マシロとクロサキも、空を見上げた時に、怪しい星を…制御不能の宇宙船を見つけた。プランは無いが、落下予測地点に向かって走っていた。
マシロ(イカパチ)「クロサキ君、あれ何!?宇宙船?隕石?お兄ちゃん達は僕らを置いて、空に逃げたみたいだよ。どうする?何とかしないと。」
クロサキ「俺もわかんねぇ。…宇宙船か?あの光、燃えているだけじゃないように見えるぜ。星の力か、魔法か…何かが暴発して、制御不能になっているみたいだ。素手で止めるのは、難しそうだ。俺たちは飛べねぇし…。」
マシロ(イカパチ)「ジャンプすることならできるよ。様子を見てくる、着いてきて!」
マシロは全身の筋肉を使って10km以上飛び上がった。マシロは強いデスゲーム主催者になるために、毎日鍛えているが、それが役に立った。
クロサキ「はぁ!?真似できるわけねぇだろ!」
クロサキは地上で叫んだ。
空中。飛び上がったマシロには、近付いてくる燃え盛る宇宙船が、スローモーションのように見えていた。更に神経を研ぎ澄まし、じっと見つめた。
マシロは、宇宙船にさくらとオキ、タコダイオウ(ユニタス)がひっかかっているのを確認した。
マシロ(イカパチ)「…そういうことか。頑張って戻ってきたんだね。」
マシロは両手を突き出して身構えた。
興奮して目を見開いて、ニヤリと笑った。
クロサキ「マシロ!!あんな物をひとりで食い止めるなんて、絶対に無理だ、やめろ!!」
マシロの気持ちがわからない、信じられない…クロサキは慌てて走りはじめた。
からすやブレイブ☆タコキスたちも、驚いた様子で、その一瞬の状況を見つめていた。
マシロが宇宙船とぶつかる直前。
クロサキは地面を蹴って、
魔法を使って飛び上がった。
マシロを守るように抱きとめて、宇宙船の前に、巨大な魔法陣を出現させた。
魔法陣を通過した宇宙船は機能停止した。炎もかき消された。
クロサキはマシロが潰れないように守りながら、落下する宇宙船に体当たりし、食い止めようとしたが、宇宙船は想像以上に重く、クロサキの力では受け止めきれなかった。
クロサキを押し返し、落下し続ける宇宙船。
ブレイブ☆タコキスは慌てて、抱えていたささめきをさくまに持たせて、飛び立った。ことおとささめきを抱えているさくまは、重そうにしながら、ふらふらと飛んでいる。ささめきとことおは落ちないように、仕方なく体を寄せあった。
ブレイブ☆タコキスはクロサキの隣に駆けつけて、宇宙船を全力で押し返した。
協力し、地面ギリギリの所で宇宙船を食い止めて、宇宙船は着陸した。
衝撃でブレイブ☆タコキスの変身が解けて、タコパチとミニキスは地面に投げ出された。
ミニキス「痛っ、…タコパチ!ケガしてないか!?」
タコパチ「してない!大丈夫だよ」
フィカキス「びっくりした」
クロサキとマシロも地面に転がった。
皆も地上に降りてくる。
マシロ「…痛いなぁ、もう〜」
マシロがゆっくりと体を起こした。クロサキは疲れきった様子で、はあはあ…と息をしながら寝そべっている。
タコパチはマシロの元へと駆けよった。ミニキスとフィカキスも立ち上がった。
タコパチ「イカパチ!しっかりして…。」
マシロは「これくらい大丈夫だよ」とつぶやき、立ち上がった。なぜか、クロサキの方を見ながら、ニヤニヤしている。クロサキも重い体を起こして、立ち上がった。
クロサキ「マシロ。マジで何考えてんだよ…ヒヤヒヤした」
マシロ「あは☆このデスゲーム、僕の勝利だね!
僕、クロサキ君にだけは負けたくなかったんだ♡だから、クロサキ君がいちばん大切にしているものを確認するために、体を張ったんだよ。
…僕の王子様は嘘つきだった。本当は時間の宝石の作り方を知っていたり、強い魔法を使えたりするのに、僕よりも弱いフリをしていたんだ。クロサキ君は正体を隠してる。僕には手が届かないような、秘密がある。
その秘密と、僕。
どっちが大切か?
確かめてみたかったんだ♪
クロサキ君は皆の前で特別な魔法を使って、僕を助けた。
つまりクロサキ君がいちばん大切にしているものは〜、秘密よりも、マ・シ…」
その時、クロサキがマシロの頬をバシッと叩いた。ゲームに夢中になっていたマシロは、え?と戸惑った。大好きな王子様に手をあげられて、怯えて、瞳に涙が溜まっていく。
クロサキは顔を真っ赤にして、怒っている。
クロサキ「いい加減にしろよ!!
こんなの、全然面白くねぇ!!
ゲームなんかどうでもいい。
マシロがしぬなら、何もかも無意味なんだ。
オキたちの爆発に巻き込まれた時も、お前は「ゲームの答えが書いてある封筒」に手を伸ばそうとして、大ケガしたんだ。その時も俺が回復魔法を使わなきゃ、しんじまってた。
面白がって、しぬかもしれない行動をした時点で、マシロの負けだ!
…言っとくけど、俺なんかに説教されるって、相当のバカだからな!
タコパチとミニキス、フィカキス、ふゆの…比較的まともな奴らの言葉を無視し続けてきたから、最後に残った俺なんかに怒られることになったんだ。
いい加減認めろよ。マシロは俺のことを特別だって思ってるだろうけど、王子様も兄も、友だちも部下も、同じようなものだ。お前にしんでほしくないって思って、マシロを心配してるだけだ。
お前が俺と一緒にいると居心地がいいと感じるのは、お前が俺と同じくらい、何も考えてないバカだからだよ!
他人のことも、自分のことも大切にしないし、見ようともしない。プライドもない。そんな今のマシロが、いちばん大切にしているものを言っても、ダサいだけだ。マシロにはこのゲームの主催者失格だ。
こんなつまんねぇデスゲームはおしまいだ!解散!」
クロサキは背中を向けて、スタスタと歩きはじめた。
ミニキス(完全に興ざめって感じの空気やな)
フィカキス(デスゲームは終了やな)
マシロは泣きながらクロサキを追いかけようとしたが、タコパチが袖を掴んで引き止めた。
マシロ(イカパチ)「ぅ…、ぅ…、うぇ〜ん!クロサキ君、行かないで。待って、怒らないでよ…行かないで、ぅう…僕が悪かったからぁ!」
マシロはペタリと、地面に座り込んだ。
マシロ(イカパチ)「ぅう〜、バカバカ!」
マシロは頬を膨らませて、クロサキに向かって、15センチくらいの石を投げた。
クロサキ「…何すんだよォラ!!」
石は頭に直撃し、クロサキは鬼のような顔で振り返った。額から血が流れて、ぽたぽたと地面に落ちて、水たまりに赤色がにじんだ。
タコパチ「…クロサキ、そんな風に怒らないであげてよ。ガラ悪すぎるよ!」
クロサキは、更にイライラして、自分の金色の腕輪を外して投げ捨てた。「頭冷やしてくる」と言い捨てて、どこかに行ってしまった。
みんなの前でクロサキに怒られて、マシロは悔しさと恥ずかしさでいっぱいになっていた。
顔を真っ赤にして、涙目になって、体を震わせて、爪が食い込むくらい、手のひらを握りしめた。
マシロ(イカパチ)「僕の…負けだ。
僕の、負け。
僕は…負けたんだ。
勝ったつもりになってただけで、ずっと、負けてたんだ。
ずっと、ずっと…
負けてたんだ。」
マシロは雨も泥も気にせずに、うずくまった。デスゲーム主催者の衣装、マントが、力を失って汚れた地面に広がった。
泣き声を我慢しようとして、力がいっぱい入って、体が震えていた。
悔しそうに、寂しそうに、拳で地面を、何回か叩いた。
金色の腕輪にも泥がはねて、くもりガラスのようになり、輝きを失っていた。
タコパチはその拳に手を伸ばした。マシロの手を優しく広げて、手のひらを重ねて、握った。
タコパチ「イカパチ、大丈夫だよ。クロサキは帰ってくるよ。」
タコパチは嫌がるマシロを無理やり抱きしめて、よしよしと頭を撫でた。
タコパチ「僕はイカパチのこと、大好きだよ。
お兄ちゃんがついてるよ。」
マシロは少しだけ迷った後、片手をゆっくり動かして、タコパチの背中に添えた。
マシロ(イカパチ)「……うん。お兄ちゃん。ごめん。
ごめんね。」