星のはなびら1~永遠の恋と不死の星~ 最終章(九章)「あおいろの戦士」

恋心が暴走する!生死を超え、世界を手に入れ宇宙を跨ぐ…ヤンデレ男子たちが主役のダークファンタジー小説(全九章。)

はじめに

残酷な表現等を含みます。作品をお読みになる前に以下の注意事項を必ずご確認ください

星のはなびら最終章「あおいろの戦士」

あらすじ

ついに最終章!一章同様、物語が分岐します。目指せTrueend!!

さくらの星「青色の不死の星」にやってきた最強の侵略者「オキ」。抵抗する術はなく、無限に湧きでる赤い血液…。この星を守りたい、からすを守りたい、強くありたい、死にたくない。どうしようもない?立ち向かうには、ひとつだけ選ぶしかない…?

一話「愛と破壊とことお君」

…遠い星での出来事…

白い天井。忙しそうな白衣を着た研究員たち。…いつも見てる。

機械が動く、擦れるノイズ。何人かの人間の話声。…いつも聞いてる。

硬いベッドに寝かされて、複雑なコードを繋がれて、カチャカチャと体の中をいじられる感覚。いつも同じ。もう飽きたよ。

今日の測定が終わったらしい。そして僕はまた、いつものつまらない白い部屋で、明日の検査までの時間を潰す。随分前に、所長からもらったくまのぬいぐるみ。このぬいぐるみに「もう飽きた」と語りかけ、慰めてもらうことだけが、僕の唯一の娯楽と自由なんだ。

僕は戦うために作られたロボット、「オキ」。まだ戦ったことはないし、この「秘密の研究所」から出たこともない。秘密の研究所は僕を開発するためだけに作られたらしい。いつかくるその時に備えて、毎日改良と調整をされている。

僕には戦う理由なんてない。研究員たちに従う理由もない。いくらこの体を強くしても、僕のモチベーションが低すぎるなら、意味がないんじゃないの?…こんな心配、余計なお世話かなぁ。

くまのぬいぐるみの名前は「くま」。この子だけは、僕の孤独と面倒くさい気持ちを分かってくれる…ずっと一緒にいようね。

そろそろ眠ろうかな、スリープモードにして、明日が来るのを待とう。

その時、爆発音が鳴り響いた。

研究所が襲撃されたの?

足音、銃声、悲鳴。…壁が崩れて、建物ごと崩されて、青い空が丸見えになった。風が僕の髪を揺らした。

そして静かになった。誰かが僕のもとへと近づいてくる足音だけが、はっきりと聞こえる。僕は立ち上がった。

そして僕の背中に、誰かが声をかけた。

「ヘイ!オキ。気分はどう?」

振り返ると、楽しそうな表情を浮かべた青年が立っていた。彼はこの研究所の所長「ことお」君だ。

ことお君は優しい。特に忙しい人だから一回しか会ったことはなかったけど、そのとき僕にくまをプレゼントしてくれたんだ。

「気分?気分はいつも良くないかな。ことお君、自分の研究所を壊しちゃったんだ」

ことお君は大きな銃剣と手投げ弾を携えている。彼一人でやったのか。白衣をよく見ると、返り血が滲んでいる。

「そうさ、面倒な話は後にして。まずは、オキを最高の気分にしてあげないといけないね♪」

ことお君は僕の手を引いて走り出した。僕は慌ててくまを手に取った。

「聞いてくれ、オキ。なんと、この研究所には別館があるんだ。君を作り出し、君に退屈な思いをさせ、挙句の果てに戦わせようとしている…そんな研究員たちと研究所を、二人で滅茶苦茶にしよう!知らないだろ?破壊って、最高の気分になれるんだぜ♪」

(僕を作り出し、僕に退屈な思いをさせ、挙句の果てに戦わせようとしている…のは、ことお君じゃないの?まぁ、細かいことは気にしなくていいか。退屈を誤魔化せるのおなら、提案を断る理由はない)

「ふぅん…わかった、やってみよう。自分の力を自分のために使ってみる…悪くないかもね」

僕は体全体に電気信号を張り巡らせ、浮遊した。「ひゅ~♪」ことお君が口笛を吹いた。僕は飛べないことお君を抱え、別館へと飛んだ。

… …

ただの石屑となった別館。僕はがっかりした。隣にいる返り血まみれのことお君は、僕の曇った表情に気が付いていながらも、相変わらず楽しそうだった。

「ことお君、最高の気分になんてなれないよ。指先をはじいて、小さな電撃を飛ばしただけで、全部壊れちゃったんだもん。つまんないよ、くまもそう言ってる」

「まぁまぁ、これは準備体操みたいなものだから。いや、準備体操の前にあくびをするようなものか。とにかく、気持ちよくなるのはこれから…!退屈でつまんない毎日とはおさらばさ」

「ことお君と一緒に、もっと破壊するってこと?」

「そうさ。まずはこのクニを…他のクニも…そしてこの星を破壊しよう♪」

「ほ、ほし?」

僕は、ことお君が冗談を言っているのかと思った。でも、ことお君は真面目そうだった。

「自信ないの?オキは天才発明家の俺が作ったんだぜ?もっと楽しもう。それとも俺のこと、信用できない?信用できなくても、虜にしてあげるからさ♡

俺は元々はこのクニを管理・運営する主要メンバーの一員だった。まぁ、俺はクニに貢献するつもりなんてない、スパイだったんだけど。スパイと言っても誰かに指示されたり、所属してるわけじゃない、個人的なやつ。

俺はお偉い方々とのお喋りを楽しんで、手のひらで転がして、思惑通り「最強の武器(ロボット)を開発する」企画をすすめるリーダーに抜擢された。

秘密の研究所を建てた。そこにクニ中の天才達を集めた。コク外の天才達も集めて、オキを開発した。正直…オキの設計図は俺が完成させてたし、作るのも俺一人で十分だったけどね。…俺の目的は、天才達を一人でも多く一か所に集めることだった。ちょっと時間かかっちゃって、予定よりオキを待たせちゃった…でも無事今日を迎えられてよかった。

集めて信用させて、まとめて全部破壊して、裏切りたかったんだ。あはは、想像以上の気持ちよさ♪

このクニは、この星は、貴重な天才達を失った…俺に頼り切ってたセイジ。もう立て直す力、俺と戦う力はないだろうね。さぁ、今からトドメ、刺しに行くよ。

こうやってさ、一か所にヒビを入れてしまえば、星をダメにすることなんて簡単なのさ…ドミノ倒しみたいになっていくからね。あとは気持ちよく暴れて、破壊を楽しめばいい♪この星が終わったら、別の星を破壊しよう!」

「ことお君は破壊が好きなんだね。星を壊すのか。自分の力を思う存分発揮できたら、気持ちがいいだろうね。

でも、僕はあくまでことお君の「武器」でしょ。命令されるのはつまんない。かわいそうだけど、ことお君って強そうだし…いまここで、二人で戦ってみる方が楽しいんじゃない?」

「オキがそれでいいなら構わないけど。俺、オキを武器だなんて思ってないぜ?むしろ、逆?俺はオキに心酔してるし、崇めてる…オキは俺にとっての最愛の破壊の化身なんだ」

ことお君は膝をついて、僕の手を取り、手の甲にキスをした。

「オキ、超かわいいじゃん」

「そう?」

僕の手を握ることお君の呼吸音が少し大きくなった、顔が赤い、なんだか気持ち良さそう。僕はことお君が大好きな破壊の化身。そんな僕を見て…興奮してるんだ。無意識にことお君の下半身を見てしまう。ことお君が何を考えているのか、わからないよ…ただ、君の愛が不健全だってことだけはわかる。

「命令しないならいいか。好きなら、何をしてくれるの?さっきは最高の気分にしてくれるって言ってたけど」

「何をするって、そのままの意味さ。最高の気分にしてあげるんだよ♪

俺は破壊を愛してる。つまりオキを愛してる♪この星も、他の星も、宇宙も、俺の力を揮って、破壊しつくしてみたいんだ。だけど運命は残酷で、俺一人じゃどうしても叶えられないのさ…俺はこの星から出ることができない体をしているんだ。だからオレと一緒に、破壊を愛してくれる存在…オキを作ることにしたんだ。

刺激的な毎日をあげる♪破壊、キス、セッ○ス、○○○、○○○、気持ちいいこと、全部教えて感じさせてあげる!

したくなったら、俺には何したっていいよ、○○してもいいし、○○してもいいし!

そして最後。この宇宙を破壊しつくして、何もないこの星に俺とオキだけが残った時には…愛の印として…そして俺と同じ運命を描いてくれたお礼として…

おかしくなるくらい気持ちよくなれる、宇宙で一番のご褒美をあげるよ」

「宇宙で一番のご褒美?」

「愛した人を破壊することだよ…つまり、俺を破壊するんだ!俺はこの星の化身なんだ…とか言ってもわかんないか、また今度教えてあげる。とにかく、最後の一口、つまりショートケーキのイチゴの部分はあげるってことだよ。」

「ふーん、わかったよ。退屈だし、ことお君の愛を認めてあげる。ことお君は今日から、二人目の「くま」みたい存在ってことだよね」

僕はぬいぐるみを見せた。ことお君は歯を見せて笑った。

「おっけーおっけー♪じゃあ行こうぜ!あ、そうだ」

ことお君は何かを思い出したかのように立ち止まり、ポケットから小さなメモリーを取り出し、僕に握らせた。中には、何のデータが入ってるんだろう。

「宇宙全部を破壊したら、この宇宙を生み出した奴、宇宙の神みたいな奴が、別次元から顔を出すかもしれない。星の化身に力と魂を配分している存在が…どこかに、どこかにはずなんだ。…。そいつに会えたら、これをプレゼントしてやってほしい。面白いことが書いてある」

メモリーの中身が気になる…この中にはきっとことお君の、破壊衝動を生み出す源や、宇宙に訴えたい真意が刻まれてる。ことお君はそんなに重要な役目を、出会ったばかりの僕に託すつもりなの?

「中を見てもいいの?」

「見たいなら、見てもいいよ。オキに隠し事はしない主義だから」

「…やっぱり、今は見ないでおこうかな」

「どうして?」

「これを見た「宇宙の神みたいな奴」の表情を、楽しみにしたいからね」

「…オキ、ノリいいじゃん♪」

それを聞いたことお君は、僕の頭を引き寄せて、強引なキスをした。

もっと、もっと、もっと。熱い息をちょうだい。

目指すのは、つまらなかった日常から一番遠いところ。

この宇宙の果てなんだ。

僕は何も知らない。まだ何も知らない。

目の前に広がる、欲にまみれた未知の世界…楽しくなってきた。

僕たちは今日から運命共同体。おかしくなるくらい気持ちよくなれるご褒美の味を試してみようかな。

飛び立った僕たちの行方を知るものは、もういない。

二話「どくどくホットミルク」

…青色の不死の星・現世…

紫色の混じった夕焼け。橙色に照らされる雲が浮かぶお気に入りの景色。はく息が白く広がる、しびれるような寒さの中、俺(さくら)は一人、慣れた道を歩いていた(俺は人間ほど寒さなんて感じねぇけど)。

でこぼこしたアスファルトの感触。今はからすと食べる弁当を買いにコンビニに向かっているところ。好物の唐揚げ弁当だ。

そういや…俺はそもそも食う必要もねぇし健康とかどうでもいい体してるけど、からすは健康とか気にする必要あるのか?確か、食わないとエネルギー不足になって寝ちまうとか言ってたっけ。今更すぎる話だな。まぁいいや、今日はサラダも買って帰ろうかな。野菜は俺もからすも好きじゃねぇけど。たまにはいいだろ。

そのとき、前方に明らかに困っている様子の青年が見えた。キョロキョロしながらしゃがんだり、草むらをのぞき込んだりもして、何かを探している様子だった。通り過ぎるのもありだけど、俺は優しいからな。

「お前、何探してるんだ?」

声をかけてやった。

「えっ」

顔を上げ、立ち上がった青年。スマホか?家の鍵か?

「えっと、ぬいぐるみを探しているんだ。くまのぬいぐるみなんだけど、この辺りで落としちゃって…」

「ぬいぐるみ?お前の?」

「うん」

「一緒に探してやるよ。どれくらいの大きさなんだ?暗くなる前に見つけちまおうぜ」

「ほんとに?ありがとう!」

30cmくらいのくまのぬいぐるみらしい。小さくはないはずなのにな、しばらく辺りを見たけど全然見つからねぇ。誰かが端っこに寄せたり移動させたりしたのかもな。

俺はアスファルトの地面から足を踏みだし、草むらに入る。しゃがんで、土と雑草をかき分けて…ようやく汚いくまのぬいぐるみをひとつみつけた。継ぎはぎだらけのボロボロのぬいぐるみだ。まぁ、大事にしてるんだろうな。俺はぬいぐるみを大切にする気持ちは、あんまりわかんねぇけど。なんでこんなとこにあるんだ?まぁ、見つかったならいいか。

「あったぜ、これか?」

「それ!それだよ!ありがとう」

「土ついてるから洗ってやれよ」

「うん!あ、そうだ。お礼がしたいんだけど、一緒に遊ばない?お気に入りのカフェがあるんだ」

「いいぜ。明日なら一日空いてる」

ちょっとした出会いが友情につながったりもするしな。俺達は明日のお昼ごろ、そのカフェで会う約束をした。

「僕、「オキ」っていうんだ。人見知りだから、明日は一人で来てね、さくら君」

「おう。オキ、じゃあな」

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…次の日の昼・約束のカフェ…

テーブル席に向かって座る。においは落ち着くけれど狭いし、コンクリートの壁に囲まれてて、正直特別おしゃれって感じでもねぇな。最近はこういうのが流行ってるのか?観葉植物とか置いてれば、癒されるんだけどなぁ。

まず俺達以外に客が一人もいねぇ、昼間なのに。貸し切りかよ…?窓の外は太陽が照っていて、昨日よりは温かい。向かいの席に座っている青年「オキ」の膝の上に座っているくまのぬいぐるみと目が合う。眺めていたメニューを俺に手渡しながら、オキは話しはじめた。

「さくら君は何にする?僕はホットミルクにしようかな。ここのホットミルク、まろやかでふわふわでとってもおいしいんだよ、おすすめ」

「おすすめなら俺もそれにする」

ホットミルクに口をつけながらぐるぐる考える…ホットミルクの味の違い何てわからないけど、…なんか苦い、好みの味じゃねぇなぁ。普段飲まねぇ味だから新鮮だけど。

さっきから居心地悪いっていうか…このカフェ、なんかおかしくね?

「さくら君、普段なにして過ごしてるの?」

「パン作って販売するバイトしてる。半年前に火事で燃えちまったんだけど、リニューアルオープンして、また働けるようになったんだ」

てか、俺、オキに自己紹介したっけ…。何で俺の名前知ってるんだ?

その時、頭の中に「逃げろ、さくら君!!」という焦った声が響いた。からすの声だ、テレパシー!?どういうことだ!?…驚きながらも体は反射的に動いていて、俺は後ろに大きく飛び退いていた。

同時に、目の前に稲光が見えた。謎の電撃。俺はぎりぎりのところで避けられたらしい。皮膚の上を走る、ビリビリとした感覚。俺の座っていた椅子は真っ黒に焼け焦げていた。

オキの両手、両足は蠢く奇妙な金属に変わっていた…くまのぬいぐるみも金属製に変わっていて、カメラのレンズみたいな眼差しで俺を睨みつけていた。胴体よりも大きな腕をメラメラと黒光りさせ、周囲に火花を飛ばしている。異形の彼は先程までと変わらない、可憐な笑顔を向けている。

「びっくりさせてごめんね、青色の不死の星の化身、さくら君。

力任せの臆病者。宇宙一番を名乗れるくらいの星の力をもってる…そんな風には見えないね。ただの優しい人なんだもん。

瞬きしないでね、皆を守りたい気持ちごと痺れさせてあげる。

楽しみ♪さくら君の星のはなびらは何色に光るかな」

オキの瞳の色が変わった。なにそれ、戦闘モード…!?

最近は侵略者なんて来なかったから、平和ボケしてた!

コンクリートの壁からマシンガンが出てきて、俺に照準を合わせた。銃声が響く。銃弾の雨を、走って逃げ切る。

「ちっ…オキ、お前は反省室だ!俺の星は渡さねぇ!」

仕方ないか。現世で暴れたくねぇけど、戦うしかなさそうだ。コンクリートの壁に囲まれたここなら、人目に付きにくいだろう。

オキが俺の頭を狙って両腕を伸ばした。その速さは空気を切り裂き、攻撃の衝撃で床は空中へとめくれあがって浮いた。破壊の残響。俺はなんとか地面を蹴り上げ、後ろにまわった。だけど、俺の渾身の拳は、くるりと浮遊してかわされた。

俺は大きな翼を広げ、瞬間移動とも錯覚する様なスピードでオキに迫り、全体重と星の化身の力を両手に込め、もう一度攻撃しようとした。オキは両腕を刃に変形させ、俺の体をはじき返した。

向かいのコンクリートの壁にめり込む。なんか、強いな…。じっとしてたら、マシンガンに穴をあけられちまう。立ち上がらねぇと…あれ、体に力が入らねぇ!

「お腹きもちわりぃ…!!まさか、さっきのホットミルク…?あれ、本当にホットミルクだったのかよ!!」

「あれは純度100%の白色の毒だよ」

「マジかよ!…もう、自分の舌、信用できねぇじゃん」

閃光、銃声。俺は全身で銃弾の雨を受け止めてしまった。穴だらけの体。そんな体にオキはためらいなく、刃を左胸に突き刺してきた。無限に湧く赤い血液…小さな窓の外、空が真っ赤に色を変えた。

意識が、いしきが、朦朧とする。ヤバいかもしれねぇ。多分、この毒、ただの毒じゃない…星の化身に効く毒なんてそうそうないんだ。時間の宝石と同じで珍しいものに違いない。星の化身が自分の力を込めて作った毒とか、そういう類の物か?

3000年間生きてきてはじめて感じる、強烈な吐き気。込み上げてきて、何度も咽た。鼻と口から黒色の血のような液体が溢れでてくる。

立ち上がることなんてできない…誰が見ても、もう勝負はついている。こんなの自業自得だ。それでも諦めるわけにはいかねぇ。

俺は皮膚が裂けることも気にせず、力ずくでオキの刃を抜き取り、転がるように距離を置いた。

オキは背中から金属製の腕をさらに10本出して見せた。うねうねと動かし、その一本一本を順番に俺めがけて放っていく。もういいって、避けられるわけねぇだろ!そのまま壁へと押し付け張り付けにされて、声も出せなくなった。心の中、からすがなんか喋ってる気がするけど、もう言語を処理する余裕はない。

その時。人影が見えて、神妙な声が聞こえた。

「それ以上、それを傷つけないでくれる?「緑色の発明の星」のオキさん」

崩壊しかけた店内に一人の女の子がたっていた。青い髪をさらさらとなびかせて。

「君、だれ?」オキが怪訝な顔をした。

「私のこと知らないの?その人工生命体「さくら」の開発者、ささめきよ。これ以上攻撃すると、彼、回路が壊れて死んじゃうから止めに来たの」

「…どういうこと?君のことなんて知らない」

「この星のことをよく調べずに侵略しに来たのかしら…いいえ、そんなはずないわよね?でも、大きな勘違いをしてるわよ」

「勘違い?どういうこと…橙色の星のあいつ、僕に嘘の情報を教えたのか…?」

「何のことか知らないけど。橙色…?最近、「橙色の自由の星」が侵略されたらしいじゃない。それと関係あるの?あの星には「むむ」っていう、青色の不死の星に詳しい戦士がいるのよ。彼女から情報を引き出したのなら、信用するべきじゃなかったわね…彼女は噓付きだから」

「橙色の自由の星を侵略したのは僕だ。むむちゃん…怖がらせて「さくら君と青色の不死の星」について、知ってること全部吐かせたはずなのに、嘘をついてたのかな。逃がすべきじゃなかった。君、さっきから何を隠してるの、僕が勘違いしてることって何」

オキは風の速さで、ささめきの鼻の先に、金属性の腕の切先を向けた。ささめきはピクリとも動かなかった…オキは少し驚いた表情をした。切先を向けられたまま、ささめきは平然と話している。

ささめきは、この状況を、堂々とした態度と嘘で切り開くつもりなんだ。予めさくまにオキの記憶を覗かせて、短時間で作戦を練ったのか?何をしようとしているのかはわからないけど、もう俺に力は残ってない、全部任せるしかない…。

「この星の化身はさくらじゃなく、なのよ。人口生命体やロボットを開発して、私を守らせて、戦わせてるの。守りが硬くて、誰も私に手が届かないから、「不死の星」なんて呼ばれてるみたい。さくらは最高傑作かもね、結構丈夫でしぶといでしょう?優しくて騙されやすい人間らしい一面があって可愛いし、バイトしてお小遣い稼ぎまでしてくれる。ああいう男、タイプなの」

「嘘つかないでよ…」

「本当に知らないの?私が力任せの臆病者って言われてるのは、それが理由なのに。…はぁ、最悪、話してたらさくら、死んじゃったじゃない。また新しいのを作ればいいけど、結構大変なのよね。まぁいいわ。これでわかったでしょ、さくらが死んでも星のはなびらが散らないってことは、彼は星の化身じゃなかったの」

俺は死んだふりをした。ふりなんてしなくても、既に死にかけてるけど。…オキはささめきの言うことを信じたようだった。

「じゃあ、僕が殺すべき相手は君ってことか、ささめきちゃん」

ささめきは半笑いみたいな表情で、諦めたみたいに両手を挙げた。

「私はあなたと戦うつもりはないわ。倒しても大した収穫にはならないわよ。なぜなら、宇宙一番を名乗れるくらいの星の力は既に使い切っていて、私の魂からは回収できないのよ。

私、星の力のほとんどを、人口生命体やロボットを作るための高性能コンピューター「S(えす)生命マシーン」の開発と、動力に使っちゃったの。それでさくらとか、いろんなものを開発してるのよ。

まだ死にたくないのよね、宇宙を滅茶苦茶にするのは止めないけど、私を破壊するのは後回しにしてくれない?今だけ、見逃してくれるなら、「S(えす)生命マシーン」と、あなたが夢中で探してるアレをあげる。悪い話じゃないでしょ?」

「…アレって、「戦闘の黒色の星が開発した爆弾」のこと?宇宙を飛び回って探してるんだ…まさか、君が隠し持ってるの!?やっと橙色の戦士から起爆スイッチを奪ったのに、肝心の爆弾が見つからなくて、困ってたんだ。あの爆弾で星を破壊したり、仕組みを研究して僕の体に取り入れたりしてみたいなぁ…欲しいなぁ」

その時、くまのぬいぐるみ(今は金属製)の瞳から、立体映像が投影された。映し出されたのは、見知らぬ青年の姿。青年はオキに話しかけている。

「ヘイ!オキ!俺は「S(えす)生命マシーン」というものがどんな技術なのか気になるね。発明家の血が騒ぐ♪もしかしたら、戦闘の黒色の星が開発した爆弾なんかより、面白いかもしれないぜ。

今ささめきさんを破壊したら、全部消えて行方不明になっちゃうってことだろ?ちょっとだけ我慢して、要求を呑んでみない?その後ご飯食べて休憩してから、もう一回侵略しに来ればいいじゃん!そしたら、発明も破壊も両方楽しめる!絶対気持ちいいって~♪」

「ことお君が言うなら、そうしようか♪引き続き、くまに撮り付けたカメラから僕を見守っていてね。ピンチの時は手を貸してね」

「もちろん♪でも俺、今ちょっと忙しいんだ…この後のことはオキに任せるよ。(銃声)(爆発音)今、侵略者と戦ってるんだ。俺の星はふたりで破壊しつくしたから、荒野だろ?どこを見ても時々雑草みかけるくらいの、何も無い野原じゃん。

だから、隠れるところなくてさ。破壊できるのは楽しいけど、雑魚ばっかりに囲まれてて…はぁ、はやくオキに会いたいよ。まぁ、集中して、片づけることにする♪」

「わかった、お互いがんばろうね

…命拾いしたね、ささめきちゃん。

じゃあ、「S(えす)生命マシーン」と爆弾を受け取ったら、僕は一旦、「緑色の発明の星」に帰るよ」

ささめきは、「着いてきて」と、羽を広げ、俺を担いで飛び立った。そして天国の門をくぐり、一軒の空家に着いた。部屋の中には、でっかい機械が設置されている(さくまの力で作ったのか…、それっぽい見た目のでっかいオブジェ(笑))。ささめきは「これがS(えす)生命マシーンよ」と得意げにつぶやいた。バレてねえみたいだ。

オキとぬいぐるみを椅子に座らせ、俺を抱えたままティーカップにペットボトルのお茶を注いだ。「毒は入れてないわよ」と、手渡す。「じゃ、爆弾とってくるから、ここでちょっと待ってて。起爆スイッチは持ってないし、使うつもりなかったから~、どこに片づけていたかしらね…」独り言をつぶやくみたいに、自然に背中を向けて、家の外へ出た。扉を閉める。

その瞬間。俺はどろどろでボロボロの体を奮い立たせて、その扉に星の化身の力で鍵をかけた。ささめきが早口で言う。

「鍵をかけても無駄だわ、彼なら壊せるもの。あんたならできるでしょう、あの部屋の時間を歪ませて、オキの体感時間を変化させるのよ。オキはせっかちだろうし、5分くらいしか待ってくれないと思うわ。だから、彼が5分と感じている間に、あの家の外の世界では何時間も過ぎているような、そんな仕組みにしてちょうだい」

「無理だ…俺にはもう、そんな力は、残ってねぇ。さくまに体を再生してもらえたら、なんとかできるかもしれないけど…」

「その傷を再生してる間に5分すぎてしまうし、あんたを回復させて、窓の外の真っ赤な空の色が元に戻ったら、怪しまれるじゃない。それにさくまちゃんは、霊や天使をこの家からできるだけ遠い所へ非難させていて、こっちにはこられないの。現世の人にも、外に出ないように呼び掛けてもらってる。助けるためだけじゃないわ…そうしないと、人だかりや悲鳴で、私たちの動きがオキに筒抜けになるかもしれないからよ。人質をとられても面倒だし。

…だから、その傷で立つのよ、やるのよ。諦めてもいいけど、あんたが諦めたら、からすさんの身が危ないわよ。オキはからすさんの存在は知らないみたいだけど…、爆弾がこの星にあるっていうヒントをあげちゃったんだから」

「そうだ…!どうして、爆弾の話なんかしたんだ…!!わざわざからすを危険にさらすような真似を!!」

「怒ってる時間はないわ。むむさん、オキにからすさんのことだけは話してなかった。だから騙せるネタがそれしか思いつかなかった。オキと、緑色の星の化身のことお…あいつらが欲しがってるものが爆弾以外に思いつかなかったのよ!からすさんのことを想えばあんたも諦めず、本気になれるでしょ。あいつらを何とかしてこの星を守りきれば、関係ないじゃない。それが無理なら、あんたもからすさんも私も、どうせ皆消えるのよ。さぁ、早く!!!

俺は自分が死ぬのを覚悟して力を振り絞った。穴だらけの体。毒の効果はまだ続いていて、黒い血液を吐くのも止まらない。

「はぁ…はぁ…、できたぜ。でも、何時間っていうのは今の俺じゃ無理だった。30分しか用意できなかった。これ以上力を使うと、天国も地獄も現世も、星の仕組みも崩壊してしまう…星を守るためなら最悪そうするしかねぇけど、今そうしたら、オキに気づかれてしまうから…。俺がこの30分で、何とかする方法を考えてくる。オキを倒す方法か、この星を諦めさせる方法か、俺たちが楽に死ねる方法をな」

「好きにして、あとは星の化身のあんたに任せる。私はオキを見張ってるわ。…あ、忘れてた、これ飲んで」

ささめきは俺にカプセルを手渡した。

「俺、カプセルのクスリのめねぇタイプなんだ」

「気合で飲みなさいよ!!さくまちゃんが作った解毒剤よ。その解毒剤を作るために力を使い果たして、さくまちゃんもボロボロなのよ。

オキの記憶を見てわかったの、あんたが飲まされた毒は、橙色の自由の星の化身が研究して完成させていたものらしいわ。このまま放置していたらあんたは確実に死んでた、そんなクスリよ。…橙色の自由の星というところが侵略されたのは事実みたい。私たちの星を知りすぎているむむという戦士…どうして彼女が知ってるのか、察しはついてるけど、その話はこの星が助かった後にするわね」

俺は薬を気合で飲み込んだ…吐き気はおさまった。5秒くらい考えた時、頭の中に俺を呼ぶ声が響いた。からすが呼んでる…俺は、ささめきに「行ってくる」と伝えて、地獄へと降りた。ささめきは俺の背中に向かって「私、いつだって死ぬ覚悟だけはするつもりないから」と声をかけた。

崩れそうな翼を広げてからすのもとへと飛ぶ。滲む視界、鉄臭くて、しょっぱい味。土砂降りの雨のように流れ出る赤い血、眠気を誘う痛み。

何もかもを、気に留めずに。

俺は愛しの彼のもとへと飛ぶ。

三話「俺の選択」

俺の赤い姿を見て、泣きそうな白い顔で駆け寄ってきたからすは優しく俺を抱きしめた。そして俺の傷口に部屋に合ったタオルをあててくれた。

「からす、俺…」

「大丈夫、説明しなくてもわかっている。だが、何もできなくて…ごめんよ」

「謝るなよ、大丈夫」

震えを抑えるために爪が食い込むくらいに手を握りしめる、涙を隠すために下を向く。なんとかするんだと心の中、何度も言い聞かせる。ささめきとさくまがくれたチャンスなんだ。俺がしっかりしてねぇと。だけど、そんな強い気持ちに、体は答えてくれない。おかしくなりそうな苦しさと痛みに、体に力が入らなくなった。倒れそうな俺をからすが支えた。こんな姿を見せたくなかったのに。

「さくら君、どうする、戦うか…?さくら君がわたしに「オキ君を殺してほしい」といえば、わたしは、この特別な力を使って」「それだけはさせねぇ!!…それしか方法がないのなら、消された方がマシだ!!

からす、自分で言ってたじゃねぇか、「わたしは力を持て余している臆病者だ」って。何があっても、一生そのままでいろよ。戦えないからすでいろよ。宇宙の法則を超える力は使うな、この宇宙の一員でいるために。ここにいていいんだよ、俺が守ってやるから」

「さくら君、ありがとう」

「それに、変に行動して爆弾に刺激を与えない方が良い、爆発しちまうかもしれねぇ。しかもオキはからすに宿ってる爆弾の起爆スイッチを持ってるんだ。絶対に、姿を見せない方が良い…」

「そうか、ゴホン…うーん…どうしようかなぁ…ゲホゲホ」

からすは無理に笑ってる。泣き虫なくせに、こういう時は泣かねぇのか。必死に考えて、涙さえも忘れてるんだろうな。そんな余裕のないからすを見て、俺はこの絶望的な状況を身に染みて感じてきた。

この星を守りたい、からすを守りたい、強くありたい、死にたくない、でもどうしようもない。立ち向かうのも、逃げるのも、怖い…いろんな感情が混雑して俺の目からは大粒の涙がぽとぽとと落ちる。落ちた涙は足元の血だまりに溶けて広がっていく。

だんだん、辛くなっていく。辛くなっていく。

もう、からすと一緒に笑ったり話したり、抱き合ったり。何もかもができなくなって消えちまうのか?かつて感じたことのある恐怖がまた俺を蝕む。俺が、俺は無力だと指をさして笑ってくる。

「俺、強気になってるけど、本当は、最期にからすの顔見れてよかったって…思ってる自分もいるんだ。

ごめん、ごめん…俺、最低だ」

そんな俺を見てからすは歌いだした。

「ほ~ら、にぎにぎ、に~ぎにぎ♡ぎゅっ、ぎゅっ!!ラブラブぎゅっぎゅっ♡♡最後にラブラブ過ごして、ふたりで星のはなびらになるのも、悪いことじゃないだろ♪」

からすは真っ赤な顔でふにゃふにゃ笑っている。

その姿が愛おしくて、愛おしくて。切なくて。からすの大きな手が優しくて。また切なくなる。俺はサファイヤブルーの瞳を黙ったままみつめた。

「すまない、励まし方を間違えたな。わかっているぞ、さくら君の気持ち。この星と仲間を裏切ることは辛いだろう。

…この星を守る方法。あるにはあるから伝えておこうか」

「…なんだよ、その方法って」

「オキ君をできるだけこの星から遠ざけて、オキ君を巻き込んで、わたしごと爆弾を爆発させるんだ。刺激を与えるだけで爆発するものなんだろう?戦うわけじゃない」

「は?」

「わたしの瞳で透かして見てみると、オキ君はすでに10個の星を侵略しているんだ。つまり、10種類の星の力を宿している、扱えるということだ。この爆弾は黒色の星が侵略してきた「沢山」の星の化身の力、特殊な力を持つ戦士たちの力を合わせて開発していた試作品…今すぐ彼をやっつけるなら、これしか方法はないだろう」

ひどいこというなよ、からすは武器じゃない。俺の恋人だ…そうだろ、そうなんだよ!!!俺の前で死ぬ話なんて二度とするなよ!!!俺はこの星と一緒に自爆しに来たからすの心を、救ってやった気でいるんだよ。『わたしに寂しがり屋の心を思い出させてくれたのはさくら君だ』って言ってくれたじゃねぇか」

何を言っているのかわかっているのか?その態度が気に入らない。

動悸がする。息苦しい。聞きたくない、き、聞きたくないよ。

「さくら君…すまない、言ってみただけだ。もっと寂しい思いをさせちゃったな。わたしは、どんなさくら君の選択も、受け入れるし尊重する。わたしはどんなときもさくら君も味方だ。…信じてくれ、わたしはさくら君とこの星が大好きなんだ」

俺は気が付いた、からすが何を言いたいのか。ああ、そういうことか。そういうことかよ。

この状況でどっちも守るなんて無理なのか。

俺は星の化身だ。

この星の魂と未来を守り続ける使命がある。もう逃げないと覚悟したんだ。ささめきやさくまだけじゃない、今この星の誰もが、歪な赤い空に怯えている。俺を信じて、大切な人と生きることを願っているんだ。そいつらの気持ちを裏切るつもりはないんだ。

俺はからすの恋人だ。

からすは俺の大切な人なんだ。星が滅ぼされて、全員死んでしまう運命だとしても、関係ねぇ。からすを犠牲にする選択肢なんて、はじめから存在しない。からすは俺の夢そのものなんだ。最後までその手を握り続けたい。この恋心を裏切るつもりはないんだ。

守りたい。守りたいのに。

それが切羽詰まった俺に突き付けられた運命なのか。

与えられた30分。

どちらか選べと、言われているのか。

この宇宙の神様に…。

からすは選択肢を増やすために、わざわざ残酷な作戦を教えてくれたんだ。俺が後悔しないように、そっと、そっと俺の背中を押そうとしてるんだ。

ここにきてから、もう10分は過ぎている…。

考える。でも、俺の心は初めから決まっていたのかもしれない。

その責任に、覚悟に背中を向けるわけにはいかないのだから。

そうだ、俺はずっと前からそう、決めていたんじゃないか。

俺は…

~物語が分岐します、どちらか選んでお進みください~

からすを犠牲にして星を守る

星を犠牲にしてからすを守る 

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