「信じて。宇宙を巻き込むデスゲームに立ち向かえ!」
小説 星のはなびら(1章~最終章)&ノベルゲーム(アンノウンゲームマシロ・恋してタコキス~ほろぼされた星~・(プラネット同一体))がひとつの物語となって動き出す。ダークファンタジーな続編!不定期で1話ずつ公開します。
「小説しかしらないよ」「ゲームしかしらないよ」(実はキャラしかしらないよ)…って方も、知っていきながら楽しめる内容にしていきますので、興味がある方はこの機会にぜひ♪(●´ω`●)
オープニングテーマ曲「ゲームオーバー」公開☆
読み始める前に
異性同性間の恋愛表現、残酷な表現を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください。(作品をお読みになった時点で、同意いただいたものといたします。)
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【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】10話 本文
ミニキスとタコパチは、からす、ささめき、さくま、むむのところへと戻った。舞台の上を見ると…目を背けたくなるような、恐ろしい状況になっていた。
さくらが「首ちょっきん台」に、立たされている。手足を固定されており、逃げられない状況だ。頭上のモニターには、「赤色の数字」が表示されている。首ちょっきん台が作動するまでの、カウントダウンだ。残り7分。残りの時間内に、「罰ゲームよりもおもしろいこと」を見せて、マシロを楽しませれば、見逃してくれるらしいが…。
むむ「あ、戻ってきた」
からす「…良かった。むむちゃん、ありがとう」
むむ「あはは、話聞いてただけじゃん、あたしは何もしてないよ」
フィカキス「ふぅ、良かった…」
ミニキスとタコパチは息を切らしながら、深々と頭をさげた。
ミニキス「大切な仲間を見捨てようとした。心から反省してる。今度からは、ちゃんと、全部相談する…ごめんなさい」
タコパチ「ごめんなさい…」
からす「大丈夫、ふたりとも顔を上げて。わたしこそ、大きな声を出してしまって悪かった」
タコパチ「からすが謝ることじゃないよ!僕たちが酷いことしちゃったのに」
ミニキスは、誰にも聞こえない声でつぶやいて、下を向いた。
ミニキス「…ぅう、オレ、弱くて卑怯なやつや。自分の正体を知ったみたいや。ほんま最悪や」
フィカキスがミニキスの肩によじ登り、タコ足でミニキスの涙をぬぐった。ミニキスが「フィカキスもごめんな。待っててくれてありがとう」と言うと、フィカキスは「もう無理したらあかんで。無理したから、こんなことになったんや。次、勝手なことしたら、みんな怒るからな。みんなの優しさに甘えたらあかんで。ちゃんと反省して、信頼を取り戻さな、あかんからな!」とプンプンしながら話した。
からす「皆で力を合わせて、さくら君を助けよう。大丈夫、イカパチ君達のことも、見捨てないから」
ミニキス「なぁ、からすさん。なんで、そんなに強いんや?…あ、ごめん、変なこと言ったかな」
からすは微笑み、ミニキスにこっそりと打ち明けた。
からす「強くなんかない。わたしも似た間違い方をした事があるから、ミニキス君たちを、過去の自分と重ねて…許したいと思っただけだ。
わたしは元々は、青色の星をほろぼしにきた侵略者だった。星の化身のさくら君と恋に落ちたが、恋心を信じられなくて…本当の気持ちを言えなくて…、星ごとしんじゅうしようとしたんだ。でも、さくら君と仲間のおかげで、自分のことも好きになれた。青色の星の仲間は皆、そんな感じだ。最初から絆や勇気があったわけじゃない。だから、えっと…信用してほしい」
ミニキス「!、…ありがとう。オレもタコパチも、心入れ替えて、もう一回がんばるから…!」
その時ささめきの大きな声がひびいた
ささめき「喋ってないで、早く来なさいよ!!あと5分くらいしかないわよ!!」
さくま「くっくっく…反省している暇があるなら、行動をするのだな」
ささめきとさくまは、ボールペンを握り、コピー用紙に文字や図形をぎっしりと書いている。くしゃくしゃに丸められたコピー用紙も散乱している。ささめきとさくまは、マシロに見せるための面白いネタを考えている途中だった。
からす「ああ、こっちはもう大丈夫!ささめきちゃん、さくまちゃん、ありがとう。一緒に考えよう!
…さくら君、大丈夫だ。わたしと仲間を信じて待っていてくれ」
からすがさくらの名前を呼ぶ。顔を上げたさくらの顔色はとても悪かった。疲れきった様子で、ぐったりとしているが、余裕ぶってふにゃりと笑った。
さくら「からす、マジで助けてくれよな…マジで、マジで」
からす「ああ!」
ささめきとさくまが、からす達にコピー用紙を見せて、完成したネタを説明しはじめた。
ささめき「私たちが数分で仕上げたコントよ。台本を覚えて、ぶっつけ本番でやるしかないわよ。
内容は…主人公の男性が、初恋の相手と再会するストーリーよ。惹かれあって付き合いはじめたけど、実は初恋の相手は偽物で、成りすましているストーカーという設定よ。
つまり、主人公は壮大に勘違いして惚れているの。どう見ても別人って感じの素振りを見せても、ぜんぶ都合よく解釈して、スルーするのよ。真実になかなか気が付かないところが面白いのよ♪ふふふ、これは…絶対にウケる!」
さくま「マシロはブラックなネタが好きそうだからな♪オチは真実に気が付いた主人公が〜…」
説明をしている途中…なぜかマシロが舞台から降りて、近付いてきた。
さくま「なんだ!?」
むむ「ど、どうしたの!?」
ささめき「…何?」
マシロ(イカパチ)「…そ、そのネタはだめ!!本当に笑えないから禁止!!」
マシロには、クロサキの初恋の相手「ふゆの」に成りすましているという秘密があった。夢に登場した王子様にそっくりなクロサキを、どうしても手に入れたくて、嘘をついた過去があるのだ。…マシロは(こんなネタ、クロサキ君には見せたくない。自分の秘密を笑い話にされるなんて、最悪。)と焦っていた。
ささめき「ネタを見てもいないのに、笑えないって決めつけるなんて、失礼ね。それに、今あんたと話してるこの時間は何?時間稼ぎのつもり?人の命をあずかるゲーム主催者なら、せめて公正に振舞ってほしいわね」
さくま「マシロ、お前と話す時間はない。我らと話をしたいのなら、カウントダウンを止めろ。残り2分もないんだ」
マシロ(イカパチ)「わ、わかったよ…」
マシロはリモコンを操作して、モニターの赤色の数字(カウントダウン)を停止させた。
さくら「はぁ〜、生きた心地がしねぇ!!」
タコパチ「イカパチ、お願い、残り時間増やして欲しい!このままだと、イカパチが小学校の入学式でおもらししちゃった時のモノマネとか、小学校の卒業式でオナラしちゃった時のモノマネとかやっちゃうかも…」
マシロ(イカパチ)「……ぇ。仕方ないな、残り時間、追加してあげるよ。変なネタは考えないでよね」
マシロはリモコンを操作し、残り時間を10分に変更した。カウントダウンがはじまり、マシロは「も〜!お兄ちゃん、中学校の入学式のネタだけは絶対にやらないでよね」と頬を膨らませながら、クロサキがいる所へと戻って行った。
ささめき「…少しだけ時間に余裕ができたみたい。作戦会議しましょう」
さくま「新しいネタを考えようか?うーん…」
からす「早く考えないと。しかし、正直に言うと…全然楽しい気分じゃないから、面白いことなんて思いつく気がしない…ぅう」
むむ「う〜ん、だめだ、涙が出てきたよ…さくら君、可哀想だもん」
さくら「おいおい、定番の一発ギャグとか持ってねぇのか!?俺だったら、星の化身モノマネができたのに!あ〜応援することしかできねぇ。俺が勢いで行動して、捕まっちまったから…ぅう」
タコパチが「あのね!」と、勇気を出して挙手した。
タコパチ「僕の話を聞いてほしい。実はイカパチ、学生時代に、お笑い演劇部に所属していたんだよ。観客を笑わせるような、面白い演劇をする役者さんだったんだ。その経験があるから、舞台の上で話すのが得意なんだよ。真面目にお笑いを勉強していたんだ。素人が、数分で作ったその場限りのネタじゃ、舐められちゃうかも」
ささめき「も~!もっと早く言いなさいよ!まぁいいわ、教えてくれてありがと。私を振り回すなんて、ふふふ、タコパチさんって面白い人…それでどうする?真面目にネタを考えて、笑わせてクリアするのは難しいらしいわよ。」
からす「イカパチ君のルールを無視して、強引にさくら君を助ける方法を探すのか?」
ミニキス「…首ちょっきん台やっけ?機械そのものを壊すというのはどうや?」
フィカキス「あんな強そうな機械、壊せるか?しかも、さくらさんは時間の宝石をつけてるんや。機械も宝石も危険やろ…誤作動したらどうすんねん〜!」
背後から、「へい♪俺にまかせろ」という声がした。ことおの声だ。振り返ると、ことおとオキ(と、くま)、タコダイオウが真面目な顔をして立っていた。少し疲れている様子だ。
ことお「三人で、さくらを助けるための作戦を練っていたんだ。本気モードでね♪」
からす「こ、ことお君!力を貸してくれるのか…?ありがとう」
ことお「あはは、さくらは俺たちのライバルじゃん♪彼の命は、いつか俺とオキが破壊する予定なのに。罰ゲームに邪魔されて、しなせるわけにはいかないよね♪」
からす「作戦って、どんな内容なんだ?」
ことおはからすの耳元に顔を近付けて、小声で話しはじめた。皆も近付いて、ことおの話に耳を傾けた。
ことお「発明と破壊の化身の、俺とオキらしい、大胆な作戦だよ。…残り時間はあと5分くらいか。詳しく説明する時間はないや。マシロに聞かれたら、何もかもがおしまいになるし。
作戦は、正直に言うと、超危険な内容だ。俺でさえ、ちょっとビビってる。俺とオキ、さくら、タコダイオウが100パーセントの力を出し切れば…、いや、運も必要だ。要するに、必ず助けられるとは言いきれない。これは最終手段かな♪」
タコダイオウ「…からすさん、この作戦は危険ですよ、こんな大仕事ははじめてです。失敗すれば、犠牲者が増えるかもしれない。しかし、やりがいはあるでしょう。僕も全力で取り組みます」
オキ「…僕は、この作戦をやりたい。これは僕の戦いでもあるんだ。僕は200パーセントの力を出して、僕自身を超える。そして、さくらを救うよ」
ことお「俺たちの作戦にノるかどうかは、からすに任せるよ。どうする?」
からすはささめきたちの表情を確認した。みんな、からすを頼り、見つめていた。う〜ん…と考える。
ことおとオキは、破壊を愛する残酷な戦士だ。多くの星の化身を倒し、星を滅ぼし、星の力を奪ってきた。破壊衝動を抑えられずに、自分の星さえも滅茶苦茶にしてしまった。
…からすは、思い出していた。オキが青色の不死の星を侵略するためにやってきた、あの日のことを。
オキはさくらに毒をのませ、ボロボロになるまで攻撃した。オキは強すぎた。星に、オキと戦える者はいなかった。
さくらとからすは二人きりで、話し合った。話し合う時間は30分しかなかった…人生で一番苦しくて悲しい時間だった。
この星を守りたい、からすを守りたい、強くありたい、死にたくない、でもどうしようもない。立ち向かうのも、逃げるのも、怖い…いろんな感情が混雑しさくらは大粒の涙をこぼしていた。
血まみれの恋人を抱きしめることしかできない、絶望的な状況に押しつぶされそうになりながら、からすは、自分の特別な力を使ってオキをころそうかと話した…そのとき、さくらは。
(からす「さくら君、どうする、戦うか…?さくら君がわたしに「オキ君を殺してほしい」といえば、わたしは、この特別な力を使って
さくら「それだけはさせねぇ!!…それしか方法がないのなら、消された方がマシだ!!
からす、自分で言ってたじゃねぇか、「わたしは力を持て余している臆病者だ」って。何があっても、一生そのままでいろよ。戦えないからすでいろよ。宇宙の法則を超える力は使うな、この宇宙の一員でいるために。ここにいていいんだよ、俺が守ってやるから」)
さくらは、からすの心を守ろうと、一生懸命だった。からすはさくらの強さに、感動し、またひとつ強くなれたのだ。
さくらを救いたいが、さくらを裏切ることはしたくない。命や未来がかかっていたとしても、本当に大切なものだけは、譲りたくない。
それが、からすとさくらの愛だ。
オキは、そんなからすとさくらを引き裂こうとした宿敵のロボット。彼に自分たちの「愛」が理解出来るだろうか。彼に託して…さくらは、仲間は、自分は、…後悔しないだろうか。
ことおは必死にコンピューターを操作し、何かを準備している。タコダイオウも手伝っている。
迷っている時間はない。
からすはオキに尋ねた。
からす「これは勝負じゃないんだ。賭け事でもない。
さくら君は優しいから、自分が助かるためなら、どんなことをしてもいいなんて思わない。
さくら君は、あなた達に「大切にしているもの」を破壊されるくらいならば、悲しい運命を受け入れることを、覚悟しているんだ。
オキ君、今話した「大切にしているもの」ってなんだと思う?」
オキ「…」
オキは、からすの意図も、クイズの答えもわからなかった。助けを求めたくて、ことおを見た。しかし、ことおたちは作業に集中していて、こちらには気が付いていない様子だった。
オキ(…自分の力で考えないと。さくら達が大切にしているものって何だろう)
…オキは自分の心を整理するために目を閉じて、心に引っかかっていたことを、呟きはじめた。からすやさくらの心を想像し、自分自身と重ねていく。ゆっくり、ゆっくりと、重ねていく。ゆっくり、ゆっくりと、答えに手を伸ばしていく。
オキ「…ことお君とくまと、約束した。宇宙を破壊し尽くすまでは、三人一緒にいようねって。
僕がそう話した時、ことお君はなぜか、ちょっとだけ驚いたような、困ったような表情をした。その後、僕をぎゅっと抱きしめて、笑ったんだ。
その笑い方は、何だか不思議だった。優しくて、ことお君らしくないと思った。
僕は変な気持ちになった。理由はわからないけど、嬉しい気持ちになったんだ。
その時のことお君の言葉も嬉しかった。破壊するのが気持ちいいのは、オキがいるから、この星があるから、生きているから、そう思えるんだと思うって、言ってた。今の俺にも、守りたいものはあるんだな〜って言ってた。
嬉しかった。この気持ちを破壊するのは、もったいないと思った。
だから、ことお君が守りたいと思っているものを、僕も守りたいと思った。それは、くまと僕自身を守るということだ。
……ああ、そういうことか。思いついたよ。からすのクイズの答え。
さくらとからすが大切にしているもの。
それは、「他の人の宝もの」
自分の宝ものや成果だけじゃなく、他の人の宝ものも、大切にして、守ってほしいってこと?犠牲にしてほしくないってこと?
そういうこと?」
オキが不安そうにからすに尋ねた瞬間、ことおが「ブホォア!!」とくしゃみするみたいに吹き出した。どうやら、恥ずかしがって聞こえないふりをしていたらしい。
ことお「アハッ、はっ、は、は、ひひひ、オキ、変なこと言うなって…!!ひぃひぃ///」
オキ「ことお君、どうして笑ってるの?」
からすは戸惑うオキの肩をガシッと掴んで話した。
からす「オキ君、変なことを聞いて悪かった、でも、安心した。
頼む、力を貸してほしい。さくら君はわたしのいちばん大切な存在、守りたい存在なんだ。
だから、ずっと一緒にいたいんだ」
オキ「…まかせて。僕たちをしんじて」
カウントダウンが残り3分を切った。
マシロ「そろそろ、面白いこと見せに来てよね!チャンスは一回だけだよ。面白いことをしている間はカウントダウンとめるからね。つまらなかったら即罰ゲーム☆」
クロサキ「ポテチ食べながら見ようっと〜♪」
ことおが「もう、こんな時間!?そりゃないぜ~♪」と、立ち上がった。
ことお「…あちゃ〜、だめだ☆オキが変なこと言って、笑わせてきたせいで、作戦のための準備がおわらない、このままじゃ間に合わないよ!誰か、マシロに面白いネタを見せて、5分くらい時間稼いでくれ!準備出来次第、やっちゃうから☆オキはこっちに来て」
オキ「わかった、すぐに行くよ」
…どうする?何をする?不安でいっぱいの空気が流れたが、ミニキスが「オレが時間稼ぎをする」と名乗り出た。
フィカキス「はぁ?いけんの!?ハッキリ言うのは酷いことかもしれんけど、君は面白いタイプのキャラちゃうで。オチのない話して、スベったら、何もかもがおしまいなんやで!!その自信はどこから来るんや!?」
ミニキス「フィカキス、忘れたん?オレの趣味…」
フィカキス「い…いつもパソコンに向かって喋ってる、アレのことか?わ、忘れたっていうか、わからんねん。触れん方がいいんかなって思って、見て見ぬふりしてるんや」
タコパチ「ぼ、僕も…」
フィカキスとタコパチが目を逸らした。
…むむがぴょんぴょん跳ねて、喜んでいる。
むむ「え?それって、ゲーム実況でしょ!!配信してるの?もしかして…バーチャル配信者?あたし、それ、大好きなんだ!すっごいじゃん♪頼もしいなぁ、もっと早く言えば良かったのに〜」
ささめき「さくまちゃん、ゲーム実況?バーチャル?配信?って何っだっけ…?」
さくまは「キャラクターになりきって、ゲームをプレイしているところを公開するのだ。ゲームをしながら面白い話をして、視聴者を楽しませて、人気を集める。誰にでもできることではないぞ。期待できる」と、わくわくしながら答えた。
ささめき「ふーん…♪面白そうね。」
ミニキス「いや、してない。
漫画の主人公になりきって、喋りながらゲームしてるだけや☆」
全員が黙った。
どうする…?どうする…?
彼にまかせて、大丈夫なのか…?
タコパチとフィカキスは、皆から目をそらして、下を向いている。無責任に太鼓判を押すことはできない。
なんともいえない、気まずい空気が流れている。
どうする…?
からす「ミニキス君、まかせたぞ!!」
さくら「マジかーー!!!」
からすがミニキスの背中を押した。やる気があるのはミニキスだけだ、もう、彼にまかせるしかない…。苦渋の決断だった。
ミニキスは「オレに任しとき!」と、やる気十分な様子でマシロのところへ走って行った。その背中を見送ったあと、からすはことおの元へとダッシュして、必死に応援しはじめた。
からす「ことお君、急いでくれ。はやくはやく…」
タコパチ「はやくはやく」
フィカキス「はやくはやく」
ーーー
舞台の上。
ミニキス「次は、「ボードゲームで何回も何回もサイコロを振ってるのに、ゴールのマスに止まれなくて、結局最下位になるクロサキ」のマネをやるで。(普段より低い声で) 「くそ…何回サイコロを振っても、5がでねぇ。5さえ出ればゴールできるのに…、このままじゃ先を越されちまう。俺は一生ゴールできないのか!?
俺はサイコロにも愛してもらえない、孤独な悪人なんだ!!」」
マシロ「あはははははは☆」
ミニキス「(普段より低い声で) 「ふふふ…でも、俺の人生ゲームは終わらねぇよ。負けることはねぇ。
なぜなら俺は、マシロに愛されている王子様なんだからな!俺という人生ゲームは、常に薔薇色さ♡
ああ、ありがとう。本当にありがとう。何もかもマシロのおかげだ。
このサイコロも、マシロのためにある。…よ〜し、今度こそ、5を出せる気がする。今度こそ…」」
マシロ「あははははははははは☆」
クロサキ「俺あはは、笑いが止まらねぇ!」
マシロ「早く罰ゲームをはじめたいのに、ミニキス君が面白いから、はじめられないよ〜!笑。本当に面白いから、困っちゃう〜!!あはは☆」
ーーー
ミニキスが舞台にあがってから10分後。ついにことおの準備が整った。
ことおはオキに、完成した発明品(ボンベのような形をした大きな機械)を背負わせた。なぜかタコダイオウにも背負わせた。
ことお「新しい発明品!名付けて、「K(ことお)-時空逆転マシーン」。まかせた、オキ!!必ず、成し遂げて、俺とくまのところへ、戻ってきてくれ!!…約束だ♪そして、タコダイオウ!サンキュー、超頼りにしてる!!無理はしないで♪」
丁度ネタ切れになったミニキスが、息を切らしながら戻って来た。泣きそうな顔をしている。
ミニキス「すまん、これ以上は厳しい!ことおさん、間に合ったか!?でもやれることはやった…あと10秒で、罰ゲームはじまってしまうみたいや!!首ちょっきん台が作動するから、早く!」
タコパチはミニキスを抱きとめて、「ありがとう、ミニキスすごいよ!大丈夫だと思う!」と伝えた。
一番大きなモニターに、マシロとクロサキ、さくらの様子が映し出された。
マシロ「笑い疲れちゃった〜☆でも、ほのぼのした時間はもうおしまい。
さぁ、罰ゲームをはじめるよ。さくら君のために、バイオレンスで華やかな、最高のショーを用意した。みんなで、生死を超えた絶望を見届けよう!
あははは、はぁ、あぁ、ワクワクするね…♡
ねぇ、さくら君。お花は散る瞬間がいちばん可愛いんだよ。きっとからす君も、散るところをみたら、可愛いって思ってくれると思う♡
皆で可愛かったねって言いながら、さくら君の血溜まりの上で、お花見をしてあげる。からす君に桜餅を、あ~んして食べさせてあげる♪
じゃあ…
ミュージック☆スタート」
クロサキ「罰ゲームまで、5、4、3…」
さくら「ぅう…」
さくらはマシロを無視して、祈るように、ぎゅっと目を閉じている。
タコダイオウとオキは、さくらを目掛けて一直線に、ハイスピードで飛び立った。
そして、オキは…自分の胸をパカッと開けて、その中に隠していた、緑色のボタンを押した。
さくら「ぅわ!?」
その瞬間。
ドッカーン!!
デスゲーム会場は緑の炎に包まれて、花火のように大爆発した。
首ちょっきん台も、舞台も、皆もかえるたちも、炎に包まれて吹き飛んだ。皮膚がビリビリする熱さ。視界を焼き尽くす眩しさと強風。
炎魔法が得意なタコパチだけは、踏ん張って、飛ばされてきたマシロとクロサキを受け止めた。マシロとクロサキは、爆発のすぐそばにいた。強い二人も今回は、流石に大きなダメージを受けてしまったようで、悔しそうに歯を食いしばっている。
マシロ「あ、熱。さ、最悪…☆」
クロサキ「いってぇ…」
タコパチ「イカパチ、クロサキ!大丈夫!?皆は大丈夫!?」
…他の皆も、何とか体を起こして、立ち上がった。
ミニキス「ケホッ、けほ…大丈夫。フィカキスどこや?返事して!」
フィカキス「ここにおるから、大丈夫や!でもミニキスに、たこ足を踏まれてて痛い…」
戦士のむむは、ささめきがケガをしないように、守っていた。
むむ「すごいパワーだよ。ささめきちゃん、ケガしてない?」
ささめき「ケガはないわ、ありがとう」
さくまは身を挺して、からすを守っていた。
さくま「な、何が起きたんだ!?」
からす「さくら君!!!…ぁ、そんな…嘘だ…!!」
金色の光が広がって、辺りを包み込んだ。
ーそれは、「時間の宝石」が効果を発揮した時の輝きー
緑色の炎はその光に巻き込まれた。光は、夜空の上まで広がった。まるで朝日のように、空の色を変えた後、花火のように消えた。
消えた。
もう、そこには、何も残っていなかった。
さくらとオキ、タコダイオウは、爆発に巻き込まれて、別の宇宙に飛ばされてしまったのだ。
それを瞬時に理解したからすは、吹き飛ばされて寝そべったままのことおを、無理やり立たせた。ことおの腕の中にいたくまは、びっくりして、ことおの足元に隠れた。
絶望的な状況を受け止めきれないからすは、涙をポロポロこぼしながら、ことおの肩を揺さぶってさけんだ。
からす「最悪だ!!ことお君…!!こんなこと…こんな…。さくら君も、オキ君も、いなくなってしまった。星の化身のタコダイオウ君まで…これでは、タコタコタコ星もほろんでしまうぞ!!」
ことおは、汗を拭い、「大丈夫、落ち着いて。成功だ。説明するよ」とウインクした。
ことお「…オキはさくらとタコダイオウを巻き込んで、自爆スイッチを押して、爆発した。さくらとオキ、タコダイオウの時間の宝石を、同じタイミングで作動させて、同じ宇宙に向かわせるためだ。
オレのコンピューターのモニターを見てほしい。さくらとオキ、タコダイオウの顔アイコンが三つ表示されているだろ?三人を追跡してるんだ。アイコンが隣りあって表示されているから、三人は一緒にいるみたいだ。良かった…バラバラになってたら、大失敗だった。」
ことおは、自分の腕輪を皆に見せた。ことおとオキはゲームをクリアしたが、マシロに頼んで、腕輪をつけたままにしていた。それは、時間の宝石について詳しく調べるためだった。
ことお「…時間の宝石を分析してわかったことがある。
俺たちが今身に付けている時間の宝石の効果は、大きく分けてみっつある。
ひとつめは、宇宙を複製して、偽物の宇宙を生み出すこと。
ふたつめは、存在が消えてしまわないように「魂」を維持すること。命?心?個性?…魂がなんなのかは、まだわからない。オキはロボットだから、そもそも時間の宝石の効果が発動しない可能性もあった。不安だった…でも、発動したから、オキにも魂があるってことだね。
みっつめは意識がない人間(人間じゃない奴も含める)を強制的に「時空のトンネル」という不思議な空間に放り投げること。
みっつの効果が噛み合って、変な宇宙に転生させられる仕組みなんだ。
でも宝石の仕組みは繊細で、不安定なんだ。魔法道具として、不完全、未完成だともいえるかな。誤作動する可能性も高そうだ。…今回は正常に作動したから、運がよかった。
時空のトンネルについて説明するよ。
時間の宝石を分析した結果…宇宙から宇宙へと移動するとき、瞬間移動をしているわけじゃないことがわかった。トンネルのような不思議な空間が出現して、それをくぐることによってワープするみたいなんだ。それが「時空のトンネル」♪…まぁ、仮説なんだけどね。はは。
トンネルをくぐる時、人間は意識を失っている。だから、目が覚めた頃には別の宇宙に流れ着いてしまっていて、二度と戻れなくなってしまう。でも時空のトンネルの中で、意識を取り戻して行動することができれば、Uターンして元の宇宙に戻れるかもしれない…!って、俺は考えた。
オキは俺特製の最強のロボットだ。そして、実はタコダイオウもロボットなんだ。
ロボットなら、やれるかもしれないと思った。その可能性に賭けた、三人を信じることにしたんだ。
タコダイオウとオキに背負わせた俺の発明品K-時空逆転マシーンには、時空のトンネル内で、時空の流れに逆らってとどまるために、搭載した力を逆噴射する機能がある。俺は…これまで侵略して手に入れた力を、オキに搭載していた戦闘用エネルギーを、星の化身として元々持っていた力を、「全ての力」を、K-時空逆転マシーンに搭載しちゃったよ。
だから、全ての力を逆噴射して使い切っちゃったら、オキは弱体化して、戦えなくなるだろう。俺は魔法さえ扱えない、最弱の星の化身になっちまうけど、…最悪な現状を破壊する方が大事だから、問題ないさ。
俺の発明と、オキ、タコダイオウ、さくらの力を合わせれば、きっと…戻って来られる。
この宇宙、この時間、この場所に。
…タコダイオウの正体については、マシロたちも知らなかったのかなぁと思う。今まで誰にも話したことがなかったらしいし。でも勇気を出して、秘密を教えてくれたんだ。
俺たちといたタコダイオウは、魔法で遠隔操作されているロボットなんだ。わかりやすくいえば、ラジコンなんだよ。
生きている本体はタコタコタコ星の中心部(核)に埋まっているらしい。だから、タコダイオウはタコタコタコ星から離れて、他の星に移動することができる、特別な星の化身なんだ。
タコダイオウの機体は魔法で作られて、魔法で遠隔操作されている。宇宙の外に連れていけば、遠隔操作できなくなって、動かなくなってしまうだろうって言ってた。でも、新しい機体(スペア)を作れば、そこに同一の意識を宿せるから、問題ないらしい。さくらを助けたいって言ってたよ。遠隔操作できる距離を試したい、時空のトンネルを見てみたいとも言ってたっけ。それで、力を貸してもらうことになったんだ。
ゲーム開場を爆発させたり、時間の宝石を勝手に使ったりするのは禁止〜っなんて、ルールはなかったし、マシロもクロサキも文句言わないだろ。そもそもあいつらが悪いんだ。
とにかく、後はオキたちを信じて待つだけだ。」
…。皆、ことおの話を聞いて、動揺していた。
きっと皆、同じ気持ちだった。
どうして、ことおがそんなに危険な作戦を決行したのか…?大切な相棒を自爆させたのか…?破壊の化身が力を使い果たすというリスクを背負ったのか…?彼らしくないなんて、思ってしまう。
みんなの不安そうな表情を見て、ことおは苦笑いした。そして…顔を隠して、肩を震わせながら後ろを向いた。
ことお「お、俺だって、わかってるよ!!ヤバいことしてるって。俺は、そんなこと出来ないって言ったよ…!!?
でも、オキが、「やる」って言ったんだ。俺が協力しないなら、ひとりでもやるって言ったんだ。あいつ、一度決めたことはマジでヤっちゃうタイプだから、…オキの作戦に、協力するしかなかったんだよ!!
さくらを助けられる上に、宇宙の外に連れ去られちゃった俺の妹を助けるためのヒントを見つけることもできるかも!って言ってた。俺が自分の星や他の星を破壊してたのは、妹を助けるためだって話したから。
宇宙の外を見てみたいとも言ってた。これはチャンスなんだって、やる気を出してた。
そんなこと、もういいのに、諦めたっていいのに。あいつ、聞かないから。俺は、俺は…。」
ささめき「ことお、落ち着いて。大丈夫よ、三人とも必ず帰ってくるわ」
さくま、からす、むむも「大丈夫」と伝え合った。
からすが「三人の様子は?」と、ことおが操作しているコンピューターの、モニターを覗き込んだ。しかし突然エラーメッセージが表示されて動かなくなってしまった。壊れてしまい、煙をあげはじめた。ことおは震える手で、何とか修理しようとしている。
ことお「ああ、三人を追跡できなくなった。多分…時空のトンネルの中に入ったから、俺の力が届かなくなったんだ。星の化身の力なんてちっぽけなものさ、宇宙の外のことなんて、分からないし。あとは祈るしかない…祈るしかないよ」
からすが「ことお君。祈ることは、無意味じゃない。きっと願いは届くから」と、ことおの肩にそっと触れた。
その瞬間、壊れたはずのコンピューターがピカピカと点滅しはじめて、奇跡的に復活した。モニターには、再び、三人が存在していることを示すアイコンが表示された。
からすは、ほら、届いただろ?と言って笑った。特別な力が宿ったサファイアブルーの瞳がキラキラと輝いていた。
ことお(からす、やるじゃん…♪)
からす「今できることを頑張って、三人の帰りを待とう。イカパチ君達がどうやって、時間の宝石を手に入れたのか調べて、ゲームを終わらせなければならない」
ささめき「あれ?タコパチさんとマシロとクロサキがいないわ!」
ミニキス「さっきまでここにおったのに…タコパチ!どこや、どこにいったんや!?」
ーーー
はぁはぁ
ポタ ポタ
はぁはぁ
ポタ ポタ
タコパチは皆から少し離れて、森の中にいた。タコパチは必死に走って、逃げるマシロとクロサキを追いかけていたのだ。
タコパチ「待って!お願い、行かないで!!」
はぁはぁ
マシロを抱えて、草木をかき分けて走るクロサキ。タコパチが呼びかけても、マシロは何も言わなかった。
クロサキに抱えられているマシロは、目を閉じたまま、ぐったりしていた。
マシロの体は赤く腫れており、破れた衣装からは血が出ている。雫になってポタポタ落ちて、足跡になっていた。タコパチは、その足跡と、服が焦げた匂いを追いかけていた。全力で走る。やっと、クロサキの後ろ姿が見えた。
クロサキは足をケガをしており、走れなくなっていた。タコパチはいつも持ち歩いている魔法の杖をクロサキに向かって投げつけた。命中し、クロサキは地面に崩れた。クロサキを押し退けて、タコパチはマシロを抱き起こした。
タコパチ「イカパチ!!しっかりして…やだ、やだよ…」
クロサキ「あっち行けタコパチ!邪魔するんじゃねぇよ。くそ…早く立て直して、ゲームを進行しねぇと!!」
タコパチ「イカパチの命よりも、ゲームが大切だっていうの!?」
クロサキ「マ、マシロはこんなことで、しなねぇから!マシロはゲームと俺を裏切らないんだ!」
タコパチ「うるさいバカ!地面にたたきつけられた上に、大やけどもしてるんだ、今すぐ処置しないと、命に関わるよ。金色の腕輪が作動しなかったのは、不幸中の幸いだね。
でも、デスゲームのせいで今はお医者さんを呼べないし、僕ひとりじゃ回復魔法も使えない…!僕は医学を学んでいた経験があるけれど、…自信がないよ。でも、できることをやらなきゃ!
ミニキスが来てくれたら、ブレイブ☆タコキスに変身して、回復魔法を使えるようになる。……今、スマホでメッセージを送った。直ぐに来てくれるって。
ミニキスが来てくれるまでの間に、処置しないと。
…大丈夫、イカパチ、呼吸はしているみたい。でも、浅い。
冷たい水で、やけどを冷やして進行をおさえたい。…でも、水、水なんて…持ってないよね。」
タコパチの瞳から涙があふれた。マシロの手をぎゅっと握って、「イカパチ、絶対大丈夫、たすかるからね」……その様子を見てクロサキは、焦りはじめた。
爆風に飛ばされて、ケガをした直後、マシロは「このままじゃ、ゲームが台無しになる。一旦逃げて、立て直さなきゃ!…クロサキ君、僕を抱えて走れる?ちょっとだけケガしちゃったから、僕は走れないかも」と、焦った様子でクロサキに話していた。クロサキはマシロを抱えて、走り始めた。
マシロは普段と変わらない様子で、少し悔しそうにしながら、話していた。
さっきまで、話せていたのに。
あれ?おかしいな。
今のマシロは何も話さない。名前を呼んでも、手先さえ動かさない。
汗で濡れた髪。紫色の唇。まるで、重たい人形のようだった。こんなマシロをみるのははじめてだ。
クロサキは、ようやく、マシロがしにかけている現実を、認識した。冷静になって、冷や汗が流れて、体の奥底が冷えていくような感覚がした。
クロサキ「ま、マシロ、マシロ?うそだろ。しぬんじゃねぇよ、こんなところで!タコパチ、水か?水があれば、マシロはたすかるのか?」
タコパチ「それはあくまで応急処置。ミニキスが来たら、回復魔法を使えるから、それで、完全に治せるはず。変なカエルたちも見当たらないし、いつも通り魔法を使えるはずだ。」
クロサキ「………かいふく魔法?」
クロサキは瞳を泳がせた。戸惑いながら、何かを考えている様子だ。
タコパチ「イカパチが魔法嫌いなのはわかってるよ。でも、命にはかえられないでしょ!後からイカパチが怒ったとしても、僕は魔法を使うからね」
クロサキ「ち、ちげぇよ!そんな話じゃない。」
タコパチ「じゃあ、何?」
クロサキ「…魔法で治すって、簡単な事じゃねぇだろ。
マシロのケガは、ただのやけどじゃない。緑色の発明の星の化身の力がつまった特別な爆弾と、時間の宝石の力が混ざりあった爆発による珍しいケガだ。…俺のケガは軽い捻挫だから、魔法で回復できるけど。
病気やケガは回復魔法で癒せる。でもある程度の原因や治療法をわかっていないと、的外れな魔法をかけてしまって、効果がでないことも多い…そのことは、お前も知ってるだろ?
お前とミニキスに、マシロを治す回復魔法が使えるか?」
タコパチ「でも、やるしかない!青色の星のさくまも回復魔法を使えるって話してた。からすとむむの力も借りればきっと…」
クロサキ「無理だ。お前は何もわかってない!
見ろ、マシロの肌の一部が金色に光ってる。さくらの時間の宝石の破片が刺さったのか?やっぱり、ただのやけどじゃないみたいだ。時間の宝石と、複雑な回復魔法を熟知していないと、治せない!
緑色の星の化身のことおはバカそうだけど、ああ見えて、かなりの星の力を隠し持っていたんだ。本気を出せば、この宇宙の謎を解き明かせるかもしれない、高度な魔法の使い手だったんだよ。
このケガを理解して、今すぐ治せるのは、からすとことおだけだったと思う。でも無理なんだ。
からすは今は力を使えないらしいし(全て力が使えないのか、一部の力は使えるのか…詳しいことは知らねぇけど)、ことおは自分の力を全てオキに託してしまったらしい。だから、あいつらの回復魔法に頼るのは、現実的に難しい…。
タコパチ、他に方法はないのか?」
タコパチ「ぅう…ないの?ないのかな。僕、何もしてあげられないのかな。クロサキも何もできない?イカパチ、お願い、僕を置いていかないで」
クロサキ「…はぁ。…さがってくれ。さがれ。
俺がこれからすることは、誰にも言うなよ。マシロにも絶対言うな。
頭が良くて強い本物の悪人は、秘密や実力を誰にも悟らせないのに。こんなことしちまったら、俺も頭が悪いタイプの悪人扱いされちまうなぁ。…最悪だ。」
タコパチ「な、何するつもり?」
クロサキは地面に腰をおろして、マシロの体に手をかざした。
風が吹いた。
。°+°。°+ °。°。°+°。°+
空中に赤色の小さな光の粒が現れて、クロサキの手に集まってきた。その光はキラキラと輝いて、三人を照らした。
。°+°。°+ °。°。°+°。°+
足元に、巨大な魔法陣が浮かび上がった。タコパチも見た事がない、奇怪な魔法陣だった。
。°+°。°+ °。°。°+°。°+
クロサキは光の粒を手のひらで操り、マシロに向けて放った。
マシロのケガはみるみるうちに、消え去った。
タコパチ「…それは、回復魔法!?!?!?」
クロサキは光の粒を操り、水が入ったペットボトルを作り出した。それをタコパチに、投げて渡した。
クロサキ「その水で、お前がイカパチを治療したことにしろよ」
クロサキはマシロのポケットを探り、金色の腕輪を外すための鍵(金色の鍵)を取り出した。それもタコパチに投げて渡した。
クロサキ「それは、マシロが落としちまったってことにする。だから、このことは秘密にしろよ、誰にも言うな」
回復したマシロはむにゃむにゃと寝言を言いながら、元気そうに眠っている。クロサキはマシロを抱きかかえて、立ち上がった。
クロサキ「まだ、ゲームは終わってねぇ。…お前らのゲームはめちゃくちゃになったけど、俺とマシロのゲームはまだ終わってねぇんだ」
クロサキとマシロの腕には、金色の腕輪が、変わらない様子で輝いている。
クロサキはマシロを抱いたまま、風のように消えて、どこかに行ってしまった。
タコパチ「…クロサキ…本当は魔法が使えたんだ。使えないフリをしていただけで。
…あんなにも複雑な魔法陣、はじめてみた」
タコパチは寂しそうに下を向いた。ポケットを探って、くしゃくしゃのレポート用紙を取りだした。消滅した星を復活させるための大魔法の設計図。掠れてしまって、もう読むことは出来ない。
タコパチ「…どうして、デスゲームなんかに使うんだろ」
足音が聞こえてきた。ミニキスとフィカキスが、タコパチを探してやってきたのだ。
ミニキス「大丈夫か!?イカパチさん、ケガしたん?」
タコパチ「…うん、でもイカパチはもう大丈夫。この水で、応急処置をして、治療したから。クロサキと二人で逃げて行ったよ。金色の鍵を落として行った。……。」
ミニキス「無事なんやったら、良かった。二人は逃げてしまったんか。見つけなあかんなぁ。金色の鍵?これがあれば、ことおさんの腕輪も外せるか。良かった。はぁ、疲れた。
ん?タコパチ、下向いて、どうしたん?」
フィカキス「どうしたーん?」
タコパチ「あ〜やだやだ」
タコパチはクロサキの秘密について悩んでいた。ミニキスとフィカキスに隠し事はしたくない。さくらの件があったのだ。嘘をついて、皆に迷惑をかけたくない。
タコパチ「どうすればいいのか、わかんないよ。ミニキスなら、どうするか教えてほしい。
「他の人には絶対言わないでね!秘密だよ」って言われて、内緒話をされたとする。でもその秘密が、想像してたより衝撃的な内容で、知らないふりをするのはつらいし、誰にも言わないのも迷惑かけそうで心配…。そんなとき、ミニキスならどうする?」
ミニキス「そういうときは、別の人に、「他の人には絶対言わんといてな!絶対秘密やで」って言って、教えたらいいねん」
ミニキスは、そういう性格だった(口が軽い)。
フィカキス「タコパチ、秘密知っちゃったん?」
タコパチ「他の人には絶対言わないでね!秘密だよ。
実はね…」
タコパチはクロサキの秘密をミニキスとフィカキスに打ち明けた。
ミニキス「それは大変や!からすさん、ことおさん達にも伝えた方がええわ。絶対秘密って約束して、こっそり教えよ!」
タコパチ「わかった!そうしよう☆」
フィカキス「…ほんまに、大丈夫か!?ああもう、どうにでもなれ!」
ミニキスとタコパチは、秘密を言いふらしたくてたまらない気持ちを隠しきれずに。ピカピカ☆ワクワクした表情をしていた。
ーーー
ーー
ー
誰かの一番大切なものを奪い、壊してしまう。俺なんて、誰かを愛する資格なんてない。いなくなってもいい。そんなことばかり考えて生きてきた。
俺は悪人である自分自身を許せないでいた。
…マシロと出会うまでは。
マシロは悪に染まった俺の人生を抱きしめてくれた。初恋の続きを描くためのクレヨンをプレゼントしてくれた。俺の罪を開放し、生きる場所をプレゼントしてくれた。
だから、どんなことがあってもそばにいる。全てを捧げる覚悟はできてる。
…そう思っていたけれど。
俺、やっぱり、間違えているのかな?
わかってる、まちがえてるよな。
まちがえてる。
デスゲームも。俺がマシロの隣にいることも。
全部、全部、間違えているよな。
俺がいないほうが、マシロは素直に生きられるよな。
デスゲームなんか、いのちで遊ぶことなんか、間違ってる。わかってるさ。
それでも、マシロのことが好きなんだ。マシロをもっともっと悪に染めて、俺だけのものにしたいと思ってしまっているんだ。突き進みたい、このままでいたい。
恋心を自ら諦める勇気も、別れを告げる勇気も、今の俺には欠片も残っていない。
幸せを横取りして、罪を重ねて。俺なんか最低だ。最悪だ。…最高の気分だ。
ぜんぶ、マシロのせいだ。マシロのせいで俺は自分が悪人のままでもいいと受け入れてしまったんだ。このままでもいいかって思えた。自分のことが好きになってしまったんだ。
…マシロはカードに何を書いたんだろう。誰の名前を書いたのだろう。いや、本当は気が付いている。察してる。マシロはバカだから、俺が気が付いてないと思ってる。でも俺もバカだから、何も言えずにいるんだ。
クロサキ「マシロ、そろそろ起きろよ」
マシロ(イカパチ)「むにゃむにゃ。…あれ、ここどこ?森の中?木の上だ!?…なになに、爆発した後、どうなったの!?もしかして、大失敗?」
クロサキ「ああ。ゲーム会場もゲームも、参加者も滅茶苦茶になった。反抗的で刺激的。これこそデスゲームって感じがして、面白ぇけど…正直、悔しいよな」
俺は自分の腕輪を見た。まだゲームは終わっていない。…そして、マシロの腕輪に触れた。この腕輪はマシロの運命、そのものだ。
クロサキ「でも、俺とマシロのゲームはまだ、終わってねぇから♪真剣勝負しようぜ」
マシロ(イカパチ)「真剣勝負?当たり前だよ。僕とクロサキ君は負けない☆早くふたりでクリアしちゃおうね」
勝つ。絶対に勝つ。でもごめん、ふたりでクリアする気持ちはないんだ。
マシロはいつも弱点をさらしている、自分が一番強いと思っている、頭の悪い悪人。俺は、自分の秘密を隠し通せている、本物の悪人。
マシロは俺に負けるんだ。
そしたら、お前は罰ゲーム決定な。お前の迷いと良心を断ち切るための、特別なショーを用意してる。
楽しみでたまらない。今も楽しくてたまらない。
マシロの過去?秘密?そんなもの、はじめからなかった。思い出は、俺が決めてあげる。
本当の気持ちを言えなかった後悔も、一番大切にしている存在も
ぜんぶこわして、ころして、受け止めてあげる。
許してあげる。導いてあげる。連れ去ってあげる。
俺だけのものにしてあげる。
…愛してる。
マシロ(イカパチ)「明日からは新しいデスゲームを開催しよう!今度こそ、夢を叶えようね」
クロサキ「ああ、そうだな♪…なぁ、マシロ」
マシロ(イカパチ)「なあに?」
マシロの頬に手を伸ばすと、可愛く頬をすり寄せてきた。顔を近づけると、恥ずかしそうに目を閉じた。
…そっと唇を重ね合わせた。マシロが逃げられないように包み込むように両手で抑えて、こぼれでた吐息をつかまえるみたいに、何回も重ね合わせた。
頬を赤くしたマシロが遠慮がちに俺の胸を押した。俺は気にせず、口を開いて、開かせて、舌を絡ませた。湿っぽい感覚に体が熱くなって、力が抜ける感覚がした。
マシロは抵抗して、俺の胸をバシバシと叩いた。俺はマシロの耳をふさいで、食らいついた。少しして、マシロの体の力も、抜けてしまった。
マシロをお姫様抱っこして、木の下へ飛び降りた。草むらにマシロを降ろして、押し倒した。見下ろすと、破れて汚れてしまった衣装の隙間から、きれいな肌がのぞいていた。余裕がなくなったマシロの表情…可愛い、可愛くてたまらない。俺ははだけた首元に顔をうずめて、服の中に手を入れた。
マシロ(イカパチ)「待って待って、クロサキ君、だ…だめだよ、こんなところで!」
クロサキ「誰も見てねぇから、気にするなって」
マシロ(イカパチ)「こ、こんなの王子様じゃなくて、オオカミだよ~?」
クロサキ「じゃあ俺は、オオカミの王子様だな。オオカミの王子様のことも好きだろ?」
マシロ(イカパチ)「もぉ~、…好きだよ」
…
本当の俺を知ったら
マシロはどんな顔をするかな?
…
【11話に続く】
… … … …
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