【星のはなびら2~対決☆タコタコタコ星~】13話【次回で完結予定☆←勘違いでした。完結は次々回】

さくまは魔法で、写真を作り出し、皆に配った。写真にはクロサキが見てきたものがありのまま映っている。金魚八やイフ、黒色の戦闘の星、黄色の世界の星…。

さくら「あ、こいつがイフだ。髪が長くて、背が高いんだ、2mくらいあるんだ。」

ささめき「…妖しい雰囲気ね。」

皆、真剣な表情で、写真を手に取って見た。

さくま「クロサキは、仕事を派手に好戦的に楽しむ、悪のエンターテイナーと評価されている、金魚八の幹部。

金魚八を通じて時間の宝石の作り方を知り、その作り方を黄色の世界の星の化身に教えた過去がある。

…あいつが我々の宇宙「深海の宇宙」に来た目的はふたつあるようだ。

ひとつめは、金魚八幹部に相応しい人材を一名確保して、連れて帰ってくることだ。

クロサキは、マシロを連れ帰って、金魚八幹部にするつもりなんだ。

クロサキは仕事の様子を金魚八のディスプレイで公開している。宇宙を舞台にしたデスゲームを通じてマシロの強さを、イフや全宇宙に知らしめようとしていたんだ。」

マシロは信じられない気持ちでいっぱいになって、思わず叫んだ。

マシロ(イカパチ)「…そんな…そ、そんなわけない!!クロサキ君が僕を宇宙の外に連れていくなんて、そんなわけないよ…!!」

さくま「クロサキの記憶がそう言っているんだ。…宇宙規模のデスゲーム開催には、もうひとつ目的があった。マシロ、お前を孤独にすることだ。

宇宙規模のデスゲームが成功したとしても、失敗したとしても、クロサキはどちらでもよかった。多くの星の化身を敵にまわして、戦い続ければ、マシロはいずれ孤独になり、宇宙から居場所を失うからだ。そのタイミングでクロサキは、マシロを金魚八に誘うつもりだったんだ。

しかし…マシロは、迷うだろう。タコパチを置いていくことは苦しいだろうから。タコパチの存在は、マシロのたったひとつの心残りといえる。

だから、クロサキはタコパチとマシロの絆を断ち切ったり、諦めさせたりしようと企てていた。

クロサキは、マシロの金色の腕輪には、時間の宝石ではなく、別の力を持つ宝石が埋め込んだ。

それはお前が魔法を再び使えるようにする効果がある宝石だ

マシロがゲームに負けて罰ゲームをすることになったら、皆の前で強制的に魔法を使うことになっていたんだ。

「魔法が使えないから」、家を出て、兄を嫌って、デスゲーム主催者になった。「魔法が使えないから」、新しい自分になった。魔法が使えないことは、マシロが今の自分を正当化するための、心の柱。

それを突然失えば、マシロは絶望するだろう。何をするべきかわからなくなり、タコパチに顔向けできないと思い、…心の扉を閉ざしていただろう。お前が信じられるのはもう、クロサキだけ…。

お前は心からクロサキを必要とし、縋り付くだろう。そういう状況になれば、決定的だろう?

…クロサキはそんなことを考えていたようだ。

クロサキはゲームを楽しんでいたが、自分の腕輪には時間の宝石を仕込んでいなかった…ずるい奴だ。」

マシロ(イカパチ)「…じゃあ、クロサキ君は僕を働かせるために、僕に好きって言ってたの……?」

目の前が真っ黒になって、体の力が抜けて、ふらついた。

そこにクロサキがやって来た。

クロサキ「違う!ちがうんだ!」

クロサキはマシロの体を支えて、揺さぶった。

クロサキ「違うから。俺の目を見てくれよ!」

「信じられないよ」と、マシロは顔を背けた。クロサキは焦って、人目も気にせずに自分の気持ちを訴えた。

クロサキ「正体を隠してたのはすまなかった。でもマシロのことが好きだからこそ、そうしていたんだよ…!俺はマシロを守るために…!」

愛するマシロに拒絶されるなんて、信じたくない。

マシロ(イカパチ)「僕にさわらないで…」

クロサキ「俺はマシロのことが好きだ!本当に、本当に好きなんだ!!」

マシロもクロサキも目を白黒させており、冷や汗を流していた。不安と焦りで心をいっぱいにして、唇を震わせていた。

クロサキ「この深海の宇宙では、仕事のことなんか忘れて過ごしてた。ふゆのやマシロと出会った時は、何も考えていなかったんだ!

でも、俺は…自分が金魚八の幹部だったことを思い出した。

俺はマシロも仕事も、どちらも誇らしく思ってるんだ。マシロのために、仕事を頑張りたいと思ってるんだ。

マシロを働かせたいから金魚八に連れ帰りたいわけじゃないんだよ。

マシロを守りたいから、一緒にいたかったから、金魚八や俺のことを理解してほしかったから…そういう理由なんだよ。

金魚八は、安全なんだ。マシロなら、活躍できるし、イフも納得するし…」

マシロ(イカパチ)「行きたくないよ、そんなところ。

王子様の飼い主の顔なんて見たくない。

…僕の王子様は、そんなこと言わない。」

マシロはイフの写真を破って、投げ捨てて見せた。

クロサキ「…そ、それでも連れていく。」

マシロ(イカパチ)「どうして!?

もう、放っておいてよ…。

僕は…こんなの、もう、やめたいんだよ。

デスゲームなんかしたくない。

魔法なんか使えても使えなくてもいい。

お兄ちゃんの弟に戻りたい。

もどりたい。

それだけなのに。

でも、僕は取り返しのつかないことをしてしまった。

だから、もどれない。

…これはきっと、僕に用意された罰なんだ。

これが…僕の罰ゲームなんだ。」

クロサキ「罰ゲーム?それは俺のことか?マシロは俺と一緒にしてきたことを、罰ゲームだって言うのかよ!!俺はこれまでマシロのためにッ」

クロサキがマシロの胸ぐらを掴もうとしたとき…ミニキスとタコパチが、ふたりの間に割って入った。ミニキスの肩には、フィカキスが座っている。二人はマシロをさがらせて、クロサキと向かい合って、睨みつけた。

ミニキス「落ち着けや、クロサキ。何キレてんねん。」

クロサキ「あっち行け!これは俺とマシロの問題だろ」

ミニキス「二人だけの問題とちゃうわ!こんなん、宇宙規模の話やろ。

…タコパチの意見も聞いたれや。クロサキはタコパチのことを舐めすぎてんねん。タコパチはイカパチさんを改心させるために、地道に努力してたんやで。もういちど兄弟で夢を追いかけたくて、滅びた星を治して復活させる回復魔法を研究してた。オレの星も復活させようと、毎日遅くまで頑張ってたのに。」

クロサキ「星を復活させる回復魔法?そんなもの、金魚八を探せばいくらでもあると思うぜ?」

ミニキス「なんもわかってない。タコパチが追い求めている魔法は、まるっと星全体を復元すれば皆幸せになれるようなシンプルなもんじゃないねん。魔法陣一個で解決するようなもんじゃないし、強ければいいってもんじゃないねん。

心を癒したり、体を回復させる方法は沢山あるし、失ってしまった大事なもの、大事なひと、悲しい気持ちも十人十色…その星のひとりひとりに寄り添うことが大事なんや。

そういう魔法使いに憧れて、決意して、オレとタコパチは努力してる。

イカパチさんも、そういう魔法使いに憧れてたんやと思うで。

…クロサキも、ほんまはそうなりたいんやろ?

素直になるんや。道を踏み外したまま、嘘ついてたら、一生分かりあわれへんで。

クロサキも覚悟決めなあかんで!」

クロサキはたじたじとして、目をそらして一歩さがった。

クロサキ「ぅう…。」

背を向けて逃げようとしたクロサキに、からすが声をかけて引き止めた。

からす「…クロサキ君。

ミニキス君の言う通りだ。イカパチ君を追い詰めて、宇宙の外に強引に連れ去っても、分かり合うことはできない。守ることは、信じることなんだ。

金魚八でお仕事をしているクロサキ君は、わたしたちが知らない、恐ろしいことを沢山知っているのだろう。だが、イカパチ君にとっては、クロサキ君が一番怖いんだ。イカパチ君のことが好きで守りたいなら、その怖さをとりのぞいてあげないと。

ほら、悪い心を改めて、冷静になってみて。

反省して、ミニキス君たちと一緒に頑張れば、答えが見つかるかもしれない。

デスゲームという酷いことをして奪ってしまった、他の人がたいせつにしているものを、ひとつでも多く返すために頑張るんだ。

恋人も仕事もどちらも大切で、クロサキ君の一部だというのなら、折り合いをつけるんだ。な?」

クロサキははぁ…と大きく息を吐いて振り返り、「わかったよ…」と気まずそうに言った。

タコパチ「イカパチや僕たちと、話し合ってくれる?」

タコパチは、一生懸命な眼差しで見つめている。

クロサキ「話し合う。でも仕事もマシロも大切なんだ…だから、わかり合えるかはわからねぇけど、俺一人じゃどうしようもないってことは、わかったから…隠し事するのはやめるよ。」

フィカキス「よかったな、タコパチ、ミニキス。あいつ、改心するつもりや!」

タコパチ「……うん!!」

タコパチは「ありがとう」と、ミニキスと肩に乗っているフィカキスに、顔を寄せて、にっこり笑った。

クロサキ「折り合いをつける…その方がいいよな。やりたくねぇ仕事はやりたくねぇし、上司にビビってないで、自分の頭で考えないとな。」

クロサキは背の高いからすを見上げて、その瞳をじっと見た。サファイアブルーの瞳はクロサキを諭すように、キラキラ輝いている。

クロサキ(この人に勝てる気がしねぇ。あ〜絶対勝てねぇよな。イフよりも怖いし。俺、自分のこと、強いって勘違いしていたぜ。)

からす「どうしたんだい?クロサキ君。」

クロサキ「…俺の仕事は金魚八幹部に相応しい人材を一名確保して、連れて帰ってくることと、からすを消すことだったんだ。そういうのはもうやめるから、許してほしい。」

からす「な、なるほど…。」

クロサキ「この深海の宇宙はイフに目をつけられてるから、遅かれ早かれ宇宙ごと消されると思って、マシロだけは助けたいと思った。

マシロがイフに気に入られたら、安心できるって思ったけど、そのためにマシロ本人を騙したり、傷付けていたら、無意味だよな…俺が間違えていた。みんな、ごめん。」

からす「クロサキ君は本気でわたしを消しちゃおうとしていたのか?」

クロサキ「そ、そーだよ…。」

からす「うーん、それは無理だと思うぞ。」

後ろの方から見ていたオキも「クロサキには絶対無理だよ!」と、声をかぶせた。

からすはクロサキの髪をわしゃわしゃとなでてクシャクシャにした。そして、仲直りしようと声をかけて、みんなを集めた。

クロサキ「マシロ、ごめん…」

マシロ(イカパチ)「いいよ、許す。全部わかったから、スッキリした。クロサキ君は僕の王子様なんだから、もう乱暴なことはしないでよね。僕も面白がってしにかけて、迷惑かけたし…お互いさまだよね。…僕も、ごめん。」

クロサキ「あはは、安心したぜ」

マシロ(イカパチ)「皆、本当にごめんなさい。デスゲームをするのはもうやめる。侵略もやめて、レッドデビル☆カンパニーのことをもっと大切にする。…きっかけをくれてありがとう、皆のおかげで僕は自分のダメなところに気がつけた。」

クロサキ「俺も、悪人やめる!マシロのことが好きだから、もっと誠実な男になりたい。」

さくら「ぜったいもうやるなよ!!!!!」

マシロ(イカパチ)「…さくら君。許してくれるなんて優しいね☆」

さくら「ゆるしてねぇよ!?」

ことお「俺はマシロたちのこと、気にしてないよ♪…でもさぁ、俺の星は元に戻してくれるんだよね?壊れたところとか、位置とか。戻してくれるんだよね!?」

マシロ(イカパチ)「え?無理だよ、見たらわかるでしょ。元に戻せるわけないじゃん。」

オキ「無理なら仕方ないね。」

さくら「仕方ないで済まねぇよッ」

むむ「緑色の発明の星、青色の不死の星とほとんどくっついちゃってるよ?」

ささめき「侵略が大好きな破壊の化身と隣り合わせなんて、嫌よね」

さくら「そーだ!そーだ!ことお、何とか出来ねぇのか?」

ことお「そう言われてもな…。

迷惑かけないようにするから、我慢してほしい…としか、言えないよ。

俺たち、今までみたいに星の力も魔法も使えないから、侵略はもうできないし、とおこに関する手がかりを手に入れたから、宇宙を破壊する必要もなくなったし。大人しくしてるから。

むむから魔法のコンピューターをもらったから、オキを整備したり、ロボットや発明品を作ったりすることはできる…それで、金魚八からとおこを取り返すために頑張りたいって思ってるだけで、青色の不死の星にちょっかいかけるつもりは、もうないよ。

俺、今回の出来事で、ちょっとだけ正気に戻った気がするんだ。

オキとくまと、妹のとおこと一緒に、庭園を散歩したり、空を眺めたり、三味線をひいたりしたいなぁって思ってるんだ。…信じられないかもしれないけど、昔の俺って、そういう感じのキャラだったんだよ。」

さくら「…本気っぽいし信じてやるか?」

ささめき「変なことをしたら、すぐに退去してもらうわよ。むむちゃん、ことお達のこと、しっかり監視していてよね。」

むむ「うん。庭園散歩してるところなんて、あんまり想像できないけど…、青色の不死の星には趣のある庭園が沢山あるし、早くみんな揃って散歩できるといいね。ことお君、とおこちゃんを取り戻したら、完全に正気に戻って穏やかな性格になるのかな?」

ことお「正直、正気に戻りたくないっていう気持ちも強いんだよな…。真面目に考えたら、この状況はヤバいんだって。ヤバいってことを頭がしっかり、理解しちゃったら、……怖いよね!この気持ちわかるよな?」

むむ「ちょっとわかる気もするけど…。多分、…ことお君はもう正気に戻ってるんだと思うよ。目をそらしてるだけで。」

ことお「ひぃい〜!」

オキ「わからない。僕はいつだって正気だから。」

ささめき「…ねぇ、クロサキ。とおこって人は金魚八にいるの?」

クロサキ「とおこって名前のやつはいるけど。(本当にことおの妹なのか?一回話しただけだけど、ことおの妹には見えなかったな。)可愛がられてるし、怖い思いはしてないと思うぜ。」

さくま「ふん…ではクロサキ、今すぐイフに話をつけて、我らを安心させてみろ。魔法の手鏡とやらを使えば、遠い宇宙にいても、話ができるのだろう?くっくっく。それができたら、皆お前を信用するし、安心すると思うぞ。」

クロサキ「ああ、そうだな。わかった。イフに連絡して、今回の仕事は辞退するってことと、とおこを元の星に帰してほしいってことを伝えてみる。」

クロサキはポケットから魔法の手鏡を取り出し、イフに連絡をとりはじめた。

クロサキ「…さがってろ。誰も、何も言うなよ。」

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