【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】6話

「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」

小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。

「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)

過去話はこちらからどうぞ♪

小説「星のはなびら2」
「小説「星のはなびら2」」の記事一覧です。

(゜o゜)♡

読み始める前に

異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)

【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】6話 本文

「青色の不死の星」とよばれているこの星は、3000年以上続く最強の星だ。宇宙で1番大きな星の力を持っていると噂されている。

もしもこの星の化身が聡明だったなら…星の力や魔力を巧妙に操ることができたなら…野心があったなら…星の侵略を巡る戦いを勝ち抜き、宇宙を手に入れられたかもしれない。青色の不死の星に、脅威なんてひとつもなかったのかもしれない。

しかし、青色の不死の星の化身「さくら(咲薇)」は適当で乱暴で、とにかく不器用な青年だった。

昼はパン屋さんでアルバイトをし、夕方は友人たちとカラオケで歌う。夜は大好きな恋人「からす」と体を寄せあって眠る。さくらは学力は中の下くらいの、どこにでもいそうな青年だった。

5年ほど前。緑色の発明の星から「オキ」が星を侵略しにやってきた。さくらは手も足も出なかったが、一緒に星を守っている仲間と恋人の「からす」の力を借りて、何とか追い返せた…あの日を乗り越えられたのは、何もかもが奇跡だった。…そう、さくら自身は決して強くはないのだ。(自信はあるが)

大昔のこと。

さくらは最強の力の使い道もわからず、使いこなすこともできないまま、何もかもを持て余していた。

当時のさくらは、人間の感情が理解出来なかった。星の民を幸せにするという使命も、悩んだり弄んだりした挙句に手放してしまった。

しかし、重たい荷物をおろしたことで、自分の過ちや人間の優しさに気が付くことが出来た。

…さくらは優しい人に憧れ、少しずつ温かみのある人に変わっていった。

そしてさくらは力の使い方を思いつき、青色の不死の星に特別な仕組みを作った。それは、転生。さくらは自分の星に死後の世界を作ったのだ。

星の化身なんて、ちっぽけな存在だった。幸せの価値観は人それぞれで、自分にはそこまでの力はなかった。

自分が用意出来るのは、「納得できるまでやり直せる、人生の舞台」くらいだと思った。

思想、社会、土地、境遇、人間…無限の可能性、善と悪がひしめく広大な死後の世界で、今日も誰かが自分の居場所を、幸せを探している。

ーーーーー

青色の不死の星の仕組みは複雑で、巨大な星の力を持つさくらにしか扱えないだろう。

さくらは星の中に、大きくわけて3つの世界を作った。一度目の人生を過ごす「現世」。現世の後に流れ着く、死後の世界…広大な社会「天国」と、ひとりきりになれる個室の世界「地獄」だ。

宇宙の仕組み上、しんでしまうと魂は跡形もなく消えてしまう。だからさくらはこうしている…「現世では一度しんでしまった」ということにして、実際はしなないようひとつひとつの魂を守り、維持し、循環させているのだ。

死後の世界は完璧ではない。仕組み上の不具合も多いが、…アルバイトも忙しいし、恋人と遊ぶのも忙しいから、仕方がない!

ひとりでは管理しきれないので、さくらは心強い仲間たちの力を借りながら、毎日楽しく過ごしている。(というか、ほぼ任せている。)

ーーー

青色の不死の星・天国

空がオレンジ色になる時間。現世でアルバイトを終えたさくらは、天国の自宅にルンルン気分で帰ってきた。

玄関で靴を乱雑に脱ぎ、白い翼で羽ばたいて、ハイスピードでリビングに向かう。

さくら「からす!ただいま!!ヘヘッ♪晩ごはんの唐揚げカレーライス買って帰ってきたから一緒に食おうぜ…からす?あれ、どこ行ったんだ?」

一緒に住んでいる恋人の「からす」が見当たらない。

さくら「からす?どこ行っちまったんだ?」

からす、からす。棚の後ろまで探したが、どこにもいない。さくらは頭が真っ白になった。さくらは恋人の居場所がわからなくなると平常心を失う、重めの彼氏だった。

さくら「くそ、くそ…からす、どこいっちまったんだよ…。俺が帰ってきたのに、どこにもいねぇなんてありえねぇ!からすの身に何かあったのか!?まさか…侵略者に攫われたのか?」

膝を付き絶望していると、鍵を閉め忘れていた玄関のトビラがガチャっと開いた。

さくらは「誰だ!犯人か!?」と振り向いた。

…玄関には、よく知っているかわいい女の子が立っていた。彼女は「ささめき」。星を管理している仲間の1人だ。

ささめき「さくら!(怒)。やっと帰ってきたわね!昨日の夜あんたが拾ってきて、私に任せていたロボットの犬「いぬぬ君」の世話が、想像以上に大変なのよ!皆で力を合わせてお世話しているけど、あの犬、多分ただの犬じゃないわよ!?」

ささめきは、頬を膨らませながら、早歩きで部屋の中に入ってきた。10年以上行動を共にしているささめき…優しいが気が強い性格で、イライラしながら部屋に勝手に入ってくるのもよくあることだった。

ささめき「ちょっと!そんなところに座って、なにしてるのよ!…って、どうして泣いてるの!?意味わかんないッ、アルバイトでなにかあったの?」

さくら「ぅぅ…ささめきぃ。からすがいなくなっちまったんだ。攫われたのかもしれねぇ……ぅう…」

ささめき「攫われてないわよ!からすさんと私にいぬぬ君の飼い主探しと、お世話を頼んだのはあんたでしょ!忙しくて、まだまだ手が離せないの!からすさんもいぬぬ君のお世話で忙しいのよ。近くの公園にいるから、早く行くわよ。」

さくら「はぁ、良かった…。攫われたのかと思ったぜ。いぬぬ君の世話ってそんなに大変なのか?昨日コンビニの前で見つけて、連れて帰ってきた時は、大人しそうだったけど?」

ささめき「直ぐに噛むし暴れるし、正直手に負えないわ。さっきも言ったけど、多分ただの犬じゃないわよ。あの子、伝えたいことがあるんだと思う。」

カレーライスを冷蔵庫に入れて、靴を履いて、家の外に出る。ふたりで近くの公園に向かう。

さくら「伝えたいこと?」

ささめき「同じ写真を何度も見せて、暴れているのよ。画質が悪くて、その写真に写っているのが誰なのか、なにが目的なのかが分からないの。

いぬぬ君は塗装も剥がれていて、耳も体もへこんでいる。元々の形が想像しにくいくらいにね。…それくらいボロボロなのに体をよく見せてくれないし、話も聞いてくれない。きっと、相当焦っているのよ。

修理したら、写真が鮮明になるかもしれないけど…この様子じゃ修理するのは難しそうね。それでも、いぬぬ君が伝えたいことがなんなのか、一刻も早く気付いてあげないといけないわ。」

さくら「修理されるのが怖いだけじゃないのか?お風呂いやがる犬って多いらしいじゃん。」

ささめき「見たらわかるわよ。あんたの大好きなからすさんも、へとへとになるまで振り回されてるわよ」

公園に到着する。そこには、昨日連れ帰ってきたロボットの犬「いぬぬ君」(さくらが名付けた)と、さくらの恋人「からす」がいた。からすは背が高い男性だ。からすはいぬぬ君に腕を噛まれて、もがいている。

からす「いたーー〜い!!わかった、わかったから話をきいてくれ、いぬぬ君!もう一度さっきの写真を見せてくれ、考え直すから!!今度こそ、君の気持ちを理解してみせるから!!な!!」

いぬぬ君が噛むのをやめて、地面に例の写真を投影しはじめた。(このやり取りを一日中繰り返している)

からす「う〜ん、男の人が写っているのはわかるのだがな〜…。いぬぬ君はこの人に襲われてやられちゃったのか?はぐれちゃったのか?…いや、この人は実はライバルで激戦の末に敗れたとか?」

違う!と言いたそうに、いぬぬ君はまたからすに噛み付いた。

からす「あーーーー〜ん!!!(号泣)」

噛みつかれ転げ回るからすを見て、さくらとささめきは慌てて2人を引き離した。

さくら「わっ、からす!大丈夫かよ!…いぬぬ君!噛んだらだめだろ。めっ!」

いぬぬ君はさくらに「ガルルル…」と唸った。

大好きなさくらを見つけたからすは、すぐに泣きやみ、にっこり笑顔になった。夕日を反射して、サファイアブルーの瞳がきらめいた。

さくらは10年以上前に、そのキレイな瞳に目を奪われ、恋に落ちたのだ。

からすはもともと、自爆するつもりでこの星にやってきた、孤独な侵略者だった。嘘から始まったさくらとからすの恋…最初はふたりとも信じ合えずに、弱い心を隠して、傷付けあった。2人の恋心は時間をかけて、信じて想い合うことができる、愛へと変わっていったのだ。

からすは「星の化身のことが好きすぎる不思議君」として天国中に知られている。バカップルのふたりは今日もいつもの調子でイチャつきはじめた。

からす「ァァ〜さくら君じゃないか!♡ちゅっちゅ!今日もお仕事頑張ったんだな〜お疲れ様♡♡わたしは今日は100回くらい噛まれて、ずっと泣いていたが…さくら君のプニプニほっぺをみたら、心も体も回復したぞ♡

いぬぬ君は手強いんだぞ。話も聞いてくれないし、わんちゃんというよりくまさんみたいな攻撃力だ!」

からすはさくらを人目もはばからず抱きしめて、頭を撫でた。

さくら「からすもお疲れ様!へへッ、おかえりとただいまのキスしようぜ!!♪」

からす「さくら君は、甘えん坊さんだなぁ!ふふ、わたしの味が恋しかったのか?どこにちゅ〜してほしいのか、教えてくれなきゃ、わ・か・ん・な・い…ぞ♡」

イチャイチャするふたり。ささめきは遠慮がちに、2人の肩をたたいて話しかけた。

ささめき「…ふ、ふたりとも聞いて。

さくまちゃんとむむちゃんも、もうすぐこの公園にやってくるわ。ふたりには情報収集と飼い主探しを頼んでいるの。新しい情報が手に入るといいけど…。」

「さくま」と「むむ」は、さくらとささめき、からすと力を合わせて星を管理し守っている、女の子の戦士だ。

さくら、からす、ささめき、さくま、むむ。

この5人は青色の星の仕組みと、秘密を知っている仲間だ。

さくら「あ、もどってきたみたいだぜ!」

むむとさくまが手を振りながら歩いてきた。

ささめきが、やってくる2人を見た隙に、からすとさくらはキスをした。

むむ「ささめきちゃ〜ん♪さくらく〜ん、からすく〜ん!戻ってきたよ。飼い主は見つからなかったけど、新しいことがわかったよ」

むむは他の星からやってきた、お茶目で可愛い魔法戦士だ。オキには敗れてしまったが、高い戦闘力を持っている。

さくま「なんと…いぬぬ君は、いぬではなく、くまだということが分かった!現世の街の人100人に、いぬぬ君の写真をみせて聞いてまわったのだが、80%の人が「いぬではなくくまだと思う」と答えたのだ!我はたぬきだと思っていたがな…ククク」

さくまも他の星からやってきた戦士だ。自称悪魔の彼女は、相手を出し抜く悪魔らしい魔法を扱うことができる。例えば…相手の記憶や思考を読む魔法、力量を測る魔法、回復魔法。

この星で回復魔法を使えるのはさくまだけだ。

むむもさくまも小柄だが、肉体戦も得意で戦闘が大好きだ。

ちなみにささめきは魔法が使えない。しかし、元悪人だった彼女には並外れた度胸と、洞察力がある。

ささめき「え?…ねぇ、いぬぬ君。あなた、くまなの?」

いぬぬ君はうなずいた。皆、困惑している。

さくら「マジかよ!お前、くまだったのか!?すまねぇ、間違えちまった。これからはいぬぬ君じゃなくて、くま君って呼ぶことにする」

ささめき「さくまちゃんもむむさんもありがとう。新しいことがわかって良かったわね。他にわかったことはある?」

さくま「天国に住んでいるロボット博士に、いぬぬ…じゃなくてくま君の写真をみせて話を聞いたのだが、この星にはないエネルギーで稼働している可能性が高いらしい。」

からす「くま君は別の星からやって来た可能性があるということか?…くま君、教えてほしい。あなたは宇宙から来たのか?」

くま君は大きくうなずいた。

しかし、それ以上のことは伝わらない…くま君は悲しくてたまらなかった。大切な仲間、オキとことおが、突然やってきた侵略者…マシロとクロサキに負けてしまい、助けを求めていることを、どうすれば伝えられるのだろう。

犬かくまかも分からないほど、ボロボロになってしまった体…。さくらやからす達に正体を思い出してほしい。自分は宿敵の仲間なんだ。

オキとことおは無事だろうか…決意し、信じて、たった1人で宇宙を泳いでやってきたというのに。このままでは、何も伝えられないまま、恐ろしいデスゲームが開催されてしまう。

そのとき、くま君は思いついた。

さくらとオキは5年前、この星を巡って命をかけて戦った、因縁の相手だ。さくらはオキの電気攻撃を何度も浴びて、ボロボロにされていた。あの痛みを思い出せば…自分がオキの仲間だと気が付いてもらえるかもしれない。

もう手段を選んでいる時間はない。

もしも正体に気が付いて貰えず、壊されてしまったとしても…後悔はしない!

さくらと戦うしかない!

くまは力を振り絞って空中に飛び上がり、両腕と両足を黒色の刃に変形させた。胴体よりも大きな刃は熱を帯びて、周囲に大きな火花を飛ばしている。

5人とも呆然としている。くまはさくらに向けて、稲妻を宿した刃を振り下ろし、攻撃を放った。さくらの体は何メートルも先に吹っ飛んで、ジャングルジムにぶつかった。ジャングルジムは折れて砕けた。焦げたにおいが広がる。

さくら「ヴッ!…ゲホ、げほ、おぇ」

折れたジャングルジムが突き刺さり、さくらの体から赤色の血が溢れた。空が星の危険を示す赤色に変わる。星全体に警告を発する、この星独自の仕組みだ。

さくらは気絶して、動かなくなってしまった。

むむがくまを取り押さえ、からすとささめき、さくまはさくらの元へかけよった。

からす「さくら君!大丈夫か、さくら君!!!」

ささめき「この攻撃は…見覚えがあるわね。どうして気が付かなかったのかしら。私たち、平和な日々に慣れすぎていたのね」

さくまが回復魔法で、さくらの体を修復する。からすが必死に呼びかける。…さくらはなんとか目を覚ました。

さくら「…!、く、くま君!!お前、いきなりオキみたいな攻撃するなよ!しんじまうところだったじゃねぇか!…皆、俺は大丈夫だ。はぁ…。」

ささめき「ねぇさくら、これからどうするつもり?あまり時間は残ってないと思うわよ」

さくら「どうするって…何が?くま君に暴力はいけないって教えてあげるのか?」

ささめき「今の攻撃でわかったでしょ!この子は、オキと一緒にいたくまのロボットだったのよ!オキがこの星に攻めてきたあの日、隣にいたでしょ?星の化身のことおが、このロボットを使って、映像を送ってきたり話しかけてきたりしたわよね、覚えてる?…やっとわかったわ、くま君はことおの写真を見せていたのね」

むむに抱えられたまま、くまは必死に頷いた。

さくら「いたような気もするなぁ…。うーん、俺、思い出したくねぇことは、忘れちまうタイプだから…」

むむ「ことお君とオキ君が負けてしまうほどの敵がこの星にもやってくるってことだよね。くま君は、危険を知らせるためにここに来たんだ。やるじゃん、ありがとうね。」

さくま「チッ!!オキよりも強いやつがいるのか。その侵略者…我らが力を合わせて、勝てる相手なのか…。」

からす「さくら君…また、戦いが始まってしまうのか…?」

サファイアブルーの瞳が、涙を浮かべて寂しそうに揺れた。

さくら「……大丈夫。俺たちが力を合わせれば、乗り越えられる。俺たちがいる限り、俺たちの星は滅びないんだ。

皆を守るために、今出来ることをしようぜ!

現世や死後の世界に住む星の皆を1箇所に集めて避難させるんだ。天国に住む魔法戦士達にも協力してもらって、守ってもらおう。」

さくま「別世界に住む星の民をどうやって1箇所に集めるんだ!?」

さくら「新しい世界(異空間)を作って、そこに星に住む全員をワープさせるんだ。現世で生きてる奴らに死後の世界のことを知られたら面倒だから、部屋は区切るけど…からす、この作戦、どうだろう?今余っている星の力をいっぱい使えば…1個くらい、避難用の新世界を作れると思う?」

からす「…やってみようか」

むむ「じゃああたしはその新しい世界を守るよ。皆を安心させなきゃいけないし?」

さくら「ありがとう、星の皆のことはまかせたぜ。ささめきは俺とこの公園に残って、敵を待ち構えよう。追い返してやろうぜ。

さくまはからすを連れて、天国の端っこを目指すつもりで、できるだけ遠くに逃げてくれ。新しい世界にからすを隠しちまったら、狙われてしまったときに、満足に戦えないだろ?からすのことはさくまに任せる」

それを聞いて、さくまは眉間にシワを寄せた。

さくま「…我がさくらとささめきから離れてしまえば、回復魔法も使えないし、敵の記憶を見ることもできなくなるぞ。

待ち構える、だと?どうやって対処するつもりだ。

お前、ささめきを道連れにしてしぬつもりか?

自分の力を過信するなよ。「元」星の化身め。

我が尊敬しているささめきを、お前みたいな雑魚には預けられないな」

さくら「わがまま言うなって!その回復魔法と記憶を見る力で、からすを守ってほしいんだ。からすは戦えないし、羽はつけてるけど飛ぶのも苦手なんだ。それに、からすがやられちまったら… …」

さくま「しかし…!」

ささめき「大丈夫よ、さくまちゃん。私のことは心配しないで」

ささめきはさくまの手をとり、両手でぎゅっと握った。

ささめき「…敵はきっと、オキよりも強い。でも、くま君を星の外に逃がしてしまうような、おまぬけな奴らでもあるのよ。どんな敵かはわからないし、オキとことおを騙して戦ったあの日のように上手くいくかはわからないけど。……私、戦ってみたいわ」

さくま「さ、ささめき…ッ、わかった。からすは我が守ろう。いくぞ、からす。ついてこい!」

からす「ついて行くぞ〜!さくまちゃん、ありがとう。さくら君、何かあったらテレパシーで伝えるが…何もないと信じている。絶対に大丈夫、またあとで」

からすがさくらに投げキッスを飛ばした。さくらはヒョイッと食べるフリをして、手を振った。

さくら「…大丈夫」

さくらとささめきはからすとさくま、むむの背中を見送った。一昨日は5人で、さくらとからすの家で焼肉パーティをした。大切な人と日常を失いたくない。

あたりはすっかり暗くなっている。公園に設置されている街灯の下、ささめきとさくら、くまは、決意を確かめあった。

ささめき「…さくら、くま君。3人で作戦を考えるわよ。取引を持ちかけて、戦わずに帰ってもらいましょう。

ほら…あの1番星を見て。よく見るとあの光、星じゃないのよ。点滅しながら、少しづつ動いているでしょ。きっとあれが侵略者。こっちに近づいてきているのよ。」

さくら「うわ、近付いてきてるのか…飛行機じゃねぇんだ。…星みたいに眩しい侵略者だな。」

くまはわかっていた。あの光はきっと、マシロとクロサキだ。真剣なささめきとさくらの姿を、くまは不安そうにみつめていた。

ーーーー

数時間前

緑色の発明の星では…

ーーーー

緑色の発明の星は、マシロとクロサキの手によって大改造されていた。

星には、星よりも大きな動力装置…ロケットエンジンが取り付けられている。星の3分の1の面積を燃焼し、緑色の炎に似た特別なエネルギーを噴射して進む…名付けて「マシロクロサキ☆モーター」!

マシロとクロサキはことおの星の力と技術を使い果たして、緑色の発明の星そのものを巨大な宇宙船に生まれ変わらせたのだ。

緑色の発明の星は、緑色の炎を吹いて、宇宙の法則を壊しながらゆっくりと進んでいた。

宇宙船は、宇宙を舞台にした星の化身を巻き込むデスゲーム開催のために、対戦相手となる最強と噂される星「青色の不死の星」に向かっていた。

星の化身は自分の星からは出られない。だからマシロとクロサキは、「星と星を物理的に近付けて、無理やり対面させよう」と企んでいるのだ。

緑色と白色、かえるのマークの装飾品…コックピットはパーティ会場のようにデコレーションされていた。

マシロとクロサキ、ことおとオキは、特大の発明品の完成に心を踊らせ、興奮していた。

ことお「燃えろ、俺の星!!あはは、マシロ、クロサキ、アンタたちって賢くて強くて最高だよ!何も無い星から出られずに、毎日退屈してた俺を外に連れ出してくれるなんてさ!最高の宇宙船の開発に関われて超嬉しいよ」

マシロ「ありがとう♪ことお君もオキ君も最高☆ふたりがいたからこそ、この宇宙船は完成したんだ!皆で拍手しよう」

パチパチパチ…

オキ「ことお君と星の外に行けるなんて嬉しいな。マシロとクロサキが開催するデスゲームが面白くないわけがない。今度こそからすやさくら達の心臓を壊そうっと♪

…操縦はまかせてね」

クロサキ「うーん、でもさぁ、スピード遅すぎねぇ?このままだと青色の不死の星まで行くのに、1年以上かかりそうだぜ。」

マシロ「じゃあ、燃料を足して、マシロクロサキ☆モーターを強力にしよう。もっと星を壊して、燃やしてみようか」

マシロが操縦席のスイッチをポチッと押す。

すると遠くから、星を砕く爆発音が聞こえた。星が採掘され、大きく揺れる。

ことお「グッハァッ!!!これ以上星が壊されると、俺の体がもたねぇッ。ヒィ〜、まままマシロ、このまま俺の体を破壊すると、デスゲームの参加者が1人減っちまうぜ?ゲームが楽しみだから、体力を、おお、お、お温存しておきたいな〜ぁ!」

ことおが血まみれになりながら、涙目で訴える。

マシロ「…それなら、運動してエネルギーを生み出すしかないね!青色の不死の星についたら、星の化身と戦うつもりなんだ。屈服させたら直ぐに、ゲームを開催しようと思ってる。すっごく楽しみだし、できるだけ体力を温存しておきたいんだけど…頑張るしかないか♪」

マシロは操縦席近くに設置している自転車のような機械(ペダル)を指さした。

クロサキ「マシロはすげぇな♪漕いで漕いで漕ぎまくって、宇宙船をパワーアップさせる作戦を考えていたんだな!戦い前の準備運動か。オキは操縦に集中してくれ!さぁ。ことお、頑張ろうぜ」

ことお「嘘だ、俺も漕ぐのかい?長生きできるかなぁ…」

ことおも無理やり座らされ、全員で足を動かす。しかし、ペダルは重く、ことおの体力ではは動かせなかった。マシロとクロサキは汗まみれになりながら、全力で立ち漕ぎしている。2人の情熱と、魔法を超えるパワーは、星をグイグイ動かしていく。

マシロ「はぁ、はあ…!ふぅ…漕ぎすぎちゃった!このままの勢いだと星と星がぶつかっちゃうかもしれないね。緑色の星も、青色の星も砕けてなくなっちゃうかも…ざんねん☆」

クロサキ「そうなっちまったら、俺たちはいい所で脱出して、別の星をゲームに招待しようぜ☆夢はどこまでも続いていくから大丈夫だ!」

楽しそうに夢を語り合うマシロとクロサキをみて、ことおは頭を抱えた。

ことお「オキ〜!操縦頑張って…なんとかして、ぶつからないようにしてくれよ〜!俺たち、見捨てられちゃうみたいだ〜(汗)」

オキ「この星が無くなったら、僕とくまがことお君の意志を引き継ぐよ!」

ことお「じょ、冗談きついって〜…あはは、自分の星に帰りてぇよ…。…あ…ここ、俺の星か。」

ーーーー

青色の不死の星(公園)

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さくらとささめきは、恐怖に立ち尽くしていた。

一番星のような小さな光の正体は、緑色に輝き、燃え盛りながら近付いてくる巨大な星(緑色の発明の星)だった。

大きくなっていく、轟いて、恐ろしい姿で迫ってくる。熱い風を感じる。

ささめき「あれは何、何が起きてるの…?」

さくら「わかんねぇ…。こんなの!こんなの、どうしようもねぇじゃん!」

拳を握り、さくらはぎゅっと目をつぶった。今更何をしたところで、迫ってくる星を弾き返す方法なんて思いつかない。

ささめき「…だめ。諦めたらだめよ。私はアレは人為的なものだと思う。私たちの星を奪うために、何者かが星をぶつけようとしているのよ。だから、その人の心を動かせば、ぶつかる前に止めてもらえるかも」

さくら「じゃあどうするんだよ!おーいやめてくれ〜って叫ぶのかよ。それとも石を投げてみるのかよ。今更、俺たちにできることなんて…」

さくらが顔をあげると、いつも強気なささめきが手先を震わせて泣いていた。

さくらは気が付いた。

そうだ、怖いのは俺だけじゃない。

皆、この光景を見て、涙が止まらなくなるほど怖がっているんだ。

オキに侵略され、星が消えてしまいそうになったあの日を思い出している人もいるだろう。皆、恐怖に耐えながらも、俺を信じて待っているんだ。

さくら(皆を裏切っちゃだめだ)

さくらは近づいてくる星を…侵略者を睨みつけた。

さくら「…俺も、まだ諦めてねぇから。」

さくらはバサっと真っ白の翼を力強く広げた。

ささめき「何をするつもり?」

さくら「あの星を食い止められるくらいの強力な魔法の壁、バリアを作ってくる!星全体を包んで、守って、あの星をぶつかる前に静止させるんだ!!」

ささめき「あんた、バリアなんて作れたの!?」

さくら「わかんねぇよ。これからやってみて、作れるかどうか確かめるんだよ!」

ささめきの声をかき消すように、さくらは飛び立った。ヒラヒラと舞う白い羽根…ささめきは小さくなっていくさくらを静かに見つめていた。

ーーーー

夜空の雲をかき分けて…さくらは迫ってくる星と向かい合っていた。右手に力を込めた。魔法は苦手なんだ。難しいんだ。

それでも、空気中のあらゆる力を右手に集めることを繰り返しイメージして、集中する。

熱い、熱い緑色の風が、心と体にダメージを与えていく。

その痛みを防ぐように…

さくらの手から広がるように、

魔法の壁が生成されていく…

しかし、その壁はさくらの全身を覆うほどの小さなもので、あまりにも脆い盾だった。

悔しさで、奥歯をギリギリと噛み締めたその時…

さくらの隣に、誰かがふわりと飛んできた。

サファイアブルーの瞳を輝かせた彼…からすは、さくらのら背中をそっと支えた。

からす「さくら君、手をかそう。

逃げて見ているだけだなんて…やりきれない。

わたしも、この星の守り人なんだ。

一緒に頑張らせてくれ!」

オキに立ち向かい、力を合わせて星を守ったあの日。からすとさくらは奇跡を起こした。

ふたりが起こした奇跡…それは

散ってしまった自分たちの星を修復して取り戻したこと。

星を修復する過程で、さくらが持っていた星の化身の力は、全てからすに移動した。

現在の本当の星の化身はからすなのだ。

からすの正体は、完全無欠の知恵と才能を持つ、特別な存在だった。サファイアブルーの魔法の瞳は、魔法や星の力を超えている。

誰にも理解できない力を持っていたからこそ、からすはずっとずっと孤独だった。何もかもを叶えてしまえるその力を持つかぎり、からすはこの宇宙の一員ではいられないと思っていた。

からすが自分の力を受け入れて、自分も宇宙の一員なのだと思えるようになったのは…

一生懸命生きるさくらと出会い、愛を知ることができたからだ。

からすは戦うことを好まない。決して暴力には頼らない。…だからさくらは、攻撃するのではなく、バリアを作って守る方法を選んだ。

からすならそうするだろうと、この方法なら2人で力を合わせられるだろうと思ったのだ。はじめから、からすが来てくれると信じていた。

からす「星に住む皆は、新しい世界に避難できている。むむちゃんとさくまちゃんが守ってくれているから大丈夫だ」

さくら「じゃあ後は俺たちが本気出して、バリア作ればオッケーってことか!

…ラブとラブが合わさったラブ?心の力を重ね合わせて、もう一度、「不死の奇跡」を起こしてやろうぜ!!

からすの正体は宇宙最強の戦わない戦士で、俺を守ってくれる最強の彼氏。

愛してる。…さぁ、やってやろうぜ!!」

からす「やはり!やはり!さくら君は可愛い存在だ!頼ってもらえて嬉しいぞ。わたしも愛してる。よーし、頑張っちゃおうか♪」

さくらは得意げにからすの手をとった。

からすはにっこり頷いた。

その瞬間。ふたりの体は乳白色の光に包まれて溶けて合体し、ひとりの戦士に姿を変えた。

宇宙の法則を切り裂く、青い、青い、鋭い眼光。

星の化身の力を右手に集めて、解き放つ…

…星全体が分厚い魔法の壁に包まれた

緑色の炎が目の前まで迫って来ているが、もう、恐怖心はなくなっていた。

魂をシンクロさせる、ひとつに重ねる。

ふたりの力がひとつになる。

…さぁ、不死の奇跡を乗りこなせ!!!…

バリアはひび割れたが、なんとか持ちこたえて、迫る星を静止させた。ふたりは星の衝突を食い止めることができたのだ。

緑色の炎も勢いを無くし、少しづつ小さくなっていく。

さくらとからすは、変身を解いて、軽いキスを交わした。

からす「さぁ早く、ささめきちゃん達のところに戻ろう!きっとあの怖い星から、強い侵略者が降りてくるだろう。説得して、星ごと元の場所に帰ってもらうんだ。」

さくら「ああ、行こう!負ける気がしないぜ。」

さくらは振り返り、緑色の星に向かって、ベーッと舌をだした。

【7話に続く】

… … … …

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荒花ぬぬ

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