしてさ。宇宙の外の情報を拾い集めるのは難しいけど、星の力は俺の体の一部みたいなものだし、イケそうなんだよね。」
オキ「僕も手伝うよ。くまも一緒にやろう。」
オキは自分の体をコンピュータに接続し、計算しはじめた。ピピピ…。
ことお「…お?何か見つけたぞ!宇宙の外の情報か!?」
オキ「…!、な、何これ!」
ことお「あはは〜☆」
ことおとオキはディスプレイを指さして、お腹を抱えて大笑いしている。面白い何かを見つけたようだ。その様子を横目で見ながら、さくらとからすは不安そうに話し合っていた。
さくら「あいつら、何が面白いんだ?まぁいいけど…。ゆずは先輩は何やってるんだろうな。心配だぜ、早く会いたいよな。」
からす「そうだな…。あ、さくら君、目の下にクマができちゃってるぞ?流石に疲れたのだろう、少し眠った方がいい。皆のことは任せてくれ。大丈夫、後でわたしも眠るから。」
さくら「ごめんな、ありがとう。そうしようかな。」
さくらは壁にもたれて眠りはじめた。からすは、さくらのほっぺたをつんつん触って、遊んでいる。
……それから、からすは眠るさくらをお姫様抱っこして、眉間に皺を寄せながら色々なことを話し合っているささめきとさくま、むむのところへと移動した。
からす「さくら君〜さくら君〜ぷにぷにちょめちょめ〜♪」
変な子守唄を歌いながら、小躍りしながら近付いてきたからすをみて、ささめきはふふっと笑った。
ささめき「もう、笑わせないでよ!緑色の星をどうするかとか、タコタコタコ星のこととか、三人で色々話し合っていたのに、何を話していたか忘れちゃったじゃない。」
むむ「でも、不安な気持ち、ちょっとだけ軽くなったかも。」
さくま「そうだな。暗い話ばかりしていても、疲れが増すだけだ。そろそろ楽しい話をしようか。」
ささめき「そうね。さくらがどんな夢をみているのか、クイズをしましょうよ♪」
さくま「くっくっく…。」
それからみんなは笑い合い、穏やかにタコパチ達の帰りを待っていた。が……。
……
…ん?
ことおと一緒に遊んでいたオキは、ふと視界の端っこに「赤色の小さな光」がチラチラ光っているのを見つけた。
豆粒くらいのその光は、ゆっくりと
ゆっくりと…
からす達の方へと近付いている。
オキ「あ、危ない!」
オキは、反射的にからすに体当たりした。
ーその瞬間ー
からすがいた場所に、魔法光線が放たれた。
強力な攻撃魔法によって撃ち抜かれた地面は分解され、空間ごと溶け落ちた。
溶けた所には穴が開いており、穴の向こうには宇宙が見えた。星に、穴をあけられたのだ。
からす「ひぃっ…!」
ささめき、さくま、むむは尻もちをついた。からすに抱かれながら眠っていたさくらも、飛び起きた。
さくら「な、なんだ!?」
オキ「レーザーポインターが見えたんだ!スナイパーがいる。」
ささめき「スナイパー!?」
皆、驚いて立ち上がった。
さくら「からす!大丈夫か!?」
さくらが慌てて駆け寄った。からすは「大丈夫だ」と言ったが、無理をして笑っているのは明らかだった。
からす「星に穴があいてしまったせいか、体が痛くて重たいな。さくまちゃん、回復魔法で星を修理できるか?」
さくま「やれるなら、既にやっている。
…この弾痕、見覚えがある。これは、かつて黒色の戦闘の星が開発していた、長距離射撃魔法武器「暗黒溶(あんこくとく)」に違いない…。あれは実現不可能と判断され、未完成だったんだ。
つまり、これは未来の武器と技術。恐らく、狙撃手は金魚八だ。
過去から技術を盗んで完成させたんだ!」
からすは頑張って立ち上がり、ドーム型のバリアを作って、皆を守りはじめた。
からす「きっとまだ狙われている。次の攻撃に備えなければッ。」
ささめき「ことお、オキ。狙撃手がどこにいるかわかる?弾痕の方向から考えると…私はタコタコタコ星だと思うんだけど。」
オキ「うん、タコタコタコ星で間違いないよ。星から星へ届いてしまう武器があるなんて…卑怯だな。」
むむ「バリアじゃ、その場しのぎにしかならないかも。あたしとさくまちゃんとオキ君がタコタコタコ星に行って、狙撃手をやっつけようよ。」
ことお「…よし、わかった。直ぐに正確な敵の位置を割り出すよ!遠回りしたら狙われて撃たれちゃうだろうし、最短距離で移動するんだ!」
オキ「早く!」
しかし、ことおの手元に赤色の光が現れて、チラチラと光った。
ことお「ちッ…邪魔するなよ…!」
ことおは飛び退いて、服の下に隠し持っていた護身用の盾を取り出した。
バキューン!長距離射撃魔法武器「暗黒溶(あんこくとく)」が撃ち放たれた。
それは、からすが作ったバリアに命中した。バリアは強力なエネルギーを吸収し、攻撃が貫通するのを防いだ。
しかし、直ぐに二発目、三発目が放たれた。バリアには大きなヒビが入った。
四発目で、バリアがガラスのように砕けた。
からすは慌てて新しいバリアを作り出したが、五発目、六発目…連続攻撃されて、またヒビが入ってしまった。
赤色の光は、ことおを狙い続けている。
オキ「やめろ、ことお君を狙うな!僕がスナイパーを黙らせにいく!!」
ことお「行くな、オキ!今、バリアの外には出るのはヤバい!」
オキ「で、でも!」
その時、今までよりも大きな一撃が放たれて、バリアが破壊された。
瞬間的なスピードで、次の一撃が、ことおに向かって放たれた。
速すぎて、皆には見えなかった。
しかし戦い慣れているオキとことおには、その攻撃がスローモーションのように見えていた。しかし避けることは難しく、間に合いそうにない。
からすは既に次のバリアを作ろうとしており、星の力を発動しているが、バリアが出現するには0.5秒ほどかかるため、間に合わない。からすの動体視力とスピードでは、対処できなかった。
ことおは盾を構えて、魔法光線を受け止めた。盾は一瞬で粉々になった。次の攻撃は腕に装着していたコンピューターで受け止めた。コンピューターも粉々になった…もう何も持っていない、今は星の力も魔法も使えない。ことおは焦った。
次の一撃が放たれた。
体よりも大きな、星を切り裂く一直線の光が、迫ってきた。
オキがギリギリ間に合って、ことおの前に立ち、両手でその光線を受け止めた。
オキ「グッ…!!!!」
全ての力を込めて光線を押し返し、耐えようとした。
くまはオキの足元にしがみついている。
しかし受け止められたのは一秒も満たない、一瞬だけだった。
オキは後ろにいたことおを押して、弾き飛ばした。同時にオキの体は打ち砕かれた。
バラバラになって飛び散ったパーツが地面に落ちる前に、次の一撃がことおの体を貫いた。
オキのパーツと、ことおの体が地面に落ちた時。
緑色の発明の星が真っ白に輝き、その光は張り裂けるように爆発した。
光は舞い広がり
花びらのように
宇宙に広がった。
散っていく。
さんさんとふりそそぐ。
オキの指先を拾って抱きしめたくまは、その様子を悲しそうに見上げていた。
ーーー
ーー
ー
さくら達は気がつくと、知らない場所に立っていた。いつの間にか、安全な星の裏側にワープしたようだ。誰がどうやって、皆をワープさせたのか。何が起きたのかはすぐにわかった。
からすが、膝をついて、さめざめと泣いていたからだ。
…からすが特別な力「深海の力」を使って、皆を瞬間移動させたのだ。
空を見ると、緑色の星のはなびらがゆっくりゆっくりと散り広がっており、輝いている。
ユニタス「…そんな。オキさん!!ことおさん!!」
さくま「…最悪だ。なんてことだ。」
むむ「あたしがもっと強かったら…。」
ささめき「……。」
皆ショックで動けずにいたが、さくらはからすの背中にしがみついて、強く強く抱き締めた。
からす「ああ、ぁあ、わたしのせいだ!わたしは、ことお君達を見捨てたんだ!わたしが悪いんだ!!」
さくら「違う!!」
からすは拳を地面に叩きつけて叫んだ。涙の水溜まりが、パシャッと飛び散った。
さくら「からすは悪くねぇよ!」
からす「ぁあ、あんな一瞬で…星が滅びてしまうなんて、思わなかった。
わたしが特別な力をもっと早く使っていたら、全員を守れたはずだったんだ。
でも、怖くてできなかった。
できなかった…。
わたしのせいだ…
わたしのせいで
ことお君達は死んだんだ。」
さくらは「違う!」と、からすの顔をあげさせ、目を合わせて話した。
さくら「からすのせいじゃない。
からすだけじゃない。俺たちだって、同じ気持ちなんだ。
怖くて、動けなかったんだ。
何か出来たかもしれないのに、何も出来なかったんだ。
皆、悔しいんだ。悲しいんだ。
…からすだけじゃないからさ。皆、同じ気持ちだから。自分を責めないでくれよ。」
からすは絶望的な気持ちで、さくらの乳白色の瞳を見つめた。心を強く強く締め付けていた苦しさが、責任感が、少しだけ紛れたような気がして、からすは立ち上がった。
からす「…ああ、ありがとう。」
震える声でつぶやいた。
その時、目の前に赤色の光が現れた。まだ狙われている。逃げ場なんてないんだ。
からすは立ち上がり、一歩進んで、両手を広げた。
ー仲間を失いたくないー
ーこうするしかないんだー
ー特別な力、「深海の力」を使って、皆を守るしかないんだー
からす(お母さんからもらった特別な力。現実を思い通りに変えてしまえる、言葉であらわすのは難しい、深海のような未知の力。
本当は、この力を皆に見せたくない。宇宙や命の形を、この手で変えたくない。
自分の意思で使うのが怖い。
わたしもこの宇宙の一部でありたいから。わたしも宇宙に生かされていたいから。
さくら君と同じ空の下で、息をしていたいから。特別扱いをされたくない。特別な存在?そんな器じゃないんだ。わたしはただのわたし。
しかし…やはりわたしは、星の運命に影響を及ぼしてしまう、宇宙の漣(さざなみ)のような存在なのだろうか。
平凡なんて。わたしには、叶わない夢なのだろうか。
簡単な事だ。深海の力で魔法攻撃や敵そのものを無力化してしまえば皆を守れる、…しかしそれはもはや、無敵の所業だ。そんなことをしてしまえばわたしは…もう、ただの「からす」ではいられなくなってしまう気がする。
… でも、やるしかないのだろうか。
…やるしかないんだ。)
その時、さくらがからすの目の前に走ってきて「何やってるんだ、さがれ!!」と叫んだ。ささめきはからすの腕を引っ張り、強引に下がらせた。
ささめき「星の化身が一番前に立つなんて、危険よ。からすさんは後衛。さくら達を信じて。」
さくら、さくま、むむは皆の前に立った。ささめきは望遠鏡をのぞいてタコタコタコ星を観察し、タイミングを窺いはじめた。
さくら「さくま、むむ!俺が思いついた作戦、やれそうか!?三秒で思いついたヤツだけど。
鏡の盾で、魔法光線を一直線に跳ね返すんだ。そして、跳ね返った魔法光線の上に、サーフィンみたいに乗って、加速して、敵の近くにピューんと向かう。そして、敵をボッコボコにしてやるんだ!」
むむ「変な作戦だけど、絶対成功させよう。」
さくま「くっくっく…。サーフィン?面白くなってきたな。」
さくまは緑色の発明の星が舞い散る光をもう一度見て、「待っていろ」と呟き、ニヤリと笑った。
さくま「緑色の星はまだ散りきっていない。だから、まだ間に合う!敵を震え上がらせてやるぞ。
タコパチとミニキスは「星を復活させる大魔法」を追いかけていた。彼らなら、ことおとオキを、緑色の発明の星を回復させることが出来るかもしれない。いや、絶対に出来る。クロサキもイカパチもいるんだ!諦めずに、信じよう。
敵はタコタコタコ星にいる。恐らくタコパチ達も敵に襲われていて、身動きが取れずにいるのだろう。金魚八の奴め…。」
むむ「大丈夫。きっと運命はあたしたちの味方になってくれるはずだよ。」
望遠鏡をのぞいていたささめきが、「光った!今よ」と叫んだ。魔法光線が放たれたのだ。
決意し、集中しているさくまとむむには、その一瞬が、スローモーションのように見えていた。
むむは魔法で鏡面の盾を四つ作り出し、右手と左手、右足と左足に、それぞれ取り付けた。
まずは右手の盾で魔法光線を受け止めた。盾は魔法光線を弾き返したが、狙った方向には飛ばなかった。右手の盾は一撃で壊れてしまった。次の魔法光線は、体をねじって左足の盾で受け止めた…しかし、やはり狙った方向には飛ばずに外れた。
むむ「くっ…。」
次の攻撃が迫ってきて、むむは右足の盾で魔法光線を跳ね返した。しかし、あらぬ方向へと飛んでいく。一直線に跳ね返すというのは、想像以上に難しい。
盾はあとひとつしかない。これが最後のチャンス。これを外せば、攻撃を受けてしまう。
むむ「次で決める…!!」
むむは左手の盾で、魔法光線を受け止めて、全身の力と魔力を使って跳ね返した。
一直線に跳ね返された魔法光線。
さくま「後は任せろ。サーフィンは100年くらい前に趣味でやっていた。」
さくまは魔法で鏡面のサーフボードを作り出し、その魔法光線の波の上に乗った。さくまの細やかな魔法と、バランス感覚、妥協を許さない強い心。乗りこなして、光の上を滑走する。
星から星へ、ハイスピードで、宇宙をサーフする。
目にも留まらぬ速さでタコタコタコ星にたどり着いたさくまは、武器「暗黒溶(あんこくとく)」を構えた敵を鋭い目付きで、はっきりと確かめた。
さくまは、漆黒の大鎌を構えた。
大きく振りかぶって、
その敵…
イフに振り下ろした。
ーーー
ーー
ー緑色の星が星のはなびらになってしまう直前ー
魔法陣を出現させ、ブレイブ☆タコキスはイカパチとクロサキ、フィカキスと一緒に、青色の不死の星からタコタコタコ星にワープした。レッドデビル☆カンパニー研究所の前にたどり着いた。イカパチは魔法の掘削機を探すために、研究所の中へと走っていった。
ブレイブ☆タコキスはすぐに、テレパシーを試した。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「お願い、タコダイオウ、返事して。君を助けたいんだ!」
魔法で語りかける。すると、ブレイブ☆タコキスの脳内に「たすけてください、僕はここです!」という声が返ってきた。
タコダイオウの声だ。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「タコダイオウや!良かった、オレらのテレパシーが届いたんや。ひとりでおるのは怖いと思うけど、そこで待っとき。今すぐ助けるからな!」
フィカキス「良かった〜。」
レッドデビル☆カンパニー研究所から、イカパチが出てきた。自分の背丈ほどある魔法の掘削機を軽々と担いでいる。魔法の掘削機は、手持ち式のドリル型で、予め搭載している魔力を使って動く仕組みだ。
イカパチ「見つけたよ〜!これを使えば、掘れそうだよ。」
イカパチは周囲にブレイブ☆タコキスとクロサキ以外の人がいないことを確認した後、機械を地面におろして、しっかり手で持って支えた。電源を入れると、パワフルな音を立てて、動きはじめた。
クロサキ「マシロ!掘りすぎて、星を真っ二つにするなよ♪」
イカパチ「そんなことしないよ、大丈夫♪じゃあ、やってみるね。皆は見ていて。」
イカパチが「えい!」と力を込めて動かすと、ガリガリと音をたてて地面を掘り始めた。
ガッガッガッ…凄まじい勢いで掘り進めて、イカパチは瞬く間に地下に潜っていった。イカパチの姿は、すぐに見えなくなった。ガッガッガッ…音も遠く離れて、聞こえなくなった。クロサキたちは心配そうに、深い深い穴をのぞきこんだ。
…突然、地面にヒビが入り、周囲の建物や道路ごと陥没した!
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「ギャー!!」
ブレイブ☆タコキスはクロサキを抱えて、空中に避難した。フィカキスはブレイブ☆タコキスの頭にしがみついている。
フィカキス「こ、これ、大丈夫なんか!?」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「お〜い、イカパチ〜?無事〜?」
真っ黒の穴にブレイブ☆タコキスの声が響く。すると、穴の中からイカパチの元気な声が聞こえてきた。
イカパチ「今、よじ登ってるところだよ〜!」
イカパチが岩を持ち上げて、地上にピョコっと顔を出した。
クロサキ「流石だな、敏腕社長♪おかえり。」
クロサキがイカパチの手を握って、引っ張りあげた。
イカパチは、疲れきった様子のタコダイオウを背負っていた。イカパチは星の中心まで掘り進めて、タコダイオウを見つけ出して助けて、連れてきたのだ。
長年地中に埋まっていたタコダイオウは、痩せていて青白く、ユニタスよりも弱々しい印象だ…。
イカパチ「作戦大成功☆魔法の掘削機には、穴を登るための機能も搭載してるんだよ。暗いし暑いし体力勝負だったけど、上手くペース配分できた。僕ってすごいでしょ♪」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「すごいよイカパチ!感動した、自慢の弟だよ〜☆」
……皆は喜んでいるが、ミニキスはイカパチが強すぎて引いていた。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「す、すごすぎて、ちょっと…怖いけどな…!?怖いって思ってるのオレだけ??あ、あんまり気にせんとこ。
…た、タコダイオウを助けられて、ほんまによかったわ。大丈夫か?地下に閉じ込められて怖かったやろ。オレらが守るし、事情も説明するから、もう安心してな。」
フィカキス「頑張ったなぁ。」
ミニキス達はタコダイオウに事情を説明した。タコダイオウは心も体も疲れきっており、ぐったりしているが、安心し、皆の顔を見てふふふと笑った。
タコダイオウ「何事ですか、もぅ〜、星の化身を地下に取り残すだなんて、とんでもない。突然力が使えなくなって、外の機体も操作できなくなって、本当に怖かった。ストレスMAXになりましたよ。どうしようかと思って、涙が止まりませんでした。助かったので、これ以上文句は言いませんが。
タコパチさんたちの声が聞こえた時は安心しました。社長、皆さん、本当にありがとうございました。はぁ、良かった。良かった。ああ、太陽が眩しい。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「青色の不死の星に帰って、タコダイオウのことを伝えようよ。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「タコダイオウはタコタコタコ星から出られへんのやんな?……イカパチさんとクロサキはここに残ってほしい。守ったってや。」
イカパチ「まかせて☆」
イカパチが元気にそう言った時…。クロサキはふと視界の端っこに、「赤色の小さな光」がチラチラ光っているのを見つけた。照射しながら狙いを定めているレーザーポインターだ。
豆粒くらいのその光は、ゆっくりとイカパチの方へと近付いている。赤色の小さな光は、イカパチの額を照らした。
クロサキ「危ない!」
スナイパーがいることに気が付いたクロサキは、反射的にイカパチに体当たりした。
ーその瞬間、魔法光線が撃ち放たれたー
その攻撃は、クロサキの胸を貫いた。
クロサキの体は糸がきれたみたいに、力をなくし、地面に崩れ落ちた。
イカパチ「クロサキ君!?」
イカパチはクロサキにしがみついた。大きな声で名前を呼んだ。しかしクロサキは虚ろな瞳で空を見ているだけだった…。
血溜まりが広がっていく。
イカパチは息をするのも忘れて、震える手でクロサキの手を握った。
イカパチ「…い、いやだ。なに?何が起きてるの?」
ブレイブ☆タコキスも駆けつけて、回復魔法を試みたが…その魔法光線は、かつて黒色の戦闘の星が開発していた、長距離射撃魔法武器「暗黒溶(あんこくとく)」によるものだ。過去から技術を盗んで作られた未来の魔法を、今すぐ読み解くのは難しく、思うように傷を癒すことはできなかった。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「治せない、どうしよう…!」
一秒、また一秒、魔力を消耗するだけ。クロサキの胸の傷を押さえても、あふれつづけるばかりで、どうすることもできなかった。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)(な、何が起きたんや…なにが…。)
フィカキス「落ち着くんや、ミニキス、タコパチ!」
イカパチ「クロサキ君、クロサキ君!!大丈夫だよね??死んだりしないよね??ね??」
錯乱し、力を失ったクロサキの名前を叫び続けるイカパチ。ここにいる全員が、何が起きたのか分かっておらず、状況を受け入れられていなかった。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)(フィカキスの言う通りや。落ち着いて、しっかりせな。敵がおるんや…このままやと、全員やられてしまう。タコパチ、大丈夫か?)
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)(…………うん、大丈夫。クロサキをしなせたりなんかしない!)
タコダイオウ「敵はまだ、近くにいるはずです。恐らく、強力な魔法武器を持っている!」
ブレイブ☆タコキスは立ち上がり、皆を守るためにドーム型のバリアを張った。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「タコダイオウは戦えるんか?戦えるんやったら、一緒に!」
タコダイオウ「いいえ。ロボットの体なら戦えますが、この体は重すぎるッ。僕はさがっています。僕がやられたら、星がほろびてしまいますから。」
タコダイオウはブレイブ☆タコキスの肩に手を置き、魔力を増幅させた後、物陰に隠れた。
イカパチは、震える両手を押さえつけるように胸の前で握り合わせて、呼吸を整えた。クロサキの胸はゆっくりと上下している……まだ生きている。イカパチは決意し、少し枯れた声で言った。
イカパチ「お兄ちゃん、ミニキス君、お願い。力を貸してほしい。クロサキ君をこんなところで死なせたくない。僕にできることは全部やりたい、試したい。…後悔したくないから。
僕も、回復魔法を使って、クロサキ君を助けられるか試してみようと思う。
だから、その間、敵をなんとかして欲しい。」
タコパチ「い、イカパチ、魔法を使うつもりなの?」
イカパチ「…うん、使いたいんだ!」
タコパチ「わかった。きっとできる。イカパチはゲームも運動も魔法も全部得意なんだもん。きっとクロサキを助けられるよ。敵は僕らに任せて。炎魔法タコパチ☆ファイヤーで、タコ焼きにしてあげちゃうもんね。」
イカパチは力ずくで金色の腕輪を外した。クロサキが仕込んだ「魔法を使えるようになる」という罰ゲームが作動する。これで、魔法を使えるようになったはずだ。
魔法を使うことは辛くも怖くもなかった。イカパチはクロサキの手を両手で握り、祈るように魔力をこめた。一生懸命、心を込めた。
しかし未来の魔法は難しい。焦る気持ちが手元を狂わせた。それでも集中する。集中する。
イカパチ「絶対に助ける。僕は、天才なんだ!」
背後から、足音が近付いてきた。ブレイブ☆タコキスが振り返ると…不気味なデザインの魔法銃を抱えた、背の高い生き物「イフ」が立っていた。不安と妖しい空気が漂う。イフは冷たい瞳で、クロサキ達を見下ろしている。
イフ「…!?な、なんと。クロサキに命中してしまいましたか…。手元が狂ってしまいましたね。貴重な幹部なのに…。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「お、お前、さくら達が話していた、イフか!?クロサキは、お前の部下なんやろ!なんとかせぇや!今すぐ治せば、まだ間に合うはずや。」
イフは不機嫌そうに、「うるさい小物ですね。」と呟いた。そして、ブレイブ☆タコキスに銃を向けて、ためらうことなく引き金を弾いた。星と空間を切り裂いて、魔法光線が迫ってくるが、ブレイブ☆タコキスはイフの行動を先読みしており、ほぼ同じタイミングで、炎魔法を撃ちかえしていた。
ブレイブ☆タコキス「タコパチ☆ファイヤー」
ふたつの魔法がぶつかり合って大爆発し、ブレイブ☆タコキスは吹っ飛んだ。体勢をたてなおし、顔をあげると、イフは無傷で、服についた土をはらっていた。
ブレイブ☆タコキスはもう一度、タコパチ☆ファイヤーをイフに向けて放った。一直線に渦巻く火柱。黒く焼け焦げて、炎が周囲を焼き尽くす。黒色の煙がもくもくと広がっていく。
黒煙の中からイフが飛んで出てきた。イフは地面を蹴り、ハイスピードでブレイブ☆タコキスの目の前にやってきて、銃で頭を殴ろうとした。ブレイブ☆タコキスは頭をさげて、ギリギリそれを避けた。
頭をあげるときに、頭突きを仕掛けたが、イフはその攻撃を受け流した。
ブレイブ☆タコキスは素早いパンチとキックを繰り返して隙を伺う。しかしイフは全ての攻撃を、最小限の動きで華麗に避けてしまう。
その時、少し離れた所からみていたフィカキスがイフに墨を吐いた。イフの顔は墨で真っ黒になった。視界を奪われて、動きが鈍くなった。
その隙を逃さない!ブレイブ☆タコキスの回し蹴りがバッチリ決まり、イフはふらつき、地面に倒れ込んだ。
イフ「クソ…、雑魚のくせに。ワタクシの顔を汚すなんてッ……!」ぺっペっ
イフは袖で顔を拭ったが、墨はそう簡単にはとれなかった。プライドが高いイフ……顔を真っ黒にされたことが悔しくて、フィカキスに対して相当怒っていた。
イフ「はぁ、最悪。みすぼらしいタコ。体を細かく刻んで乾燥させて、干物(ひもの)にしてしまいましょうか。アナタは今日から保存食です。」
フィカキス「うわ~怖いこと言わんといて、干物とか嫌や。」
イフは直ぐに立ち上がり、フィカキスを鷲掴みにした。
フィカキス「ギャーギャー!」
イフはフィカキスのタコ足を掴んで、引きちぎろうと引っ張りはじめた。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「ヤバい、フィカキスが干物にされる!」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「タコパチ☆ファイヤーする?」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「それはあかん!フィカキスが焼きタコになってしまうわ。」
その時…
クロサキ「イフ!やめろ!」
クロサキの大きな声が響いた。
イカパチと、回復したクロサキが立ち上がっていた。イカパチは回復魔法を成功させたのだ。クロサキはイカパチを守るように、手をしっかり握っていた。クロサキはイカパチに、「助けてくれてありがとう、マシロ。もう大丈夫だ。」と伝えた。頼もしい笑顔で。
クロサキの姿を見たイフは、フィカキスを投げ捨てた。ブレイブ☆タコキスはフィカキスを受け止めて、ケガをしていないことを確認した。
フィカキスはブレイブ☆タコキスの肩にギュッとしがみついて、「しんでまうかと思った……」とつぶやいた。
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「フィカキス、無事で良かった。イカパチさん、ナイス!」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「イカパチなら絶対出来るって信じてたよ。」
イカパチ「ありがとう。なんとか頑張って、クロサキ君を助けられた!」
イフ「…ふむ。クロサキ。しにませんでしたか。」
イフは品定めするように、イカパチをジロジロと見た。そして次に、ブレイブ☆タコキスを見た。
イフ「…素晴らしい回復魔法と、炎を使った戦闘魔法。見どころのある魔法使いですね。努力を重ねて生きてきたのでしょう。素晴らしい。ああ、本当に素晴らしい。
その魔法も、体も、心も、既にワタクシのものだということが素晴らしい!
…さあ、お遊びはおしまいです。
金魚八で会議した結果、この宇宙はまもなく消去されることとなりました。
しかし、アナタたちの命を奪うつもりはありません。アナタたちは金魚八に相応しい、特別な魔法使いですからね。歓迎いたしましょう!
金魚八は絶対的権威。このセカイの運転席は金魚八にあるのです。アナタたちには、ハンドルを握る資格があります。さぁ、共に未来を築きましょう。
…逆らえば、この魔法銃で心臓を撃ち抜きます。死にたくなければワタクシの物となりなさい。さぁ、忠誠を誓いなさい。」
イフは魔法銃をイカパチとブレイブ☆タコキス、フィカキスに向けて脅した。宇宙が消されると聞いて、怯えている皆の表情を見て、イフは満足そうにしている。
イフ「クロサキ。遊んでないで、仕事をしなさい。アナタの仕事はカチョーロチロムについて調べることでしたよね。連れ戻すことは出来るのですか?どうしてもあいつの力が必要なのです。……仕事は進んでいるのですか?」
クロサキ「俺のペースで進めてるから急かすなよ。
なぁ、この宇宙をどうするか決める会議、幹部の俺抜きでやったのか?やり直せ。俺の意見を無視するなよ。
この宇宙を消すのは大反対だ。消せば何とかなると思ってるなら、バカすぎるぜ。金魚八を脅かす力を持つ宇宙だからこそ、こいつらと和解して、協力し合っていくのがいいと思う。ビビってないで交渉をしろよ。
自分より弱い宇宙を消して一番強い宇宙になるか、自分より弱い宇宙の力を手に入れて一番強い宇宙になるか…。最強なのは後者だろ?
人手不足なのはわかるけど、適当に仕事してたら、権威が緩んじまうぜ。」
イフ「…クロサキに言われなくても、わかっています。
雑魚と協力しても足でまといになるだけでしょう。ワタクシは深海の宇宙の価値を、実力を、この目で、この手で、確かめたいのです。だから、脅して、潰して、…〇ろしてみようと思ったのですよ。」
クロサキ「組む価値があるのか確かめたいのか…それなら、いい方法があるぜ。
イフは全力でこの宇宙を消すために働く、俺は全力で宇宙を守ろうとするために働く。魔法では測定できないような本気の力をぶつけ合って、実際に戦って、力を確かめるっていうのはどうだ?
遠くから狙って戦うんじゃなくて、正々堂々戦うんだよ。
口しか動かさない会議より、体も動かす会議の方が、説得力があって面白いだろ?
この戦いは良い判断材料になると思うから、俺とイフの仕事の様子は、金魚八のディスプレイで生放送しようぜ。この宇宙の運命は皆に決めてもらおう。面白そうじゃん?」
イフ「…良いでしょう。その方法でこの宇宙を審査しましょう。会議はやり直します。ワタクシとクロサキの実力も、浮き彫りになるでしょうね。失態を晒して、幹部を辞めることになっても知りませんよ。」
クロサキ「望むところだ!……よし、生放送開始♪金魚八の魔法使いたち、観てるか〜?☆」
イフ「決着がつきましたら、すぐに会議をはじめますからね。」
クロサキはイカパチと、ブレイブ☆タコキス、タコダイオウたちの方を見て言った。
クロサキ「…最善の方法かどうかはわかんねぇけど、これで今すぐ宇宙が消されることはなくなった。頼む。皆、協力してほしい。宇宙を守るために、一緒に戦ってほしい。
俺は…俺たちの宇宙の未来は、俺たちが作るものだって思ってるんだ。
金魚八にも、誰にも、消すとか消さないとか、決める権利なんかないんだ。だから、立ち向かいたい。イフを退けて、金魚八のやつらに、俺たちが自立してるってことをわからせてやりたい。本気出して、俺たちの存在を認めさせたいんだ。きっと今が、その時なんだ。」
クロサキの熱い言葉と表情を見て、イカパチたちの心も熱くなった。金魚八とイフに立ち向かう勇気が込み上げてきた。
イカパチ「…うん!青い星の皆にも伝えて、皆でイフと戦おう。宇宙を守ろうよ!
僕たちの様子、中継されてるんだよね?
金魚八のみんな〜☆観てる〜?☆僕の名前はイカパチ!レッドデビル☆カンパニーの隠れ社長、元デスゲーム主催者の逸材だよ☆
みんなのボス、イフを屈服させちゃう予定だから、楽しみにしていてね。
イフってどんな風に命乞いするのかな?泣くと思う?皆も想像してみてね☆
…タコパチとミニキスも自己紹介しておいた方がいいよ。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「嫌やわ、怖いやん。自己紹介するメリットあるか?」
イカパチ「あるよ。名前を知っていると、愛着が湧いちゃうでしょ。モブ(他人)の命は簡単に奪えるくせに、少しでも愛着がある人間を○すのはためらっちゃうタイプの人って結構いるんだよ。だから、自分の気持ちとか、大切にしていることとか、切ない過去とか、口に出した方がいいよ。少しづつ可愛いところをチラ見せして、同情を誘うんだ。
可哀想で可愛い奴って、しににくいんだよ☆敵や悪人だとしても、つい感情を重ねたり許したり、可愛く見えたりしちゃう。小さな行動の積み重ねが、自分の命を救うことに繋がるんだよ。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「なるほど!よ〜し。やってみるよ。
僕たちはブレイブ☆タコキス!僕、タコパチと恋人のミニキスがひとつになって変身してるんだよ。ミニキスは僕を守ってくれる、愛のご主人様だよ。それから、家族のタコ、フィカキス♪タコタコタコ星の化身でレッドデビル☆カンパニー常務取締役のタコダイオウ♪皆優しくて頼もしい仲間だよ。
…あれれ?イフは自己紹介もできない赤ちゃんなのかな??
皆よろしくね☆」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「なんでイフを煽るねん!」
タコダイオウ「ひぇ〜、ぼ、僕の名前は言わなくていいんですよ〜!」
クロサキ「自己紹介する流れなのか?
俺は金魚八幹部のクロサキ。仕事を楽しく、完璧にこなす、金魚八のエンターテイナーだ!深海の宇宙を舐めている画面の向こうの頭よわよわなお前らに、仕事のやり方、お手本ってやつを見せてやるぜ。」
イフ「………ワタクシはイフ。金魚八のリーダーです。趣味は木工雑貨の制作。」
その時、イフが持っている魔法の手鏡から、緊張混じりの声が聞こえた。金魚八のメンバーからの緊急連絡だ。イフは懐から魔法の手鏡を取り出した。
金魚八 セキュリティチーム メンバーA「イフ様!金魚八内にある魔法コンピューターに何者かがアクセスし、情報を覗き見したとのことです。
対象のコンピューターは、時空のトンネル内に散らばった緑色の発明の星の力を収集していたコンピューターで、イフ様の私物です。
金魚八の重要情報や通信に影響はございません。引き続き、金魚八セキュリティチームが監視、管理して情報漏洩やサイバー攻撃から、保護いたします。
我々が導入しているファイアーウォールは、不正に接続を試みた生き物の脳に直接シグナルを送信し、物理的に破壊する特別仕様ですが…。
勝手に私物の情報機器を持ち込むのはやめてください。今回覗き見された情報はイフ様の「検索履歴」と「秘密フォルダ♡(写真)」です。詳細は金魚八本部でお話いたします。
以上、よろしくお願いいたします。」
イフ「なんですって!?ワタクシの検索履歴と秘密フォルダ♡(写真)が流出!?」
イフは瞳と顔を真っ赤にして、魔法の手鏡を乱暴な手つきで懐にしまった。体が震えるほどに、怒りが湧き上がっている様子だ。
イフ「なんて悪質。無礼にも程がある。
犯人は貴様だな…おのれ、緑色の発明の星の化身!
ことおとオキは金魚八に相応しい優秀な存在でした…しかし残念ながら、アナタ方の金魚八幹部の席は、たった今無くなりました。今すぐその脳を消去しなければ。この罪は、命をもって、償っていただきましょう。」
イフは魔法銃 暗黒溶(あんこくとく)を掲げた。銃口を空に向けて、複数回引き金を引いた。
イカパチ「空砲?」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「ことお君とオキ君が狙われてるってこと?守りに行かきゃ!」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「…イフ、何をするつもりなんや?」
クロサキはすぐに「イフは空ではなく、ことおに向けて魔法銃を撃った」ということに気が付いた。目を見開いて焦りながら、ブレイブ☆タコキスの腕を掴んだ。
クロサキ「く、空砲じゃねぇ、多分青い星に向けて撃ったんだ。ここからじゃよく見えねぇけど、今のでことおが撃たれたかもしれねぇ!!
俺は撃たれてしにかけたけど、マシロの回復魔法があったから生き延びた。高度な回復魔法だから俺が生き延びたのはキセキだったかもしれねぇ…、もう一度成功するかはわからねぇけど、今すぐイカパチを連れて、助けに行かねぇとヤバい!」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「星から星へ、遠距離攻撃したってことか!?わかった、イカパチさん、行くで。オレとタコパチ、イカパチさん、クロサキの四人で魔法を使えば、絶対成功するから大丈夫や。」
イフ「回復魔法?もう、遅いですよ。緑色の発明の星は散りました。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「そんな…!?」
イフは空中にディスプレイを投影した。はなびらのように散っている緑色の発明の星と、星の裏側にワープしたからすとさくらたちが映し出されている。絶望的な現実。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「み、緑の星が散ってるよ。遅かったんだ……。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「ぁ、うそや、ことおさんもオキさんもやられてしまったんか!?」
イカパチ「ことお君は僕の大切な友だちなのにッ。」
クロサキ「チッ…、ことおの奴、しくじってんじゃねぇよ。こんな状況、どうすんだよ。からす、お前の力があれば乗り越えられるよな?……何とかしろよな、マジで。」
イフは得意げな表情で、もう一度、魔法銃 暗黒溶(あんこくとく)を掲げた。銃口を空に向けて、複数回引き金を引いた。
イフ「ばかな子。星の裏側にワープしても、意味がありませんよ。逃げ場なんてないのです。この武器には空間を引き裂く力がありますからね。障害物があっても関係ない。一直線に、標的の左胸を貫くのです。
さぁ、散りなさい。」
その瞬間…!!さくまが、空中に現れた。
さくまは、瞬きさえ許さないハイスピードで、漆黒の大鎌を大きく振りかぶって、イフに振り下ろした。
イフ「なにッ…!?」
イフは魔法銃を盾にして、その鎌を受け止めた。
火花が飛び散った。イフとさくまは睨み合い、武器を押し合った。体いっぱい力をこめて、魔力をこめて、少しづつ力は傾いていった。優勢なのはイフではなく、さくまだった。
さくま「なんだ。お前の魔力はその程度か……?イフ。」
さくまは大鎌で、暗黒溶(あんこくとく)を真っ二つにして、使用不能にした。続けて、さくまはイフに攻撃を仕掛けた。イフは避けきれず、刃を左腕で受け止めた。
イフ「ググッ」
刃がイフの腕の骨をギリギリと削っていく。イフの青色の血と、火花が飛び散る。イフは痛みに顔を歪めながら、なんとかさくまを突き飛ばした。
その時、青色の星からむむも飛んできた。
むむ「イフ!!覚悟しろ、あたしが相手だ!」
さくま「くっくっく、むむは手強いぞ…。」
さくまはさがった。叫びながら登場したむむは、手のひらを空に掲げた。すると空を覆い尽くす程の大きな魔法陣が現れた。魔法陣はピンク色に輝いている。光は、イフに狙いをさだめて降り注ぐ。まるで氷柱(つらら)のようだ。
イフは素早くさがって、氷柱を避けた。しかし避けた先の地面からも、ピンク色の光の氷柱が突き出した。イフは魔法でバリアを張り、大きな氷柱を弾いて身を守った。
イフ「自分の力も、敵の力も把握出来ていないのですか?むむ、無謀ですよ。アナタにワタクシは倒せません。諦めなさい。」
むむ「試してみたいんだよ。」
むむはイフのバリアに向けて魔法を放った。イフのバリアはピンク色に輝き、むむに乗っ取られて、内側に放電した。電気魔法攻撃がイフの体を包む。
バリアを破壊して、イフが転がり出てきた。イフは電気を通さない服を着ていたため、無傷だった。しかしむむは既にイフの背後にいた。
むむは懐から取り出した魔法の杖に、力を増幅させる魔力を宿し、イフに振り下ろした。振り返ったイフは、バリアを張って、その攻撃をやり過ごした。それはむむの思惑通りの行動だった…テンションが上がったむむは、やったぁ♪と笑った。
既に空を覆い尽くす程の大きな魔法陣が用意されていた。見上げた瞬間、ピンク色の光が氷柱のように、イフの頭上に降り注いだ。氷柱はイフに直撃し、爆発した。白い煙がもくもくと広がった。
煙の中から、ボロボロになったイフが這い出てきた。その姿を見つけたむむは、魔法の杖を握りしめて、イフに襲いかかった。
イフ「イタタタタ!ああもう、もうッ!!もう!!」
むむ「みんなのために本気で戦うって気持ちいいね!」
ボコボコにされているイフを見たクロサキは「はぁ?マジかよ、ボスがやられちまうぜ!」と焦っている。……さくまはその隙にブレイブ☆タコキス達の記憶を見て、何が起きていたのかを確かめた。そして、走って近寄り、作戦を話した。
さくま「ブレイブ☆タコキス。ほろびた星を治して復活させる回復魔法を使え。ことおとオキを救うんだ。まだ星は散りきっていない。きっとやれるはずだ。」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「僕たちが……!?」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「タコパチ、やろうや。やるしかない!ぶっつけ本番やけど、力を合わせて、絶対成功させるんや。オレらならできる!」
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「い、今すぐ夢を叶えるなんて、そんなこと……できるかな。できる、か、な……。」
もし失敗したらどうしよう。そんなことを想像してしまい、タコパチは怖い気持ちになった。タコパチは毎日その魔法と向き合って、レポート用紙を何枚も使って研究し、頑張ってきた。自信がないわけでない。しかし、不安を打ち消すほどの、勇気が湧かない。
イカパチ「お兄ちゃん、大丈夫だよ。僕にも魔法陣の設計図をみせてくれたよね。最大魔力を出し切って、回復魔法を大爆発させて慎重に操る……とても難しい魔法だけど、あの式は不可能じゃない。お兄ちゃんとミニキスなら、できる。絶対成功するよ。ね?クロサキ君。タコダイオウもそう思うよね?」
隠れて身を守っていたタコダイオウが、戻ってきた。
タコダイオウ「…きっとできますよ。おふたりは強くて優しくて、勇気がありますから。」
クロサキ「絶対できる、余裕だと思う。楽しんじまえよ。ことおとオキ…あいつら、悔しくてたまらない気分だと思うから、早く復活させてやろうぜ。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「タコパチ、緊張せんでいいんやで。別に今すぐ夢を叶えるわけじゃないや。オレらの夢は数えきれんくらいいっぱいあるんや。この挑戦は、夢とその次の夢を繋げるための架け橋なんや。
オレたちの胸の中には、皆に勇気をわけたり癒したりする力がいっぱいあるんや。力を抜いて、仲間のことを考えるだけでええんや!」
ミニキスのあたたかい勇気が、タコパチの心にも伝わり、共鳴する。強い仲間に囲まれて、タコパチのやる気も燃え上がった。ひとりじゃない。今の僕なら、ミニキスとフィカキスと一緒なら、仲間を救える。
自分さえもまだ知らない、強くて優しい自分を見つけられる。発揮できる。
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「大丈夫、僕たちならできる。まかせて!さぁ、助けに行こう!」
フィカキス「よっしゃ!」
ブレイブ☆タコキスはフィカキスを肩に乗せて、翼を広げて、光の粒と共に宇宙に舞い上がった。
そして、花びらのように舞い散っている緑色の星の光を見つめた。
大きな月を背後にし、瞳に炎を宿してメラメラと燃やした。燃えているのは、決意だった。
タコ型のステッキに炎をからめて、くるくるとまわす。魔力を絡めて集めていく。
回復魔法を帯びた炎を操り、集めた魔力を解き放つ!
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
ブレイブ☆タコキス「タコキスヒール☆ギャラクシー」
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
大爆発!爆風は緑色の星の光を巻き込んで、強く優しく、ぎゅっと抱きしめた。流れ星も巻き込んで、体を包んで、宙(そら)はオーロラのように煌めいた。
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
からすとさくら、ささめきもその様子を見上げていた。
からす「そらが虹色に燃えているぞ、すっごく綺麗だな〜♡」
さくら「これがブレイブ☆タコキスの回復魔法!?すっげぇ。」
ささめき「ミニキスさん、タコパチさん、頑張って!」
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
ブレイブ☆タコキス(タコパチ)「集中して。もっともっと集中して。爆発させた魔法を一箇所に集めて、元の形に戻すんだ。緑色の星を取り戻すんだよ。」
ブレイブ☆タコキス(ミニキス)「あと少しや…あと少し!」
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
星が少しずつ回復していく。パズルのピースが合わさるように、失った形を取り戻していく。
…。oо○**○оo。…。oо○**○оo。…。oо○**○оo
その光景を見て、フィカキスは感動していた。ほろびた星が魔法で元に戻るだなんて、ありえないことだと思っていた。昔の自分に説明しても、きっと何一つ信じてくれないだろう。
自分にタコパチとミニキスという家族がいて、彼らと一緒にその魔法を使っているだなんて、きっと、きっと。
きっと。
ーーー
ーー
ー
…?。目が覚めた。ここはどこだろう。見渡すと、森の中にいるようだった。小鳥の鳴き声が聞こえる。重たい体を起こして、ゆっくりと立ち上がる。鉄製の足腰が、軋む音がした。
どこからか、川の流れる音がした。心が落ち着くような、涼しい音…その音がする方へと歩き出す。
植物をかき分けて進むと、小さくて浅い川が見えた。川の中…湿った岩にもたれて、眠っている青年がいた。長い髪の先と、袖が濡れていた。小さなロボットが、眠っている青年の袖を引っ張ったり、頬をたたいたりして、起こそうとしていた。
オキは慌てて駆け寄った。
オキ「ことお君、くま…!!大丈夫!?」
ことおはまだ、気持ちよさそうにムニャムニャ言いながら眠っている。くまは大喜びでオキにしがみついた。オキはくまを抱きしめた。
オキ「くま、心配かけちゃったね。もう大丈夫だよ。」
オキはくまを肩に乗せて、ことおを抱いて立ち上がった。少し歩くと、森を抜けて、高台に出た。
遠く遠くまで、街が、美しい夜景が広がっていた。人々が活動している証だ。
オキ「くま。ここ、僕らの星だ。僕とことお君が荒野にする前の、緑色の発明の星だよ。」
くまはうなずいた。空には青色の星が浮かんでいる。
オキ「僕たち、きっと…皆に助けてもらえたんだ!」
夜空を見つめていると、さくらがやってきた。さくらはユニタスを抱えている。
オキ「さくら…!ユニタス!」
さくら「オキ、良かったな。ことおもくまも、星も復活して安心したぜ。」
ユニタス「また会えてよかった、これからも友だちでいてくださいね!」
オキ「う、うん!」
からすとさくま、ささめき、むむもやってきた。さくまはささめきを抱えている。
からすはぴょんと降りて、眠っていることおの額に触れた。
からす「良かった、眠っているだけで、熱があるわけではない様子だな。くま君も元気そうだな。
…オキ君、おかえり。会いたくてたまらなかったんだ。青色の星にあけられてしまっていた穴も修復されていた。本当に良かった。」
ささめき「オキ!あんたを助けるために、皆、頑張ったのよ。さくらが考えたヘンテコな作戦を、むむちゃんとさくまちゃんが成功させて〜、それから、…と、とにかく、凄かったの!後で話す、本当に、本当に、皆、かっこよかったんだから♪」
さくま「くっくっく、成功して良かった。サーフィンの経験がこんな形で役にたつとはな。オキ、まさか我らに助けられるだなんて、思わなかっただろう?ああ、面白い。」
むむ「イフはボコボコにしておいたよ。ふたりのかわりにね♪イフは身体中が痛くて立ち上がれなくなって、タコタコタコ星の布団で、悔し泣きしながら寝てるよ。クロサキ君とイカパチ君と、タコダイオウ君が見張ってるから、安心してね。」
オキ「本当に強いね…。えへへ、もう、敵わないや、ぜったい。」
夜空に浮かんだ魔法陣からブレイブ☆タコキスが現れて、降りてきた。ミニキスとタコパチは変身を解いた。
タコパチ「大成功だね、ミニキス♪」
ミニキス「良かった、うまいことできたな。タコパチが頑張ったからや、自信持つんやで。」
フィカキス「ミニキスも頑張ってたで。」
オキ「みんな本当にありがとう、くまもそう言ってる。
僕らは緑色の発明の星も、星の力も取り戻した。でも、決めたんだ。もう二度と、侵略のためには使わない。
僕は破壊をするために生まれたロボットだから、どう生きたいか…なんて考えたことがなかった。ロボットだから、自分で考えなくてもいいと思いこんでいたんだ。
だけど、さくらやユニタス、ふうがやゆずはと出会って、みんなと出会って、僕は自分を見つめなおした。自分はただのロボットじゃないと思った。ことお君やくまのことが大好きなロボットだったんだ。
僕もことお君もくまも、これからは他の人の宝ものを守るために、発明や宇宙の研究をして、強く優しくなるよ。皆みたいに。」
オキは幸せそうに微笑んだ。
その時、知らない女性の声がした。皆がふりかえると、優美なドレスを身にまとった女性が立っていた。近くには小型の宇宙船が止まっている。金魚八から帰ってきた、とおこだ。ことおにそっくりだったため、皆も直ぐに気が付いた。
とおこ「お兄様〜!ただいまですわ〜♪豪華客船 金魚八の旅から、帰ってきましたの♪新鮮で楽しい毎日でしたわ。でもやっぱり…故郷が落ち着きますわね。緑色の発明の星は自然豊かで、穏やかで、素晴らしい星ですもの。変わらない様子で安心しましたわ♪」
とおこはドレスの裾が汚れないように気にしながら、ゆっくりとオキとことおのところへ歩いてきた。
オキ「君がとおこ?僕はオキだよ。よろしくね。」
とおこ「あたしの名前を知っているのね。オキさん、声をかけてもらえて、とっても嬉しいわ。あたしは緑色の発明の星の化身 とおこ。うふふ、よろしくお願いします。…あら♪可愛らしいくまさんね。」
とおこはくまを優しく抱いて、眠っていることおに声をかけた。
とおこ「ねぇ〜お兄様ぁ、あたくし、お腹がすいておりますの。お寿司と天ぷらが食べたい気分ですわ。オキさんは新しいお友だち?みんなでお店でお話しましょうよ♪」
むむがワクワクしながら、とおこのところへと駆け寄った。
むむ「とおこちゃん、あたしはむむだよ。隣にある青色の星の魔法戦士だよ。会ってみたかったんだ、よろしくね。」
とおこ「むむさん、よろしくお願いします。お隣の星…?あら、本当。大きな星が見えるわね。ふたつめのお月さまのようでとっても素敵♪
むむさんの黒色のリボンのお洋服、素敵ですわね。憧れのファッションセンスですわ♪よろしけば、あたくし達と一緒にお寿司と天ぷらを食べません?お洋服のお話をしたり、お買い物をしたりしてみたいの。」
むむ「いいの?一緒に行こう。なんだか嬉しいな〜。とおこちゃんもドレス似合ってて可愛いよ。」
むむが頷くと、とおこはくまを抱いたまま、むむの手を握った。突然手を繋がれたむむは少し戸惑っている。
とおこ「も〜、お兄様!そろそろ行きますわよ!」
ことお「……ハッ!」
オキ「あ、やっと目が覚めた」
オキの腕の中で寝ていたことおはガバッと起き上がり、地面に転がり落ちた。直ぐに立ち上がって、焦り、驚いた様子で、辺りの景色と皆の顔を交互に見た。
とおこ「お兄様、大丈夫かしら?なんだかお疲れのご様子ね……。」
ことお「!、と、とおこ…!」
とおこ「これからこちらのお友だちと、お寿司と天ぷらを食べに行きますのよ。もちろん、お兄様も一緒に行きますわよね?大好きなお兄様がいないと寂しくて、あたくし、きっと泣いてしまいますわ。」
変わらない妹の姿を見て安心し、ことおはすぐに笑顔になった。
ことお「もちろん、お兄ちゃんも一緒に行くよ。飛び起きてしまってごめんよ。驚かせてしまった?」
とおこ「うふふ、少しだけ驚いてしまいましたわ。お兄様はいつものんびりしているから、あんな風に慌てているお顔を見るのは珍しいわね。怖い夢をみていたの?」
ことお「い、いや、べ、べつに。俺は大丈夫だから、安心してよ。」
とおこが鼻歌を歌いながら、街に向かって歩きはじめた。手を引っ張られたむむはささめきたちに、「ちょっと遊んでくる♪終わったらすぐ戻るから!」と伝えた。ささめきは「こっちのことは、まかせてちょうだい」と笑った。
オキ「……!、さくら、ユニタス!今、宇宙から霊魔法のメッセージを受信したよ。ゆずはからだ!
「オレたちは無事。ふうががオレを助けてくれたんだ。オレが目覚めるまで飛び続けてくれたんだよ。指輪を落としちゃったらしいけど、そんなの気にしない。ふうがの体も治して、元に戻せた。とにかく無事で良かった。今もまだ時空のトンネルにいるけど、もう大丈夫。霊魔法で作った宇宙船の中で休憩してるからね。丈夫な宇宙船を作り直して、さくら君の星に向かうよ。」だって。良かったね。」
さくら「マジか!よかった〜!ゆずは先輩も早く合流してほしいぜ。」
ユニタス「安心しました、早く会いたいですね。僕の体のことも相談したいですし。」
その時、ロボットが歩いてやってきた。そのロボットは、ずっと目覚めないまま、横たわっていたタコダイオウだった。
ロボットのタイダイオウはスマホを取り出した。スマホにはタコタコタコ星にいるイカパチとクロサキ、タコダイオウ(本体)が映っている。タコタコタコ星のスマホは高性能で、星から離れていも通信できる(限られた範囲ではあるが)。画面の向こうの三人は楽しそうに話しはじめた。
イカパチ「もしもし、やっほー☆お兄ちゃんもミニキスも、フィカキスもお疲れ様。タコキスヒール☆ギャラクシー、大成功だね!興奮しちゃった♡かっこよかったよ♪」
クロサキ「…良かったぜ。ロボットのタコダイオウ、無事動かせたみたいだな。金魚八の技術と魔法を使って、ロボットを遠隔操作できるリモコンを作って、タコダイオウにプレゼントしたんだ!タコダイオウの本体は星から出られないけど、これまで通りロボットを遠隔操作して、星の外に行けるんだ」
タコダイオウ「ユニタス、僕のことは気にしないでください。実は僕、嬉しいんです。ずっと悩んでいました…星の化身の業務は面倒でたまらなかったから。僕は社長とレッドデビル☆カンパニーで働くのが大好きなんです。それなのに、自分がしんでしまったら星がほろぶなんていう役割のせいで、自分の肉体を動かして自由に働けないなんて…。
レッドデビル☆カンパニーは、生まれ変わります。医療、何でも癒せる回復魔法の開発と普及を進めて、人々の命と心を救う会社に。社長はタコパチさんと協力して、これまで侵略した星を回復させ、星の力を返却することを計画しているそうです。
ユニタスもこれまで通り、レッドデビル☆カンパニーで働き続けられますよ。星の化身としての使命もあるので、忙しいと思いますが、力を合わせて、タコタコタコ星を発展させていきましょう。」
ユニタス「タコダイオウ!ああ、良かった、怒ってない……安心しました。ええ、もちろん頑張りますとも。レッドデビル☆カンパニーと、タコタコタコ星のために、全力で働きますよ!今、ふうがさんとゆずはさんという友だちを待っているんです。彼らと再会した後、タコタコタコ星に戻りますので♪」
タコダイオウ「と、友だち?友だちなんて作ったのですか?」
友だちという言葉を聞いて、タコダイオウはくすくすと笑いはじめた。
タコダイオウ「僕らしくない。僕は子どもっぽい遊びは好きじゃないんですよね。上司と部下以外の人間関係は、面倒というか…。僕は仕事ができる大人ですし?酒と孤独と責任に酔うのが一番気持ちいいし楽しいと思ってるんですよ。…やっぱりあなたはもう、僕とは別人ですね。ははは。」
ユニタス「た、タコダイオウ。あなた、仕事しすぎなんじゃないですか?なんだか、その…結構ひねくれていますね。僕にはわかりますよ、本当は皆と仲良く遊びたいくせに…い、いえ、何でもありません。ふふ、新しいタコタコタコ星での生活、面白くなりそうです。」
みんなの心は、安心と自信でいっぱいになっていた。愛する人、仲間…みんながみんなのことを誇らしく思っていた。
魔法が使えなくても、心や体を癒して回復させる方法は沢山ある。皆に勇気をわけたり癒したりする力が、胸の中にいっぱいある。そのことに気が付いた。そしていつの間にかその技を身につけていた。
悪に染まった心は癒されて、強くて優しい勇気を知ることができた。
奪ったもの、失ったもの。全てを取り戻すことは難しい。
元悪人は誰よりも、そのことを自覚している。
だからこそ、追い続ける。求め続ける。
自分の弱さと向き合って、二度と間違えないと約束をする。未来を守るために、自分と他の人の宝ものを守るために、これからも強くなるのだ。
オキ「マシロとクロサキとも分かり合えてよかった。初めて会ったときは敵だったのにね。」
イカパチ「僕たちもそう思ってるよ。オキ君、またタコタコタコ星にも遊びに来てよね♪」
オキ「うん♪僕とくまには食べ物を食べる機能がないけど…欲しくなってきたな。皆とご飯食べるのって、楽しそうだもん。」
ことお「すぐに搭載できるから、後でやってあげるよ。」
オキ「楽しみ。おいしいってどんな感じなのかな?早く遊びたくなってきた。そろそろ行こうよ。
星の位置を元に戻すと皆と会えなくなるから、このままでいいよね?あはは。
じゃあ、またね!」
さくら「やっぱり星の位置はそのままなのかよ!」
オキがことおの手を握って、とおこ達を追いかけようと引っ張った。ことおは振り返って、皆の顔を見た。
ことお「本当にありがとう。心から感謝してるよ。
…からす、無理するなよ♪お互い頑張ろうぜ。」
からすは「ありがとう、ことお君」と言ってウインクした。
ことお「それじゃ、ばいびー☆」
皆でことおとオキ、くまの背中を見送った。
さくら「行っちまったな〜。
星が隣同士にあるなんて変な状況だけど、何か困ったことがある時に、あいつらにも頼れるってことだから…別にいいか!笑。むむととおこも仲良さそうだったし、これからは協力できるかもな。まあ、何とかなるだろ♪」
からす「ああ。青色の星に住んでる皆に、仲間の星だと説明しないといけないな。」
ささめき「私がうまく説明するわよ。まかせて。」
さくま「ささめきは頼もしいな。そういえば、イフはどうなったんだ?」
イカパチ「イフっちなら、ここにいるよ〜☆」
イカパチがスマホにイフの顔を映した。ダメージを負って動けないイフは、包帯を巻かれており、布団に寝かされている。イフのまわりには、かえるが数匹歩いている。
さくら「え?」
イフ「う、映すな、ッ、痛、イテテテ…ああもう最悪…。貴様らは強すぎる。貴様も、貴様も、全員強すぎる。魔法が上手すぎる。その上、ゆずはもふうがも生きているだと?とおこも返してしまったし、くそくそくそくそくそ!!!!魔法も霊魔法もほろびろッ、イタタタ。」
クロサキ「落ち着けって、イフ!ほら、イフの用心棒になってみたいって言ってるかえるがこんなにもいるんだ。このかえるは超強いんだぜ☆イフ、まだまだ人望あるって♪」
イフ「一秒でも早く金魚八に帰りたいのに…なぜか魔力が不安定で、回復魔法も上手く使えない。こんなに時間がかかるなんて。しかも他人の布団で寝るなんて汚い汚い汚い、最悪最悪、夢かと思いたいくらいだ、クソ。…まさか、このかえるのせいでは!?」
クロサキ「自分の魔法が下手なことを、用心棒のせいにするのかよ、そりゃ無いぜ。こいつらは向上心がある、有能なかえるなんだ。用心棒だけじゃなく、秘書も幹部も任せられるぜ?」
かえるたちは特に何も考えていない様子で、イフの周りを走ったり飛んだりしては遊んでいる。
イフ「かえるのくせに…。まぁいいでしょう。採用!!今からお前はワタクシの秘書、お前とお前は金魚八の幹部です。」
体を回復し終えたイフは、なんとか起き上がり、立ち上がった。
イフ「クロサキ、金魚八に戻りますよ。この宇宙を、深海の宇宙の運命を決める会議をやり直すのです。」
クロサキ「イフは全力でこの宇宙を消すために働く、俺は全力で宇宙を守ろうとするために働く。魔法では測定できないような本気の力をぶつけ合って、実力を確かめる。その様子を金魚八で生中継して、会議の判断材料にする…って話だったよな?イフは未来の技術が使われている武器 暗黒溶(あんこくとく)を使った。俺たちは失った星をタコキスヒール☆ギャラクシーで取り戻した。」
イフ「クロサキ、それ以上喋るな。ワタクシは、一刻も早く会議を終わらせて、休みたいんですよ。何か食べて風呂に入って、映画でも観てから、普通に寝たいんですよ。」
クロサキ「じゃあ早く帰って仕事終わらせちまおうぜ♪マシロ、金魚八の仕事が終わったら帰ってくるから♪宇宙のことはまかせろ!」
イカパチ「うん!僕もレッドデビル☆カンパニーの仕事をしながら待ってるよ。お兄ちゃんとミニキスもフィカキスも、タコタコタコ星に戻ってきてよ。これからのことをもっと話そう♪」
タコパチ「わかった!今すぐタコタコタコ星に戻るよ♪さくらさんたち、僕らももう行くよ。僕らも青色の星のことが大好き。ぜったい、また会いに来るからね。皆と出会えて本当に良かった。怖い思いもしたけど…イカパチを助けられたし、僕も強くなれた。夢の続きを見つけられたよ!」
ミニキス「さくら、みんな、ほんまにありがとう。なんか困ったことがあったら、いつでも相談してな。力になるから。今度はタコタコタコ星にも遊びに来てや♪枝豆とたまご豆腐のスムージーをご馳走するで。」
タコダイオウ(ロボット)「ロボットの僕の体は青色の星に残しておきますね。邪魔にならないところに置いておいてもらえますか?普段はシャットダウンしていますが、用事がある時は動かしますので。ユニタスも用事が終わったら、タコタコタコ星に戻って来るのですよ。」
ユニタス「もちろんです。」
からす「わかった。タコダイオウ君の体は、天国のお家の、空いているお部屋に置いておこう。」
フィカキス「怖かったし、ハラハラもしたけど、丸くおさまって、ほんまに良かったわ〜♪」
さくらとミニキスたちは握手をした。
さくら「ああ、絶対また会おうぜ!ミニキス、タコパチ、フィカキス!お前らは親友だ♪」
からす「タコタコタコ星も、青色の不死の星も、緑色の発明の星も、全部大好きだ。皆で守ろうな。宇宙は繋がってるから、いつも一緒だ。」
ささめき「強くて優しい、回復魔法戦士。あんたたち、最高ね♪」
さくま「くっくっく、働きすぎて体を壊すなよ」
ミニキスとタコパチは手を振ったあと、ブレイブ☆タコキスに変身し、空へと飛び立った。
ブレイブ☆タコキス「ばいばーい!」
皆が飛び去った夜空には、魔法の光のカーテンが輝いていた。