十話
ゆずは先輩と会って、天国で体を治してもらった次の日の仕事帰りの夜。俺(さくら)は天国へは帰らずに、羽を広げ、更に下へと降りていた。徐々に空気が澱んでいく。そして赤黒い岩壁に囲まれた、別世界へとたどり着く。
ここは地獄の入口。熱くしめった地獄の空気を感じながら、ひび割れた岩壁を見つめる。その先にあるのは…俺が作った世界、鉄格子に囲まれた薄暗い空間。
からすを閉じ込めている、秘密の場所。
その世界は時間が進むのがものすごく遅い。時間を引き伸ばし続けて、俺が作り出す永遠。この星を、そしてからすをこの星で生かすための仕組み。
そっと近づき、その壁に足をかける。
「…からす」
そっと呟き、入り込む。
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ー異変に気がついたあの日ー
いつもは俺の姿を見た途端、大声で泣き叫んで必死にしがみついてくるくせに、その日のからすは奥の方で横になったまま「ぅう…」とうめき声を上げただけだった。
「おい、からす?チッ、わざわざ来てやったのに…」
近づくと異常にはすぐに気がついた。からすの体に触れるとゾッとした…かたかたと震えている。
「からす?、おい、どうした…!?」
俺の声が届いたのか…からすはよろよろとしたぎこちない動きで、何とか顔を上げてみせた。涙と汗に塗れた苦しそうな表情で、弱々しく、震える声を絞り出す。
「この声…さ、さくら、く?さくらくん…!!なんだか、か、らだが…変なんだ。このままだと、わたし、は…壊れてしまう、かもしれない。わたしで、無くなって、しまうかも…ッ」
「はぁ?」
俺は世界を見渡す力を発動させる。キョロキョロとし、そして天井から、何か悪い力が…「憎悪の力」が流れてきて、ぽたぽたと垂れてきているのを見つけた。それを見て、それが生きたからすの魂を蝕もうとしていることもわかったんだ。
「…」
「さくら、く…」
「…からす」
本当に大切なものは失って初めて気が付く…そんな言葉が、ふと、頭に過った。
「待ってろ…」
ただそれだけ言い残して、俺は背中を向けた。
外にに出てきた時、何故かぽろぽろと涙が溢れてきた。誰かに見られるかもしれない、けれど、涙はとまらない。涙の理由もわからない。ただ、心の中をかき混ぜられる様な、苦しさだけを感じる。寂しさ、やるせなさ、不甲斐なさ、やさしさ?…色々な感情が混じり合う。
からす…からす…。
…。
もう俺はからすの気持ちなんて、恋心なんて知らねぇんだよ…。閉じ込めておかなくても大丈夫って思えるくらいに信じてたのに、裏切ったのはからすだろ??俺はもう、からすの言葉なんて、信じらんねぇんだよ。簡単で、目に見えるものしか信じらんねぇんだよ!!
どんなことがあったって、どうせ変わらない。からすはそこから出られやしねぇし、出せやしねぇんだ。
だけど、壊れて、白紙に戻ったからすとなら、またやり直せるかもしれないか?優しい俺になれるかもしれないか?過去も未来も何も知らないからすなら簡単に、信じられるかもしれないか?
…そんな風に…思えるわけねぇだろ、無理なんだって…辛いよ。
だって俺はまだからすのことを愛している、愛してしまっている。
からすの心傷付けて、自分の心を覆い隠して、それでもからすのことを諦めきれねぇでいるんだよ…。
こんなにも歪んで、歪んで、それでも、この恋心だけは捨てきれねぇでいるんだよ!!
…おかしいくらいに、ただ、寂しい。
きっと俺は普通に愛されたいんだ…いや、普通にって何だよ。わかんねぇよ。
そんな空っぽの気持ちをからすに押し付けている、からすで「わからない寂しさ」を満たそうと必死になっている。勝手に、ひとりで、必死になっている。
狂ったように求めているのは、俺の方…?
からすは嘘つきだけど、正直なやつ。
俺は嘘つきだし、…正直にもなれないやつ。
こわい…、こわい。
「ぅう…ぅ…く…」
からすを失うことが1番怖い。
「いやだ…からす…どこにも、いかないでくれ…」
なんとかしねぇと…情報を集めて…どんな手を使っても、何をしてでも!なんとかしねぇと!なんとかしねぇと!からすを救わないと!!
だって俺はもう
からすがいないとダメだから…!!
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からすは同じ場所にまだ横たわっていた。改めて確認する、憎悪の力は一欠片も無い…。もう、大丈夫なはず…。
「お、おい、からす…」
もう一度名前を呼ぶ。
「返事しろよ、からす!!」
俺はからすの元へ駆け寄って、その体を揺さぶる。
呼吸に合わせて上下していている胸。眠っていた、閉じていた、その瞼が開かれる。
「…ッ!」
目が合ったその瞬間、押さえ込んでいた俺の本心が溶けだすように溢れでた。
「ぅう…怖かったよな?ずっと怖かったんだよな…ごめん…ごめん…俺、嘘ばっかついて…酷いことして。
俺…本当は寂しいんだ、怖いんだ…からすに愛されたいんだ…わかんねぇ、この気持ちをどうしたらいいのか、俺じゃ何もわかんねぇんだよ。
優しい俺になりたい。俺、からすのこと愛してる…からすは俺のこと、愛してる?
いや…もう、嫌われてしまってるよ、な?」
そのとき、からすの大きな手が、俺の頭をふわりとなでた。からすは少し困ったような優しい顔をしている。そしてその胸に押し付けるように、俺を引き寄せた。サファイアブルーの瞳…やっぱり、やっぱり綺麗だと思った。
「愛してるにきまっているだろう!さくら君…!
はぁ、やっとわたしの目を見てくれたな…仲直りできるのなら嬉しい。それだけで、怖かった気持ちも不安な気持ちも全部吹き飛んだ!だから大丈夫、何も気にしなくていいんだ♡
また可愛い顔を見られて安心した。その顔が見られるのならわたしは幸せだ。ここに閉じ込められても…ッゲホッごホッ……」
安心した俺はからすの頭を撫でようとした…からすは少し屈む。ツヤツヤの黒髪に触れる。
「なでなで気持ちいいなぁ、なでなでホワァア!♡」
そして、鉄格子に囲まれたこの薄暗い世界を、1年くらい前に2人で過ごしていた「からすの家」の景色へと変えた。思い出の部屋…生活感はあまり無いけれど、部屋の隅には布団が無造作に敷かれていた。あの檻はどこにもない。からすはその部屋を見渡して笑った。
「あ、あ、明日から毎日ご飯もってくる…からすが育ててたサボテンも多分まだ枯れてないし…色んな物もってくる。もう、意地悪しないから…からす…なぁ、もう壊れたりしないか?体は大丈夫か?」
「あ、ああ…もう、なんともない。ふふ…ぷぷ」
「どうした?笑うところあったか?」
からすの瞳を見つめている自分が恥ずかしくなって、ふと視線をそらすと、窓から差し込む作り物の月明かりがほのかに輝いているのが見えた。
…ここは俺とからす、2人だけの世界。でも、監獄なんかじゃないさ。
からすを引き寄せ、そっと唇をあわせる。柔らかい感触に心が動かされたのか、また涙が頬を伝った。生温い涙。馬鹿かよ、俺、こんなにも涙脆かったか?
でも、悪くない、いや、心地いい…?からすは俺の弱さも痛みも、こんなにもかっこ悪い姿も全部受け止めてくれるんだな…。つい、甘えてしまう、流されてしまう。そんな新しい俺をまた、知ってしまう。
「ふふ、さくら君の涙ぺろぺろしたいなぁ〜♪」
「だ、ダメだ!変なこと言うなって。ジロジロ見るんじゃねぇ…」
「わたしの前でわざわざ強がらなくてもいいのだぞ♡……ふふ、ぷぷ」
「からす、さっきから何が面白くて笑ってるんだ?」
「いや、その…なんと言うか…またさくら君を困らせてしまったというか、やらかしたなって反省しているというか…でも、想像以上に上手くいったから、面白くて…ぷぷ」
「何の話だよ!?からす、なにかしたのか!?なにか隠してるのか!?」
「隠してる!!
この隠し事…今更、わざわざ、言わない方がいいのかもしれない。それでも、これからはさくら君の心をよく考えて、いつだって本当の事をいえる自分になりたいと思ったから…きちんと話そうと思う…。
もう隠しごとはしない!!さくら君を怒らせるととんでもないしな…
とにかく、聞いても怒らないでくれッ!!」
「お、怒らねぇから…とにかく話せって!怖ぇよ…」
からすはモジモジしながら、目も合わせず、もごもごと話し出す。まるで言い訳をするように…。
「えっと何から話そうか…?」
「何からって…ひとつじゃねぇのかよ…」
「順番に話す
わたしが元々いた星は、「黒色の戦闘の星」と呼ばれている強星。この青い星からは結構遠い。
わたしは戦うことは苦手だから、特に強いとされる黒い星の戦士や、星の守り人であるさくら君と比べるととっても弱いし勝てやしないが、体そのものは丈夫なんだ。特殊能力だと言えるほどにな。
そして、この藍色の瞳…これもわたしの特異な武器だ。しかし、「瞳を輝かせて目をあわせることで、恋に落とすことができる力」…だけではない。
わたしはほとんどの守り人がもっている、その星の構造や魂を見渡す力もあるんだ…この瞳に宿している。一応透視能力もある…これは、服を透視して、乳首見て遊ぶくらいしか使い道がないが。
つまり、わたしは守り人に似た力を持っている。体に宿す星の力はさくら君の半分ほどある。わたしは意外と強いんだな~♪
それで…閉じ込められてるこの世界があまりにも退屈だったから、世界を見渡す力でさくら君の星を調べて遊んでいたんだ。
天井から、魂に干渉する悪い力が流れ、ぽたぽたと垂れてきているのも発見した。上にある霊界から流れてきていることも、直ぐにわかった。
雨漏り修理しなくちゃな〜♪と歌いながら、壁をよじ登って、水のような形をしているその力をつついて遊んでいた。お腹もすいたし、力をぺろぺろ舐めて、ご飯にもしていた。甘くて結構美味しかった、香りは芳香剤みたいな感じだった。わたしは気になったものはすぐ口に入れたくなるえっちなタイプだから、我慢できなかったんだ!
とにかく…丈夫なわたしに、影響を及ぼすものではなかったんだ、心も体もへっちゃら!
だが、わたしは思いついてしまった!これは使えると!
さくら君にまともに構ってもらえるようになるチャンスではないかと!
それでわたしは…
なんだか、か、らだが…変なんだ。このままだと、わたし、は…壊れてしまう、かもしれない。
とか言って、あんなことぉおおおおお!!!」
「え…全部演技だったってことかよ!?!?」
「普段も結構嘘泣きをしていた…わたしは泣いたり喚くのが上手いんだ…。
黒い星にいた時なんて、お仕置として2年くらい狭い空間に閉じ込められて放置されたこともある…ホコリくらいしか食べるものもなくて大変だった。泣いてみても、わたしの性格を知っているからか、無視されるしな。
ただ流石にこれはやりすぎた、さくら君に心配されたかっただけだった。2人で一緒に雨漏り修理デートをしたかっただけだったのに…だけどさくら君は、悪い力そのものを消しに行ってしまったようだった。
わたしのせいで、上に住んでる、呪われたおばけさんが消されてしまったらどうしようと、不安でたまらなかった。わたしは戦士だったが、いつだって、誰かの命を奪いたくはないんだ。
わたしはまた、取り返しのつかないことをしてしまった!!!
ひぃ、おぉ、怒らないでくれぇえ
でもわたしのために頑張ってくれたさくら君可愛ぃよぉおお…嘘です嘘ですごめんなさいぃいいい」
「ちょっと目眩が…。俺、突っ走ってしまったのか?いや、もういい、考えたくねぇ…考えたらダメな気がする。怖すぎる。
心配されたかったんだもんな、まぁ、構ってなかったの俺だしな…俺も目が覚めたんだし…ゆずは先輩とふうがさんも元気でいられる様になったし…?もう、結果オーライだってことで脳を処理させちまおう、怒らねぇ…俺は怒らねぇ!!」
「さくら君!!!ありがとう!!!」
「はぁ…」
もう、全部済んじまったし、今さら愚痴っても仕方ねぇことばっかりか…。強く抱きしめられ、頭をわしゃわしゃとなでられる。ほわほわ漂うからすの匂いに、また何も考えられなくなっていく。しっかりしろ、俺。
「か、からす。二度とすんじゃねぇぞ…?からすを失うことと比べたら、少しくらいならからすに振り回されてもいいかって思えるくらいには、心に余裕ができたけど…。
けどな、振り回すのは俺の心だけにしてくれ。
俺きっと馬鹿正直なんだ…嘘つくのも下手らしいし、演技とかされてもわかんねぇんだって…本気で心配したし、マジありえねぇから…自分が…だせぇから。何やっちまうか、わかんねぇから…」
「わかった。あ…さくら君の心、ちょっとくらいなら振り回してもいいのか?」
「例え話だ、反省しろ!!!はぁ…不安だな…」
からすの腕の中、また頭を撫でられる。そして、俺の瞳をじっとみて、サファイアブルーの瞳を揺らめかせて、話しはじめた。
「不安かぁ…わたしにはわかるぞ、さくら君は…わたしに愛されてる実感がなくて、特別扱いされている気がしなくて、不安なんだろう?」
「まぁ、…それは、あるかもな。からすのせいだろ…てか、自覚あるのかよ」
「もう、さくら君のこと、不安にはさせないぞ!わたしは今まで、数え切れないくらい恋をして、遊んできたが…さくら君は特別なんだ。だってさくら君は、わたしの最後の人なのだからな!」
「最後の人…」
「恋は手に入れてしまった途端に、飽きてしまうこともある。だけどさくら君の恋はそうじゃないだろ?わたしだってそうだ。この恋は魔法でも偽物でもない。さくら君がくれた、心からの、「本物」の恋♡だからこそ難しい…不器用でチグハグで、うまくいかないのだろう。
わたしだって馬鹿正直。独りよがり。わたしたちは、周りのことも、お互いのことも見えなくなるほどに、夢中になっているんだな♪」
「俺もそう思う。難しいよな、人を好きになることって…。からすは自分のものだって、何度も確かめたくなって…辛くなる。信じるのって勇気がいるんだな」
「わたしも…言葉だけじゃ、満足できないことばかりだ。
だけど、さくら君はわたしに弱さをみせてくれた、わたしのために泣いてくれた…なんだか、心が軽くなった。さくら君のことも、この星のことも、自分のことも、信じられるんだと実感して、恋を実感して、不安が晴れた。
わたしに付けられた見えない首輪…それに繋がる鎖をさくら君は手離せない。手離せないのなら、捕まっているのはさくら君も同じだ。さくら君の心はわたしが捕まえている、わたしのものだ。わたしのものでもあるんだ。
だから、さくら君にも…同じ気持ちをわけてあげたいなって思った。
わたしのことも、この星のことも、自分のことも、信じられるんだと実感して、恋を実感して、安心してほしいんだ」
「…か、からすって普通に喋れたんだ。恋を実感して安心する、か…俺はなれるかな」
何度も諦めそうになりながら、試行錯誤してきたこの星。興味がなくなって、真面目に向き合えなくなったこの星。仲間と出会って、また守りたくなったこの星。
俺はこの星で、まっすぐで、優しい恋ができるだろうか。
考えていたら…からすは突然俺を担ぎ上げて、俺をベッドの上に仰向けで寝かせた。
その拍子に、俺の膝をぐっと掴んで太ももごと腹の方へ持ち上げるように曲げられ、組み敷かれてしまう。
からすはそのまま覆いかぶさってきた。からすの体重を感じる…。器用に…はらはらと揺れる髪を耳にかけ、至近距離で、楽しそうに見つめてくる。ギラギラ光るその綺麗で艶かしい瞳が俺の視線を独り占めする。
「なれるさ、わたしが分けてやる♪
愛されたがりのさくら君に、実感させてやる♡
恋心を混じり合わせて、わたしたちが愛し合っているということを体感させてあげようじゃないか!」
「えっ何?からす!?」
え、何だ?俺、押し倒されたのか?動けねぇ…足広げさせられて…変な格好させられてね?どうなってるんだ?
視線を泳がせていると、からすがさらに顔を寄せて、耳元で囁くように話しかけてきた。
「さくら君。信じられるか信じられないかなんて、結局は自分が満足できているか、出来ていないかの話だった」
そしてからすは俺の首筋に顔をうずめてペロリと舐めた。
「ひぁッ!?」
その感触に背筋がヒヤリとする。
…からすが呟く。
「…可愛い♡」
初めて見た、からすのとろけるような熱い興奮を映した笑み。空気を奪い自分の色に染めていく、余裕で強気なオーラ。
こんな笑い方、なんだかからすらしくないって!
からす、俺に隠してること、まだまだあるんじゃねぇの!?!?
舐め回すような、欲に絡まれた視線を向けられて、俺の思考はやっと現状においつく。
自分の状況を飲み込む、理解する!俺、このままだと抱かれちまう!?
「からす、ストップ、無理だって!!マジやったことねぇし!!」
「嫌なら本気で抵抗しないとだめだ、さくら君♡ほら、ほら〜、わたしに食べられてしまうぞ…?さくら君はわたしを奮わせる…こちらからみる眺めも最高だな〜♡ゴホゴホッ」
「ま、まって、い、いつものからすに戻ってくれー!!」
「そんなポカポカ叩いて…素直じゃない所も可愛いな/////だいじょうぶ、今まで感じたことの無いはじめての気持ちよさをプレゼントしてやる♡
わたしは、…上手いからな♡♡
怖がることはないぞぉ〜、身を任せて、いっぱいいっぱい、わたしのラブを感じてしまえ♡」
俺はもがいていた…ただ、俺の力が半分になってしまったから(からすとゆずは先輩のせいだ)、力の扱いに慣れねぇし、同じくらいの力を持つからすの体を弾き飛ばすことが出来ないんだ!!180cm超えのからすと、160cmくらいの俺…無理だって!!
からすは俺の頭に手をのばし、動かない様におさえ、耳にそっと舌を這わした。ふわっとした息、熱く柔らかい感触。脳に染み込むくちゅくちゅした音…。
指先を優しく滑らせ、ズボンの上からするりと撫でられ…そんな小さな刺激のひとつひとつを強く意識してしまい、思わず手をぎゅっと握る、体に力が入る。
…力が湧かない?体格差…本当に
それだけの理由?
「こ、怖いとかじゃねぇから…違うんだって!!やらねぇから!!ふぁあッ耳やめろ、!!おっ、お、音が…ッ!さわ、な、ッ、ぅん…ッ!?」
ヤバイヤバイやばい、流されちまう!?ダメだっ、わからねぇ、頭が回らねぇ。
「からす!俺…
もがッ
唇を塞がれる。
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ー帰宅・天国の入口ー
…門番は座り込んで眠っている。よし、今のうちに何とか中に入ろう。寝よう!明日は仕事も休みだしよかったぜ!笑
「あら、やっと帰ってきたのね、遅かったじゃない。私心配して、ここで待ってたのよ」
門の後ろからささめきが顔を出した。いたのかよ、来んな、最悪だ…。
「守り人さんが閉じ込めちゃうくらいだーい好きな…からすさん。力を半分無くしても構わないくらい守りたい、大事な彼♪」
「ぉおぉお…」
「え、何よ、その状況…」
俺は今からすの家にあった物干し竿を杖がわりにして、がっくがくの足と体を支えている。ささめきは慌てて駆け寄り、その体を支えるため俺の肩に手を回した。
「ぁ、いきなりさわんなッ!!!」
カスカスの声…。引きづられる様に、なんとか天国に入る。
「…守り人さんほんとに自力で立てないの?…腰、抜けてる?」
「誤解を与えるような表現はやめろ!!俺は今相当シビアな状態なんだ、色んな意味で…ぅう…」
悔しい。からすがムカつくくらい、かっこよかったから。
ささめきはとてもとても…冷ややかな視線を向けてくる。星の守り人がフラフラ状態で帰ってくるだなんて無責任でダサい…と言っている視線、心の底から引かれている…。
「か、からすさんには明日も会いに行くの?」
「行く…いぐ、こいびと…」
「星の守り人の恋人が侵略者って何となくロマンチックな気がしてたのになぁ、なんだかガッカリしちゃった。さくまちゃんがあの侵略者は面白いぞ…なんて言ってた意味も少しわかったわ。さくまちゃんにからすさんのこと、もっと詳しく聞いておこうっと…
う〜ん…いつもカッコつけてるのに、こんなにめちゃくちゃにされて、なんだか可哀想…その…もう別れた方がいいんじゃない?」
「うるせぇ、黙れ!!!別れねぇよ!!!
可哀想じゃねぇし?俺は愛されてるんだ!!!
めちゃくちゃにもされてねぇよ、お、ぉ、おれ、俺、抱かれてねぇからな!?ほほ、ほんとだって…!!!
へへ…
いてぇ、からだ全部いてぇ…この痛みもからすの愛なのかな…グハッ…ひぃ…
はぁ
からす大好きだぜ…!!」
END(六章へ続く)